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魔法少女リリカルなのはStrikerS~赤き弓兵と青の槍兵

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本編
  十話~それぞれの過去

side ティアナ



目が覚めた。見慣れぬ天井。



「ここは………」
「医務室よ。目が覚めたのね、ティアナ。」
「シャマル先生………」
「昼間の模擬戦で、撃墜されちゃったのは覚えてる?」



そうだ、士郎さんの出した大剣。それが光ってから爆発し、その爆風に吹き飛ばされたのは覚えている。



「はい………」
「でも爆発の余波に巻き込まれただけだから怪我とか体へのダメージはないわ。」
「そうですか………」

そこで自分がズボンをはいていないことに気が付く。
なんだか居たたまれなくなり、ちら、と時計を見た。



「え!?九時過ぎ!?………よる!?ええ!?」
「ふふふ………すごく熟睡してたわよ。死んでるんじゃないかって思うくらい。たまってた疲れがまとめてきたのよ。スバルやなのはちゃんも心配してたわよ。」


後でお礼を言いに行かなきゃ………




side なのは



訓練場でデータ整理をしていると、



「なのは~」
「フェイトちゃん…………」
「今ティアナが目を覚まして、スバルと一緒にお礼を言いに来たよ。なのはは訓練場だから、明日の朝にしな、って言っちゃったけど……」
「ううん、ありがとう。………あのね、フェイトちゃん、」
「わかってる。士郎の事でしょ?」
「どうしてわかったの?」
「はやてに聞いたんだ。なのはが士郎のことを気にしてるって。それで、ランスに聞いたんだ。士郎の出した剣の事。魔力が万全じゃない状態で使うようなものじゃないんだって。だから、ものすごい負担がかかってるはずだ、って……」
「士郎君はどこにいるの?」
「わからない……ランスもどこかに行っちゃったし、シャマルは士郎はしばらく魔力を使わない方がいいって………」
「そっか……」



隊舎についた時だった。



「警報……」



こんな時に……





side はやて




「東の海上に今までとは比べ物にならん性能のガジェット空戦型が50機。どうみる?」


質問はこの場にいるなのはちゃん、フェイトちゃん、グリフィスに向けたもの。



「私は遠距離砲撃で片づけるのがいいかと………」



グリフィスに反論したのはフェイトちゃん。


「おそらくスカリエッティはこっちの情報を集めるためにガジェットを仕向けてきたんだ。レリックの反応もないのにあれだけの数を送り込んできたのが何よりの証拠だよ。」
「なのはちゃんはどうや?」
「私もフェイトちゃんと同じ考え。戦法としては今までと同じ方法をとって奥の手は見せない、ってのがいいかな。」



そんな時だった。



「面倒だな、俺が砲撃で吹っ飛ばすぜ。」
「ランス!?」
「奥の手を見せなきゃいいんだろ?だったら俺が魔法で倒すのが一番手っ取り早い。全力を出したって奥の手ではないんだからよ。」
「フェイクの情報を与える、ってことやな。」
「ああ。だから今回は……」
「隊長たちのサポートのもと、ランスが砲撃で倒す、ってことでええな?」
「いや、俺は一人で……」
「だめや。トラブルがないとも言い切れへん。だから隊長たちはついていく。これは命令や。わかった?」
「……わかった。」



しぶしぶながらの了承が得られた。



side なのは



出動のため、屋上へ。



「今回は空戦だから、私とフェイト隊長、ランス君の三人ででるけど、皆もロビーで待機しててね。」
「こっちの指揮はあたしとシグナムだ。」


ティアナは……まだ落ち込んでいる。


「ティアナは………」
「今回は外すべきだろう。」


そういったのは士郎君。


「…………いう事を聞かない奴は使えない、ってことですか?」
「そう言ったつもりだが?」
「衛宮、そこまで言わなくても………」


そういったヴィータちゃんはランス君に止められる。その目は『言わせておけ』と語っていた。



「現場での指揮はちゃんと聞いてます。教導だってサボらずやってる。それ以外の努力にまで教えられた通りじゃなきゃダメなんですか?私は、なのはさんたちみたいなエリートでもないし、スバルやエリオみたいな才能も、レアスキルもない。少しぐらい無茶しないと、強くなんてなれないじゃないですか!!」


そういったティアナを殴り飛ばした人物がいた。



「駄々をこねるのもそこまでにしろ。」
「シグナム!」
「シグナムさん!」
「加減はした、心配するな。ヴァイス!もう出られるな。」
「いつでも行けますよ!」



ヘリに乗り込む。



「ティアナ、思いつめちゃってるみたいだけど、戻ってきたらちゃんと話そう!」
「放っておけ、嬢ちゃん。ヴァイス!出してくれ。」
「はいよ!旦那。」


ティアナ……




side 士郎



「さっさと部屋に行け。目障りだ。」
「シグナム副隊長、その辺で…………」
「スバルさん、とりあえずロビーに……」


そこまでキャロが言ったところでスバルが、


「シグナム副隊長!」
「なんだ。」
「……命令違反は絶対だめだし、さっきのティアの物言いとか、それを止められなかったあたしは、確かに駄目だったと思います。………だけど、自分なりに強くなろうとか、きつい状況でも何とかしようと頑張るのって、そんなにいけないことなんでしょうか!?自分なりの努力とか、そういうのも……」
「自主練習はいいことだし、強くなろうと頑張るのも、とってもいいことだよ。」


答えたのは、いつの間にか来ていたシャーリーだった。


「シャーリーさん……」
「持ち場はどうした?」
「メインオペレートはリイン曹長がいてくれますから。なんか、皆不器用で見てられなくて………」
「不器用、か。」


的を射ている言葉だな。


「みんな、ロビーに集まって。私が説明するから。なのはさんのことと、なのはさんの教導の……意味。」





……………………………………………………………




「昔ね、一人の女の子がいたの。」


その言葉と共にモニターに映し出されたのは、なのは……の子供のころだろうか。



「その子は、友達と学校に行って、優しい家族と、幸せに暮らすはずだった。でも……事件が起きた。」
「ふとしたことで魔法と出会った、特別なスキルを持っていたわけでもない、ただ魔力が大きかっただけのたった9歳の少女だ。」
「そんな子が魔法と出会って、たった数か月で命がけの戦いに巻き込まれた。」
「これ……フェイトさん?」


そこには同じく……子供のころのフェイトがいた。


「フェイトさんは、その頃家庭環境が複雑でね、あるロストロギアをめぐって敵同士だったんだって。」
「この事件はテスタロッサの母、プレシア・テスタロッサによって引き起こされた。その名を取ってプレシア・テスタロッサ事件。」
「これ………」


そこには集束砲……それも相当な威力のものを放つ9歳のなのはが。


「集束砲……こんなに大きな!?」
「9歳の、女の子……」
「大威力砲撃はただでさえ体への負担が大きいのに………」
「その後も、対して時もたたず、戦いは続いた。」
「闇の書事件。あたしたちが深くかかわった事件だ。」
「襲撃戦での撃墜と、敗北。それに打ち勝つためになのはさんが選んだのは……」
「当時は安全性に問題のあったカートリッジシステム。そして、自身の限界以上の出力を無理やり引き出すフルドライブ、エクセリオンモードだ。」
「誰かを救うため、なのはは無茶を続けた。」


……似ている。かつての私、生前の衛宮士郎に。歪んではいなくとも、たしかになのはは衛宮士郎に似ていた。


「だが、そんなことを続けて体が無事で済むはずがない。事件が起きたのは入局二年目の冬だった。」
「あたしと一緒に行った捜査任務の帰り、突然現れた未確認体。いつものなのはなら何でもない相手だった……」
「でも、たまっていた疲労がなのはさんの動きを少しだけ鈍らせちゃったの。その結果が………これ。」


映された映像にフォワードたちが息をのむ。


「ひどい………」
「こんな状態になってさえ、私たちの前では努めて明るく、迷惑かけて、ごめんなさい、と言っていたが……もう飛べないかもしれない、と言われて内心どんな気持ちだったか……」
「確かにさ、命を懸けてでも、無茶をしてでもやらなければならない時はあるよ。でもよ、ティアナ。お前がミスショットをしたあの時はそうだったか?どうしても撃たなきゃいけなかったのか?」
「!!!…………」


うつむき、黙ってしまうティアナ。自分の行いを悔いているのだろうか。


「わかっただろう、お前たち。なのはがどういう思いで教導を行っていたのかを。」
「「「はい………」」」
「あのさ、衛宮、ちょっといいか?」
「なんだ?」
「お前、知ってるような口ぶりだったけど、誰かに聞いたのか?」
「ああ。なのは本人に、な。」
「そうだったんですか……それで……」
「いや、それだけではないさ。見ていられなかったからな。」
「優しいんだな。衛宮は。」
「優しい、か。少し違うな。」
「そんなことはないですよ。」
「そうか………」


かつて”化け物“と呼ばれた私の事を優しい、とはな。


自分でも気づかぬうちに自嘲的な笑みがこぼれていた。


それに気が付いたものが、一人だけ、いた。



side フェイト



「準備はいい?」
「ああ。」
「サポートはこっちでするから、全力全開で撃ち抜いて!」


槍の穂先に群青色の魔力が集まっていく。なのはがランスに教えた集束砲はなのは自信の最終奥義である『スターライトブレイカー』だ。
魔力値の低いランスはカートリッジと私たちのあげた魔力を使っている。


「いくぜ、スターライトブレイカー!!!!」
[starlight breaker.]



放たれた群青色の光線はガジェットを一機のこらずに殲滅した。


「初めての集束砲でこれだけの威力を出せるなんて………」
「だが、これは、きついな。もうほとんど魔力がねえ。」
「増援もないみたいだし、帰ってしばらく休もう。ランス君は明日の訓練はお休みしようか。」
「ああ。そうさせてもらう。」


ティアナたちの事も心配だし、早めに戻れるといいな………




side なのは




「ええー!?話しちゃったの?」
「す、すみません…………」
「ダメだよ~、人の過去勝手に話しちゃ~」
「口の軽い女はだめだぜ~」
「でも、いずれはばれることだったんだ。それよりさ……シグナム、さっき衛宮となに話してたんだ?」
「ああ、そのことか。奴にヴィータが優しいな、と言った時、奴が何やら遠い目をしていたのでな、気になって聞いたんだ。そうしたら………」
「そうしたら?」
「過去の私はただの人殺しだ。そんな奴に優しいというやつがいるとは思わなかった。と言ったんだ。」


あの事だ………


「なのはさん、どうしました?」
「ううん、なんでもないの。何でも……」
「………お前は知っているんだな、衛宮の過去について……」


シグナムさんは気づいたみたい。顔に出てたのかな………?


「………うん。少しだけど。」
「聞いてもいいだろうか。」
「シグナム姐さん。本人のいないところでそういうのはだめだと思いますよ。」
「そう、だな。すまない。」
「ところで、シャーリー。ティアナは……」
「さっきまでは士郎さんのところにいたみたいですけど、さっき訓練場で見かけましたよ。」
「訓練場か……ありがと。」




…………………………………………………………



「士郎君に、叱られてたの?」


後ろから現れた私に驚いたみたいだけど、すぐに話し始めた。


「少しだけ、昔話をしてもらいました。」
「聞いてもいいかな?」
「はい。………昔、ある少年がいて、夢を追っていたんだそうです。『世界中のみんなを救う』という夢を。少年はその夢のため、何度も何度も死にそうな目にあって、それでも夢を追い続けて、最後にはその夢しか見えなくなって、大切な人たちを見捨てたんだそうです。そして、夢がかなわず、最後の時を迎えた時、その人たちを見捨てたこと、現実を見ていなかったことを後悔した。っていうお話です……」
「そう………」


私が聞いた話と同じ。自分の事だという事を伏せて話したんだろう。



「だから、もっと周りを見て、仲間を頼れって言われました。お前が求めるのは殺すための力じゃない、とも。」
「そう。士郎君の言う様に今は焦らないで仲間を頼ればいいの。ティアナの力は、皆を守るためのものなんだから。」
「………はい。」
「だけど、ティアナの考えてたことも間違ってはいないの。クロスミラージュ、システムリミッター、テストモードリリース。」
[Yes,sir.]
「命令してごらん。モード2って。」
「………モード、2。」
[set up.dagger mode.]


その姿は、少し大きめのダガー。


「これ………」
「ティアナは執務官志望だもんね。ここを出た時のことを考えて用意はしてたんだ。執務官になればどうしても個人戦が多くなるから。」
「………!!」
「クロスもロングも、もう少ししたら教えようと思ってた。だけど、出動は今すぐにでもあると思うから使いこなせてる武器をもっと確実なものにしてあげたかった。だけど、私の教導は地味だからあんまり成果が出てないように思えて苦しかったんだよね。……ごめんね。」
「うっ、ううう…………ごめんなさい。ごめんなさい。」


今は優しくなだめてあげる。この試練はティアナを強くしてくれるだろうから。



side 士郎



「一安心、か。」


なのはによってティアナは今までの行動を反省したようだ。私に言えたことではないが、これからも無茶もするだろう。でも、間違いは起こさない。そう確信できた。



side スバル


「「おはようございます!」」
「うん……おはよう。」


ティアは吹っ切れた顔をしていた。昨日のなのはさんとの会話からあたしも間違っていたことが分かった。これからはティアと一緒に頑張るんだ!


「昨夜はよく眠れた?」
「はい。」



……………………………………



「技術が優れてて、華麗で優秀に戦う魔導士を『エース』って呼ぶでしょ。そのほかにも優秀な魔導士を表す呼び名があるって知ってる?」
「いえ………」
「その人がいればどんな状況でも突破できる。そんな信頼を込めて呼ばれる名前。ストライカー。」


ストライカー………


「なのはね、訓練を始めてすぐのころから言ってた。うちの四人は一流のストライカーになれるって。だからうんと厳しく、だけど大切に育てるんだ、って。」



なのはさんはそんなことを考えてくれてたんだ。ストライカー……あたしもなるんだ!一流のストライカーに!!



side なのは



「しっかし、教官ってのもな、一っ番手のかかる時期に面倒見ても、教導が終わればみんな自分の道を行っちまうからなぁ。」
「確かにさびしいけど、一緒にいられる期間が短いからこそ、できる限りのことを教えてあげたいんだ。」
「「「「おはようございまーす!!」」」」


なにがあっても、誰が来ても、この子たちは落とさせない。一緒にいる間はもちろん、いつかそれぞれの空を飛ぶようになっても………


「さあ、今日も一日頑張るよー!!」
「「「「はい!」」」」


私はそのためにここにいるのだから。 
 

 
後書き
ようやく完成しました。


9話に修正入れました。


次はほのぼの?になるのかな?


それでは~

 
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