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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico?-Aそれは愉快痛快で~Cheerful chivalrous thief~

†††Sideアリサ†††

ミッドでも日本でも歳が明けての1月9日。あたし達チーム海鳴は医務局の病棟区に来てる。

「なのは。リンゴ剥こうか? あ、他のにする?」

「にゃはは。ありがとう、フェイトちゃん。それじゃ・・・リンゴ、貰おうかな」

そう。なのはがつい先日意識を取り戻して、集中治療室から一般病棟の個室に移動、親族以外の面会も一昨日OKになった。とは言っても負ったダメージは酷いから、ベッドからまだ下りられないし、それ以前に自分の手もまともに動かせない。今も首だけを動かしてあたし達を見てる。

「うんっ。ちょっと待っててね」

「ありがとう」

フェイトがリンゴの皮を剥き始める。なのはは「ごめんね、シャルちゃん。お誕生日、お祝い出来なかった」って謝った。今年のシャルのバースデーパーティは開催しなかった。シャルも、なのはが大変な時にそんな気分じゃないって言って、自分から開かなかった。もちろんクリスマスパーティもやんなかったわ。

「ううん。なのはがこうして目を覚ましてくれたのが、わたしにとっての最大のプレゼントだよ♪ 今は他のことより、なのは自身のことを考えようね?」

「あー、うん、そうだね・・・」

ベッド脇にあるナイトテーブルに置かれた、あたし達5年4組のクラスメイトからの寄せ書きや千羽鶴を見たなのはは目を細めて、「私、頑張るね」そう言って弱々しい笑顔を浮かべた。なのはが完全に歩けるようになるまでは半年以上のリハビリが要るって、なのはの担当医が言ってた。車椅子でならもっと早く学校に通えるようになるらしいけど、局の仕事への復帰に関したらそれ以上になるかもしれないって。

「リハビリをちゃんとやって、またチーム海鳴としてみんなと一緒にお仕事をしたいから」

あたし達も同じ思いだから「うんっ」頷き合った。その後はクラスメイトからのビデオメールを観たり、学校で起こった出来事などを話したりしてたんだけど、「そう言えば、フェイトちゃん、アリシアちゃん」なのはが2人の名前を呼んだ瞬間、フェイトとアリシア、それにあたし達もビクっと肩を震わせる。これからどんな話題がなのはの口から出るのか予想が付いたから。

「えっと、もしかして・・・試験・・・」

「うぅ・・・」

「フェイトと揃って落ちちゃった・・・」

ズーンと肩を落とすフェイトとアリシア。1年に2回ある執務官・補佐試験を受けた2人だったけど、見事に不合格の印を押された。なのはは「ごめん。私の所為もあるよね・・・」そう一言謝った。

「ち、ちがうよなのは! なのはの所為じゃないよ!」

フェイトが椅子から立ち上がって反論すると、アリシアも「そうだよっ! 単純に難しかっただけだから!」続く。あたし達も結果発表が出る前から、ダメかも、って言われてた。クロノやシャルからも、すごい難しい試験だった聞いてたんだけど、でもまさかアリシアはともかくとしてフェイトまで不合格するなんて思いもしなかったわ。

「うぅ、ごめんねシャル、あんなに試験勉強を手伝ってもらってたのに・・・」

「まぁ、わたしも運良く合格できた感があるし。また半年後の試験に備えて頑張ろうね」

「ありがと~」

「あのクロノでさえも1回落ちてる程の難試験が執務官試験。1発合格できたのって指で数えるほどだよ。知ってる名前じゃリアンシェルト少将だったかな。ま、そんなだから落ち込んじゃダメ。この1回の不合格を、次の試験のための糧にする。オーケー?」

「「うん」」

シャルがアリシアを後ろから抱きしめて頭を撫でながら、フェイトにもフォローを入れた。あたし達はそんな2人に「頑張って!」応援の声を掛ける。と、「あー、もう時間だわ」あたしはあたしで仕事があるからここで離脱になっちゃうわね。

「あ、そっか~。いってらっしゃい、アリサちゃん」

あたしにそう挨拶してくれたなのはに続いて「いってらっしゃい」すずか達もしてくれてると、「じゃあ俺もそろそろ行くよ。またな、なのは」ルシルもそう言って席を立った。

「うん。ありがとう。ルシル君もいってらっしゃい」

「気を付けてな、ルシル君」

「ああ、いってきます」

なのは達に見送られながらあたしとルシルは病室から出て、それぞれの仕事場へ向かうために廊下を歩く。あたしは隣を歩くルシルに「やっぱりなのは、エイルでの完治は拒否ったわね」話しかけた。

「なんとなくそう言われると思ってた」

「あたしもよ。変なところで頑固だからあの子」

今はまだ出来ないけど、今よりもう少し回復したら治癒魔法による治療も行えるって担当医から許可が出たけど、なのははそれを断った。

――この怪我は、私が未熟だったから負っちゃったものだから。それを治癒魔法で治しちゃうと意味のないものになっちゃいそうで、また繰り返しちゃったりしちゃいそうで・・・。だから使うつもりはないよ。どんなにリハビリが辛くても、私は私の力で回復したいんだ――

その揺るぎそうにない決意にあたし達は頷くしかなかった。だからあたし達に出来ることは、なのは自身を信じること。なのはが復帰するまでの間、あたし達はあの子のために全力でサポートする。なのはもそれは許してくれたしね。

「まったくだ」

「あんたもよ、ルシル。あんたもあんたで一切弱音を吐かないし。いつか潰されちゃいそうで怖いのよ」

クイント准陸尉の葬儀の時にスバルから食らった罵声が効いてる。それに、あれ以降ルシルは学校を休んでまで仕事を入れるようになった。しかも、どれも体も心も削れるほどに忙しい内務調査部の仕事や研修ばかり。

「ありがとな、アリサ」

「ええい、頭を撫でるな! あんたは、はやてかシャルの頭を撫でてりゃ良いのよ!」

顔が熱くなるを自覚して、大慌てで首を振るってルシルの手を払い除ける。ルシルは「あっはっは!」大笑いして、脚を止めたあたしの前に1歩2歩と出た。そして「ありがとう」振り向いたルシルは、久しぶりに笑顔を見せてくれた。葬儀以前に普通に見せてくれてた、心からの笑顔を。

「・・・馬鹿ね。その笑顔をあたしに向けないで、あんたを想い慕うあの2人に向けなさいよ」

「・・・努力はするよ。じゃあ、俺は調査部オフィスに向かうからここで。今日はデスクワークだから、何かあれば連絡をくれ」

「りょーかいっ♪」

あたしはミッドに降りるために次元港へ、ルシルはエレベーターホールへ。あたしとルシルは拳をコツンと打ち合って、「頑張ろう!」お互いに応援する。それであたし達は分かれて、次元港に停泊中のミッド北部行き次元航行船に搭乗する。そう間もなく出発時間になって、船は一路ミッドへ。

(ニュース、ニュースっと)

到着までの間に、ミッド全域や他の管理世界で起こってる事件・事故のニュースを閲覧する。どこもかしこも犯罪、犯罪、犯罪のオンパレード。まったく、参るわね。そんな滅入るニュースの中で「ん?」気になった記事を見つけた。

「犯罪組織や犯罪者個人から金品を奪って、募金する義賊が登場・・・?」

なかなか面白い奴が居るものね、次元世界にも。詳細を見れば、サーチャーやカメラに映っていながらも何故か記録されず、肉眼で直視した局員や目撃者の供述もてんでバラバラ。局や有識者の見解じゃ、かなりランクの高い幻術使いだってことらしい。

「ふ~ん。ま、管理局のお膝元のミッドチルダには近寄ろうとしないところを見ると、所詮はそこまでの実力者ってところね」

ミッドから離れた管理世界にばかりに出没してる義賊、通称ファントム。でもちょーっと会ってみたいわよね。幻術使いなんてこれまで戦ったことないから、いつかのためになりそうな気がする。とまぁ、時間も忘れてファントムに関する面白い記事を読んで、気が付けば次元港に到着してた。

「さてと。行きますか!」

あたしが所属するミッド北部ミラ地方を担当する第211部隊の隊舎へは、次元港と隣接してる快速レールウェイ(地球じゃ鉄道って呼ばれる物ね)を使って20分。というわけで、次元港ロビーからレールウェイのホームへ向かってる途中、「アリサ!」背中に声を掛けられた。

「クラリス! あんたもこれからなの?」

「そうだよ。一緒に行こう」

あたしに声を掛けて来たのは同じ211陸士部隊の隊員で、陸士訓練校でペアでもあった、古代ベルカ式の騎士のクラリス・ド・グレーテル・ヴィルシュテッター。シャルやルミナ、セレス達みたいに局と聖王教会の両方に籍を置いてる。魔導師ランクはAAA+と、かなり高い。
雪のように真っ白なセミロングの髪(以前はショートだったけど伸ばしたのね)に、アップルグリーンの瞳。階級は、あたし達チーム海鳴の子供組と同じ陸士の二等。あたしも一応は空を飛べるし、ある程度の空戦も出来るけど、取得したのは空士じゃなくて陸士階級だ。陸戦の方が気が楽なのよね。

「そういや今日もデスクワークだっけ」

車両に乗り込んで、空いてる席にあたしとクラリスは並んで座る。そして走り出す車両の窓から景色を眺めながら今日の仕事を話題にして話しかけた。

「うん。北部には聖王教会があることもあって犯罪率が他の地方に比べて低いから。基本的に北部の、特にザンクト・オルフェンに近い区を担当する陸士部隊は大抵暇なんだよ」

「でももし起きた時はかなり悪質で、大きな事件なのよね」

自慢じゃないけどあたしやクラリスのような高ランク魔導師・騎士が、そんなド暇な陸士隊に配属された理由がそれ。

「聖王教会のお膝元で事件を起こすような奴は馬鹿か蛮勇のどちらかだからね」

北部と言ってもベルカ自治領ザンクト・オルフェン以外の土地はミッドチルダの管理下だから、北部で事件を起こしても教会騎士が動くなんてことはない。だけどもし万が一にも騎士たちに追われるようになったらってプレッシャーはあるはず。

「だから普通の神経の持ち主なら事は起こさない」

「起こすのは恐れを知らない蛮勇か、ただの馬鹿か・・・」

それをものともしない奴が起こす犯罪は自然と悪質だったり大きかったりする。そんな犯罪に対抗するためにも、あたし達のような高ランクな戦力が要る。納得もしてるし、クラリスと同じ部隊に配属されたことで、暇な時間は訓練と称して模擬戦をしてるから、あたしとしては結構満足してる。
とまぁ、そんな話をしながらあたし達は目的のステーションに到着。隊舎へは徒歩で5分ちょっと。クラリスと2人で街路を歩いて他の通行人とすれ違ってると、「ん・・・?」今すれ違った男の人に振り返る。

「どうしたのアリサ?」

「いえ、ちょっと・・・」

外見年齢は大体18歳から25歳くらい。身長は170ちょっとかしら。キャップを深く被って素顔がちょっと見えない。白のTシャツ、チェック柄のシャツ、青ジーンズ。背負ってるのは黒のリュックって格好。気になったのは外見とかじゃなくて、あのリュック・・・の中身。

「(この感じ・・・、やっぱりアレよね)クラリス、ちょっと手伝って!」

「タダで?」

「あとでなんか奢るから!」

「なら良いよ」

クラリスは大食いで、気が付けば何かを食べてる。実はさっき逢った時もなんかの串焼きを食べてたし、レールウェイの中でもクッキーを食べてたし、ステーションに着いてすぐに売店で何かを買おうとしてたから止めたばかり。大食いなのは別に構わないのよ。でもね、一番許せないのが、どれだけ食べても太らない、なんていう女の子なら誰もが羨む体質持ちだってこと。って、今はそんなことより・・・。

「今の男の人を追うわよ」

「なんで?」

「感じたのよ。あのリュックの中から・・・神器の力を!」

あたしが持ってる黄金の腕輪型神器・“ドラウプニル”のおかげか、神秘を感じ取れやすくなってる。クラリスは「ジンギ・・・? 仁義?」小首を傾げる。そっか。公にはロストロギアって発表されてるんだっけ。

「ロストロギアよ。リンドヴルムの残してった最低最悪の置き土産」

「っ! 危険な物だってことは良く解った。そういうことならタダで手伝うよ」

クラリスも事の重大さに目をパッチリさせた。尾行術は捜査官研修で一通り学んだから、そうそう気付かれることはないとは思う。とりあえず「クラリスは部隊長に連絡入れて」あたしとクラリスの始業時刻まであと1時間もない。万が一遅刻しても叱られないように事情を伝えておかないと。

「こちらミッド北部ミラ地区・陸士211部隊、アリサ・バニングス二等陸士」

『こんにちは、アリサ。・・・って、この感じ・・・。アリサ。まさか・・・神器関連の連絡だったりする?』

通信した相手は機動一課の分隊長の1人、フィレス一尉(クラナガンの悪夢以降に昇格した)。他の分隊長や部隊長でも良いんだけど、やっぱ親しみがあるフィレス一尉の方が通信しやすい。

「そのまさか、です。神秘を感じたんで連絡しました。現在、同隊のクラリス二等陸士と持ち主らしき人物を尾行中」

「どうも。フィレスさん、お久しぶりです」

『久しぶり、クラリス。それでアリサ、神器がどう言った物かは・・・?』

「視認できてません。でも感じたんです」

『・・・うん。とにかく人手を送るから、応援と合流するまでは変に手を出さないこと。万が一気付かれて逃走されそうになった時は、こちらで移動魔法の許可の手配はするから全力で追って』

「「了解!」」

敬礼で応える。モニターが消えて、『一番早く合流できるのはチーム八神ね。チームテスタロッサも遅れて合流予定』念話みたいな脳内通信に切り替えられる。さすがにモニターを引き連れての尾行なんて速攻バレるからね。それにしても応援がはやて達って。シグナムもヴィータも完全復帰してるし、戦力としては十分過ぎるわよね。あたしとクラリス(ドラウプニルが無いから元より戦力外だけど)の出番が無さそうだわ。

『アリサ、クラリス。ターゲットの写真を送って。こちらで身元を照会するわ』

あたしとクラリスは十数m先を歩くターゲットを尾行しつつ、フィレス一尉の指示に従ってターゲットの写真を携帯端末で撮る。でも「顔が撮れないわね・・・」キャップのツバがすんごい邪魔。クラリスも「ビル風でキャップ飛んでくれないかなぁ~」上手く撮れてないみたい。それに尾行中ってこともあって、前に回り込めないし。む~、難しいわね。

『アリサ。ルシリオンだ』

撮影に四苦八苦してるところに『ルシル!?』から通信が入った。聞けばフィレス一尉からあたし達からの報告を受けたって。

『俺も行ければ良いんだが、残念なことに今日中に片付けないといけない書類が・・・』

『??・・・ねえ、あんた、なんか泣いてない?』

『気の所為だろ・・・。だが、どんな神器かは見れば、おそらくその効果も判るはずだ。もし神器だと思う物品を確認したら、すぐに画像を送ってくれ』

『ええ、判ってるわ。頼りにしてるわよ』

『ああ』

ルシルと連絡が取り合える状況がすごい心強い。はやて達もフェイト達も来てくれるし。あとは何事も無く神器を確認できれば良いんだけど。はぁ、って溜息を吐いてると「あ、絡まれた」クラリスがボソッと呟いた。見ればターゲットがガラの悪い連中に喧嘩を売られてた。

「どうする? アリサ」

「どうするって・・・」

あたしとクラリスは局の制服を着てる。そんな中でターゲットとコンタクトするとなると、もう尾行も何もなくなるわ。見て見ぬふりをするか、それとも助けるか。あたしは『フィレス一尉。ごめんなさい!』助ける道を選んだ。この選択が後で酷い結末に繋がるかもしれない。けど・・・

『アリサ。それで良いわ。助けてあげて』

「『っ! ありがとうございます!』クラリス!」

「んっ!」

クラリスと一緒に「やめなさい!」ターゲットに絡んでる3人の男に制止の声を掛けた。男3人は「げっ、管理局員・・・!」慌ててターゲットの胸倉を掴んでる手を離して、えへへ、と愛想笑い浮かべた。

「その男性と何かしらトラブルでもありましたか?」

「い、いいえ、そんな・・・」

「少し肩がぶつかって、ちょっと熱くなっただけなんすよ」

「あの金髪の子・・・、ひょっとして・・・!」

形だけの聴取をしてると、「あ、逃げる」ターゲットが背を向けて走り去ろうとした。追いかけようにも「あ、やっぱり!」チンピラその3があたしを指差した。

「チーム・ウミナリのアリサ・バニングスちゃん! 俺、ファンなんです! 性格キツそうな目も良いし、声も良いし、魔導師なのに騎士みたいな戦いするのもカッコいいし! 炎熱っていうのがカッコよさに拍車を掛けてるよね! マジ夢みたいだ! 生きてて良かった・・・!」

「ど、どうも・・・」

子供のように目を輝かせたチンピラその3があたしの両手を取ってブンブン振ってきた。ファンって言われて嬉しい思いもあるけど今は「じゃなくて! クラリス、追って!」ターゲットがものすごい速さで走ってく。

「ん。判った」

「ねえ! サインくれないかな! 書く物、紙はっと・・・」

「あの、仕事中だから後にしてくれないかしら・・・」

「後って。こんな機会もう無いからダメでしょ!」

「いやだから急いでんの! これ以上邪魔したら公務執行妨害よ!」

「うっひょ~! その声で怒られるとやっぱりすげぇ良い! ゾクッてした、ゾクッて!」

恍惚とした表情を浮かべたソイツの様子に「うぇ・・・」総毛立って、気持ち悪さにかなり引いた。だから「離しなさい!」って怒ると、「もっと怒って、罵って!」なんて言われた。どうしよう、あたし・・・もうこのまま気絶しちゃってもいいかしら。今はこの気持ち悪い現実から逃げ出したいわ。

「す、すいません! こいつ、ちょっと性癖が変なんで!」

「こいつは俺たちがなんとかしますから行ってください!」

「お、おい!? まだサインも貰ってないし、罵られたりないんだ!」

チンピラその1とチンピラその2が気持ち悪いその3を羽交い締めして、あたしから引き離してくれた。

「ありがと! ご協力感謝します! でも喧嘩を吹っ掛けるような真似は控えるように!」

「「はいっ! ご迷惑をおかけしました!!」」

「アリサちゃ~~ん!」

チンピラ3人を置いてクラリスの後を追い掛け始めたら、『ごめん。見失った』クラリスから報告が入った。フィレス一尉からも『身元照明も出来なかったわ』っていう悪い知らせが入った。そして息を切らしてたクラリスと合流を果たす。

「ごめん。足の速さには自信あったけど・・・。人ごみに紛れ込まれて・・・」

「そう。しょうがないわ。あたしもあたしで変なのに絡まれたからね」

本気で落ち込むクラリスを慰める。とりあえずはやて達に連絡を取ろうとしたその時、頭上からマシンガンのような銃弾を連射するような銃声、窓ガラスが割れる音、怒声などが聞こえてきた。振り返った先には20階建てのビルがあって、破片が舞ってるのは4階辺り。

「「っ!?」」

窓ガラスが割れたおかげか「なんだコラ!」とか「逃げんな!」とか「どこの組のもんだ!」とか、銃声に紛れて怒声が続く。明らかに異常事態。だから「フレイムアイズ!」あたしと、「シュトルムシュタール!」クラリスは、待機モードのデバイスを手に取る。

「「セットアップ!」」

そして変身。あたしはファルシオンフォームの“フレイムアイズ”を携える。“ドラウプニル”を付けるかどうか迷うけど、神器に関係ない事件だった場合のことを考えて付けないことを選んだ。

「騎士甲冑、装着完了っと」

クラリスの騎士甲冑は、上は詰襟のネックカバー、厚手のノースリーブブラウス、カフスの付いたアームカバー、そしてグローブ。腰には2本のカートリッジベルトがあって、合計40発くらいある。下はスリットが深いミニタイトスカート、タイツ、そしてロングブーツ・・・と言った感じね。

「きゃぁぁぁぁ!」

「何が起きてる!?」

「この銃声・・・、質量兵器!?」

「逃げろ! 撃たれたら一巻の終わりだぞ!」

民間人は悲鳴を上げて、何かが起きてるビルから離れてく。あたしは「管理局です! 今すぐこの場から避難してください!」大声で避難をするように伝える。民間人は少し混乱しながらも、ビルから降り注いで来る窓ガラスの破片で怪我しないように頭を護りながら離れて行ってくれる。

「屋内戦は嫌だな」

クラリスは自身の身長(150cmちょっとくらいかしら)を優に超える長さを誇るカートリッジシステム搭載の方天戟型アームドデバイス・“シュトルムシュタール”を肩に担いだ。刺突用の穂先の左右には三日月の形をした刃(クラリスは月牙って呼んでる)が2つ付いてる。
あと石突には、鬼の金棒のような、六角柱に鋲がズラリと並んだ棍棒もある。その全体的な重量は15kgだって聞いたわ。だからクラリスは圧倒的な攻撃力を得る代わりに機動力が低い。ま、それをカバーする術もある。それが、今から見ることの出来る手段だ。

「文句は言わない! 念のために相棒を召喚しておきなさい!」

「ん! 汝は遥かなる陸を疾駆する者。地を揺るがすは馬蹄、空を震わすは轟鳴。行く手は苛烈なる戦火、過ぎ去るは打ち斃せし亡者の群れ。汝が主の命に応じ、いざ参れ! アレクサンドロス!」

あたしとクラリスの間に展開されるのは、召喚魔法陣って呼ばれる正方形をした魔法陣で、眩い薔薇色の魔力光を放ってる。そんな魔法陣から召喚されたのは1頭の艶やかな黒い毛並みをした馬・・・なんだけど、あたしが知ってる馬より一回り以上近く大きな体を誇ってる。初めて見た時は圧倒されて近付けなかった。

「よく来てくれたね」

クラリスがアレクサンドロスの体を撫でると、一鳴きしたアレクサンドロスが四肢を曲げて伏せた。クラリスが「よっこらせ」って馬上に乗るとまた立ち上って、大きく鳴きながらバイクのウィリーのように両前脚を上げた。まるでナポレオンのあの肖像画みたい。
とまぁ、この巨大馬アレクサンドロスや、他にも巨大狼や巨大鳥と言った使い魔が、クラリスの機動力をサポートするのよね。しかも全てが防御・補助魔法を使える。そういうこともあって、クラリスは次世代の騎兵騎士――レイター・パラディンって噂されてる。

「じゃあ、クラリスはここで待ってて! あたしが様子を見てくるから!」

両脚に魔力を込めたうえで両膝を曲げて、「よっと!」一気に問題の階へ跳んだその直後、「っ!?」何かが割れた窓から飛び出して来て・・・

「うごふ・・・!?」

「ひゃっはっはー!・・・あ? こりゃ失敬!」

タックルをまともに食らった。そんであたしとソレは揃って地上へ落ちる。その最中、あたしはソレを真正面から見た。まず最初に思ったのはピエロだった。真っ赤で大きなまん丸な鼻、真っ赤な分厚い唇、光マークがペイントされた目、頬にはハートとクラブ、額にはスペード、顎にはダイヤのペイント。彫りが深いそれは肉の顔じゃなくて仮面の物だわ。

「アリサ!」

「いっつぅ~・・・! ちょっとそこのピエロ! あの部屋で何をしていたのか聴かせてもらうわよ!」

なんとか着地に成功したあたしは、サンタクロースのような真っ白な袋を肩に担いだ、上下とも真っ赤なスーツを着てるピエロに“フレイムアイズ”の剣先を突き付ける。と、「ピエロ? どう見ても狼の被り物だけど」クラリスがそんなことを言いだす。どう見ても、って。あんたの目は節穴なの?って疑いたくなるわ。

「いやいやいや。ピエロでしょ! 真っ赤なスーツ着た!」

「ううん。狼の被り物を被った、スウェット姿だよ・・・!」

「はぁ? そんな馬鹿なこと・・・(ん? この感じ・・・)」

ついさっき観たニュースの事を思い出した。目撃情報の供述がバラバラ。そしてそのピエロからビシビシと感じ取れる神秘。局や有識者の見解は、高ランクの幻術使いってことだったけど。ううん、それは違うわ。これはきっと「神器の能力・・・!」に違いない。

「あんたが・・・義賊ファントム・・・!」

目の前に立つソイツこそが、犯罪組織や犯罪者から金品を巻き上げるっていう例の犯罪者だって判った。

「おっほっほ♪ そうとも、そうとも! 可愛い、可愛い、ツンデレ風味なロリッ子ちゃん❤」

「あ゛?」

そんな失礼なことを言ったかと思えばピエロは右手を差し出してきた。握手かと思って左手を差し伸べてようかなって動かしたその時、「ナイス♪ ちっぱい♪」ソイツはあたしの胸に手を当てて、もう片方の手の親指をグッと立てた。
 
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