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クラディールに憑依しました 外伝

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もう一人増えました

「おやおや、警告が出てしまったようだな、これは仕方ない。後は黒鉄宮に送るだけだ、では達者でな」

「――――おい」


 白いメイドにチョップを食らわす。


「あふ!?」

「今、本気で転送しようとしたよな?」

「わ、わたしは君との時間を得たいだけなんだ、この二人となら、もう行く所まで行ったのだろうッ!?

 それなら今度はわたし達の番じゃないかッ! 少しぐらい黒鉄宮に放り込んだって良いではないかッ!!」

「――――おい」


 続けて二度目のチョップを落とす。


「あふんッ!?」

「おい、リアル幼女、今お前が小学校何年生なのか言ってみろ」

「えっと、リアルタイムの換算だと…………四月に六年せ――――――違うッ!! わたしはNPCだッ!! 正真正銘だ!」

「はいはい、幼女乙、耳年増な幼女に言って置くが、俺はそこの二人とはそう言う仲ではない。アインクラッドの攻略で手一杯だ」

「…………本気で?」

「嘘吐いてどうする?」

「…………もしかして、男の人が好きなのか!? こんな可愛い子達にまったく手を出さないなん――――痛いッ!?」


 三度目のチョップが落ちる。


「おいおい、幼女、俺に不快な思いをさせに来たんなら、ご退場願おうか?」

「い、いや、待ってくれ! わたしはただ一般論を…………」

「攻略で手一杯だと言ったよな?」

「でも、それだと…………わたしは、わたしは……………………構っては貰えないのだろうか?」


 上目遣いで『わたしは邪魔なのだろうか?』と訴えてきた。


「焦るな、時間なら後でゆっくりと作ってやる。

 此処をカフェテリアにしたいんだろ? 早速一杯入れてくれ、最初の客は俺たちだ」

「そ、そうなのか、本当だな? 後でだぞ? 約束だからな。

 ――――では、お茶の準備をしよう」


 こいつ、何事も無かったようにし切り直しやがった。

 硬直するシリカとリズを放置して、白いメイドはカウンターの奥に消えて行った。


「………………あのNPCは一体なんなの?」

「とあるクエストをクリアしたとしか言えないな」

「あんたが受けたクエストって言うなら、かなり特殊な奴よね?」

「――――まぁ、特殊といえばかなり特殊だな、複数のクエストをクリアして次の階層に行く時だったんだが、

 マップ上でとある一角に行った事のない空白が生まれていた。

 俺はそこがどうしても気になってな、調べて見たら専用クエストが始まっていた。。

 到達した俺しかクリアできないイベントの内容で、俺はアイツ等に一切接触してなければ顔を会わせてもいない筈だった」

「――――それが何で恩返しで押しかけて来てるの? かなり変よ?」

「恐らくだが他の関係者に俺の存在を聞いて自分で調べ回ったんだろう、それ以外思い付かないな」

「そこら辺をもう少し詳しく話せないの?」

「あまり詳しく話すと次のイベントがどうなるか判らないからな、話せる時になったら話す」

「絶対よ?」

「ああ」


 話が終わったところで、真剣な表情でシリカが話しかけてきた。


「あの、クラディールさん。さっきの警告なんですけど、

 絶対おかしいです! やっぱり、絶対プレイヤーですよ!」

「…………そう見えたか?」

「はい! あの警告、NPCに接触した時に出る物と一緒でしたけど、警告が出るまでの時間がおかしいです!」

「実際に検証したのか?」

「アルゴさんに付添って、他の人がNPCに触る所を見たんです! 間違いありません!」


 何かムキになってないか? 妙に顔が赤いし、怒っている様にも見える。


「姉ちゃんただいまー」


 勝手口のドアを開けて黒いメイドの女の子が入って来た。


「あれ? 姉ちゃんは?」

「奥でお茶の準備をしてるぞ?」


 俺が声を掛けると黒いメイドの子と目が合った。

 黒いメイドの子が俺に微笑む。


「そっか、自己紹介は終わった?」

「まだだな」

「じゃあ、姉ちゃんが来てから一緒にするね」


 ニコニコと笑いながら黒いメイドの子は人差し指をスライドさせるとメニューから真っ黒で巨大な角材を取り出した。

 長さは軽く三メートルに届く、横幅は黒いメイドの子よりも太い。

 それを片手で抓る様に持ち上げていた、真横に、鷲掴みでだ。


「長さはこれくらいかな?」


 続けて取り出した黒の片手剣で角材を一メートルちょいの長さに切断した。

 床にゴトリと落ちた角材を確認したところで、鷲掴みしていた角材が消えた、どうやら残った角材はメニューに戻したようだ。


「さて、一斉の――――セっ!」


 足元に転がった角材を軽々と蹴り上げ、空中に浮かせると、

 黒の片手剣が瞬く様に残像を残し、角材を削り取るように動いた。

 剣先がブレて見える、あまりの速さに処理が追い着いていないな。


 カランカラン!


「よし!」


 黒いメイドの子が散らばった角材をしゃがんで集め始めると、次々と繋ぎ合わせて黒い椅子を三つ完成させた。


「うん、ばっちり!」


《immotal object》 破壊不能オブジェクト。


 今思い出したかのように、黒い椅子の周りに二十枚を超える警告が表示される。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよッ!? 今、とんでもない事をッ!?」

「い、今、破壊不能オブジェクトって、出てましたよねッ!?


 あまりにも非常識な光景にシリカとリズが騒ぎ出した。


「中々でしょ? 最初は亀裂が入るか粉砕するかしか出来なくてさ、一瞬で切り刻んで組み立てるまでが苦労したよ~」


 黒いメイドの子が、椅子の背凭れに手を乗せて『えへへー』っと満足げに笑う。


「…………この店の家具は殆ど手作りか?」

「うん。お気に入りのはいくつか買ってきたけど、まだ上の階層が解放されてないし、無いのはボクの自作だよ、凄いでしょ?」

「よく俺がこの家を買うと解ったな? 別の家を選んでたらどうする心算だったんだ?」

「ん? 何言ってるの? もちろんこの家に入金されてから一式揃えたんだよ?

 前の家も良かったけど、やっぱりお店を開けるほうがいいよね」


 ――――――あぁ、こいつら加速して家具一式揃えやがったな。 
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