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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico?-A銃士と挑戦者~The Crisis of Aces~

†††Sideヴィータ†††

はやてが特捜課としての仕事が休みん時は、あたしら騎士は武装隊員として仕事することになってる。んで今日は、あたしとシグナム、あとセレスが所属してる第2212航空隊と、戦技教導隊に入るために武装隊に所属してるなのはが居る1018航空隊が共同演習することになったから、ミッドの北西部・アンクレス地方の演習場にこれから行く予定だ。
そいうわけで今は、アンクレス地方への定期便が出港するまでの残り1時間半の暇を、ドクターの申し出でスカラボで過ごすことになった。メンバーはあたしとシグナムとなのは、そんでリインとアイリの5人。応接室のソファに座って、ウーノが淹れてくれたお茶と作ってくれたクッキーを美味しく頂いてる。

「今日の演習、ぜってぇ負けねぇかんな」

「うん。私だって負けないよ!」

「ヴィータはなのはのことになると、シグナムみたいにバトルマニアになっちゃうよね」

「ですぅ♪」

「おいおい、シグナムの末期症状と一緒にすんなよ」

「待て。私のどこが末期だ?」

「強ぇ奴が居ればすぐに剣を交えたいって考えるお前のバトルマニア病は正に末期だろうがよ」

シグナムにそう言うけど、実はなのはとの勝負になると、どうもいつも負けず嫌いになっちまうんだよなぁ、あたしもさ。“闇の書”事件の一件が理由だろうけど。なんつうか一番のライバルって言うか、負けたくねぇ相手って言うか、あたしを強くしてくれるって言うか、コイツとの模擬戦は楽しいんだよな。ま、そんなこと口が裂けても言えねぇけど。

「えっと、シグナムさん。それにリインとアイリも、今日はお願いします」

「ああ。こちらこそだ」

「はいですよ♪」

「うんっ」

なのはからの挨拶に、あたしに睨みを利かせてお茶を呑む手を止めてたシグナムが小さくフッと微笑んだ。そんでリインもアイリもクッキーを頬張りながら返事をした。

「やぁやぁ。話の花を咲かしているようだね」

そう言いながら応接室にやって来たのはスカラボの主であるジェイル・スカリエッティ少将。見るからにマッドなサイエンティストっぽいが、技術者としての腕は次元世界一だって言われてる。その技術力を買おうとすれば、最低価格で1千万オーバー。あたしらはシャルのコネのおかげでタダで、あたしらのデバイスはかなりハイスペックになった。

「お茶のお代わりはいかがですか?」

それに続いてスカリエッティ家・長女で秘書、あと二等陸尉の階級を持ってるウーノがワゴンを運んで来て、ティーポットを持って微笑んた。あたしとリインとアイリ、そんでなのはは「頂きます」お代わりを貰って、シグナムは「私はもう結構です。ご馳走様でした」断った。

「すまないね君たち。これから客人が来るんだ。応接室を使わせてもらうよ」

「あ、じゃあ私たちはこれで・・・」

「だな。邪魔するわけにはいかねぇし」

客が来るなら邪魔しちゃいけねぇって思ったからあたしらは席を立とうとしたんだけど、「あぁ、構わないよそのままで」そう言ったドクターがなのはの肩に手を置いた。すると「コホン。ドクター」ウーノが咳払い。

「・・・・。なのは君」

「あ、はい」

「私は君の肩に手を置いている」

「はあ・・・」

「これは・・・セクハラかい?」

ドクターが脂汗を掻きながらなのはにそう訊いた。なのははドクターの顔と自分の肩に置かれた手を交互に見る。そんでなのはは少し考えた後、「いいえ。嫌な思いはしてないですし、ひょっとしたら頭が良くなるかも、なんて思います」ニコって笑った。

「よぉしっ! 聞いたかいウーノ! なのは君は気にしないと言ってくれたぞ! しかも、すずか君と同じことを言ってくれた!」

「すずかさん、ですか・・・?」

「そうなんだよ、リイン君。すずか君もね、私に触れられると頭が良くなったりするんじゃないか、と嬉しい事を言ってくれてね」

嬉しそうに笑うドクターの横で「実際には頭は良くなりませんが」ウーノがポツリと呟いたら、「水を差さないでくれたまえよ」ドクターはがっくりと肩を落とした。そこに、ビィーっとインターホンが鳴って『ゲンヤ・ナカジマ一等陸尉です』ドクターの言う客―――ナカジマ一尉の声がした。

「どうぞ。開いております」

ウーノが応じるとスライドドアが開いて、「お? 嬢ちゃん達・・・」一尉と目が合った。あたしらは席を立ってビシッと敬礼。仮にも上官だかんな。敬語だってちゃんと使うさ。ま、ドクターやシスターズにはもう敬語もなんもねぇけどな。一尉はあたしらの敬礼に「おう」敬礼を返してくれた。

「ギンガ、スバル。嬢ちゃん達に挨拶だ」

一尉の側にはギンガとスバルが居た。最後に会ったのはクイント准陸尉の葬式以来だから、かれこれ2ヵ月ぶりくらいか。

「「こんにちは」」

「あ、はい。こんにちは」

「おう。こんにちは」「ああ。こんにちは」

「こんにちはですぅ」

お辞儀をしての挨拶をくれた2人にあたしらも挨拶を返す。けどアイリだけは挨拶せずに、一尉たちに気付かれないようにスバルを睨んでた。アイリはあの一件以降、スバルを目の仇にしてるからなぁ。ここで暴走しないだけ大人だ。

「じゃあ、俺はいつも通りここで待ってるから、スカリエッティ少将たちの言うことを聴いて、ちゃんと良い子で居るんだぞ」

「はい」「うん」

「では参りましょうか。ドクター」

「うむ。それではナカジマ一尉、待っていてくれたまえ。なのは君たちもゆっくりして行きたまえ」

そんでドクターとウーノは、ギンガとスバルを伴って奥の部屋に入って行って、入れ代わりに「こんにちは、みなさん」次女のドゥーエがまた別のキャスター付きのワゴンを運んで来た。乗せられてるのはティーカップ3客。それと新しいクッキーが山盛りのお皿が1枚。一尉たちの分だな。ドゥーエは一尉のお茶の用意をして「何かご用があれば呼んでください」また奥の部屋に戻って行った。

「・・・。良い機会だ。なあ、嬢ちゃん達。坊主の様子はどうだ? あれから嬢ちゃん達チーム海鳴とは会えなくてな。アリサ嬢ちゃんもあれを節目に別の隊に異動しちまったし。ま、俺が108部隊の隊長になったら引き抜くつもりだけどな。って、その話は今は関係ねぇな。俺ぁ、坊主のあれからを知りたかったんだ」

お茶を啜った一尉からの質問。あたしらは顔を見合わせて、頷き合った。まずは「家じゃまぁ、普段通りに過ごしてるかな」あたしら家族が、家でのアイツの様子を話し始めた。

「ちゃんと喜怒哀楽の感情は生きてはいます。しかし・・・」

「しかしあの事件以降、ルシル君の喜と楽はどこかぎこちないですぅ・・・」

「こう言っちゃなんだけど~。お葬式でのあの子の言葉が一番の原因だと思うんだけどね」

アイリがムスッとした顔でそう言うもんだから、「アイリ!」あたしは頭を叩き、シグナムは肩を掴んで、リインは両手でアイツの口を押えた。

「良いんだよ嬢ちゃん。・・・そうだよな。すまねぇな。ありゃ酷かったよな~」

一尉が右手で顔を覆って大きく溜息を吐いた。そんで今度はなのはの番だ。学校でのルシルの様子はあたしらは知んねぇかんなぁ~。一体どんな感じなんだろ。

「私も、ルシル君の感情のぎこちなさを感じてます。これまでと同じように学校でも変わらずにちゃんと友達付き合いをしてることはしてますけど・・・。それでもやっぱり以前のように本気で、全力で、笑うことはなくなったと思います」

なのはが言うには、ルシルはクラスメイトとはちゃんと笑顔で話しもしてるし、イベントなんかにも積極的に関わって人気者だって話だ。

「でも、どう見ても明らかに喜と楽の感情を殺してるんです。私も以前は自分を抑えてばかりだったから、ルシル君が感情を抑えてるのがすぐ判りました。もちろんチーム海鳴のみんなだって気付いてます」

ルシルの奴、マジでヘコんでたかんなぁ、スバルのあの言葉に。ありゃあたしも堪えるわ。

「そうかい。俺ぁ、女房の葬儀の後、坊主が入院する病院に行ったんだが。そこで言ったんだよ。女房の死を責任に感じているなら、女房の分まで笑ってやってくれ、ってな。クイントは坊主のことが本当に気に入っててな。絶対にそう言うと思ってんだ。だが、そうだよな。そう簡単には割り切れねぇよな」

目頭を揉む一尉はまた大きな溜息を吐いた。そんで「にしてもな。坊主は本局の中でも強い方なんだろ? 相手はどんな奴だったんだ?」ルシルを重体にした相手のことを訊いてきた。

「広域指名手配犯レーゼフェア・ブリュンヒルデ。そして新たに手配されるフィヨルツェン・ブリュンヒルデ。同じく指名手配された、融合騎アギト。この3名がルシリオンを撃墜したと思われます」

“エヴェストルム”に残されてた僅かな記録映像。その1シーンが静画としてテーブル上のモニターに映し出された。映っているのは3人の女。1人はレーゼフェア。そしてフィヨルツェンだ。共にルシルやオーディンがその存在意義っていう“エグリゴリ”のメンバーだ。そんでもう1人の小せぇ子供が居る。中でも驚いたのがその子供、アギトの存在だった。アイツが向こう側に居た・・・。

・―・―・回想だぜ・―・―・

ひでぇ怪我だったのにコード・エイルって魔術で完治させたルシルは、葬式の後すぐに検査入院ってことで病院に1泊。その翌日、あたしらは先生からルシルの左目が失明しているのを知らされた。

「ルシル君・・・」

目に涙を湛えたはやてが、ベッドの上に座るルシルの左頬に手を添えた。そんでアイリは「ホントに見えないの?」ボロボロ泣きながら、はやてとは反対の右頬に手を添えた。

「大丈夫だよ。右目はちゃんと生きているから、2人の顔もちゃんと見える。だから泣かないでくれ」

ルシルはどっかぎこちない笑顔ではやてとアイリの頭を撫でると、「うん」袖で涙を拭ったはやて達も微笑み返した。とそこに「しかしお前ほどの騎士を返り討ちにする相手など居るものなのか?」シグナムが唸った。ルシルは無言になって、「それは・・・――」口を開きかけたところで、「こんにちはー」なのは達がやって来た。

「みんな。なんだ、わざわざ来てくれたのか? それにユーノまで! うわ、すごい嬉しいぞ!」

「あはは。お互いに数少ない男友達だからね」

「チーム海鳴の仲間だもん」

「当たり前よ」

「退院祝いのフルーツの詰め合わせ、海鳴市に帰ったら渡すね」

「それにしても。あんだけの怪我を目覚めてすぐに自分の魔法で完治させるなんて、やっぱモンスターだね♪」

「っ!? ア、アリシア! コラ、なんてこと・・・!」

一気に騒然になる病室。ルシルは笑顔を作るんだけど、やっぱぎこちなかった。あたしですら気付けるんだからはやて達もぜってぇ気付いてるんだろうな。

「でもさルシル。あなたをあそこまで痛めつけられるのって、わたしの中じゃ答えは1つしか無いんだけど・・・」

シャルがそう言ったらシグナムも「やはり、か。嫌な予想は当たってほしくはないな」って俯いた。ルシルはベッド側のナイトテーブルの上に敷かれたハンカチに置かれた“指環”に「エヴェストルム。残された記録映像を」そう命令した。
そして展開されたモニターに映る3人に「っ!!」あたしらは絶句した。あたしら八神家は「アギト・・・!?」の姿に驚いて、なのは達は「フィヨルツェンさん!?」の姿に驚いた。するとルシルが「ちょっと待ってくれ、知っているのか!?」って大声を上げた。

「え、あの、フィヨルツェンさんは・・・」

「どこで会った!? いつ! 場所は!?」

いつもの冷静さを欠いたルシルに、「落ち付け!」あたしとシグナムとザフィーラがベッドから落ちそうになるアイツを押さえ付けた。すると「ごめん・・・。ごめん」ルシルは大人しくなって、ベッドの上に座り直してくれた。

「わたしがフォーチュンドロップに使う魔石を採掘しに行ったよね。それにルシルも行ったでしょ、あの遺跡に」

「そこでフィヨルツェンさんに出会って、私たちが危機に陥ったその時に助けてくれたんだ」

アリシアとフェイトが答え、なのはとアリサとすずかが同意するように頷いた。そんで次は「ユーノ。君は一体どこで・・・?」ルシルが訊いた。

「フィヨルツェンさんがエグリゴリ・・・!? そんな・・・。うそだ・・・。だってフィヨルツェンさんは・・・、僕の・・・僕たちの・・・」

ボソボソと呟いてたユーノが俯いていた顔を上げた。血の気が引いて青白い。なのはが「ユーノ君・・・」アイツの腕を掴んで心配そうに顔を覗き込んだ。ユーノは「ありがとう・・・」なのはに礼を言った後、チラッとフェイトとアリシアを見た。その意味が解らねぇのか2人は小首を傾げた。

「・・・ジュエルシードを発掘したのは、僕とセレネとエオスだけじゃないんだ。その場にフィヨルツェンさんも居たんだよ、ルシル」

ジュエルシードって確か・・・なのはとアリサとすずかが魔導師になった切っ掛けになった事件で巡ったロストロギアだったよな。んで、ユーノは続けた。フィヨルツェンとの出会いや一緒に過ごした間のことや別れのことも。そんでフィヨルツェンがユーノ達にとって姉的な立場で、その物腰や強さに憧れてたって。

「・・・この事はセレネとエオスには伏せたい。ごめん。僕はまだ信じられない、信じたくない・・というか。ちょっと混乱してる。2人は僕以上にフィヨルツェンさんが好きだったから、この事については耐えられないと思うから。ごめん・・・」

「いや、こちらこそ辛い思いをさせた」

「ううん。その、ルシル。やっぱりフィヨルツェンさんを救う・・・んだよね」

“エグリゴリ”に対する救いってぇのは厳密に言えば完全破壊だ。ユーノやセレネ達がフィヨルツェンに特別な感情を抱いてたのは話を聴いてりゃすぐに解る。だからこそユーノは苦しそうなんだな。大事な人の死が確実にされちまって・・・。

「すまないな」

重い空気に満たされる病室。なのは達にショックがあったが、あたしらの方にも、アギト、っつうショックな出来事が起きてんだよな。アイリが「ルシル。アギトお姉ちゃん、どうなったの?」そう訊いた。

「レーゼフェアの術式かまたは神器の効果で、ベルカ時代の記憶を失ってしまっているらしいんだ」

「「「「「っ!!」」」」」

敵側に居るってだけでもショックだってぇのに記憶まで無いってあんまり過ぎんだろ。当時のことを知ってるあたしやシグナム、シャマル、ザフィーラ、そんで妹のアイリは絶句だ。ショックがデカ過ぎてなんも言えなくなった。

「ねえ、ルシル。記憶を消せる神器なんてあるの?」

「難しい物じゃないな。俺だって複製術式の中に記憶改編できる複製術式や神器が多々あるし。俺の創世結界や複製能力を封印する能力の方がずっと難しい」

最後の創世結界云々はあたしらも知らなかったから「???」ってなる。ルシルは「奴は、俺の左目を殺すだけじゃ飽き足らず、創世結界と複製能力を封印したんだ」って大きく溜息を吐いた。

・―・―・終わりだ・―・―・

(そっからはまぁ大騒ぎだったよな。左目失明を同時に知ったなのは達もそうだが、ルシルの強みだった複製と創世結界が封印されたってあたしらも知ってさ)

たとえ創世結界の恩恵が無くてもルシルなら大丈夫だろう。複製術式なんて頼らなくても強ぇんだし。けど、“エグリゴリ”が相手となったら絶望的だ。なんとしてもぶつかる前に解呪するっていろいろやってんけど・・・。何とか助けてやりてぇな。

「この2人は強ぇのかい? えらく美人さんだが・・・」

「共に魔力ランクが推定SSSオーバー。正確に言えば測定不能なレベルの魔力持ちです。しかも特殊な力を秘め、魔法や物理攻撃が一切通用しません」

「なっ、なんだいそりゃ!? 坊主はそんな2人とやり合ったって言うのかい!?」

魔法じゃなくて魔術。魔導師じゃなくて魔術師。気が遠くなるようなずっとずっと昔。魔法が誕生する前に存在してた魔力運用技術が魔術だ。そして神秘って言う特殊な“力”を持ってて、魔術師を倒すためにはそれ以上の神秘が必要だってあたしらは聞いてる。すでに経験してるし、確かなことだ。

「自分こそ大変な目に遭っていながら、女房やゼスト隊の死の責任を背負うっていやがるんだ、あの坊主は・・・! くそっ。ガキが背負えるようなもんじゃねぇってぇのによ・・・!」

自分の膝の上に置いてる手を握り拳にした一尉が「坊主の体に異変が起きてるって噂で聞いたんだがよ。それはどうなんだ?」そう訊ねてきた。

「ええ。左目の視力を完全に失っております。さらには固有スキルも封じられていますし。ルシリオンが言うには呪いである、と」

シグナムが苦い表情でそう答えると「呪い? あのオカルトのか? まさかだろ?」一尉は眉を顰めた。普通はそんな反応だろうな。魔法って言ってもそれはもう科学として次元世界に存在してる。だから管理世界の人にとってオカルトは笑い話のネタみたいになってんだけど・・・。あたしらはルシルが苦しんでる姿を実際に見ている以上、全然笑えない。一尉も私たちの様子に「マジか・・・」頭を抱えた。

「治せねぇのかい?」

「手っ取り早く解決するには術者本人を打ち倒すことだって。それにルシルも連中が持ってる特殊な力で解呪する道具を作ってる」

レーゼフェアに掛けられた呪いを解くため、ルシルは半月かけてモノクル型の神器・“森羅万象の眼(プロヴィデンス)”を作った。モノクルなんてかなり珍しい物だから、学校ではすごい人気だったりするってはやてから聞いた。

「そうかい。・・・そんな今の坊主にうちの娘と会わせるのは酷かもしんねぇな」

スバルに、お葬式の時にルシルに言った暴言について謝らせたいって一尉は言った。でもルシルの今の大変さに遠慮気味になっちまった。

「やっぱもうちょい時間空けた方がいいんじゃないかな~」

「もしあの子がまたルシルに暴言吐いたら・・・アイリ、我慢できないよ」

「一尉。スバルの家での様子はどうなのですか? やはりルシリオンに対しては・・・?」

「・・・まぁ、な。ギンガの方は比較的に精神が大人びてることもあって坊主は悪くないってことくらいは解ってるし、スバルにも謝るように言ってくれてるんだがな。スバルはやっぱ年相応にガキだからな。女房が死んだことの原因が坊主にもあるって考えは変わらなくてな」

「もっと大きくなってからの方が良いかなって、私も思います。無理やり会わせてお互いが傷つくのはちょっと・・・」

スバルがルシルのことを少しでも恨んでるなら、ルシルへの謝罪は成り立たないと思う。少し悩む仕草をした後、一尉は「・・・もうしばらく待ってみるわ」小さく頷いた。

「話を聴いてくれてありがとうなお嬢ちゃん達」

「「「「はい」」」」

「・・・」

一尉と話を終えた後、あたしらは時間も良い頃合いになったことでミッドに降りるための次元港へ向かった。

†††Sideヴィータ⇒シグナム†††

私とヴィータが所属する第2212航空隊と、高町が所属する1018航空隊が、ミッドチルダは北西部・アンクレス地方の演習場にて共同演習を行うため、本局からここ北西部の次元港へと降り立った我々を待ち構えていたのは、「なんだ? 随分騒がしいな」騒々しい構内だった。

「何かあったんでしょうか?」

「向こうの構内モニターが特に騒がしいし、ちょっと観に行ってみようぜ」

ヴィータが構内の支柱の1つに設けられたモニター前にたむろしている人だかりへと駆け出し、私とアイリとリイン、高町も続いた。

「おいおい、大丈夫かよ」

「怖いわ・・・」

「最近、物騒になったよな」

「犯罪組織同士の抗争なんだろ?」

「少しは迷惑ってもんを考えてほしいもんだよな、おい」

「これじゃ安心して街も歩けなくなるわね」

「局員に死者も出てるようじゃないか」

「ついこの前にも首都防衛隊が全滅したそうじゃないか」

「ゲイズ中将の、地上の武力強化案っていうのも、やっぱり必要になっていると思うぜ?」

他の客たちの会話に耳を澄ませる。この騒ぎの原因は犯罪組織の抗争によるもので、鎮圧に向かった陸士部隊の隊員から死傷者が出ているらしい。パラディース・ヴェヒターとしてなら何も気にせずに介入が出来るのだが、今の我々は局員だ。そう好き勝手は出来ないのが無念だ。

「ひどいです・・・」

「民間の人にまで被害が・・・」

リインと高町がモニターに映る光景に胸を痛めていた。私も遅れてモニターを観、その凄惨な様子に「惨いな」と私も呻いた。倒れ伏している局員、それに民間人が数人ずつ。それとは別に犯罪組織のメンバーと思われる者たちが血塗れで倒れている。

「ヴィータちゃん、シグナム、なのはさん。リイン達には何も出来ないです?」

「地上の事件は管轄外だ。要請がありゃ手は出せるが、勝手に手は出せねぇよ」

「こういう時は組織っていうのが邪魔になるよね。ベルカの時は問答無用で敵騎士を斃せたのに」

組織に入ることは自由を失うことだ。しかも地上部隊を取り仕切るレジアス・ゲイズ中将は我々が所属する本局を毛嫌いしていると聞く。そんな我々が地上で好き勝手すれば、海と陸の確執がまた大きくなってしまうだろう。

「リイン。残念だけど、私たちに出来ることはないと思う。だからこのまま演習場へ向かおう?」

高町は懸命に助けに行きたい思いを抑え込み、モニターの前から離れると「はいです・・・」リインも続いて離れた。

「こうゆう時にこそパラディース・ヴェヒターに戻りたいって思うよな」

続いてヴィータもモニター前から離れる。そして私も「アイリ。行くぞ」離れようとした時、「ちょっと待って」アイリが呼び止めて来た。距離的に私ひとりが立ち止まり「どうした」と訊ねる。アイリは私に応えることなくモニターを注視しているのみだ。

『――繰り返します。組織間の抗争は熾烈を極め、民間人にも死傷者が出ている模様。鎮圧に当たる第399陸士部隊からもまた死傷者が出ているようです。抗争が始まった直後の市民から伺ったのですが、構成員2名が所有する質量兵器らしき武器から放たれる魔法は、局員や敵対勢力の魔導師の防御魔法をまるで何事も無いように貫通していた、とのことです』

現場から生中継をしているリポーターの女性がそう報告した。まるで何事も無いように貫通。それに引っ掛かりを覚えた。そして、件の構成員2名とやらの姿が映し出された。共に防護服を身に纏い、1人は質量兵器である拳銃を所持。色は全身真っ白。もう1人はロングソードを持っている。剣の腕はあるようだな。隙が少ない。

(・・・あの武器、まさか・・・)

「シグナム。アレ、神器だよ!」

私の考えを言葉にしたアイリ。直感的にあの2人が持つ武器が神器であると判った。おそらく“グレイプニル”を所有し、なおかつ神器持ちと幾度と交戦したからだろう。ただの質量兵器かそうでないかの区別が出来るようになった。

「ヴィータ、高町、リイン! 予定変更だ! 抗争に介入するぞ!」

次元港の出入口へ向かって駆ける。戸惑いを見せるヴィータ達だったが、「神器を確認したんだよね!」アイリがモニターに指差しながら私に付いて来たことで、ヴィータ達も事情を理解して私に続いた。

「こちら特捜課のシグナム! フィレス!」

『あ、シグナムさん。お久しぶりです! どうしましたか?』

機動一課の分隊長・フィレスに通信を繋げる。我々チーム海鳴の神器回収の任は未だに続いている。ゆえに神器回収時、機動一課・臨時特殊作戦班としてその任を全うすることが出来るわけだが、我々が特戦班として活動する場合は、一課の分隊長や部隊長に連絡する必要がある。

「ミッド北西部・アンクレス地方にて神器2種を確認! これより特戦班として回収の任に就きたい!」

『っ! 了解! ちょっと待ってください。アンクレス、アンクレス・・・・あ、コレか!ひょっとして犯罪組織間の抗争ですか!?』

「ああ! 構成員2名が持つ白い銃とロングソードが神器と思われる!」

『えっと・・・、この2人か・・。確かに・・・。判りました! 地上部隊への連絡と次元港から現場までの飛行許可はこちらがしておきます。現着したらそのまま交戦に入ってください。応援としてセレスも向かわせます!』

「了解!」

通信を切り、次元港の外に出た直後、飛行許可が下りたという連絡が我々に入った。市街地での飛行魔法の使用は、建造物や航空機などとの衝突、それに墜落事故を避けるために緊急時以外は許可されていない。しかし許可が下りれば飛ぶことは可能だ。

「聞いての通りだ。現着次第、神器回収の任に就く!」

「「了解です!」」「おう!」「はーい!」

我々は防護服へと変身し、主はやてとのデート直後にルシリオンから渡されていた神器の腕輪・“ドラウプニル”を右手首に装着、そして抗争が起こっている現場へ向かうために空へと上がった。
 
 

 
後書き
ボン・ディア。ボア・タルデ。ボア・ノイテ。
神器回収編・パート2、その前編をお送りしました。パート1ははやてとルシルのデート回ですね。本来の予定であれば、前話と今話との間に林間学校や運動会、約4話を挟む予定だったんですがね。以前のあとがき通りに後回しにします。
次回が対神器戦。その結末とは・・・・
 
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