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学園黙示録ガンサバイバーウォーズ

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第四話

武器を補給して、新たな足となる軍用車であるLMVを手に入れた俺達は進んでいくが<奴ら>とは、それほど遭遇する事はなかった。それは主要道路を避けて走っているからだ。

マイクロバスにいたから分かってはいるが、主要道路は<奴ら>から逃れようと大勢の車と人間であふれかえっているからだ。車のクラクションに人々の怒号と鳴き声に、そしてそんな人たちの避難誘導を行う警官達の声が<奴ら>を引き寄せている。

見てこそいないが、今は<奴ら>は主要道路に集まっていると思う。

でも、橋を渡るには結局は主要道路を通らないといけないわけだし、こんな非常事態であれば警察といった治安機関がそういった一か所に人が集中しやすい所を検問と封鎖が行われているはずだしな。

「下手に突破しようとすると、警察と敵対する羽目になるしな」

「……いくら何でもそれはダメだぞ田中君」

「何回も言うが、俺をなんだと思ってるんだよ」

いくら俺でも警察相手に敵対しようとは思ってないからな毒島。

「今までの行動を思い返してみるんだな」

「それは……」

「確かに……」

小室も宮本も同意するなよ。いや、確かにマイクロバスで生きた人間に対してぶっ放したりしたけど、それは非常手段であって、好き好んで俺も銃は撃ったりはしないけどさ。

お前らの中で俺は、どんなイメージなのか気になるが、聞くだけ聞いてもわかりきった答えしか帰ってこないと思うので返事はしなかった。

「どうすっかな……このまま進んでも検問やら封鎖で交通規制はされてそうだし」

「そうね。こんな事態だから<奴ら>の拡散を出来る限り最小限に食い止めたいと警察は思うはずよ。<奴ら>にかまれた人間も<奴ら>になるし」

「そうだな。それにいくら車内にいるといえ、夜になれば視界が制限されて<奴ら>に襲われる可能性が高くなる」

高城も毒島も理解が早い。それにいい加減に夕陽が沈みかけている。このままでは夜となって行動も制限される。何処か一晩安全に休める場所を探したいんだがな。


「だったらすぐに使える部屋があるわ」

鞠川先生の言葉に皆の視線が集中する。

「カレシの部屋?」

「ち、違うわよ。女の子の友達の部屋だけど、お仕事が忙しいからいつも空港にいるからカギとか預かって空気の入れ替えとかしてるの」

「マンションとかですか?」

「うん見晴らしは良いわよ。それに、この車と同じで戦車みたいなのが置いてあるの!」

どんな友達だよ。まあ、俺もあんまり人の事が言えないけど、それでも軍用車を一個人で所有できるあたりで普通の友達ではないと俺は思う。何度も同じことを言うが、俺もあまり人の事は言えないが。


俺がそう思考の中に入っていた時に宮本が突然「先生。前を見て!ブレーキ!」これを聞いた俺は現実に戻され目の前を見ると<奴ら>ではない普通の人が目の前に現れたのだ。少し反応が遅れれば、引いてしまったかもしれない。

なお、目の前に現れたワイシャツを着た男性は小さい女の子を連れている。

「すいません。安全な場所に連れて行っていください。それがだめなら娘だけでも!!」

運転席の方に来て必死な形相でそう言った。どうやらこの男性は小さい女の子の父親のようだ。ここまで必死になって頼み込んでくるあたり、何処もかしこも断れたことが理解できる。何しろ俺達のグループは、鞠川先生を除いて学生で構成されている。そんなグループに助けを求めるあたりで父親のほうは切羽詰まっているのだろうと理解できたのだ。

だが、俺の一存では決める事は出来ない。小室を含めて全員の意見も聞かないといけないし。

「どうするんだ?」

「確かに人数的にきついけど。小さい女の子もいるし、流石に見捨てるのはまずいと思うし」

「そうね。この子がかわいそうよ」

小室と宮本が助ける事に賛成する。他のメンツも「別にいいよ」といった感じで受け入れた。この異常な世界にさらされて価値がないなら見捨てるという選択までは追い詰められていない感じであった。まだ良識的な思考はあるようだ。

ただ、今でもぎりぎりの人数に加えて予備の銃やら弾薬が後ろに積まれている状況でどうやって残り二人を乗っけるかが問題だな。

「先生。こっから歩いても直ぐにつく距離ですか?」

「ええ大丈夫。歩いても陽が落ちる前につけるわよ」

「なら三人ほど外に出て<奴ら>に備えての監視だ。俺と毒島と平野の三人でだ」

この面子にしたのも近接戦闘で高い水準の毒島に加えて、正確な射撃が出来る平野に、近接も射撃も出来る俺でバランスが取れる構成にしてある。

「異存はないか?」

「問題ない」

「あと少しで着くなら僕もいいよ」


二人は了承してくれた。

「小室。このLMVは上に設置されてるM2重機関銃を車内で遠隔操作して撃つことが出来る。これから操作を教えるから聞いてくれ」

俺は外に出る前に、小室にRWSの操作を説明する。RWSは車内で設置されてる武器を操作できるシステムの事である。冷戦終結後に、国対国による戦争は減りはしたが今度は不定期戦闘が多発するテロ戦争に移行した。特にテロは市街地での戦闘が多い為に、市街地では建物などに身を隠せる場所が多い為に、特に体が露出して脅威度が高い機銃手は狙撃されたり、路肩爆弾等に巻き込まれる可能性が高くなった。

夜戦にも考慮して赤外線も内蔵されており、撃てるようになっている。このデスバレットのLMVのRWSは基本的にある程度はコンピューターが補助してくれるので、素人でも扱いやすいようになっている。小室でも問題なく撃てる。それに、遠隔操作で撃てるから射撃手が反動であさっての方向に弾丸がいく心配もあまりないので、小室でも問題なく<奴ら>に当てる事が出来る。


「だけどあまりむやみに撃つなよ。M2は確かに威力はすごいが、他の銃と比べて音も半端なくでかい。今は橋に<奴ら>が集中しているが、こっちに向かってくる可能性もあるからな」

「わかってます」

「よし。俺が合図したら撃ってくれ。」

そう言って俺は外に出た。

新たに仲間になった小さい女の子である希里ありすと、父親である希里タカトさんも入れて俺達は進む。

ーーー。

俺達が外で護衛をしながら進む速度は限りなく遅くなった。それは無理もない。LMVに人数的に無理があり、しかも出来る限りの武器と弾薬に食料を詰め込んだ状況であるため、護衛と称して三人ほど外に出ているので外にいる俺達三人にLMVも速度を合わせて走っているのだ。


「こんなに遅く走らせるの、自動車教習所の第一段階の時いらいよ」

鞠川先生はそう呟く。

まあ、今は先生もLMVのアクセルを踏んでいない。ハンドルも力をいれていなくて真っ直ぐに進む様に固定しているだけだ。LMVはオートマであるためリープ現象で進んでいるに過ぎない。そのためLMVの速度も10キロも出ていない。


ん。何かバイクの排気音が聞こえる。しかも拳銃をアホみたいにぶっ放している音もな。俺は嫌な予感がして双眼鏡を使って前方を見た。

俺達の前方にいるのは明らかにトチが狂った表情をした男性。二人乗りで8台程の編成でこっちに向かってくる。しかも所持しているバットやナイフに、警察から奪ったと思われるS&WのM37エアーウェイトに、上下二連式散弾銃だ。

散弾銃も日本では猟銃として扱われるため、日本でも手に入れる事は出来るし、一般人が所持しても疑問には思わない。しかし、あの男たちがアホみたいに狂ってるのは誰の目から見ても明らかだ。

「武装したバイクの二人乗りした奴らが8台ほど突っ込んでくるぜ。しかも連中。明らかに表情がやばい」

「先制攻撃でもしますか?」

平野は、そう聞いてくる。このまま進めば鉢合わせは目に見えてる。こんな世界になったんだ。自分の欲望を満たそうと今まで抑えた欲望が噴出した輩も出てくる事は想像に難しくない。そんな連中が俺達に友好的に接してくれるとも思えないし、俺達のグループは絶対に戦闘する条件が揃いすぎている。

先ずは自他共に認める様々なタイプの美女に、足となり武器ともなる軍用車。これ程の条件がそろってあのトチが狂ってる連中が襲わないはずがない。


「小室。いつでもM2を撃てる準備をしておけ」

「い、生きてる人間に撃つんですか!?」

これに小室も戸惑いが隠せない。つい最近まで普通の学生であったのに、いきなり人に向けて銃を撃てなど戸惑うのも無理はない。出来れば先制攻撃で、馬鹿どもを全滅させたいが、流石にそこまで割り切りは出来ていないようだ。

「仕方ない。なら鉢合わせして、戦闘が回避できないと思ったら撃て。以上!」

そう言って俺はデスバレットで愛用してあるアサルトライフルIMIタボールTAR21を装備した。イスラエルが開発したブルパップ型アサルトライフルであり、コンパクトなアサルトライフルで射程も5・56mmNATO弾を扱う銃にしてもかなり確保されており、何より狭い市街戦を想定して作られているため取り回しが安易で、他にも他国のアサルトライフルと比べて重量も軽いのが特徴だ。

平野はMP5A5を装備しており、重量が軽く簡易狙撃銃として使えるためこれにした。毒島も木刀を構えて戦闘態勢を整えた。

「戦闘準備だ。警戒を怠るな」

TAR21のコッキングレバーを引いて射撃準備は完了だ。そしてバイクのマフラーを派手に吹かして武装集団のチンピラ達は降りてきた。そして俺達に向けてニヤニヤと笑っている。


「おいおい女を沢山つれてるぜ!!しかも美人で巨乳ちゃんだぜ!!」

「マジかよ!たまんねー!!」

お決まりのセリフだ。下品な笑い声に、自分の性欲丸出しの連中に俺は呆れたとしか言えなかった。

「オラー!こいつはサツから奪った拳銃だぜ!本物だぜ本物!!こいつで撃たれたくなかったら車と女を置いていきやがれ!!」

「安心しろよ!俺達が友好的に使ってやるよ!!」

こうなるから俺は先制攻撃を進言したんだよ。誰もが認めたくないだろうが、たった一日で人がここまで変化するものなのかと思うだろうが、否定した所で現実は変わりはなしない。今まで法律的抑止力があるからこそ人は冷静で入られた。しかし、それがなくなった今ではそんなものを気にせず自分の欲望を満たそうと、実行に移す馬鹿はいる。

そういう輩とも俺達は戦わないといけない。

「平野。いつでも撃てるか?」

「大丈夫です。僕だって学校で<奴ら>を何人も倒したんだ。生きた人間だって殺せる!」

「毒島は?」

「愚問だ。理性なき輩に慈悲を与えるつもりはない」

なら問題はない。俺達の生を邪魔する輩は<奴ら>じゃなくても容赦はしない。そしてトリガーに指をかけて俺達は発射する!

「ジャックポンド!!」

「ロックンロール!!」

一斉に銃声が鳴り出した。フルオートの独特の発射音があたり一面に充満する。空薬莢が次々と地面に落ちる。空薬莢がおちる=弾丸が発射されている合図でもある。

いきなりの事態にチンピラ共は慌てるが時は既に遅しだ。チンピラ共は次々とバタバタと倒れる。弾丸が数発ほど命中して糸が切れた人形の様に崩れ落ちる。腕や足と関係なしに弾が当たれば倒れるし、そして後ろに駐車したバイクも巻き込んでバイクは弾丸が何発も命中してスクラップとなる。

そして俺と平野が撃ち漏らして無事なチンピラは、毒島は木刀で撲殺して所持しているクナイを投げて脳天に命中させて絶命させた。先ほどまで粋がっていたチンピラは見る影もなく、血の水たまりがその場に形成されて、ただの肉の塊が形成されていた。


「これが現実なの……」

「どうしてなんだ……」

「いや……いや……。」

宮本、卓造、ナオミの三人は目の前で起きた惨劇を理解できないように呟いた。その気持ちはわかる。平和な学生生活と一変して、この惨劇は既に世界の常識となるのは受け入れがたいだろう。

だけど、受け入れなければいけない。そうしなければ俺達は死ぬ。

「現実だ。これが今の俺達の……な」


世界は崩壊した。それは受け入れない奴から死んでいく。それが現在の、この世界のルールなんだからな。 
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