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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico49-A大力は禍の元

 
前書き
大力は禍の元/意:過ぎた力を持ち、それを利用しようとすると禍を招き込んでしまうかもしれないというたとえ。 

 
†††Sideルシリオン†††

「それじゃあ、みんな。今晩は帰りが遅くなるやろうから、ごめんやけど・・・」

はやてが、俺と彼女を見送りするために自宅のトランスポーター室に並んでいるシグナム達に謝る。俺も「すまないな。今日1日、はやてを独り占めさせてもらうよ」そう謝りながら、オシャレをしているはやてを一度見た。空色のキャミソールワンピース、白色のキュロットスカート、おそらくタヌキのものであると思われる耳の付いたクリーム色のパーカといったコーディネーションだな。

「リインは気にしないですよ、ルシル君♪」

「てか、はやてを危ない目に遭わすようなことはすんなよ」

「判っているさ。はやての安全は最優先だろ」

ちなみに俺は、白のTシャツの上に灰色のパーカ、さらに黒のジャケット、デニムパンツといった感じかな。オシャレしたはやてに恥をかかせないように、それなりにオシャレをしてみた。

「むぅ。アイリもルシルと2人きりでデートした~い」

そう言ってアイリが俺の腕を引っ掴んで剝れ顔になった。はやての誕生日、6月4日の翌日である5日の今日、俺とはやてはデートすることになり、これからミッドチルダは中央区画の第2湾岸地区に新しく出来たアミューズメントパーク――遊園地へ遊びに行く予定だ。

・―・―・回想だ・―・―・

八神邸でのバースデーパーティをチーム海鳴全員で催して、はやてを盛大に祝った。なのは達だけで豪勢な料理や、なのはの母親である桃子さん直伝のケーキを協力して作ってくれた。去年もそうだったが作る人によって味が千差万別なため飽きが来なかった。そんななのは達のお手製料理を美味しく頂き、食器類などの片付けも全て終わって、プレゼントをはやてに渡す時間となっていた頃・・・

「ル、ルシル君・・・!」

なのは達からのプレゼントに囲まれていたはやてが、まるで意を決したかのように真剣な顔をして俺を呼んだ。シャルとアリシアのコップにジュースを注ぐという接待中だった俺は「ああ、すぐ行くよ」そう応え、2リットルのジュースのペットボトルを「あとは自分でやってくれ」そう言ってシャルに渡す。

「うっそ~ん! アリシアは注いで、わたしはセルフってどういうこと!?」

ぷくぅ~っと頬を膨らませたシャルが、渡したばかりのペットボトルを俺の頬にぐりぐりと押し付けてきた。俺は「今日の主役ははやてだからな」と、ペットボトルを押し戻してはやての元へ向かう。背中に「バーカ、バーカ!」シャルからの悪態が浴びせかけられるがスルー。

「はやて、どうした?」

「えっとな。ルシル君にももうプレゼント貰たんやけど・・・。その、な・・・」

はやてがモジモジして言い淀む。もうプレゼントを貰たんやけど、というワードから俺に何を言いたいのかを推察する。もう貰った。だけど。その2つのワードでなんとなくだが判ったから「何か他に、俺に願い事あったりするのか?」そう訊ねてみた。

「っ! えっと、・・・うん」

「はやてばっかりずるい~! アイリにもプレゼントちょ~う~だ~い~!」

「アイリも誕生日になったらあげるからな」

そう言うとアイリは表情を曇らせて「アイリ。誕生日なんて知らないもん」そう呟いた。そう言えば、アイリもそうだがアギトの正式な誕生日(正確には製造日だが、そういう言い方は嫌いだ)は不明だよな。だから「あ・・・」俺は失言したことを後悔した。

「シグナム達は知らないのですか? アイリの誕生日」

「ああ。同様にもう1人の融合騎のアギトのことも知らない」

「あたしも知らねぇよ、さすがに」

「オーディンさんがアイリちゃんやアギトちゃんと言った融合騎のデータを確認しようとしたけど、開発室はメチャクチャにされて隠滅されたみたいだから」

シャマルの話に、そうだったな、と思った。技術室は“堕天使エグリゴリ”の誰か(焼かれていたことからバンへルドの仕業だったんだろうな)によって徹底的に破壊されていたからな。ベルカの時も誕生日を祝うなんて余裕が無かったからなぁ。むぅ、このめでたい日に相応しくない空気が・・・。

「それやったらアイリの好きな日を誕生日にすればええんやない?」

そんな中、はやてがそう提案すると「じゃあ、2月5日にしよう!」アイリは思案する間もなくそう宣言した。

「2月5日って、ルシル君の誕生日だよね」

「そうだよ、なのは。好きな日を誕生日に出来るなら、やっぱりルシルと一緒が良い~♪」

俺の右腕にしがみ付くアイリをみんなが微笑ましく眺めた。そしてみんながまたトランプなどを使って思い思いに過ごし始めたのを確認して「それで、はやて。俺に願い事があるらしいけど」話を本題に戻す。はやては、自分の膝の上でマシュマロを美味しそうに頬張るリインの頭をそっと撫でた後、深呼吸を2度ほどした。

「ル、ルシル君!」

「は、はい。なんでしょう」

はやての鬼気迫る表情と声に思わず敬語で返してしまう。リインも不思議そうな顔をしてはやてを見上げる。

「わ、わたしと・・・デ、デートしてほしい!」

顔を真っ赤にしたはやてが願い事の内容である、デートがしたい、と告げた。はやてのその言葉を聞いたことでリビングの時間がピタッと止まったかのような錯覚が生まれた。シャルなんて目をカッと見開いて、心なしか耳をピクッとさせているように見える。

「デート? いいぞ。というか、そういう約束していたしな。行こう、デート」

去年の11月のシャルの誕生日の時、2人でどこかに出掛けようと約束していた。だから俺は即OKを出す。はやては「良かったぁ~」とホッとして、リインは「良かったですね、はやてちゃん♪」と笑顔を振りまいた。さて。シャルの方はと言うと・・・

「うん。楽しんで来ると良いよ、はやて。ルシル、しっかりエスコートしなきゃダメだよ?」

サラリとOKを出した。アリサが「驚いたわね」とシャルを見れば、「反対はしなくても渋るくらいはすると思ったけど・・・」フェイトもそう言って、シャルの素直さに不思議がっていた。

「ふっふ~ん。ここで渋るなんてナンセンスだよ。去年、わたしもルシルとデートしたけど、そん時に色々と邪魔が入ったんだよね。だから邪魔された時の気持ちは誰よりも深く知ってる。そういうわけで、わたしは笑顔ではやてを送り出すつもり♪」

そう力説してピースサインをしたシャルに、なのは達が「おお!」拍手を贈った。

・―・―・終わりだ・―・―・

アイリまでもが俺とデートしたい(一緒に寝るだけじゃ不満なようだ)と言い出したため、「判った、判った。いつか行こうな」そう言って頭を撫でてやると、「やった! 約束だよ♪」アイリは小指を立てた。指切りだ。だから俺も小指を立て、アイリの小指と絡ませた。

「指切りげんまん、嘘吐いたら凍らせてく~だく♪ 指切った!」

アイリのアレンジがされた歌に俺たちは苦笑した。

「じゃ、そろそろ行こうか、はやて」

「うんっ!」

トランスポーターに入り、システムを起動。そして転送が始まり、「行ってきます!」シグナム達に手を振ると、「いってらっしゃい!」手を振り返してくれた。転送の光で視界が白に染まり、治まった時にはすでにそこは本局・技術部区画の最奥、第零技術部。通称スカラボのトランスポーター室。

「ドクターもシスターズも居らへんな・・・」

「この時間に使用することは断っていたんだが・・・」

トランスポーター室には誰も居なかった。私用で使わせてくれたことに対して礼の1つくらいはしたかったんだが。そう思っていたところに「あれ? はやてとルシルだ。もうそんな時間だっけ?」奥の頑丈そうなスライドドアが1人の少女がやって来た。セイン・スカリエッティだ。

「こんにちは、セイン。ドクター達は居る?」

「ん、こんちは、はやて、ルシル。居ることは居るけど、ドクターやウーノ姉はちょっと忙しいから応対は出来ないんだよ。ドゥーエ姉たちも空けてるし」

聴けばドゥーエは情報部の新人研修への教育隊の1人として参加し、トーレは戦技教導官の資格を持っているため武装隊の演習に行っており、クアットロもまた教育隊として空け、チンクはお遣い(想像したらなんか微笑ましくなった)で居ないとのこと。そしてドクターとウーノは・・・

「なんか通信相手といろいろと言い争っててさ。ドクターのマジギレっぷりが恐くてあたしだけ逃げて来たわけ。ウーノ姉もドクターを宥めるので精いっぱいみたいだしさ」

セインがそう言って、不安そうにスライドドアの方に振り向いた。先の次元世界とは違ってアホなドクターがキレている姿が想像できない。はやても「なんや大変やね」不安な面持ちだ。俺はその通信相手のことが気になったため「誰と話していたんだ?」と訊いてみた。

「モニターにはSound onlyってあったから顔は知らないけど、お兄さんみたいだったみたいだよ。ドクターも、兄さん、って呼んでいたし」

「兄・・・だと・・・!?」

「へぇ~。ドクター、お兄さんが居るんか~。初めて知った~」

耳を疑った。ジェイル・スカリエッティに兄が居る。有り得ない。スカリエッティは最高評議会がアルハザードの技術を使って生み出した人工生命体だ。しかし、スカリエッティが言い争うような相手が居るのもまた事実。それにこれまで奴と接してきた俺の勘が、スカリエッティを信用して良いと告げて来ている。

「ドクターにお兄さんが居ったのもビックリやったけど、あのおとぼけドクターが怒鳴るなんて想像できひん」

「そうだな~。日頃のドクターを見ていれば信じられないよな~」

演技じゃないんだ、ドクターやシスターズの間抜けっぷりも。ドクターは無実だ、ドクターに兄が居る、という情報を前提にすることでとある推察が1つ立った。それを証明するためにも通信相手を探った方が良いのかもしれないな。

「そういうわけだからさ。あたしひとりだけの出迎えだけど、それで勘弁してね」

手を合わせて謝るセインに続いて応接室へと向かい、「バイバーイ♪」そのままセインに見送られながらスカラボを後にして、ミッドへと降りるために次元航行船の定期便の発着場へと向かった。

†††Sideルシリオン⇒はやて†††

本局からミッドへの次元航行船の定期便に乗ってやって来たんは、第1世界ミッドチルダは首都クラナガン。夏が近くなって気温が高くなった海鳴市に比べれると、まだまだ春って感じの温かさや。

「えっと、遊園地に行くには・・・っと、アレに乗れば良いんだな。ほら、はやて、出発される前に乗ろう!」

「あっ、うんっ!」

ルシル君と一緒にバス停に向かって、路線を確認したルシル君がわたしの手を握って引っ張ってくれた。バスに乗り込んで空いてる席に座る。公共交通機関は基本的に地球と変わらへんから迷いなく乗れる。とは言うても、これまで何度も経験してるから迷いも何もあらへんけどな。

「ルシル君、なんかおやつ食べるか?」

「ああ、貰うよ」

膝に乗せてたポシェットを開けてガサガサと中を漁って、数十個入りのクッキーの袋を取り出す。そんで封を開けて、2枚入りの小さな袋に入ったクッキーを「はい、どうぞ」隣に座るルシル君に渡す。わたしも1個貰おう思うて取り出そうとした時、「はやて」ルシル君に呼ばれたから隣の席に顔を向けた瞬間、「はむ・・・?」唇の間にクッキーを挟み込まれた。不意打ちのあーんやった。

「お、おおきになルシル君♪」

ちょうビックリしたけど進んであーんしてくれたことが嬉しかった。わたしはルシル君から貰ったクッキーを食べ終えて、別のクッキーの袋を開封。シャルちゃんならきっと口に挟んだ上でルシル君に食べさせるようなトンデモ級な事をするんやろうけど、わたしにはそんな勇気も度胸もあらへん。そやから・・・

「はい。ルシル君。あ~んや♪」

「ありがとう、はやて。あーん」

ルシル君にもクッキーをあげて、2人で微笑み合う。あぁ、最高や~って幸せを噛みしめてると、「可愛い」とか「青春ね」とか、ご年配のお客さんがわたしらを見て微笑んでた。恥ずかしいやら照れくさいやらで顔が熱くなってしもうた。対するルシル君は涼しい顔で、「もう1枚食べるか?」なんて言うてきた。当然わたしは・・・

「いただきます♪」

こんな機会はそうそうあらへんやろうからどんな視線も受け流して見せる。ルシル君が差し出してくれたクッキーを「あ~ん♪」パクッと頂く。美味しいクッキーがルシル君の手から貰えたことでさらに美味しさ倍増や。
それからバスに揺られること30分ほど。到着したんは首都クラナガンや地上本部の在るミッドチルダ中央区画、その第2湾岸地区。そこには1週間後に一般開園される遊園地、ファンタジアパークがある。本来ならお客さんが入れへん期間中やけど、わたしには一般開園前の今日、先行入園できるプレミアムチケットがある。

(おおきにです、リアンシェルト総部長・・・!)

わたしにプレミアムチケットをくれたリアンシェルト総部長に心の中で感謝した。

・―・―・回想や~・―・―・

わたしら八神家は今、特別技能捜査課のオフィスで、現場に行かへん時の仕事である書類の作成や整理をしてる。わたしらはもうデスクワークはお手の物やけど、「んみゃぁ~!」デスクワークが苦手なアイリがデスクで絶叫した。ヴィータが「うっせ~よ」注意する。

「むぅ~」

「見せてください、アイリ。リインも手伝うですよ」

すぐにフォローに入るんはたまたまアイリの一番近くに居った、アイリと同じ融合騎のリインや。八神家の中ではまだ特捜課の経験は浅いけど、それでもデスクワークはもう完璧って言うほどにまで出来てる。アイリは半泣き状態で「ありがと~」お礼を言うて、リインと一緒に書類を片付け始めた。すると「リインちゃ~ん。あんまり手伝っちゃダメよ~」別のところからそんな注意が飛んで来た。

「トゥーリア一尉、はくじょ~」

アイリが声の主やったトゥーリア・サクロス一等陸尉にそう返した。ふんわりした青いセミロングの髪を耳に掛けながら「ダ~メ。クーとナージャが居ないうちは私が責任者だから」ってニッコリ微笑んだ。

「安心して、アイリ。私はクーよりは厳しくいかないから、まずはミスありでも良いから自分の力でやってみて。間違いがあればその都度修正。習うより慣れろ作戦ね」

「あぅ~」

デスクに突っ伏すアイリには「頑張れ~」って応援するしかなく。リインも「アイリ、ファイトです♪」わたしのデスクに戻ってきた。そんでアイリは「もう、もう、もう~」ぶつぶつ文句を言いながらもキーボードを操作し始めた。

「あの、トゥーリア一尉。お手洗い行ってきます」

「は~い」

ルシル君が居れば声を大きくしてそんなこと言えへんけど、今日もルシル君は内務調査課の査察課の研修で別行動や。許可を貰ったわたしはオフィスを出て、そんでお手洗いを済ませて手を洗ってると、隣の手洗い場に誰かが立ったんが判った。俯いてた顔を上げて鏡を見てみれば「っ!」ビックリした。

「こんにちは、はやてさん」

「こんにちはです、リアンシェルト総部長」

リアンシェルト総部長と挨拶を交わす。手を洗い終えた後、ハンカチで濡れた手を拭きながら「お先に失礼します」ってお手洗いを出た時、「待ってください」呼び止められてしもうた。運用部の一切合財を取り仕切る総部長に呼び止められるなんてとんでもなく緊張してまう。同じようにハンカチで濡れた手を拭き終えたリアンシェルト総部長は、「えっと・・・」制服の胸ポケットから1つの封筒を取り出した。

「あなた、こういうのには興味ない?」

差し出された封筒を受け取って「拝見します」一言断ってから封筒を開けて中身を確認する。それは「遊園地のチケット、ですか・・・?」観覧車やジェットコースター、あとマスコットキャラと思しき動物のイラストが描かれてる。

「あの、コレ・・・」

「再来週末にオープンするらしい遊園地の、オープン前に先行入園が出来るチケットって聴いたのだけど・・・」

「ペアチケットですね・・・。どうしたんですか?」

このチケット1枚で2人しか入られへんようや。リアンシェルト総部長は「貰いものだけど、相手が居ないし興味も無いし。良かったらどうぞ」そう言うて微笑んだ。でもなぁ、ペアチケットってことは誰か2人しか行けへんってことやから、家族みんなはアカンわけやし。お断りするべきかな~。

「ルシリオンを誘ってみたらいいのでは? 確かあなた、来週が誕生日だったと記憶しているけど」

「え゛っ!? た、確かに誕生日ですけど、ど、ど、どうしてそこでルシル君の名前が・・・!?」

わたしがルシル君が好きってことがバレてるからこそ言えるそのセリフに動揺してまう。わたし、リアンシェルト総部長にルシル君が好きって言うた憶えなんてないし。誰かが喋った、としか考えられへん。じゃあ一体誰が・・・。

「あなたの態度を見ていれば自ずと至る解です」

サラッと言われた。わたしは「そ、そんなに判りやすいですか・・・?」って訊いてみると、「よほど鈍感でなければまず。恋をしたことがある者なら確実に」リアンシェルト総部長はそう言うと寂しげに笑うた。

「リアンシェルト総部長は・・・どっちですか・・・?」

「・・・後者です。現在進行形で恋をしてます。・・・秘密、ですよ?」

失礼かもしれへんけど気になってしもうたからそう訊ねてみたらそんな返答が。人差し指を自分の唇に当ててそう言うたリアンシェルト総部長の表情は変わらず寂しげで、そやけど笑顔ってゆう不思議なものやった。

・―・―・終わりや~・―・―・

リアンシェルト総部長から貰ったこのチケットのおかげで、わたしはルシル君をデートに誘うことが出来たから、感謝してもしきれへん。
とんでもなく広い駐車場に停車したバスを降りて、入場ゲートの方へと歩く。同じバスに乗ってた乗客のほとんどもここが目的だったみたいや。それに観光バス程の大きさな車両が続々とガラガラな駐車場に入ってくる。そう言えばチケットにはナンバリングがあって、確かわたしのチケットには488番って記されてたはず。チケット1枚で2人やから、最低でも1000人近くがここに集まる計算や。

「入場ゲートにはすでに列が出来始めているな。行こう、はやて」

「うんっ!」

さっきみたくわたしの手を取って歩きだすルシル君に続いてわたしも歩を進める。列に並んでる人やわたしらみたく今から並ぼうとしてる人の大半はカップルで、他の人から見たらわたしとルシル君はどない名風に見えるんやろうか、ってちょう気になってみたり。

『本日は当アミューズメントパーク・ファンタジアパークの先行開園にお越しいただきありがとうございます。これより開園いたしますので、入場ゲートにて係員にチケットをお渡しください。そしてフリーパスの機能を有したリストバンドを手首に付けてもらってください。それでは閉園時刻の22時までどうぞお楽しみください』

それからしばらくすると入場ゲート上に横に長いモニターが展開されて、メッセージと音声が流れた。前に並んでる人たちがわっと動きだして、続々と入場ゲートの改札を通り過ぎてく。

「いらっしゃいませ、お客様。チケットをお願いします」

「あ、はい」

係の女の人にチケットを渡すと、「ありがとうございます。それではどちらかの手をお出しください」わたしは右手首に、そんでルシル君は左手首にプラスチック製らしきリストバンドを巻いてもらって、「ではお楽しみくださいませ!」ここの地図も一緒に貰った。

「まずは・・・ジェットコースターからやろ!」

「初っ端からそこ行くのか? いいだろう、どうせならフルコンプする気で行こう!」

「オッケーや!」

ルシル君と手を繋いで、わたしはお目当てのアトラクションに乗るために走った。
 
 

 
後書き
おはようございます、こんにちは、こんばんは。
新年1発目は主人公ルシルとメインヒロイン・はやてのデート会、その前編となりました。
だというのにタイトルはかなり不穏。ええ、甘々な時間だけでは終わりません。シャルとのデート時と同じで邪魔が入ります。
 
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