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Steins;Gate 愛別離苦のラグナロク

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Chapter03


最初は 何を言っているのか 理解できなかった


Dメールをおくったのが16日。1日ずれているという訳ではない。


8月17日


それが俺がどれだけ求めていた物なのか

そして、どれだけもがいても辿り着けなかった場所。

助けようとしてもどれだけ手数を打とうとも
まゆりを死なせてしまった日にち


それから、世界線の収束から、抜け出せたというのか…?

「ほ、ほんとうに17日なんだなっ⁉︎間違いないよな⁉︎」

たまらずもう一度確認をしてしまう。
まゆりはこうして生きている。

「本当にオカリン大丈夫〜?17日で間違いないよ〜」

いつもと同じように口をωみたいにして微笑んでいる


回避できた。よかった。本当によかった。
どっとへたれこむように座り込んだ。

これで紅莉栖が誰かに刺されることもなく。まむりが死んでしまうこともない。
もう、何も望まない。仮にこの世界線で俺が死ぬとしてもかまわない。

そんなことを考えていると紅莉栖がすっとソファから立ち上がった。

「だから何間抜けな顔してんのよ、これから買い出しでしょ?
さっさと行くわよ」

「買い出し?一体何のーー」

言い終わる前に腕を引っ張られ、半ば引きずられるようにラボから出ることになった。

階段を降りた先のベンチに腰掛け、紅莉栖がおもむろに口を開く



「Dメールを使ったの?」




+ + +


ラボから外へ出るとジリジリと刺すような日差しに見舞われる
中の蒸すような暑さはないがそれでも全身から汗がどっと出てくる

だが、汗の原因は暑さではない。

「な、なぜだ?」

汗が額から顎につたいアスファルトへと落ちる
続く汗を拭いつつそうとしか答えられなかった


「なんとなく、さっきのあんたはとてもじゃないけど
30代にすら見えない顔だったから」

「いや、大丈夫だ。なんともない。
それより、買い出しというのは?」

「ほら、覚えていない。岡部は変わる前の記憶を持っているかわりに
変わった過去を覚えていない」

そう言って真っ直ぐに瞳を向けてくる。
好奇心…というより、心配してるような目。

少しの沈黙。紅莉栖は目を閉じ、俺から顔を逸らした

「それとも、長い事情聴取でおかしくなっただけなのかな」

「事情聴取だと?なんだ?俺は何をしたんだ?」

「岡部だけじゃない。私たちもよ」

なんだ。思考が追いつかない。
まさかタイムリープの制作がばれたのか?

「私たちがSERNの人体実験を告発したこと
それによりSERNは解体された」

今更ながら気付く。そうか、俺はSERNの人体実験を告発するようにDメールを送っていたんだった。世界線が移動したのはそのためだったのかーー

「座って。説明するから」

そう言ってラボから持ってきただろう、二本のドクべを一つ差し出してくる。
それを受取り並ぶようにベンチに腰掛ける。


紅莉栖によるとIBN5100よるハッキングをかけ、SERNによる人体実験を発見する
そこで俺は携帯を確認した後、これを告発すると言ったらしい。
携帯のことを聞いたがはぐらかさせたという。
そこで紅莉栖はこの事実を公にはせず、研究所の信頼できる人たちに拡散させた。
いきなり公にしてもSERNや”委員会”ほど巨大な組織だと真実を捻じ曲げられる可能性が大いにあると予想されたからだ。

そして世界中の研究所機関から世界中の国へSERNへの人体実験を告発した。
それにより国は強制捜査へと入り証拠は完全な物となった。

残念なことに委員会の足取りは掴めなかったが、SERNの陰謀は壊滅。
リフターや、LHCなどの保有者は意見が難航しているらしい。

なにしろタイムマシンを国際で議論をすることなどなかったのだから。
だが、おそらくIACAが管轄することになると思われる。
組織ではなく、国全体が保有することになれば秩序は保たれるだろう。



「まぁ、だいたいは、こんなかんじね。
それまで私たちは警察やら研究所やら話をしなきゃいけなかった訳」


正直、現実味が全くしなかった。
あのDメールで、これだけ世界がうごくのか。

遠い昔。ダルと俺でSERNの真実を告発した。
結果、一斉にウォールがしかれ、真実が捻じ曲げられもみ消されてしまった。

紅莉栖がいるだけでこれだけ変わってくるのか。

バタフライ効果

蝶の羽ばたきが遠いところで竜巻になる
小さな出来事は色々な物を巻き込み、大きな存在となる。
そんな出来事。


そこで紅莉栖は手にしたドクぺをあおり

「で、岡部は何があったの。さっきは冗談言っちゃったけど
本当に悲しそうな、戸惑いというか、一言でいえないような顔してたから…」

「もしかして心配してくれているのか?」


「ちょ…っ! 違うわよ! そ、その…っ!
そうよ!あんたの脳を解明するために必要ならプラグをぶっ刺そうとおもっていっただけ!」

慌てたようにうがーと吠えながら両手を突き出し掌をぶんぶんとふりだした


そこにエンジンの音が聞こえた。一台の軽トラックが近くに止まり、助手席から男性が降りてくる。

「おう!岡部!しばらくぶりだな!そこの嬢ちゃんもな!」

降りてきたのは大きな体にスキンヘッド、碧色の目をした男。天王寺祐呉。
そしてこのラボの大家。一階にはブラウン管工房と言った今は使われないような家電を専門として扱っており俺はミスターブラウンと呼んでいる。



そしてSERNの傘下であり雇い兵のラウンダーの一員。



彼は大丈夫なのだろうか。
今後口封じでもされるのだろうか。
そういえば、助手席から降りてこなかったか?

そして運転席を見ると、息を呑んだ。






「桐生……萌香…!」






椎名まゆりはひつようない


知ってはいけないことを知った




もう、遅い





過去の記憶がフラッシュバックしてくる。
彼女を見ると動悸が激しくなる。激動に駆られてしまう。


「ん? どうしたんだ岡部?」



ミスターブラウンの呼びかけにはっとする。


いつしか震えるほどに拳を握っていて、爪痕がくっきりと残りじんわりと痛む。


俺は震えそうな声で問いかける

「ミスターブラウン。最近…何かありましたか?」

一瞬、驚いたような顔をしたが、嬉しそうにわらって

「やっぱ分かるか?いゃあずっと割に合わない仕事をやらされててなぁ
なかなか辞めるに辞めれなかったんだがよ、丁度その会社、潰れてよ!
いやぁ、なんか憑き物が落ちたような気分だぜ」

「その…大丈夫なのでしょうか?」

「何のことだだ? 俺みたいな下っ端は別になんてこたぁねぇ。
それにやっと本職に腰を据えれるってもんよ!」

「ところで、店長さん。運転手の方は?」

さっきまで大人しく話を聞いていた紅莉栖が問いかける。

「ああ、その潰れた会社の後輩でな。桐生ってゆうんだ。仕事を探しているってもんで
バイトとして雇うことにしたんだよろしくしてやってくれ」

そう言ってミスターブラウンは車に乗り、少しすすんで左折し、見えなくなった。

「別に今話せなんて言わないわ。けどね、話したくなったらいつでもいいから
話してくれていいんだからね。遠慮しないこと。いい?」

夕暮れになりつつある空を見上げながら紅莉栖がつぶやく。

「ありがとう、紅莉栖」

「えっ?今普通に名前でよんだ?」


「気のせいだクリスティーナよ。買い出しに行かねばダルやまゆりに
色々言われる」


「だから、ティーナっていっとろーが!」

また、うがーって吠えてる紅莉栖をよそに。

不思議に思っていた。

いままでの会話に

阿万音 鈴羽が一度も出てきていないことを。

つまり未来から過去を変えようとしてきていない。

つまり。


たどり着いたのか?


「ここが、シュタインズゲートなのか…?」
 
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