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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico46魔法少女リリカル☆アリシア~Team Testarossa~

†††Sideアリシア†††

わたし達チーム海鳴は今、すずかのお家に集まって日本のお祭りの1つ、雛祭りを開催中。雛人形っていうお人形を階段みたいなステージに並べて、ちらし寿司とかハマグリのお吸い物を食べたり、ひなあられ(ピンクや緑、黄、白でとっても可愛い♪)や菱餅(どっかの国旗みたいに3色♪)を食べるお祭りなんだよ。
ご飯の後は、みんなでリアル雛人形を作ろうって話になって、誰がお内裏様(お殿様とお姫様の2人でお内裏様なんだって)になるかで大騒ぎ。そんな中でシャルが、ルシルは女役でも通用する~、なんて言い出したからこれまた大騒ぎ。そして役割が書かれたくじを引いた結果・・・

「シャルちゃんがお殿様で、はやてちゃんがお姫様に決定~♪」

「俺・・・三人官女・・・、完全に女役じゃないか・・・」

ルシルはそう言ってヘコんだ。これでみんなの役割は決定。
お殿様はシャル。お姫様ははやて。
三人官女はアリサとルシルとリイン。
五人囃子は、笛のわたし、謡いのなのは、大鼓のすずか、太鼓のヴィータ、小鼓のアイリ。
随身はフェイトとシグナム。
衛士はアルフとシャマル先生と狼形態のザフィーラ。

「みんなー、衣装の方も用意したから着替えてみようか~♪」

すずかのお姉さん・忍さんがニッコニコな笑顔を浮かべてそう言った。そしてメイドのノエルさんとファリンがわたし達に衣装の着付けをしてくれて、赤絨毯が敷かれた中央階段に集合。ルシルも官女の衣装を渋々だけど着てくれたし、何も問題なくチーム海鳴総出演のリアルお雛様が完成した。当然撮影大会も行われた。中でも可笑しかったのは、お殿様のシャルとお姫様のはやてと五人囃子のアイリが、三人官女のルシルを取り合ったことかな。なんかシュールだったよ。

「――さてと。ここでわたしアリシアから、1つ重大な宣言をしたいと思います!」

わたしとフェイトとアルフの3人で写真を撮り終えたところで、同じようにバラバラで写真を撮り合ってたみんなにそう告げた。フェイトが「ここで発表するの?」って耳打ちしてきたから「なんとなく今だって思ったから」そう答える。アルフは「いよいよだね」嬉しそうに微笑んだ。

「ルシル!」

「え、俺に何か関係があるのか・・・?」

「わたしアリシア、そしてフェイトとアルフの3人は、ルシリオン・セインテストに模擬戦を申し込みます!」

ビシッとルシルに指を差す・・・と、「アリシア。人を指差しちゃダメなんだよ」フェイトに怒られた。だから「ルシルの所為だ~!」って責任転嫁。するとまぁ「俺が悪い要素1つもないぞ」ってツッコみを受けるわけで。

「そもそも君にデバイスなんて無いだろ? スカラボが製作協力してくれるっていう話だったが、リンドヴルムの一件で開発は後回しにされていたろ」

ルシルの疑問にすずかとフェイトとアルフを除くみんなが小さく頷いた。わたしは「ふっふっふ」不敵に笑って見せた上で「実は! わたしのデバイスは12月の初めには完成していたのです!」そう言い放った。

「え、そうなの?」

「ていうか、すずかは驚いていないみたいだけど、まさか知ってたの?」

「一応私も開発チームの1人だったから」

「すずかやフェイト達には黙っていてもらったんだよ。見よ! これがわたしのパートナーの・・・えっと、あれ?・・・あっ、わたしのコートの中だ!」

水戸○門の印籠みたいに、控えおろう。この“フォーチュンドロップ”(←がわたしのデバイスの名前♪)が目に入らぬか、みたいな。だけど今は五人囃子の衣装を着てることもあって見せつけることが出来なかった。わたしは咳払いを1回して「今日この日、ルシルに挑戦状を叩き付けるこの瞬間の為にね!」さっきの事をなかったことにした。

「俺・・・そこまで目の敵にされていたのか・・・? 何気にショックなんだが・・・」

リンドヴルムとの戦いを終えた後、わたしはドクター達やマリーさん、すずかに頭を下げてお願いした。わたしのデバイスの開発を。わたしはすぐにでも “力”が欲しかったから。ただのサポートでも良いからみんなと一緒に戦いたかった。魔力も少ないし、戦闘技術も特訓はしてるけど一線級じゃないから弱い。それでもフェイトを支えてあげたかった。

「テスタロッサの誇りに懸けて! ルシル、あなたにギャフンと言わせてみせるから、覚悟してね!」

「ギャフン」

「「「ルシル君・・・」」」「「「ルシル・・・」」」

「こらぁぁぁぁぁぁーーーーー!!」

真顔でそう言ったルシルにわたしは詰め寄って「そういうお約束はいらないの!」プンスカ怒って見せた。ルシルは「すまん、すまん」苦笑しながら謝った後、「で、いつ戦る?」また真顔になった。ゾワッと悪寒が走った。でも「場所はお母さんが用意してくれてる」わたしは胸を張ってルシルと対峙した。

――んで、数週間後の終業式・・・・

第4学年最後の日、終業式を終えた後はクラスメイトと少しお喋りをして、それから家に帰ってすぐに本局へ直行。お母さんが貸し切ってくれた第8トレーニングルームにチーム海鳴全員で向かう。

「あれ? ユーノ君、それにクロノ君とエイミィさんだ」

トレーニングルーム前に居たクロノとエイミィとユーノに気付いたなのはが「どうしたの?」駆け寄って、わたし達も続く。

「僕は結界・・・、シャマル先生と一緒に張るようにアリシアにお願いされたんだ」

「僕は妹の成長を見学しに来た。母さんも見学したいと駄々を捏ねていたけど・・・」

「仕事で来られなくなっちゃって。だからこのエイミィ・リミエッタがバッチリ記録することになったんだよ♪」

魔法の先生にしてお兄ちゃんなクロノ、将来きっとお姉ちゃんになるエイミィが観てる前でカッコ悪い真似は出来ない。でもだからこそやる気が出てくる。

「結構ガチでやるつもりだったから頼んでおいたの。トレーニングルームも結界が張られるようになってるけど、ルシル本人もそうだけど使う魔法も鬼畜でしょ?」

「鬼畜とか言うな」

ルシルのツッコみはスルーして「ルシルにはハンデを背負ってもらうつもりだけど、念のためにさ」そう言って、わたしはルシルに振り向く。

「ハンデ? 俺の意思はともかくとして、フェイトやアルフはそれでもいいのか?」

「今回はとにかくアリシアの思うままに、っていうのが私とアルフの指標だから」

「ルシルはとにかく強すぎるの! だからハンデを負ってもらうの!」

「君たちがそれでいいのなら・・・」

腕を組んで唸ったルシルもなんとか了承してくれた。言質は取った、そう思っていたら「アイリはルシルと融合してもいいの?」わたしの前にずずいっと出て来たアイリにそう訊かれた。もちろん「ノー!」両腕でバッテンを作って却下。ルシルひとりでも厄介なのに、そこに融合騎のアイリが参戦なんてことになったらわたし達がギャフンって言っちゃうよ。

「ちぇー」

「アイリは俺の応援をお願いするよ」

「うんっ!」

そんなこんなでわたしとフェイトとアルフ、そしてルシルはトレーニングルームのステージへ。ユーノとシャマル先生、そしてすずかは制御室に待機で、クロノ達は観客席。

『空間シミュレーターを起動。ステージは廃棄都市区画。結界レベルは最大。プラス僕とシャマル先生が二重で張るから、よほどの馬鹿魔力を使わない限りは問題ないと思う。ルシル、君に言っているんだからね』

「名指しかよ。そんなヘマはしない」

『アリシアちゃんからルシル君へのハンデ内容は以下の通り。
1.魔力ランクはフェイトちゃんに合わせてAAA+ランク。2.魔力探査を行って居場所を探らない。3.広域攻撃は使わない。4.複製魔法は使わない。5.変換資質は使わない。6.空戦形態は使わない。7.勝敗は各2万点からの減点方式で、0ポイントになったら負け。だけど、アリシアちゃんの一撃をルシル君が1発でも受けて場合は即敗北ね』

シャマル先生からわたしが提示したかったハンデが伝えられる。チラッとルシルを見れば、無言の思案顔を浮かべてた。そして「なぁ、アリシア」口を開いた。さすがにハンデを付け過ぎたかな?って思ったけど・・・

「真っ先に君を撃墜しても良いんだな? このルールだと」

そうでもなかった。呆れるどころかやる気を見せた。ギラリとした眼光を向けて来たルシルにたじろぎそうになるけど「出来るもんならね!」そう言い返すと、フェイトとアルフがわたしの前に躍り出てくれた。その様子にルシルは「まずはフェイトとアルフを墜とせというわけか。いいだろう」そう言って背を向けて、トレーニングルームの端の方に移動した。

『それじゃあ、シミュレーターを起動するね』

ユーノの合図と一緒にトレーニングルームが様変わりする。だだっ広かった空間にいろんな建造物群が投影された。管理局の技術ってかなりすごいよね。本物じゃないのに触れることだって出来るんだもん。

「じゃあ、アリシアは作戦通りに姿を隠してね」

「あたしらの唯一の勝利要素はアリシアの一撃だ。全てそれに懸かってる。しっかりやるんだよ」

「うんっ、任せといて!」

円陣を組んで3人の右手を中央で重ね合わせて「勝つぞ、おお!」気合を入れた。乱立する建物の陰で見えないルシルの方へと視線を向ける。こんな好条件の中でルシルとの模擬戦なんてきっと今回限り。卑怯だって言われても良い。それでもルシルに勝っておきたい。あのルシルに勝ったんだ、って自信が欲しいから。

「バルディッシュ!」

「フォーチュンドロップ!」

フェイトは三角形型の待機モードな“バルディッシュ”を掲げて、わたしは髪を結ってる片方のリボンの結び目に飾ってある、宝石で出来たフリージア(花言葉が気に入ったから)型の待機モードな“フォーチュンドロップ”に呼び掛ける。

「「セーットアップ!」」

まずはノーマルなライトニングフォームなフェイト。“バルディッシュ”も大鎌のハーケンだし。そしてわたしはまだ換装とか必要無い・・・っていうか持て余すから、ラッキースターフォーム一択で、ノースリーブのアウター、ネクタイ、ミニのプリーツスカート、同じプリーツと燕尾の二重のオーバースカート、両手首にカフス、って感じ。
そして手には、わたしの初めてのパートナーの“フォーチュンドロップ”。キャンディポットの形をしたインテリジェントデバイスだ。

――アリシア君の要望を叶えるために昼夜を問わずに娘たちと共に考え抜いて辿り着いた境地! それが収容型デバイス! 本体にはAIを搭載させてインテリジェントデバイス化し、君の魔導師としての技術を最大限に支援させる。そして、複数のストレージデバイスを収容し、現場の状況によって適切なデバイスを起動させればいい――

複数のストレージデバイスを収容するインテリジェントデバイス。それがわたしの“フォーチュンドロップ”だ。今はまだ3つのストレージデバイスしか積んでない。魔導師としてのレベルを上げれば、その都度新しいデバイスを積んでくれるって話。まぁたくさんあっても今のわたしじゃ扱えきれないからそれで良いんだけど。

「フォーチュンドロップ。ブレイブスナイパーで行くよ!」

≪ブレイブスナイパー、オッケーで~す♪≫

“フォーチュンドロップ”からキャンディみたいな待機状態のデバイスが飛び出して、それが一挺のスナイパーライフルに変形した。ドクターの話だと、ルシルから銃器の話を聴いたり写真を見たりした結果、この・・・えっと・・・なんだったっけ。

「ねえ、ドロップ。このブレイブスナイパーのモデルになった銃器の名前、なんだっけ」

≪シモノフPTRS1941だよ≫

そうそう。シモノフなんとかっていうスナイパーライフルを選んだんだって聞いた。内緒にすべきルシルに銃器のことを聞くだなんて正直どうなの?って思ったけど、わたしのデバイスとは思わなかったみたい。わたしのデバイスの1つになったなんて知ったら、ルシルはどう思うだろ。ちょっと楽しみ。

(魔石に魔力を流して・・・っと)

グリップに埋め込まれた魔石の欠片に魔力を流すと、数倍になってわたしに返還された。これでやっとA+ランクの魔力だ。今のルシルのAAA+には遠く及ばないけど、防がれない限りはその魔力差は関係ない。

『各員、防護服に変身、デバイスの起動が完了。模擬戦開始まで10秒前。9、8、7、6、5、4、3、2、1、戦闘開始!』

この“ブレイブスナイパー”で発動できる魔法は今のところ超長距離からの弾速重視の高速狙撃・シューティングスター。そして威力重視の狙撃・ジャベリンメテオ。

(ルシルを倒すために使うのがこの魔法だ)

「よし、行こう!」

「あいよ!」

フェイトとアルフが飛び上がって、ルシルの方へと飛び去った。そしてわたしは狙撃ポイントに着くために「ラビットジャ~ンプ♪」近くの5階建てビルの最上階の窓にジャンプで進入する。

――私の娘たちがアリシア君、君の特訓の相手をしよう――

――アリシア様は先ず移動系と射撃系を習得しましょう。その為のストレージデバイスと魔法プログラムを用意してあります――

クロノやフェイトだけじゃなくて、シスターズからも魔導師としての戦闘理論・技術を叩き込まれたこの数ヵ月。大変だった。イメージは出来るのに体が付いて来ない、なんてことが当たり前。だから結構苛立って、それが原因でまた上手くいかないっていう負のスパイラルによく陥ってた。

(まだまだ未熟だけど、それでもわたしはここまで来たんだ・・・!)

窓枠に足を掛けて、さらに隣の7階建てビルの最上階の窓へ「もう1回!」移動魔法ラビットジャンプを使って跳ぶ。わたしの唯一の移動魔法がコレ。単純な跳躍強化で、1回のジャンプで5階建てビルの高さまでなら行ける。ちなみに命名した経緯は、初めて上手く飛べた時・・・

――フェイト、ほらほら、すっごく跳べた♪――

――アリシア、まるでウサギみたいだね!――

――ウサギ・・・?――

――うん。アリシアのリボン、なんかウサギっぽいから――

そういうわけで決めたんだよね。飛行魔法も短・長距離の高速移動魔法もまだまだ使えないから、このラビットジャンプがスナイパーとしてのわたしの生命線。でもいつかはフェイトみたくソニックムーブとか使ってみたいんだよね。

「ドロップ。支援お願い!」

≪ほーい♪ ターゲッティングシステム開始しま~す!≫

窓枠に銃身を置いて、スコープを覗き込みながら銃口をフェイトとアルフの連携攻撃に捕まったルシルへ向ける。ルシルは通常のイェソドフォルムの“エヴェストルム・アルタ”をバトンのようにブンブン振り回して、フェイト達を接近させないようにしてる。

≪今の状態で撃つとこの前みたいフェイトに当てちゃうかも≫

「嫌なこと思い出させないでよドロップ」

ちょっと前に、クアットロの“シルバーカーテン”っていう固有技能で仮想ルシルを作ってもらって、対ルシル戦の練習をしていたんだけど、その時の狙撃で間違ってフェイトに当てちゃったことがあった。あれは狙撃の難しさを改めて実感した事件だった。確実に相手を狙い撃つ技術。誤射とは言え妹を撃った時の恐怖。フェイトは笑ってわたしを許してくれたけど・・・。

(2度とそんなミスショットをしないためにそれまで以上に狙撃の腕を磨いたんだ・・・!)

当時のことを思い返しながら、スコープ越しに戦う3人を見詰める。ルシルの斬撃の竜巻を掻い潜りながら直接攻撃や射撃魔法、バインドを仕掛けるフェイトとアルフ。ルシルは“エヴェストルム”の斬撃や魔力槍の連射でその全てを完璧に迎撃した。

「フェイト、アルフ・・・。頑張って・・・!」

一瞬でも良いからルシルの動きを止めてもらえれば・・・撃つ。スコープ内じゃ2つの照準円(レティクル)が暴れ回ってる。1つは銃口が向いてる先、もう1つはターゲットを表わしていて、その2つのレティクルが重なり合った時にトリガーを引けば直撃させられる。

≪フェイトのポイント、残り8000ポイント。アルフのポイント、残り5250ポイント。ルシルのポイント、残り16200ポイント≫

フェイトとアルフのポイントが1万を切ったけど、それでもちゃんとルシルに攻撃を当ててる。ルシルの残りポイントは気にしないで良い。わたしが1発でも当てればそれで終わりなんだから。あとはフェイトとアルフのどちらかのポイントが0になる前に決着をつけないといけないだけ。

――ソニックフォーム――

フェイトが機動力重視のソニックフォームにバリアジャケットを換装させて、速さでルシルを翻弄する作戦に移った。アルフは中距離からの射撃とバインドの援護。そんな中で、ルシルが私を捜すように目を動かしてるのが判った。気付かれる前に撃ちたい。気が逸るのをなんとか抑えつつ・・・。そして・・・

≪ロックオン!≫

アルフのバインドがとうとうルシルの右足と左足を捉えて、フェイトの斬撃は“エヴェストルム”を弾き飛ばした。ルシルは魔力槍で迎撃に入ろうとしたけど、空いてる右腕はアルフにしがみ付かれて、フェイトのバインドもさらに追加されたうえ、フェイト自身もルシルの左腕にしがみ付いた。

「シューティングスター!」

レティクルがルシルの胸の位置で重なり合って、それと同時にトリガーを引いて魔力弾を1発と発射。

――ラウンドシールド――

ルシルの魔力光のサファイアブルーに輝くシールドが張られて、わたしの魔力弾が防がれた。スコープ越しにルシルと目が合った。読唇術の心得なんてわたし無いのに、見つけた、そうルシルが言ったのが嫌でも判っちゃった。

――闇よ誘え(コード)汝の宵手(カムエル)――

建造物群に出来てる影から無数の黒く平たい触手が生えて来て、フェイトとアルフを捕まえて引き剥がした。わたしはそれに構わずに「ドロップ!」の支援を受けながら魔力弾を連射した。

――いいかい? 正直、フェイト君、アリシア君、アルフ君、君たち3人だけで全力全開のルシリオン君を倒すのはまず不可能だ。レンアオムでのシュヴァリエル戦の映像記録を拝借して見せてもらったのだがね。彼はもはや人間の領域を1歩も2歩も超えている。彼を倒すというのであれば、ルールやハンデを貰うしかない。ルール無用の戦闘となれば、彼は間違いなく局内で十指に入るだろう――

ルシルが強いのは“闇の書”事件の時から解ってる。だからこそルールやハンデに加えて“フォーチュンドロップ”を作ってもらったんだから。

――ルシリオン様に勝つ方法・・・? 正攻法では不可能でしょうから意表を突くのが一番有効的かと――

バインドも遅れてバインドブレイクで解除されて、わたしの魔力弾も躱し切ったルシルがこっちに向かって飛んで来るから、さらに魔力弾を撃っていくんだけど「全然当たらない・・・!」全弾躱された。そしてルシルは高度を下げて建物の陰に隠れた。わたしに狙撃させることなく接近するためだってすぐに判ったから、この場から離れるために移動開始。

「ドロップ! ラッキーシューターお願い!」

≪ほーい!≫

その最中で“ブレイブスナイパー”を待機モードにしたうえで“フォーチュンドロップ”に戻して、別の待機モードのデバイス・“ラッキーシューター”を取り出した。“ラッキーシューター”は中距離戦用の小型拳銃で2挺ある。このデバイスで使える魔法は、射撃魔法の基礎中の基礎のシュートバレット1つだけ。オリジナルの射撃魔法を作るのはもっと熟練度が上がってから、という約束だから。

『アリシア、そっちは大丈夫!?』

フェイトから念話が入ったから『まだ大丈夫!』そう答える。聞けばフェイトとアルフを拘束してたカムエルはもう解除されてて、2人はすでにこっちに向かってる最中とのこと。わたしがルシルに見つかるまでに、2人がルシルと交戦してくれればまた狙撃できんだけどな。

『あたし達がルシルを押さえるまで見つかるんじゃないよ』

『そうならないためのサーチ封じだし、たぶん見つからないと思う』

サーチ出来ないからわたしをそう簡単に見つけることは出来ない。それに広域攻撃も封じてるからわたしを建物から炙り出すことも出来ない。ルシルは虱潰しに数ある建物の中からわたしを見つけないといけない。捜してる時間が掛かるほどにフェイト達に追い付かれて、また戦うことになる。そしたらまたわたしは狙撃に集中できる。

『ルシルとエンゲージ!』

『アリシア、狙撃ポイントに着きな!』

2人からの念話の直後、爆発音が轟いた。わたしが今居るビルのすぐ外からで、窓からフェイトの雷撃が見えた。だから『2階の東に誘い込んで!』2人にお願いする。もう1度“ブレイブスナイパー”にデバイスを変えて、「ここで狙い撃つ・・・!」床にうつ伏せになって、オプションである二脚を立てた“ブレイブスナイパー”を構える。

『判った!』『あいよ!』

ビルの周りを回りながら戦い始めたのが音で判った。あとはわたしが構えてる窓にルシルを連れて来て、少しでもその場に留めてもらえればいい。戦闘音が近付いてくるのが耳、それに肌で感じる。

(来た!)

銃口の先、拾った“エヴェストルム”を使ってフェイトとアルフを迎撃するルシルがやって来た。でもすぐに姿が窓枠の外に出ちゃったからトリガーから指を離す。心臓の音がうるさくなってきた。このドキドキがルシルに聞こえないか不安になる。

――プラズマランサー――

――フォトンバレット――

フェイトの雷槍とアルフの雷弾が十数発と空から降って来て、続けてルシルが降下して来た。しかも最高にラッキーなことにルシルはその場に留まった。窓枠の上部分からお腹から下の下半身しか出てないけど「それで十分・・・!」そう判断して、トリガーを引いた。

――シューティングスター――

距離は10mと離れてない。そんな中で弾速重視の1発。空戦形態じゃない今、そしてこの距離でなら絶対に当たる。ルシルの足に向かって進む魔力弾はそのままルシルに当た・・・らなかった。ルシルと魔力弾の間に急にアルフの背中が割り込んで来て「あいたーっ!?」着弾した。

「惜しかったな、アリシア!」

「のわっ!?」

アルフがわたしの方へ向かってルシルに蹴り飛ばされて来た。うつ伏せ状態だったこともあって「にょわぁぁぁぁ!?」わたしとアルフは激突して、2人揃って後ろの壁に叩きつけられちゃった。

「けほっけほっ・・・!」

「アリシア逃げて!」

咽てるとフェイトの必死な声が聞こえた。声をした方を見れば、フェイトとルシルがデバイスによる剣戟を繰り広げてた。

「すまないね、アリシア。あたしはアウトだよ」

わたしの側に倒れてるアルフが謝った。今のアルフはバインドで両足首を拘束されてて、その魔力ロープがルシルの側にまで続いてた。それで察した。アルフが急に割り込んで来た理由が。ルシルは判ってたんだ。わたしが待ち構えてることを。だから大きな隙をわざと作って撃たせた。そしてアルフの両足首にバインドを掛けて、魔力ロープでアルフを射線上にまで引っ張った。

「アリシア。まさか君のデバイスがスナイパーライフルだとは予想だにしなかったぞ。君ならもっと可愛らしい杖だとか思っていたからな!」

ルシルはフェイトの斬撃やプラズマランサーを“エヴェストルム”で迎撃しながら話かけてきた。しかも徐々にフェイトのポイントを減らしていってる。

「最初の1発で決められなかったのは痛かったな。あれだけ息巻いていた君が前線に出なかった。その時点でアリシアは後衛になったと踏んだ。あとはなのはのような射砲撃系の魔導師か、はやてのような広域系の魔導師か、そのどちらかを予想するだけ」

「な、なんでその二択なの!? すずかとかシャマル先生とかのような補助系かもしれないじゃん!」

――舞い降るは(コード)汝の無矛(パディエル)――

ルシルの側に蒼い魔力槍が8本と展開されて、“エヴェストルム”の斬撃で弾き飛ばしたフェイトに向かって「ジャッジメント!」一斉射出された。フェイトはソニックムーブで避け切るけど回避先にはすでにルシルが向かっていて、「きゃぁぁぁぁ!」斬撃でまた弾き飛ばされた。

「「フェイト!」」

「君の魔導師としての経験は浅い。たとえ誰に鍛えられようと、2~3ヵ月で習得できる魔法は限られる。広域魔法なんてまず無理だ。なら射砲撃になるだろうと思った。で、先の疑問についてだが、シャマルやすずかのような補助、か。君の性格からしてそれは無いと初めから度外視だ」

「むぅ・・・!」

わたしの性格読まれてる。でもまだ足りてない。わたしのデバイスが“ブレイブスナイパー”だけとしか思ってない。それが命取りだよ。わたしは『フェイト、砲撃!』そうお願いする。

「狙撃の腕はなかなかに良かった。よほど特訓したんだろうな。大したものだよ、アリシア。でもだから精神的な罠を張りやすかった。頑張って鍛えた狙撃の腕を信じているからこそ、チャンスがあれば俺を撃とうとするだろうから。フェイトとアルフが俺をこのビルに留まらせようと動いていたのは攻撃パターンから察せたからな。
じゃああとは君の位置を探るだけ。魔力探査なんて必要ないほどに君の気配は感じた。やる気が却って君の居場所を俺に知らせたんだ。あとは適当に俺の盾になるアルフを捕まえ、射線上に入ってやれば・・・。その結果、俺を撃てると確信した故に狙撃し、俺の策にまんまと嵌って同士撃ち。残念だったな」

わたしはルシルに背を向けて逃げるふりしつつ、“フォーチュンドロップ”から3つ目のデバイスを取り出す。背後から「降参することを勧めるよ」ルシルからの降伏勧告が聞こえてきた。わたしは答えることなく、フェイトの一撃を待った。

「ルシル! 私はまだ負けてない!」

――プラズマランサー――

フェイトの雷槍がルシルに向かって殺到。ルシルは“エヴェストルム”で斬り伏せながらフェイトに走って行く。そして直接斬撃を狙って“エヴェストルム”を振るうルシルは残念ながら空振り。フェイトは避けた先で・・・

「プラズマスマッシャァァァァァーーーーーーッッ!」

砲撃を発射。わたしは踵を返して砲撃の行く手へ向かってダッシュ。手にはハリセン型の近接戦用デバイス・“ハリセンスマッシュ”。使い方はそのままで、コレで相手を殴る。けどそれだけじゃない。別の真価とも言うべき効果がある。それを今、ルシルにお見舞いしたげる。ルシルは防御に回ることなく回避した。となれば砲撃はわたしに向かって来るわけで。

「プラズマスマッシャー・・・」

“ハリセンスマッシュ”を振り被って「ホームラン!」フェイトの砲撃へ向かって振り払った。わたしの“ハリセンスマッシュ”のフルスイングによって砲撃は反射されて、砲撃は回避を終えた直後のルシルの背後へ向かって行って・・・直撃した。そう、“ハリセンスマッシュ”の真価は純粋魔力攻撃を打ち返すことが出来るってこと。どこに打ち返すかはわたしの技量次第だけど、今回は上手くルシルの背後に打ち返すことが出来た。

「はぁはぁはぁ・・・!」

「やった・・・?」

濛々と上がる煙を見詰める。フェイトの魔法だけど、最後はわたしのデバイスによる反射攻撃だから、直撃してればわたし達チームテスタロッサの勝利になるわけなんだけど・・・。ドキドキしながら煙を眺めていると、「あー、負けた!」ルシルが降参ポーズをしながら晴れ始めてた煙の中から出てきた。

「俺の負けだ。最後の1発、回避しきれなかった」

ルシルが負けを認めた。一瞬、頭の中が真っ白になったけどすぐに「やったぁー!」喜びが湧き上がって来た。フェイトやアルフとハグし合ってるとシミュレーターが解除されて、元のトレーニングルームに戻った。そして「おめでとう!」なのは達からの拍手喝さいを受ける。

「まさかデバイスを複数持っているとはな。まんまとやられたわけだ。えっと・・・ギャフン」

「あ・・・! ルシルにギャフンと言わせた! ブイっ♪」

ルシルからも拍手を貰って、その喜びは最高潮になった。あとはもっと魔導師としての腕を磨いて、いつかハンデ無しでルシルと本気で戦って、そしてまたギャフンと言わせたいな。
 
 

 
後書き
アロハ・カカヒアカ。アロハ。アロハ・アヒアヒ。
ようやくアリシアのデバイス・“フォーチュンドロップ”を登場させることが出来ました。スロットナンバーや各デバイスやその名前がすべて発表されるまで登場を控えるつもりでしたが、何時になるのか判らないので諦めて登場させました。
2挺の小拳銃ラッキーシューターやハリセンスマッシュは原作にありますが、ブレイブスナイパーは私オリジナルとさせて頂きました。チーム海鳴には狙撃手が居ないんですよね。今後のエピソードのことを考えて、アリシアにスナイパー役を担ってもらうことにしました。

「え? ヴァイス・グランセニック?・・・男キャラなんぞ知りません」

で、今回の勝敗ですが・・・ルシルはガチで負けたのか、花を持たせたのか、それはご想像にお任せします。 
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