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エターナルトラベラー

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第六十四話

バトルヒーリングのスキル上げも終わったある日。

俺とシリカとクラインの3人はヴェレーノ湿原を抜け『不死者の洞窟』へと来ている。

なぜかと言えば、ヴェレーノ湿原の近くの町を拠点に狩りをしていたSOS団のメンバーがNPCから洞窟の奥に毒を撒き散らす鉱石が眠っていると言う話しを聞いたからだ。

この情報を纏めるとどうやらその鉱石ならば状態異常系の武器が作れるのでは?となったわけだが、あいにくそこはヴェレーノ湿原の奥の奥。

常時状態異常効果が襲ってくる地形効果の真っ只中だ。

SOS団のメンバーでは安全マージンがギリギリであるし、そもそもこんな所を潜るのは正気の沙汰ではない。

常に耐毒ポーションを服薬しなければならず、その出費はバカにならないし、薬がもつ間にたどり着ける可能性は少ない。

しかし、そこで俺の『アイテムの知識』である。

アイテムの知識の効果で耐毒ポーションの効果が3倍まで引きあがる。

つまりこれは3倍の時間状態異常に成る事は無いと言う事だから、十分に攻略が見込める。

「うぇ…なんかじめじめして嫌な所です…それに、出てくるモンスターが全部アンデッドで気持ち悪いです…」

そう言いつつも、シリカは油断無く構えたダガーを握りグールを切り裂く。

「きゅるーる」

ピナが同意とばかりに鳴いた。

「確かになっ!」

同意しながら身近なスケルトンへと曲刀を振り下ろす。

目の前のスケルトンがガラガラと音を立てて崩れ去った。

「おめぇらもう少し緊張感をもてよっ!」

クラインが突っ込んだ。

「油断をしているつもりは有りませんけど、アンデッドだからなのか動きが単調で…ゾンビウルフに気をつければ他の人型は普通の人型Mobより倒しやすいです」

そう言ったシリカの言葉にはその成長が伺える。

シリカの言葉にこんな子供がそんな事を言うとは信じられんと言った表情のクライン。

さて、気味が悪い所だし、さっさと攻略するべしと奥へと進む。

薄暗い洞窟を敵を倒しながら進むと道端にうずくまる小竜型のMobを発見する。

襲ってこない所を見るとノンアクティブだろうか。

「あれ?この子…索敵の光点が友好になっていますよ?」

シリカの言葉に俺もあわてて索敵画面の光点を確認する。

「え?あ、本当だ。…これはどういう事だ?」

俺達の声にぴくっと耳が動き、首を持ち上げてこちらをみあ小竜の体はやはり所々腐っていた。

さすがにこの瘴気の中はアンデッドMobしか居ないらしい。

対応に困っていると、クゥとピナが駆け寄った。

「なーう?」

「グ、グルル…」

「きゅるー?」

「グルール」

「にゃーー」

「きゅる」


なんか一生懸命に話しかけはじめちゃったよ?

「な、なあ?アレはなんて言っているんだ?」

「…クライン、俺が分かるわけ無いだろう」

「いや、テイマーなら分かるのかと思ってよぉ」

「でもでもっ!なんか和みますよね」

「それは…確かに」

だがシリカ、相手はリドラゾンビだぞ?

腐り具合とかちょっと怖くないか?

しばらく見守っているとどうやらクゥたちはあのリドラゾンビと仲良くなったらしい。

3匹がこちらにやってくる。

クゥとピナが飛んでこちらに戻ってくるが、それをなにか悲しそうな瞳で見つめるリドラゾンビ。

「グ、グル…」

「きゅる…」

「なーう…」

リドラゾンビの背に付いている翼は腐り落ち、骨が見えていて到底飛べるような状態ではない。

「なう…」

クゥが俺の肩に乗り、何かを訴えている。

「いくら俺でもあの子を飛ばす事は無理だぞ?」

「なーう」

どうしろと?

とりあえず、リドラゾンビに近づいて抱き上げる。

「グ?グル?」

ゲームでよかった。多少の不快感は有るけど、耐えられないほどではない。

「ほれ、翼を広げてみれ」

「グルール?」

俺はリドラゾンビを両手で頭の上に持ち上げた。

「どうするんですか?」

シリカが何をするんだと問いかけた。

「羽はボロボロだが滑空くらい出来るだろう?」

俺はAGIの許す限りの速度で走り、ジャンプ。

「グル?」

そのまま空中でリドラゾンビを放した。

「グルーーーーッ!」

そのまま滑空して洞窟内を30メートルほど進んで着地。

着地すると凄い勢いでこちらに向かって走ってきた。

「それで?結局お前はなんなんだ?」

「グル?グルール」

いや、わかんねぇよ。

「アオさん。どうやらクエスト受注状態になってるみたいです」

「何?」

人差し指を一文字に振り下ろしウィンドウを開く。

クエスト受注を確認すると確かに受領されている。

ただ、文字化けしたような意味不明な文字が羅列されているだけだったが。

「なんだコリャ?バグか?」

クラインが(かぶり)をふる。

「うーん、あたしはたぶん、この子が依頼主なんじゃないかなって思います」

そう言って視線で指したのはリドラゾンビ。

「こいつが?」

「はい、だからあたし達には意味不明な文字の羅列になったんじゃないかと」

そうか?そうだったらそれはそれで新しい発見だ。

今までのクエスト発生はNPCからのみだったのがMobからもあるかもしれないとはね。

「だけど、読めなければ何をして良いのかわからねぇぞ?」

そりゃそうだ。

「クラインさん。たぶん、あの子に付いて行けばいいじゃないかなって思います。なんかあたし達を誘導するみたいに時々こちらを振り返りながら先頭を進んでいますし」

「まあ、付いてってみようよ。でも油断しないで。いざとなったら転移結晶で逃げよう」

俺がそう纏めると、他の2人から否は無く、リドラゾンビの誘導にしたがって洞窟を進んだ。

敵を倒しつつ洞窟内を進むと、目の前には重厚な扉が見えてくる。

近づいて確認すると、特に鍵のようなものは無く、簡単に開きそうだった。

「グルッ…」

「これを開けれってことか」

「アオよぉ、これはなんてぇか、趣は違うがよぉ、迷宮区のボス部屋に似てねぇか?」

クラインが今までの経験からそう判断したようだ。

「確かに俺もそんな感じがしますね」

「ってこたぁ、ここのボス(迷宮区)はとっくにクリアされてっから、ネームドボスって事になるんじゃねぇか?」

確かに…

「どうします?アオさん」

行くんですか?とシリカが問いかけてきた。

むう。

いくらレベル的には格下とはいえ、ボスクラスのMobとの戦闘はリスクが高いか。

ここは引き返そうと声を掛けようとした瞬間、リドラゾンビが扉を開き、入っていってしまった。

さらに、それを追うように中に入っていくクゥとピナの二匹。

「ちょっと!ピナ、クゥちゃん!?」

あわてて回収しようとシリカまで中に入っていった。

「っ!待てよシリカっ!クライン、行くよっ!」

「お、おうよ!」

2人で駆け出したシリカ達を追いかけて部屋の中へと入った。

30メートルほど駆けただろうか。

中は思ったよりも広く、半円形をしたドームのようだった。

「シリカっ!」

「ごっ、ごめんなさいっ!」

何とかピナとクゥ、ついでにリドラゾンビを両腕に抱えたシリカが謝った…が、シリカは振りかえらずに前方を見つめている。

シリカの視線がたどり着く先には全長15メートルほどの大きさのドラゴンが伏せっていた。

「ど、ど、ど…」

シリカが余りの巨体に言葉を詰まらせる。

「ドラゴンッ!」

シリカの絶叫。

するとドラゴンはピクッとシリカの声に反応したわけではないだろうが、その首を挙げこちらを向いた。

「正確にはドラゴンゾンビだな。名前も出てる」

「そ、そんな事はどうでも良いだろっ!速く逃げようぜ?」

そうだね、この人数で当たるべきモンスターでは無い。

ドラゴンゾンビが息を吸い込んだような仕草をすると、思い切り、腐臭を撒き散らしながら鳴き声をあげた。

GURAAAAAAAAAAAA

「っ!」
「きゃっ!」
「がっ!」

直ぐに俺達は耳を押さえてその爆音に耐える。

見るとクゥ達も器用に自分の耳を押さえていた。

その後、ドラゴンゾンビは俺達の事を完璧に敵として見止めたようだ。

「シリカっ!結晶を使うよっ!」

「はいっ!転移っ!『フリーベン』」

アイテムストレージから取り出した転移結晶をその手に持ち、起動パスワードを唱えたシリカ。

しかし…

「え?なんで?」

「結晶無効化空間か!?」

結晶無効化空間。

その名の通り、転移結晶みたいな結晶アイテムが使えないエリアの事だ。

ドラゴンゾンビは四つの手足で立ち上がると、こちらに向かって突進してくる。

GURAAAAA

「シリカっ!避けろっ!」

「っ!」

その俺の言葉でシリカは転がるようにその突進を避ける。

ドラゴンの突進は止まらず、俺とクラインもたまらず避ける。

ドラゴンゾンビはこの部屋の唯一の出入り口まで走ると反転して扉を塞いでしまった。

「なっ!」

「こりゃ、ちょっとやばくね?」

やばいってもんじゃないだろ!

唯一の出口が塞がれてしまったんだ。それにどうやらあのドラゴンはあそこを動く気は無いらしい。

「アオさん!」

今度は後ろから駆け寄ってきたシリカが声を掛けてきた。

「…奴を倒すしかないんだろうなぁ」

「そんなっ!出来ますかね?」

「やるしかないだろう、クラインっ!クラインの仲間ならここまで来れるか?」

「くっ…ちと厳しいな。俺達もアオのアイテム効果3倍のおかげで来れたような物だしな…今から耐毒ポーションを買い溜めてくるとしても、3時間はかからぁ…一応メールしとくがな」

3時間。

それはこちらの耐毒ポーションがもたない。

「…やるしかないだろうな」

俺はアイテムストレージから耐毒ポーションを大量に取り出し、シリカ達に使用する。

「アイテム無効化じゃなくて本当に良かった。これでアイテムが無効なら確実に死にます」

「だなぁ、奴さんが動かないのも、この地形効果なら時間を掛ければこっちが勝手にくたばるのを待ってる感じか」

「く、クラインさん。縁起でもない事を言わないでください」

「わりぃ」

シリカがクラインを嗜める。

フラグっぽい事は言わないのがこのゲームが始まってからのマナーだよ?

それが死亡フラグならば尚更だ。

「あ、ちょっと!」

「グル…」

シリカの腕の中に居たリドラゾンビがもぞもぞと動き出し、その拘束から逃れた。

リドラゾンビは地面に着地すると一生懸命駆け出し、ドラゴンゾンビの方へと走っていった。

「ちょっと!危ない!」

どこにそんな俊敏性が隠されていたのか、シリカのAGIでも追いつけない速さで駆ける。

ドラゴンゾンビの前まで来たリドラゾンビは何かを必死に伝えるように鳴いた。

「グルウウウウウっ」

しかし、その声は通じずに鉤爪の一撃で吹き飛ばされてしまった。

「ああっ!?」

駆け寄ったシリカがリドラゾンビを抱き上げて下がる。

「ピナっこの子診てて!」

「クゥもお願い」

「きゅる!」
「なう!」

ピナとクゥは任せておけと力強く鳴いた。

「アオさんっ!クラインさんっ!」

シリカの瞳に闘志がみなぎる。

「いつでも行ける」
「おうっ!」

シリカの戦闘開始の合図にそれぞれの言葉で答える俺とクライン。

「行きますっ!」

まずは俺からだ。

ドラゴンタイプとの戦闘は久しぶりだが、もはや慣れたものだな。

彼らの攻撃は大体ブレス、鉤爪、尻尾なぎ払い辺りがデフォルトだろう。

息を吸い込んだドラゴンが大きくのけぞった。

「ブレス攻撃、来る!」

俺の声にシリカとクラインは距離を取って回避行動に出た。

俺はと言えば寧ろ前に出る事で斜線から外れるように動く。

GURAAAA

口元から発せられた直線のブレスをかわすとそのまま懐に潜り込んで一閃。

ザッ!

さらに二撃三撃と入れていく。

ヘイトを俺に向けた後、スイッチするようにシリカが逆方向から連撃。

さらに俺がスイッチしようと攻撃を仕掛けようとした所で、

「っ待て!アオっ!HPが減ってねぇっ!」

そう遠くからクラインの声が聞こえた。

その声で俺とシリカはドラゴンゾンビから離れようと駆けた。

「ダメージ判定がない!?」

ゾンビだけにいくら攻撃しても効果が無いとか?

今までのアンデッドは普通に倒せていたのだが…

俺が驚愕すると、クラインが冷静に答えた。

「弱点部位があるはずだ、そこ以外のダメージはねぇんじゃねえか?」

「弱点ってどこですか!?」

シリカが尻尾によるなぎ払いを転がりながら避け、立ち上がりざまに聞いた。

「そこまではわからねぇよ!大体それっぽい所だろ?どっかねぇか!?」

クラインがそう返した。

さて、仕切りなおしと皆ドラゴンゾンビから距離を取り観察する。

「あの額の宝石みたいなのはどうですかね?」

と、シリカが意見した。

「確かに、あそこから禍々しいエフェクトが発せられてて怪しいが…あれは届かなねぇだろ」

首を持ち上げるとゆうに3メートルは有るだろうか。

立っている状態のドラゴンゾンビの額をソードスキルで正確に狙うのは不可能に近い。

とりあえず、俺はヴィータに頼んで作って貰った飛針(ピック系アイテム)を取り出し、ブレス攻撃の範囲ギリギリから投擲した。

GYAUUUU

ガツっと言う音がして弾かれ貫通はしなかったが、それでも今始めてドラゴンゾンビのHPを削った。

「マジであそこかよっ!」

しかし、難易度はさらに高かった。

「よく見ろ、HPが回復している。自動回復能力まであるようだ」

俺が与えたダメージなんてものの数秒で回復したようだ。

「どうするよ!?」

「鉤爪での攻撃を誘導して頭が下がった所に攻撃するしかないだろ」

「マジかよっ!」

「マジだ」

「それしか無いんですよね?」

それ以外の選択肢は無さそうだ。

「俺が攻撃を誘導するから、2人はあの宝石を叩いてくれ」

「っ!分かりました!絶対に無理はしないで下さいね!」
「ヘマするなよなっ!」

一番危険な役回りを引き受けた俺を二人がそれぞれの言葉で激励する。

これは頑張るしかないな。

左手の曲刀を鞘にしまい、機動力の落ちにくいミドルシールドをアイテムストレージから取り出す。

「行きますっ!」

まず俺がドラゴンゾンビの正面に立ち、爪での攻撃を誘導する。

当然、爪での攻撃は前傾姿勢になる為に自然と頭が下がる。

「やっ!」

シリカがすかさずにダガーを振った。

瞬間、HPが今までの戦闘が嘘だったかのように減少する。

「効いてますよ!」

「ああ、ようやく突破口が見えてきたな」


俺が誘導し、そこをサイドからシリカとクラインのどちらか近いほうが宝石めがけて攻撃すること十数回。

ドラゴンゾンビのHPも残り一割になったとき、ドラゴンゾンビのモーションが変わった。

「!?シリカ、クライン、気をつけて!何か違う!」

俺の叫びも虚しく、突如としてドラゴンゾンビの体表からガスが発生し、ドラゴンゾンビを中心に半円状に包み込んだ。

「何が!?」

クラインが戸惑いの声を上げる。

「HPは減ってないです!」

シリカが素早く状態をチェックした。

だが…

「武器が腐食している?」

バキンっ

俺の左手に持っていた盾が音を立てて崩れ落ちた。

今までの攻撃で耐久値をすり減らしていた武器だが、まだもうしばらくは大丈夫だったはずだ。

それでも壊れたのは今の煙に包まれたからだろう。

「武器破壊攻撃!?」

マズイと感じた俺達は直ぐにドラゴンゾンビから距離を取り、ガスの有効範囲内から出る。

「アオさん、まずいです。武器がやられました…」

「オレもだ…」

「予備は?」

「あたしは前装備していたもう一組だけですね…」

「オレも予備は一本だけだぜ…」

結構やばい状況だね…武器破壊か…それよりマズイのは防具。

「防具の耐久値どれくらい残ってる?」

「マズイですね。あのガス攻撃を食らったら多分一分くらいしかもちませんよ」

「こっちもだ…せっかくこの前新調したばかりの一張羅だってのによぉ」

こうやって話している今もドラゴンゾンビのHPは回復している。

さらに悪い事にガスは解除されていない。

ガスは地表二メートルほどを多い、視界を奪っているが、ドラゴンゾンビ自体はガスの上からこちらを見下ろしてしているので自分の視界を塞いでるわけではないらしい。

「どうにか次の一撃で1割強のダメージを与えないとこっちがやばいな」

「どうするんですか!?」

…うーむ。これは少し賭けになるが、うまく行けば多分倒せる。

少々危険だがな。

「時間が無いから方法は省くが、信じてくれ。シリカ、クライン。奴のヘイトを2人で集めてくれないか?」

「お、おう。任せてくれ!」

「絶対無茶はしないで下さいね」

その言葉には従えないな、無理はしないが無茶はしなければこの場を乗り切れないのだから。

シリカとクラインが駆けて行くのをみて、アイテムストレージからSOS団からその使い(ネタ)と一緒に渡された先端が二股の4メートルを超える長槍を取り出す。

さらに敏捷度と重量を考慮して防具を胸元以外を取り外すし、ウィンドウを開いたまま俺は槍の穂先を自分の方へ向けて構える。

「あああああああっ!」

俺は気合と共にドラゴンゾンビへと駆け、長槍をドラゴンゾンビ手前に突き刺した。

「は?」
「へ?」

俺の行動にあっけに取られる二人。

俺はそのまま棒高跳びの要領で飛び上がり、槍の二股に分かれた穂先を踏み台にしてさらに駆け上がった。

っと、そこで自分の仕事を思い出したクラインとシリカが必死にドラゴンゾンビのヘイトを稼ぐ。

「おらっ!」
「あなたの相手はこっちです!」


「おおおおおおおおっ!」

空中に躍り出た俺は開いたままのアイテムウィンドウから俺の装備腕力では到底足りていない程の重量をもった大斧を取り出すと、空中でその柄を掴み、自分の体重を乗っけて一直線にドラゴンゾンビの額にある宝石へとたたきつけた。

バキっと音と共に宝石が砕ける音が響き渡る。

俺は投げ出されるようにドラゴンゾンビから放り出され、地面に着地する。

何とか受身は取ったが、高度からの着地のダメージで減ったHPを、取り出したポーションで回復させる。

バクバクバク

この世界ではあるはずの無い心臓音が聞こえてきそうだった。

「っ!アオさん!無茶はしないで下さいと言ったじゃないですか!」

シリカが半泣きの表情で俺にしがみつき、心配しましたとこぼした。

「わるぃ、わるかったって!」

「本当に悪いって思っているんですか?あたしがどれだけ心配したか…」

「悪かったって。この後のゴハンは奢ってやるから」

「…今日はフルコースです。今決めました!クラインさん、せいぜい破産するまで2人でアオさんにたかりましょうね!」

「あ、ああ…なんかシリカ…キャラ変わってねぇか?」

「っと、そんな事よりもドラゴンゾンビは?」

「大丈夫です、アオさんの一撃できっちり倒してます」

確認してから来るに決まってるじゃないですか!全て貴方から学んだ事ですよ!と、また怒られてしまった。

見ると確かにHPバーは全損しているが、その巨体は横たわったままだ。

どうしたことか?と見ていると、リドラゾンビがよたよたしながらドラゴンゾンビに歩いていくのが見えた。

「グルゥ…」

リドラゾンビは悲しそうに鳴くと、二体の体が光に包まれる。

その体から魂のような物が抜け出し、寄り添うと、二体は光と共に消え去った。

すると今までたち込めていた霧は晴れ、洞窟に明かりが戻ってくる。

するとクラインにメールが入ったようだ。

「何か外の毒沼が消えたらしいぞ?ボスを倒すとなくなるようになってたのかもな」

関心した後、「げ!って事はバトルヒーリングのスキル上げはもうできねぇってことじゃねぇか」と絶叫していたが、クラインのPTは殆ど上げ終わってるんだから良いじゃないか。

消える直前、リドラゾンビがクゥとピナのところに行ったと思うと、一瞬クゥとピナが発光したかのように見えた。

「きっと、あの子のお母さんだったんですよ。あたし達に助けて欲しかったんだと思います」

かも知れないな。

消える二匹を見送ると、ようやくアイテムがドロップしたようだ。

アイテムストレージが嬉しい悲鳴を上げている。

「あ、コレは何でしょうか?」

ドラゴンゾンビの砕けた宝石はそのまま地表に残ったようだ。

「鉱石系のアイテムだろうな。噂の状態異常付加の鉱石じゃねぇか?」

「多分そうじゃないか?数は…丁度3個かこれは三人で山分けでいい?」

「ああ、それでいいぜ」
「あたしも構いません」

鉱石をしまい込むと、クゥとピナがやってきてそれぞれのテイマーの肩へととまる。

クゥをなでてやりながら先ほどのエフェクトが何だったのか聞いて見る。

「クゥ?さっきリドラゾンビは君達に何をしてったんだ?」

「クゥ?」

クゥはちょこんと首をかしげると、虚空に向かって真っ黒い霧を吐き出した。

「わっ!」
「うぉあ!」
「な、何ですか?」

「煙幕…かな?」

どうやらクゥとピナの特技が増えたようだ。

「さて、帰ろうか」

「さすがに疲れました…」

「けどよぉ…来た道をもどらねぇとならんのだが…」

耐久値が限界な俺達は隠蔽スキルを駆使して洞窟を突っ切って帰ることになった。

その時、早くもクゥとピナの煙幕が役に立ったと記述しておく。
 
 

 
後書き
さて、今回は新しいスキル外スキルですね。
名前をつけるとしたらアポートとか?かな。
最後のアオの攻撃のネタ分かる人は居るかな…居ると信じてます! 
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