| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ランス ~another story~

作者:じーくw
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第1章 光をもとめて
  第5話 桃色の巨凶

~リーザス城下町 パリス学園~


 それは、翌日の事

 意気揚々と酒をがぶ飲みしていたランス。何時もであれば、シィルがそれとなくブレーキをかけてくれて、飲み過ぎないのだが……、今は彼女は学園生活を満喫……、じゃなく 潜入捜査をしてくれているからいないのだ。
 それもあって、朝まで続いていたランスはあっさりと酔っ払ってしまった。
 パルプテンクスがランスに元気の薬やへパリゼーをサービスし、何とかランスは回復はしたが、それでも色々ときつそうだ。因みにユーリはと言うと、勿論自分のペースで無理なく飲んでいたし、それなりに酒には強いから問題なし。
 だが、ランスは有頂天になりながら飲んでいたからこうなってしまったのだ。
 二日酔いに気味だったのだが、とりあえず大丈夫そうだ。

「……と言う訳だ。オレ様たちはこれから城に入る。シィルもしっかりと調査を続けるんだぞ。サボったりしたらお仕置きだからな」
「はいっ 任せて下さい」

 そして今日、シィルと交換した情報は重要なものだった。

「……学園が俄然きな臭くなっているな」
「うむ。まさかヒカリちゃん以外にもいるとは」

 そう、ヒカリ以外の生徒の失踪事件は他にもあったのだ。そして、その全てが迷宮入りしてしまっていると言う事だ。ユーリは事前に情報屋である程度仕入れていたのだが、現地で調達してくれたシィルによって、完全に裏が取れたのだ。リーザス情報屋。相変わらずの情報の精度だろう。

「はい。私も悪いとは思いましたが、魔法で心を読ませていただいて情報を得ました。……ですが、それ以上の情報はありませんでした」
「魔法とは言えそこまで万能では無いから仕方ないさ。……そして、その手の魔法は感知される事もある。流石に公共機関でおおっぴらな事はしないと思うが、もう学園が潔白とは思えないから、調査をする時は慎重にな」
「あ、はい。ありがとうございます」
「おいこら! 人の奴隷に勝手に命令するんじゃない!」

 人の思考を読む魔法は比較的浅い考えまでしか読み取る事はできない。いや、Lv2以上の力を持つものであれば、高度で複雑な魔法を用い読めるかもしれないが、シィルはそこまでは出来ないし、あまりに目立ちすぎれば魔法大国であるゼスに目をつけられかねないのもあるのだ。

「でも、1つ気になった事はあります」
「む? さっさと言え」
「その、生徒の中で1人だけ、心を読むことが出来なかった女性がいました。恐らくですが、精神にシールドの魔法をかけているのだと思います」
「お嬢様が通う学園……って事だから親が心配してかけている。……考えられなくも無いが、もし別の意味でしているとしたら、不自然極まりないな」
「ふむ。怪しいな。におうぞ! おいシィル」
「は、はい」
「その娘は美人か!?」

 ランスの言葉に思わずずっこけそうになるのを必死に堪えるユーリ。この会話の流れでもそこへと持っていくのはある意味では凄いと感心さえ覚えていた。が、急を要する内容だったため、軽くスルーする事に。

「はぁ、着かず離れず。深追いはしないように。でも 怪しいのは確かだから注意して監視した方が良いな」
「あ、はい! 頑張ります」
「だから、貴様が人の奴隷に命令するんじゃない! ええぇい! シィル後でお仕置きだからな! とりあえず、その生徒をマークし続けろ」
「あぅ は、はい。わかりました。ランス様もユーリさんもどうかお気をつけて」
「はは、ありがとう。(……君と少し話しただけで こんなに妬くとはな。随分と好かれているみたいだな?)」
「ぁっ……///」

 ユーリはシィルに礼を言うと同時に、小声でそう言う。ランスはこの時はもう背を向けており、こちらの会話には入ってきていないのだ。その言葉を聞いたシィルは顔を少し赤らめて、笑顔になっていた。
 彼女も……嬉しいんだろう。ランスに頼られることも、少しの事で、そう言う風に嫉妬してくれること、独占をしたいと想ってくれている事を。……本人は口には決して出さないとは想うけれど。





 そして、シィルと分かれたその後は通行書の手形を片手に、門を潜った。
 
 ランスが入手出来たのは、シィルが先生から預かったと言う通行書を貰った(奪った)から、そして ユーリは前言通り、情報屋から仕入れたモノだ。



 門番のメナドは、不満がかなりあるようだが新たなメンバー、つまりユーリが要る事でそこまで怪しまなかったようだ。……逆にあんな男に無理矢理連れてこられて可哀想……とまで思ってしまっていたようだった。

「あのコ……大丈夫だろうか。あんな野蛮な男に連れられて……」

 通行書を持っている以上は通行の許可は出ているから、通していい決まりだが、隣で一緒に向かっていた男の表情が目に飛び込んできたようだ。
 その若い容姿を。

「……ひょっとしたら、僕やかなみより若いかも。装備から見て冒険者だけど。アイツに良い様に使われてるんじゃ……」

 どんどん、良くない想像が膨らむ。
 果てには、次にあったら助けた方が良いか?とまでに発展しつつあったが、勤務交代の時間になった為、そこでストップした。

 勿論、それは全て間違いである。






~リーザス城内部~




 城内部へと足を踏み入れた2人。
 城自体に入る事は、無かったわけではないが ここリーザス城は初めてだった。第一声、思った事は勿論。

『なぜ、城の中にコロシアムやカジノがある?』である。

 城下町にあるわけじゃなく、城内部。随分と豪華な城だ。……これが王族の移行だったとすれば、盛大に庶民の税金を無駄にしていると思わずにはいられない。が、一般にも開放はしているようだし、治安も良い事から出来る芸当だとは思える。

 ……だが、方や華やかな城内部、方や行方不明者の出る学園に、経営に苦しむ店舗。光と影が浮き彫りになってくると言うものだ。

 とりあえず、2人は人の多い場所で情報を得ようと言う事で、カジノへと向かった。

 聞き込みの調査は勿論、オープンな場所だったら、話し声も筒抜けだから集まりやすいものだが、実際はそう簡単にはいかない。何日もの積み重ねが実を結ぶのが普通だ。故に最初に向かうのはコロシアム。 カジノは日中開いていないからだ。





~リーザス・コロシアム~


 その場所は、中央の円形広場を見下ろす様な形でぐるりと観客席が並んでいる。そのコロシアム広場の真ん中で剣闘士であろう2人が戦っていた。

 その2人の戦いに合わせて、観客達はまるで殺気立っているかの様に歓声をあげる。

『そこだーー!! いけーー!!』
『バカ野郎! お前に全財産賭けてるんだぞ!!』
『殺せ! 殺せ! 殺せーー!!』        

 自分たちがいる場所はコロシアムの出入り口。故に観客は少ない方なのだが……、これではどこにいても同じだろう。         

「ほほぅ、中々賑わってるな」
「……戦ってる戦士たちより、観客の方が殺気立ってる気がする。随分と金が動くようだ」                                               

 多くの金は、人の心を容易に動かす。欲にまみれた人間たちを何度も見てきているからこそ、判る事だ。
 まぁ、コロシアムは戦士達にとっては、闘技場であり、命を賭ける場所、観客にとってはただの娯楽だから、嫌悪する対象ではないだろうけど。

「コロシアムのランキング……か」
「ふん。オレ様が出たら、あっと言う間に1位決定だ!」
「はぁ……、まぁ ここのコロシアムは基本的に総当り戦のリーグ戦。……が、今回はトーナメント式になる様だ」
「む? どう言う事だ?」
「つまり、態々最下位から順当に倒して言って、ランキングをあげる必要がない。最下位でも、トーナメントで勝つ事が出来たら即1位だと言う事」
「おお! 成る程。なら、オレ様が1位だな。がははは!」

 先ほど、入口に置かれていたパンフレットに今回の事が載っていたから知っているのだが、ランスはそう言うのは気にならない様だ。
 と言うよりも。

「参加する為には、参加賞がいるんだが……、そもそも目的から外れてるだろ? 頑張って手に入れるか? 発行してるのは王族だが」
「……それは面倒くさいぞ。まぁ、オレ様が最強なのは周知の事実だ。態々公表する必要などはないか。がははは」

 ランスはそう言うと、あっさりと諦めた様だ。

「と言うより、ここは恐ろしく広い。別れて調べた方が効率的じゃないか?」
「む? オレ様は下僕が不貞行為をしない事を監視する為にいるのだ」
「はぁ?」
「オレ様と言う監視がいなくなったら、女を襲うつもりだろう!」
「何をどう考えたらそう言う結論になるんだよ! そもそも、これまでもオレはお前と一緒にいたが、んな馬鹿なことしてたか?」

 何だか恒例になりつつあるランスとユーリの言い合い。この後、数分間色々と言い合っていた様だが、最終的に二手に分かれて行動する事になった。

「はぁ……、なんの因果か、アイツと一緒になったんだ? オレは」

 別れて行動する事でそれなりには効率が良くなっただろうか。でも、あの男といる事で、良い方向へと向かっている事は判る。
 あの忍者が、ランスに襲ってきたからこそ 闇の根幹を見た。パルプテンクス救出の件に関しても、ランスがあの時間帯でも酒場に行くと決めなかったら、もっと遅くなっていた可能性も高い。
 そして、ランスと一緒にいたシィルの件もそうだ。 
 彼女が学園を調べてくれているお陰で、色々と裏が取る事が出来た。リーザス城の通行書手形に関しては、2つ手に入れる事は難しかったが、ランスはあっさりと入手してのけたのだ。
 それも、一切の計算などはない。あるのは、強引かつ大胆な行動のみである。

「強運。凶運。……天運の持ち主、って事なんだろうな。……事実 オレが忍者がこの城内に、城壁を飛び越えて 入るあの部分を見なければ……、上層部がそこまで怪しいとは思わなかったかもしれない」

 ユーリはそう思いつつ、調査を再開していくのだった。





 
 そして、丁度ランスはと言うと。

「がははは! そう言えば、あのガキがいるから、オレ様はガキ付きだと思われて、女の子達とエッチが出来なかったのだったな!」

 厄介払いが出来た、と何だか開き直った様子だった。

「が、調査を怠っている様なら罰ゲームだな。キースギルド一の童顔。童顔と、リーザス中に広めてやろう」

 大切な事?なので二度言うランス。
 そして、ランスは意気揚々とそう言うと、何処かへと歩いて行った。








~リーザス城下町・中央広場~





 ランスは、あの後カジノへと向かっていた。そこで脱衣ルーレットをしていたのだが……。

「ぐむむむ、イカサマだと……」

 カジノ内で出会った青髪の少女にイカサマだと告げられたのだ。が、その証拠を得る事は出来ず、一先ず金も無くなりそうだったから、外へと出てきていたのだ。
 ……シィルから、金を巻き上げる為、と言うのが本当の理由である。

「む……? あのコは確か……」

 広場のベンチで唸っていた時、再びカジノで出会ったあの少女と再開する事になったのだった。
 
 これが、カジノでのイカサマ事件、解決への糸口。ランス大活躍?? の始まり……かもしれない。
 
 それは、ランス1人であれば(・・・・・・)、の話だった。




~リーザス カジノ・香港マカオ~


 入った先には、きらびやかな空間が広がっていた。太陽が昇っている時間帯の外よりもここの光は強いだろうと思える。ルーレット台にスロット、カード用のテーブルなどが広がり、身なりのいい客たちが談笑したり、賭博に熱狂したりしている。

「ふむ……、人が集まる所には、情報が集まりやすい。基本だがな」

 ここに来ていたのはユーリ。カジノ内を見渡した。因みに、このカジノに入るのにも勿論タダじゃない。

「あっと、お客様。招待状はございますか?」 

 係員だろう男が話しかけてきた。スーツ姿でびっしりと決めており、如何にも、と言った容姿。守りは万全だとは思えないが、出入り口には、屈強なリーザスの兵士たちがいるから、何かトラブルがあれば、彼らがすっ飛んでくるのだろう。

「ああ。これでいいか?」
「……はい。確認しました。どうぞ、ごゆるりとお楽しみください」

 ユーリは、そのまま奥へと進んでいく。
 屋内で、フード姿でウロウロするのは、とも思えたが、人間もかなりいるから、そこまで目立つ事はない。まさに《木を隠すのなら森》状態だ。

「流石はカジノ大分賑わってるな……ん?」

 歩いている際に、ある所に目がいった。
 このカジノ内で一番人が集まっている場所だ。
 それは、ルーレットの台であり、そこには女の子がいた。何やら、座り 服に手をかけている。

「……脱衣ゲームでもやってるのか? ここは」

 確かに、金も勿論あると思えるが、男の欲望といえば、それも大きいだろう。身近にそんな感じの男がいるから更に判る。
 まるまる興味が無い。と言えばガキだと思われてしまうだろう。だから、そこまで興味がないわけじゃないが、それはあくまでフリーの時に限る。
 ここには遊びに来ている訳じゃないのだから。

「ん? 鞄を下ろした?」

 別に良いか、と視線を変えようとした時、あの女の子の笑顔が一瞬歪み、そして 鞄を下ろしていた。

「ふむ……」

 ユーリは何か気になったのだろうか、ルーレット台の方へと向かっていった。


「ふふふ、私の事、全部脱がす事が出来たら 10,000GOLD。忘れてないわよね~?」
「ぐぬぬぬ、勿論だ! 猪口才な! もう、そんな寒い真似は出来んぞ。ストラップも鞄も靴下も……、次は ぜーーったい服になるんだからなー!」

 何処か、ランスに似た言動を喚きだす男。
 容姿は……、ハゲ頭、そして だらしないぽっこり腹、だが 金だけはある。と言った感じの……所謂モブだ。そこは問題じゃない。

「うふふ、次からだねー お楽しみなのは♪」

 女の子が言う通り、次に身体から外すものは無い。もし負けたら、服を脱ぐ事になるだろう。
 だからだろうか、これだけ観客(ギャラリー)が集まってきているのだろうか。
 そして、皆がルーレットに集中する最中。

「……カモが! ここからが本番だぜ~」

 間違いなく、この女のコの笑顔が、変わった。どっかの誰かに似たギザギザな歯に、まるでモンスターか? と思える様な血走った目。
 多分、心の声のつもりだろうけれど、ダダ漏れしている。

「………」
「っと! さぁ、どーでるー??」

 ユーリの視線に気づいたのか、慌てて元に戻していた。
 
 そして、ルーレットは架橋だ。まわっている玉の勢いはどんどん失速してき……。

「よっしゃーー!! 赤だっっ!!」

 男のガッツポーズと叫びが響いた。そう、間違いなく赤に入るであろう軌道と勢い。……だったのだが、その赤に入るであろう玉は、自然ではありえない。急に失速して黒に入ったのだ。

「なななっ!!」

 勝利を疑ってなかったからこそ、次に見た瞬間、男はぼう然としていた。

「ざ~~んね~~ん。……惜しかったー 玉の勢いがちょっと足りなかったね~……。はーい ゴンゾーの負ーけ! お金没収だよー」
「ぐぬぬぬぬ! 次だ! 次こそは~~!!」

 ここからは、もう暴走モード突入だ。交代のネジが完全に切れた哀れな男。まるで、翔竜山から落下するのを止められない様に、勢いよく、散財してしまっていた。

「は~~い、ざんねんでしたー」
「うぐおおおおおっっ!!?? も、文無しになっちゃったーーー! うそだーーー!!」

 大の大人がみっともなく泣き喚きながら退出していった。途中から雲行きが妖しくなって、女の子の脱衣は見られない、と悟った様で、お客の殆どはいなくなっていたけれど、ユーリはずっと見ていた。

「あーら? お兄さんもやるー?」

 そんなユーリに目をつけたのはあの少女だ。

「ん……。そうだな、面白そうだ」

 ユーリはそれを見て、ニヤリと笑った。

「ふふふ、ありがとー。さっきの見ても勝負してくれるなんて……、お兄さんとっても強そうだねーー」

 不敵な笑みを隠さない。その中には絶対の自信を醸し出していた。だが、それはありえない。ルーレットと言うものは、基本的に確率であり、絶対の攻略法などありえない。

「リセ・マラする訳でもないのに、ありえないなぁ……」
「は? りせまら??」
「いや、こっちの話だ。……そうだな。基本ルールは判った。そして確か、掛金は、君か金か。だな?」
「そー、そのとーり。最低が500からの掛金で、もうひとつは、私が一枚ずつ脱いじゃうモード」
「ふむふむ……。じゃあ、金の方を選ぼう」
「ふーん……」

 じっと見つめる女の子。何処まで搾り取れるだろうか、と考えているのがモロ判りだ。

(いつ発動さそうか、迷っちゃうなぁ、さっきの連中、ランスやGONZO✩ と違って読みにくい…… 一先ず様子見)

「どうだ? 最初は……そうだな。様子見と言う事でミニマムの500で」
「おーけー。かもーんだよ スタート!」

 そう言うと、ルーレットが回りだす。

「っとと、自己紹介がすんでなかったねー 私は葉月だよー 甲州院葉月」
「……ユーリだ。掛けていいか?」
「もっちろん!」
「よし。なら赤だ」

 ユーリがそう言うと、ルーレットの玉がジョジョに速度を弱めていく。そして、それがナイ集に向かい、少しずつ数字枠に引っかかり始め……、最終的に赤の中へと収まった。

「……勝ち、だな」
「や~~、負けちゃったね~。ほい。1000GOLD! で、どうする? 1勝くらいじゃ満足しないよねー?」

 挑戦的な眼差しを向けてくる葉月。 これで、倍々と上げていけば、大金がゲット出来るだろう。普通であれば、たった1勝した程度ではまだ動かない。勝負の雲行きを、流れを把握しつつ、波に乗らなければならない。

 だが、ユーリは。

「無論だ。……更にベットするぞ」

 ユーリがそう言って上げた金額は……。

「おー、そうこなく……っちゃ……って、はぁぁ!?」

 葉月は笑っていたのだが、すぐに目を見開いていた。そこには、金貨の山があったからだ。

「1つ目の依頼を済ませたばかりで、ちょっぴり隠していたんだ。 まぁ、連れにはいってない持ち金だから、オレがこれだけ持ってたって事はここだけの話にしてくれ」

 ユーリがそう言うと、葉月は、はっ! としたのか 直ぐに笑顔にもどした。

「そ、それくらいいいですよー? 個人情報、顧客情報は守りますともー。それより、いいんですか~? 10,000くらい、ありますよ~? もし負けたら……」
「ああ、没収だな」
「良いんですね?」
「ああ。くどいぞ」
「(コイツ、馬鹿か? いや、最高のカモだ!!)わーかりましたーー!」

 葉月は、意気揚々としながら、ルーレットに手をかけた。

「……素の顔が出てるぞ?」
「え? な、なーにを言ってるんですかねー??」

 あまりの大金を目の当たりにした葉月は正直表情が緩んでしまっていたのだろう。

「さ、さっさといきましょー!」

 そう言うと、さっさとルーレットを回した。そして、他のディーラーたちも出てきた。どうやら、今日一番の金の動きなのだろう。

「さぁ、どっちに賭ける~?」

 ぐるぐると回る玉を見ながらそう訊く葉月。明らかに緩んでいる顔。

「そうだな。赤で」
「よっしゃーー」

 意気揚々とルーレットを見る葉月。徐々に緩まっていき勢い。
 ユーリは、その玉をじっと、見ていた。その視線は鋭くなっていく。

 そして……、玉が止まろうとするその瞬間。

『煉獄』

 ユーリは、決して言葉を発した訳じゃない。ただ、視線を玉に向け、睨みつけたのだ。
 殺気を1点に集中させる。周囲に漏れずにただただ1点の玉に。

「っっ!!!」

 それを受けた玉は、突然跳躍をしだした。

「……は?」

 葉月は、突然有り得ない現象が起きたのを見て、仰天した。玉は、その後もまるで生きているかの様に動き回っていて、そして大金が動いた事で集まってきた周囲の客たちも、同時に響めく。

「ん? 地震でも起きたのかな……? 最近は多いからな」

 ユーリはそう言うと、素早く頭上にある鮮やかな照明器具に向かって、煉獄を、気合を飛ばした。僅かな勢いで 揺れる照明器具。

『お?? ほんとだ。全然感じないけど。揺れてんだから』

 客の1人がそう言うと、口々に皆が納得していった。
 そうこうしている間に、あの玉は、まるで何かに詰まったのか、と思える位置で固まって止まっていた。

「……ふむ。無効、だな。この場合はどうするんだ? 公平(・・)なルーレットでは」

 不敵な笑みを見せながらそう言うユーリ。葉月は、何かを察したのか。

「わ、わかりましたー。おおきな勝負が出来そうだったんですがー、ざんねんだったねー。ひょっとしたら、おにーさんが 大金持ちになれたかもしれないのにねー」

 引き攣りながらもそう言う葉月。

「さて」

 ユーリは、殺気を飛ばすのをやめた途端に、力が抜けたのだろうか? 玉はよろよろと落ちてきて、黒の中に収まった。まだ、何も触っていないのにも関わらずだ。

「ぁ……」
「随分と珍しいのを、カジノの玉にしている様だな。成る程、ぷちまるの亜種か。よく調教できたモノだ」
「う……ぐっ……」
「……良かったな。客の目も、ここのスタッフの目も今は逸れている。……知ってるのはオレだけだ」

 決して笑っていないユーリの顔。それを見た葉月は、察した様だ。何か別の目的があるということに。

「な、何が目的……なの?」

 びくびく、と震えているのが判る。ここからは、ピンクな妄想が広がる18禁ワールドが開催されるのが普通?だろう。
 でも、生憎だがそんな展開にはならない。

「訊きたい事がある。……このカジノは富みを生み出す場所だ。リーザスの重鎮とも繋がりが深いだろう?」
「う、まぁ 御贔屓にしてもらってる、と言うより 儲けが無かった場合も最低限度の給料は国が払ってくれてるから……」

 儲けが無ければ普通は給料カットとなる所だが、それなりの成果を上げている葉月は、その辺は特待してくれているのだ。
 勿論、イカサマだろうけれど。

「……そして、この城内で勤務している。カジノが始まる夜をだ」
「え、ええ。そうだけど」
「なら、 この子の事、知らないか? ヒカリと言う名で この城内に攫われたみたいなんだ」

 そう言うと、写真を見せた。葉月は、神妙な顔をしながらも、写真に目を移す。

「ん……、知らない。ほんとだよ?? 知らない……」

 知っていれば、ちゃんと話す事は判る。何故なら、自分自身が掛かっているのだから。このイカサマがバレてしまえばどうなってしまうのか、それが直ぐに判るから。

「だろうな。なら、次だ。……怪しい人影とか、見なかったか? この辺りで。この子をさらったのは、忍者らしくて、な。……馬鹿正直に女の子を担いでここに来るとは思えない」
「え、え、……にん……じゃ……? ぁ!」

 葉月は、何かを思い出した様に、口を開けた。

「そ、そう言えば、何日か前、ここの外のおおきな木で、何か影が動いたんだった」
「ん……」
「で、鳥かな? って思ったんだけど……、あっという間に消えちゃって、それで 一番東の窓が開いて……それでも、何も見えなくて お化けが出たっておもっちゃって、そこからはみてないんだ」

 気味が悪そうに話す葉月。
 有力な情報だ。そして、その忍者が向かったであろう先についても把握する事が出来た。
 隠密で動いているのであれば、大手を振って城内を歩き回れる筈が無い。故に最短距離で到着する場所に主がいるのであろう。
 その後、正確な場所を葉月に教えてもらうユーリ。どの窓から入ったかを。

 真偽については、100%とは言えないが、嘘を言っている様子も無いし、言える様な状況でも無い事は判っている。

「いい情報をどうも」
「い、いや、礼を言われる程じゃ……、あの、その…… このことは……」
「ん? ああ、あのルーレットの件か」

 ユーリは、思い出した様に頷くと、軽く笑った。

「……まぁ 何も言わないでおこう。ただ、もうやめておけよ。オレじゃなくても、見破る奴はごまんといる。……で、良心の呵責があるのなら、騙した人たちに謝る事だな。別に強制ではない」

 ユーリはそう言うと、背を向けた。

「(ほっ……、アイツが入ってきたら、すぐに変えられる様に替え玉を用意しとかないと……)」
「後、そうだ」
「うひゃい!? な、何?」

 突然、ユーリが振り返って、驚き声が裏返ってしまった。それを見たユーリは、にやりと笑う。

「恐ろしく運が強い男がこの国にいる。……気をつけた方がイイぞ。引き際を ちゃんと見極める様にな」

 そう言って笑うと……、そのまま カジノの外へと出て行った。

「ふ、ふん。格好付けめっ! で、でも、アイツだけは超要注意人物だ……、ちゃんと根回ししておかないと……」

 まるで指名手配犯の様に瞬く間にユーリの事は、スタッフ間に出回っていった。イカサマについては、それなりに黙殺している部分があるのだ。
 勿論、公に認めている訳じゃないから、最終的にバレたら、トカゲのしっぽきり、と言う事で 彼女が切られるだけだが。


 つまり、全く反省せず、これからも続ける気満々だったのだ。……それが葉月にとって悲劇となるのは、また別の話。


『がーーーっはっはっは!!』


 

 そして、その後は色々と確認をして回った後、ランスと合流した。

「……何やらカジノで騒がしかったが、ランスか?」
「がーっはっはっは!! オレ様は正義の使者だからな! 悪さをする子にお仕置きをしたまでだ。がははは!」
「はぁ……」

 予想通り、と言えばそうなのである。葉月は相手が悪かったと言う事で諦めてもらおう。

「そう言えば、葉月ちゃんは、『今日ななんで2人もーー!』 と言っていたのだが……、まさかとは思うが貴様、何かしたのか?」
「ん? ああ、一応忠告をな」
「何ぃ!! やはり、 貴様か!! オレ様の葉月を襲ったのは!」
「だから、なんでそうなるんだよ。……それに襲ったの、絶対お前だろ?」
「む? 襲ったのではない。お仕置きをしたのだ! ……そう言えば、処女だったな」
「そんな事は聞いとらん」

 ユーリはため息を吐きながらそう言う。
 ランスは、ついさっきまでその行為をしており、その時の事を思い出していた様だ。

「はぁ、一応城内なんだし、目立つ事は避けた方がイイぞ? 兵隊共に目をつけられたら面倒だろ?」
「がははは! もう他にも美味しくいただいたからな。少しくらいは我慢してやろう」
「はぁ……」
「ま、ガキにはわからん。アキちゃんにユキちゃん。ぐふふ、良かったぞ? ああ、勿論葉月ちゃんもな!」
「はいはい」

 ユーリは再びため息をつき、先へと向かったその時だ。
 城の廊下を一匹の鼠が横切った。如何に綺麗にしてあるとは言え、しょうがないと言えばしょうがないが、ランスが注目したのは何かを咥えていると言う事。
 殆ど一瞬だったが、正確にランスはそれが何かを捉えていた。白い布を……。

「おっ! あれは女物のパンティーではないか! つまりは、この部屋に女がいると言う事だな!? がはは! 突撃~~!」
「何やってんだ馬鹿! と言うか、さっき言ったばっかだろ。城内で怪しい行動すんなって!」

 ユーリが引きとめようとするが空振りに終わる。
 今はコロシアムやカジノと違って、リーザス城内だ。ここ一番のランスの行動力とその素早さは光るものがあるが、如何せん内容が内容だ。そして今は潜入中といっても差し支えない状況。

 今更少しは自重してもらいたいものだとユーリは思っていたが……。次の瞬間にはその思いは吹き飛ぶ事になる。

 ユーリが続けて入った先には少女がいた。
 桃色の長い髪の少女。

「え…? 誰? 健太郎くん? あ、違った。」
「おおっ! 中々の美少女では無いか! 久々の90点越えだ」
「………」

 この状況ならランスは一目散に少女を犯そうとするだろう。

 だが、その未来はどうしても見られない。
 目の前にいるのはどう見ても年端のいかない幼さの残る少女。なのに何故だろうか?その身に潜んでいるような荘厳たる気配を強く感じるのだ。
 凡そ理解しがたいモノを内に秘めているとでも言うのだろうか?

 ユーリはこの瞬間、1秒にも満たない時間だったが、思考が纏まらなかった。
 その間にランスは行動に移すようだ。

「がははっ! 見れば見る程美少女では無いか! オレ様とセックスをしようではないか!」
「え? やだよっ! そう言うのは恋人にするものだよ。私には健太郎くんがいるもんっ!……あ、健太郎くん知らない? おじさん」
「ぐほぅっ!!」

 純粋無垢な少女の一言は、ランスの胸の中に強烈な一撃を見舞っていた。だが、直ぐに立ち上がる。

「コラ、誰がおじさんだ、馬鹿者! まだまだ油のたっぷりと乗った十代だぞ!」
「……」

 ランスはユーリの事にまるで気づいていない。
 これまでの経緯で、彼がここまで戸惑いを見せ、表情を強張らせる事は無かったのに、見ていなかったのが、致命的……。まぁ、ランスなら見てても行動は変わらないだろうけれど。

「失礼な娘にはお仕置きが必要だな~~!! とーー!」
「きゃぁ!」

 ランスはこれまでどおりに飛び掛った。
 ……文字通り、ジャンプ!しながら娘に覆いかぶさったのだ。

 そして、少女の胸を弄る。

 その行為は彼女の顔を一気に赤く染めさせた。
 そして、羞恥からくる怒気でランスをきっ!と睨みつける。

「っっ!! あの馬鹿っ!!」

 気を取り戻した時には既に遅い。
 まるで、邪悪を具現化したかの様なオーラが少女の背後に見えた。黒く燃え上がる炎。そして、その瞳は赤く染まっていた。熱いのか、寒いのかさえわからない炎が少女の背後に揺らめいた瞬間。

「この、えっちーーっ! 何するのっ!!」

 その叫びと共に、何かが現れた。

 形容するとすれば、巨大な動く壁。そして、恐ろしく早いそれは突風の如き速度で2人に迫ってきた。

「っ!!」
「うぉっ!!」

 正面衝突をした2人はそのまま部屋の外まですっ飛ばされてしまった。
 その巨大な壁をイメージした時、一瞬≪死≫を意識してしまう程の巨凶を凶悪な何かを孕んでいた。ユーリは反射的に自身の身体に手を当て確認する。

 四肢が潰れていないか? 何処にも以上が無いか?と

 どうやら、何処にも異常は無いようだ。なのに、あのイメージはなんだったのか。ランスも何が起こったのか解らないようだ。 軽く頭を振って……。 

「いってて……、なんだぁ? 今のは」
「ランス。そのコは襲わない方が良い。これ以上は遊びでは済まなくなる可能性があるぞ」
「なにをーー! オレ様が抱くと言えば抱くのだ! それに、遊びのつもりなぞない! 負けんぞ~~! とーー!!」

 ランスはユーリの忠告に耳を貸さないようで、再び少女に飛び掛った。ランスが勢いよく振り上げた手は、正確に少女のスカートを捲り、その下着があらわになる。

 ランスは、ラッキー! 程度にしか思っていなかったが、再び凶悪な何か(・・)が迫る。

「だいっきらい!!」

 少女の拒絶の言葉。それが具現化して、ランスに迫る。

「ぬごーーーっ!!」

 ……再び吹き飛ばされてしまい、最後にはバタンっ!と扉を固く閉められてしまった。いや、それでよかった。

「ぐぬぬぬ……」
「だから言っただろうが……。命あってよかったな」

 ユーリはそう言う。命、と言う言葉のそれは決して冗談の類ではない。ランスもその事には何処か、気づいていたようで、悪態をつきつつも彼女の事は今は諦めると言って素直に後についてきた。

 神の顔も三度までだ。

 そうと言う言葉があるように、これ以上何かをすればどうなるのか……、解らない。いや、彼女は神とは真逆の存在としか思えない。

(………)

 ユーリの表情が険しくなっていったと同時に。


“きぃぃぃぃぃぃ………。”


 再び世界は時間を止める。



(ん?)

 ランスは違和感を覚えた。それは身体が動かないからだ。全く動かない、話すことも出来ず、視線も動かす事が出来ない。ただただ、見る事しか出来ない。

(なんじゃあ、こりゃあ!!)

 だからこそ、ランスであっても 混乱してしまうのも無理は無いだろう。

『……まさか、こんな所で こちら側の世界で、こんな大物に出くわすとは、な』

 そんな世界で声だけが聞こえてきた。だが、誰かを確認する事が出来ない。声の位置的には自分の直ぐ傍だ。

(誰だ! 下僕1号か?? なわけないか! おいコラ! 誰だ!! 何をするっ!)

 ランスは、確認をするために振り向こうとするが……、まるで自由が利かない。
 自分に自由が利かないのだから、ユーリが何かを話しているはずも無いだろうと結論をつけた。そして、頭の中で悪態をつくがまるで反映する事は無かった。

『……この件、ホーネット派の連中は知っているのか? ここにいるの事を……、不可侵条約をしている以上は奴等はこないだろうが。……ケイブリス派の事もある、か』
(だーかーらー! オレ様を元に戻せ!!)
『ふむ……、まぁ 今は大丈夫……だろう。……とにかく今は、な』
(もーーどーーーせーーー!!!)
『……この状態でここまで思い叫びを続けるのもある意味凄いな。流石は候補、バグと言った所か……』

 ランスはただ只管叫ぶ!(頭の中で。)
 それが止む事は無かった事に声の主も思わず苦言を漏らしてしまっていたようだ。異常現象の前に、ここまで保っていられるのも凄い。が、それも終わりとなった。


“きぃぃぃぃ………。”


 再び世界は時を刻み始めたのだから。


「だぁぁ!!! 元に戻せーーー!!!」
「うぉっ!!! 今度はいったいなんだよ いきなり横で叫ぶな!」
「うぉ? おお、戻った!! なんだったんだコラ! 今のは!!」
「だから、なんだっつーんだよ! いきなり!」

 突然暴れだしたランスに思わず同じような大きさの声でツッコんでしまうユーリ。

――……今は潜入中だと言う事を、忘れてませんか? お2人さん?


 そして、暫くはランスは騒がしかったが、ユーリに宥められ一先ず落ち着いた。納得いかない様子だったが、まだまだする事は山ほど。

 そして問題山積みだ。

 リーザスの事もそう、だが、それよりも先ほど出会った少女の事だ。あの異常な殺気と死を連想させる不穏な気配を纏わせた少女。過去の経験を思い返しても、一番死ぬ思いをした時でさえ、天秤にかければ、軽い。

 一体何者なのだろうか、と思わずにはいられないが、この場から離れる事が先決とユーリとランスは足早に後にした。

 その後も、ユーリが思い浮かべるのはさっきあったあのピンクのロングへヤーの少女の事だ。色はシィルと同じだが、髪質はモコモコじゃなく、さらりとしたロングへヤー。外見こそは可愛らしく大人しそうな少女なのだが……。

(あれ程の気配の持ち主か……。あの世界で出会った≪彼女≫も凄まじいが、これ程じゃなかった。死を意識したのは久しく無かったな。遠い昔に《奴等》と出会ったとき以来……か)

 ユーリはその記憶の深層域を思い出していた。
 薄れているが、苦痛の記憶。闇の記憶と言ってもいいもの。

(……今はそれどころじゃない、か。今後の事を考えないとな)

 ユーリはそのまま立ち上がると、カジノの女性店員に話しかけ、飲み水を頂いた。
 落ち着かせ、考えを纏める為に。


「本当に、彼女は何者……、なんだ」


 ユーリの疑問に答えてくれる人はそこには誰もいなかった。



~リーザス城 客間~


 丁度同刻。
 その少女は椅子に座りって愛しの彼の帰りを待っていた。彼は今、彼女の為に食事を買いに出かけている。なんでも≪はんばーがー≫と≪ふらいどぽてと≫を買いに言っているとか。

「うーん。お腹へった……。健太郎君、遅いな~」

 誰もいない。話し相手もいないから退屈なのだ。
 そんな少女の頭に浮かぶのは先ほど押しかけた2人の男。突然、胸を触られたり、スカートを捲られた、大きい男の方じゃなく、一歩離れて黙って見てた男の事。

「あの男の子……、見たことない子、なんだけど……。なんだろう、すごく気になるなぁ……。あのコは1人のはず……なのに、あのおじさんを含めても2人なのに、なんで? もう1人、誰かいたような……。 あはっ それにしてもなんだか可愛い子だったな。きっと歳下だよね?」

 ユーリが考えている事とは対極といって良い程楽観的な考え。そしてユーリの容姿もばっちり見られちゃってるから、歳下と思われているようだ。
 ……彼の何が気になるのかは、彼女にも、誰にもわからない事だった。
 ただ、何かを感じるんだ。もう1人何かが……と。こんな身体になったからなのだろうか。

「あー……そうだ。そろそろここからも離れなきゃ駄目かな? お料理も美味しいし、この国好きだったんだけど……、健太郎君が帰ってきたら相談しないとっ!」

 事情によって、長く同じ場所には留まれないのだ。だから……、移動を続けなければならない。留まる事が出来ない。

 ただ……なりたくないから。

「あーあ……、何で私なんだろう。……私は魔王なんてなりたくないのに。何で来るの……」


 彼女の正体は 【魔王リトルプリンセス】


 この世界では、絶対悪と称される者。
 まだ、拒み続けているが、ユーリが感じた邪悪を具現化した気配と証したのは間違いではなかった。
 その正体を知るのはまだまだ先の未来。正体を知るその時。

 《もうひとつ存在の正体》にも、魔王、いや 彼女は気づくだろう。

 その場で相対するの絶対正義と絶対悪。

 予め決められ定められた存在同士の戦の中心で正体を明かされる存在。

 その存在が問う。真の悪とはなんなのか?悪と正義の境界線とは……?
 始まりはなんだったのか?


 それを考え出し、己の答えを導き出したその時に…… 、全ては始まる。……かもしれない。


 
 

 
後書き
〜人物紹介〜

□ 来水美樹

Lv 1/∞
技能 魔王(仮初)

元々は異世界(次元3E2)で暮らしていたごく普通の女子中学生。だが、14歳の時に後継者として前魔王であるガイにより、ルドラサウム大陸へ連れてこられ、意志とは関係なく無理矢理魔王にさせられた。魔王名は「リトルプリンセス」。
同じく異世界からやってきた小川健太郎により助けられたが それだけではすまなかった。
我こそが魔王になると、彼女を狙うケイブリス。そして、前魔王ガイの遺言に従い魔王の座につけようとするホーネットの2つの派閥に狙われる事になり今は大陸中を逃げ回っている。



□ 小川健太郎

Lv25/100
技能 剣戦闘Lv2 剣道の心得Lv1

来水美樹の幼馴染であり彼氏。そしてこの世界の4人の主人公の1人。……まぁ、彼はまだ名前が出ているだけで登場してる訳じゃないが、とりあえず説明。
美樹を追ってルドラサウムに降りたった。
世界に1本しかない聖刀日光、その主でもある。



□ 甲州院 葉月

リーザス城の敷地内にあるカジノ、香港・マカオの店員。簡易ルーレットの接客担当。名前の割にセーラー服を着た青髪のツインテールの普通の少女。……が 裏表のある悪徳イカサマディーラーでもある。
ユーリに見破られ、一度見逃されたのにも関わらず、ユーリが帰った後にも続けた。
その後、全てを知っているランスと勝負して……。可哀想な目に遭うが完全な自業自得なのである。
ランスの事を相当恨んでいる様子。 ……因みにユーリの事も。


□ GONZO ※ゴンゾー (ゲスト)

女とみれば、手を出そうとするランスの様な男。一応職にはついていて、中間管理職を営んでいる為、それなりに収入はあるのだが、今回の様に女絡みで散財してしまうので、全く貯金はない。
因みに、女の子に相手にされた事はほとんどなく、いいように搾取される位しかなかった。


名前 FLATソフト作品「シークレットゲーム」より



〜技能紹介〜


□魔王

魔王のみが保有する技能。本来は魔王を打ち滅ぼした相手が継承する力だが、継承儀式を済ませばその限りではない。


□ 剣道の心得(オリジナル)

異世界では武道スポーツとして、ポピュラーな競技の1つ。
だが、使用するのは刀では無く竹刀の為 実践で使用できるかどうかは本人次第である。

因みに健太郎は、ゲーム大好き少年だった為、異世界にもすっかり順応し 持ち前の腕でめきめきと力をつけていったのでした。



〜アイテム名〜


□ はんばーがー&ふらいどぽてと

とっても人気の食べ物。

でも、手がべたべたしちゃうから、食べた後には手を拭くこと。デートの時でもエチケットは忘れないように。
はんばーがーは頬張りながら食べるから高確率で、口の周りに食べカスが付着する。
それを狙っている男もいるとかいないとか……。
健太郎くんはどうなのかは定かでは無い。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧