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ロザリオとバンパイア〜Another story〜

作者:じーくw
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第34話 ジャック vs 海の大妖 セドナ



ジャックと支部長である男、共に殺気を、妖気を出していて、まさに戦う気満々だ。ジャックも、戦闘態勢にまで、入ったのはいいんだけど、実のところを言うと、少し早いと思っていた。

(……戦いになって、女の子を巻き込むのはな……)

 それだったのだ。触れてはないが、女の子は、身を縮めて少し震えているのが判る。怖くて震えているのだろうか。

『さあ、まずその子、燦ちゃんだったっけ? まず巻き込まれんように離れさせてあげな、聞く限りじゃ大事な戦力なんだろ? その子も』

 これは利害の一致だと言えるだろう。ジャックは、相手が断ることは無いと考えていた。

「ああ、もちろんだ。アンタに加えてコイツも失うわけにはいかないんで……なっ!!」

 男は少女の方に向くと見せかけ、ジャックに向かって、振り向きざまに、弾丸の様に放ってきた。

『っと…とと…!!』

 夜の闇のせいか… 視界が悪いため少し被弾してしまった様だ、肩に痛みが走っている。
 男は、自身の攻撃を、掠めたとは言え、殆ど躱しきったジャックを見て、目を丸くさせた。

「へぇ……、あれを交わすのか…… やっぱり アンタの力は惜しいよ。……今ここで殺してしまうのは勿体無いな」

 そう言うと、冷徹な目で睨みつけて来た。妖気も上がっている様に思える。

『……まあ あんたは俺の気配に唯一気付けたし、その時から、只者じゃないって思ってたけど、正直ここまでとは思ってなかった。……先ほどの攻撃も大したものだ。その攻撃の直前まで殺気を隠した上での、だまし討ち。そして、夜であることも利用したな? 見えにくくて少し当たってしまったよ』

 ジャックはそういいながら前に出た。軽く腕を振りながら。そして、肩に付着した それを見て確信した。この相手も、先ほどの半魚人同様、水棲生物系の妖だと言う事。弾丸の様に飛ばされたのは、水。肩に付着しているのだ。水滴が。

(ん? そういえば、最近は水を使う奴とばっか戦ってる様な気がするな。……オレ、今ひょっとして水難の相でもあるのかな??)

 ジャックは苦笑いをしながらそう考えていた。以前戦った、学園での龍種である、水龍 歐龍の水の攻撃より遥かに錬度が違うのも判る。相応の実力者だと言う事が。あの御伽の国(フェアリーテイル)の支部長と言うくらいだから。これ位の実力はあるのだろう。
 知識不足だが、支部長クラスは 大妖に分類される者が多かった筈だ。

(……まあ アイツは自分に自惚れすぎてたし… 比べる事自体が間違いか)

 ジャックは、苦笑していた。

「そういいながら、アンタもおかしいぜ? 少しとは言え、オレの水が当たった筈なのに。随分と涼しい顔してよ」

 本当に被弾したのならば追加攻撃をするのだが、ジャックは全くと言って良いほど堪えてないのだ。自分自身の攻撃を受けてここまで手応えがない。間違いなく当たってるのに、手応えがある様子が全く無い様子を見せていた為、攻めきれずにいた。虚勢を張っている様にも見えなく、余裕の表情が見えているのだ。

『そうか? まあ、オレも、色んな攻撃を経験してきているからな。 ……兎も角 そろそろ、こっちの攻撃(ターン)でいいか?』

 ジャックは、頭を軽く掻きながら、そう言うと同時に。足に妖気を溜めた移動術。瞬時に相手との距離を縮める歩法《縮地》を使い距離を一気に詰めた。

「っな!! (速ェ!?)」

 突如、目の前に現れた。それは、瞬間移動とも錯覚してしまう程のスピード。そして、すぐに攻撃は来た。
 ジャックは男の脇腹めがけて蹴りを放ったのだ。だが……。

『……防いだか?』

 ドゴンっ! と言う鈍い音は訊こえたのだが、足に伝わる感触が全く違う。脇腹を直撃するはずだった一撃を男は右腕でガードし耐えていたのだ。
 防御しているとは言え、多少はダメージはあるようだが、それでも飛ばされたりはしていない。

(やるな……? こいつ)

 腕をブンブン振っている男を見て改めて感じた。先ほどの連中は、あっさりと吹き飛んだが、この男は堪えているのだから。

「ふん……、確かに、お前のスピードにはビビッたが(マジで) その蹴りは、さっき一度見せてもらったからな、馬鹿正直に同じとこ蹴りにきたら防御するぜ? 普通」

 ガードした右腕を振りながら話した。

「でもま、アンタはやっぱつええ…人間擬態のままでそこまでするたぁな… 出し惜しみしてられねーみたいだわ」

 男は人間の姿から徐々に姿を変えた。

 その姿は、邪悪で、不吉を孕んだようなオーラを撒き散らしていた。水を具現化させ、まるでマントの様に纏っている。両の手にも、水を宿し、まるで炎が立ち上っているのか? と思える様に 怪しく揺らいでいる。

 ジャックは、その姿を見て確信した。

『この姿………。 セドナ、か』

 セドナ、海の大妖の一角。イヌイット神話で語られている冥府の王として称される妖。同じ海の妖怪であるセイレーンにも似ている所がある。共通するのは、残虐だと言う事だ。

(確か……、人間を殺すことに至高の喜びを感じるたちの悪い妖だったよな……? デキる訳だ。 大妖に分類されるほどの妖だし。やっぱり、支部長クラスは、大妖か)
「ははは!かなり強い相手だ。なら全力でいかなければならんだろ?」

 正体を現した瞬間、背後に広がっている海から、津波が発生した。

「俺は海を統べる妖しの一角……、この大津波から逃れられるかな?」

 その大波は意思を持っているように、立ち上ったまま静止していた。無重力空間でも発生しているのだろうか?と思える様に、不自然に。

 それは、この男の合図ひとつで一気に襲いくるだろう…と言うことはすぐに判る。

『ッて! おいおいコラコラ! お前は馬鹿か? そんな規模のやったら、その子まで海に流されるぞ!?』

 男の感じからすると、女の子にはもう全く関心が無く思えたのだ。あれ程の 広範囲攻撃だから。ジャックは蹲っている女の子まで移動し抱きかかえ縮地を使いこの場所から離れた。

「……言ったろう? 出し惜しみすれば俺の方が殺られる可能性があるんでな。 確かに、その女の力は惜しいが貴様を始末する方を優先したまでだ。 お前とその女、ここで、逃がせば厄介なことになりかねんからな」

 そう言い終えると、腕を天に掲げた。呼び寄せた津波を呼び寄せたのだ。


「愚道の水よ…我が命に従え…… 敵を飲み込め!……藻屑と消えろ! 天海滅界(ヴァルナー)!」

 ジャックの飛んだ先に向かって放った。それは まるで水、いや、海その物がまるで意思を持ってるかのように徐々に迫ってきた。

(どうする? 俺だけなら楽に防げるが、この子がヤバい… まあ 見捨てるなんて選択は無いがな)

 そう思いながら、ジャックは女の子を抱えている腕に力を強めた。



 
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