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真・恋姫無双〜中華に響く熱き歌

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并州編
  第11話 行商人

陳留の町を見て回り、満寵の家に戻り、そこで一晩を明かしたバサラ。
その夜に満寵と酒を飲み交わし、いろいろな話をし、眠りについた。
次の日、目が覚めたバサラは、凪たち3人娘と今後の話をしていた。
「我らは今日の昼頃に陳留を発とうと思っています。バサラ殿も我らの村にどうでしょう?
バサラ殿なら村の皆も歓迎するでしょう。」
「せやせや、兄さんが来てくれれば村も明るくなるし、何よりうちらが兄さんの歌を聴きたいんや。」
「そーなのー。お兄さんの歌が聴きたいし、何よりもかっこいいお兄さんがいると目の保養になるのー!」
と彼女たちの村に誘いを受ける。
そこへ店主の満寵が
「バサラ、まだうちに泊まっててくれていいんだぜ?
おめえがうちにいて歌ってくれりゃ、その歌目当てにうちに食べに来る客も増えるし、何よりもそれを抜きにしてもおれがおめえを好きになっちまったからな。
だから、この町にいる間は好きなだけ居てくれてもいいんだぜ?」
と言ってきた。
だが当のバサラは
「どうすっかな・・・」
と困ったような顔をしている。
どうやらどうするかはまだ決めていないようだ。
あれこれ話しているときに
「どうするかまだ決めてないならしばらくうちに泊まっていったらどうですか?
店長もこう言ってますし。
それか陳留を出るようでしたら、今日の昼頃に行商の方々がここを出るようですし、一緒に行くのがいいと思いますよ。」
そう意見したのは住み込みで働く典韋である。
ちょうど朝ご飯が出来上がったようで、それを持ってきたところだ。
ちなみに真名も預けており、バサラのことは兄様と呼んでいる。
真名は流流である。
「そうかい。そいつらはどこに行くんだ?」
「確か、并州を通ってから幽州に行くって言っていました。」
「并州ってのはどこにあるんだ?」
「えっと、北の方だったと思います。」
「そうか。んじゃ、そいつらと一緒に行くか。
ありがとな、流流!」
流流の言葉でどうするか決めたバサラは、先程とは違い、晴れやかな顔をしている。
お礼を言われた流流は顔を赤くし、照れているようである。
一方で、ここで別れることとなった店主と3人娘は
「はっは、別れは寂しいが、おめえはここでくすぶる男じゃねえからな。行ってこい!」
と店主は笑っていたし、真桜と沙和の2人もしょうがないか、と笑っていたが、凪は隠してはいるが、落ち込んでいる様子である。
それを2人が後でフォローしたのは別の話である。


それから時間がたち、昼頃、バサラは陳留を出ると言う行商人と共に出て行くため、陳留の北側の門に来ていた。
店長と流流、凪たち3人娘とは朝店を出る頃に別れを済ましている。
その際に、全員から一曲歌って欲しいとのリクエストにより、熱唱している。
その後に、北門に向かい、行商人と話をしていた。
「よお、あんたが陳留を出る行商人かい?」
「そうですが、あなたは?」
「おれは熱気バサラってんだ。北の方に行きたいんだが、一緒にいいかい?」
「ほう、北へ、ですか。わざわざ行きたがるとは珍しいですな。ちなみにどちらへ?」
「とりあえず、并州ってところに行こうと思ってるんだ。いいかい?」
「ふむ、并州までなら一月かニ月はかかるでしょう。あと、旅の間食べ物を我らから買うならばその分の代金を頂きますが、よろしいですかな?」
「ああ、いいぜ。」
「それでは決まりですな。そういえば私の名前を教えておりませんでしたな。我が名は張世平と申します。以後、よろしくお願いいたします。」
「ああ、よろしくな。」
そう言いながらお互いに笑顔で話す。
そして昼過ぎに行商人一行とバサラは北へ向け旅立った。


一月後、并州のある村に入り一晩を明かした後、バサラは行商人一行と別れることにした。
「本当によろしいのですか?并州にはこの村より大きい都市もありますから、そこまで連れていきますよ?」
「いや、ここでいい。路銀も尽きたしな。」
「そう、ですか。お金のことなど関係無しにあなたと旅をしたかったのですが、仕方ありませんね。」
「ああ、ここからは歩いて行くよ。」
「バサラ殿、最後に二つお願いがございます。どうか聞いて頂けませんか?」
「なんだ?」
「あなたはこの一月の間、曲を弾き、歌を歌ってくださいました。その音色と歌声に我らは心を惹かれていきました。その中でも、私が、いえ我ら旅をするものならば好きになるあの曲を歌ってはいただけないでしょうか?」
「いいぜ、聴いていきな、おれの歌を。そしてハートで感じろ!!いくぜ!!PARADE!!」


この人との出会いは、一月前、陳留を出る日だった。
最初は変わった人程度の印象しかなかった。
だが、この人と旅をして行くうちにそれだけでは無くなった。
旅の間この人は歌を歌い、我らを楽しませてくれた。
そしてその歌の一つ一つが聴いたことも無いような音色や曲調、詩の使い方であり、心が惹かれていった。
中でも特に私、いや我らが心を奪われたのはこの『ぱれえど』という歌だ。
この歌は、見えない明日を恐れずに足を進めろ。
昨日という過去はもはや遠いものにすぎない。
そして目指す場所へ行こう。
それだけではなく、旅をすることへの恐れを考えずに旅をすることへの楽しみやどんなものがあるかの期待を歌っている。
それだけを表現している訳では無いだろうがそんなことを感じる。
これは私だけが感じていることでは無いだろう。
この歌を聴いた時に若い頃に旅をし始めた頃のことを思い出し懐かしく感じた。
そして、その時の情熱を思い出した。
それをさせてくれたのがこの人だ。
だから私はこの人のこの歌が1番好きだ。
別れる前にこの歌が聴けてよかった。
そう思っていると歌が終わった。
まだこの人の歌が聴きたいが、我らも旅を続けなければならない。
これでお別れだ。
「ありがとうございました、バサラ殿。願わくば最後の願いとして、私の真名を預かってもらえませんか?」
「いいのか?」
「ええ、あなたにこそ預かって頂きたいのです。
我が真名は誠和でございます。どうか預かって頂きたい。」
「分かった。おれは真名は無えから好きに呼びな。」
「ありがとうございます、バサラ殿。またあなたに出会える時がくるのを願っております。では、またいつか!」
「ああ、またな。」
そう笑顔で再会の言葉を交わす2人であった。


 
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