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ダンジョンに転生者が来るのは間違っているだろうか

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間話

ハーチェス・ザイル

Lv1

力 G 234→G 283 耐久 G 276→F 302 器用 G 203→G 249 敏捷 H183→G 214 魔力 I 0→I 0

《魔法》
【】

《スキル》
【】






ナンバ・式

Lv1

力 H 193→G 246 耐久 I 82→H 128 器用 G243→G 290 敏捷 F 302→F 384 魔力 F 380→E 403

《魔法》
【ナイト・オブ・オーナー】
・物質強化魔法
・魔法をかけたものの私物化
・魔法をかけたものを扱う技術の修得
・詠唱式【騎士は徒手にて死せず】

【】
【】

《スキル》
武士英霊(アサシン)
・長刀を扱う技術
・燕返し


ーーーーーーーーーー



「はい。 二人の【ステイタス】だよ」

先程【ステイタス】の更新を終えた俺とハーチェスさんは神様共通語(コイネー)で訳してくれた羊皮紙を受け取った。
そして、それをみて思わず二人で顔を見合わせた。

「し、式? 僕は最近よく夢を見ている気がするんだけど……」

「ハーチェスさん。全部現実だから受け止めてください」

「熟練度上昇値合計一五〇オーバーって、伸び方がおかしいよ!?」

「自分、二五〇オーバーなんで安心してください」

「ブッ!? それもおかしいでしょ!?」

ちょっとみせて!と、俺の持つ羊皮紙を奪ったハーチェスさんは紙に穴があくんじゃないかと思うほど凝視していた。
俺もこれ幸いと、ハーチェスさんの羊皮紙を手にとってその【ステイタス】を見る。
やっぱ、ハーチェスさんは前衛壁役かな。

「コホンッ、二人とも、【ステイタス】をみるのはいいけど、とりあえず僕の話を聞いてくれ」

「あ……すみません、バルドル様」

バルドル様の言葉に、ハーチェスさんも少し落ち着いたのか視線をそちらに戻す。

「なんか、式が入ってからの二人の【ステイタス】の伸び方が尋常じゃない。まだLv1だからっていうのもあるかもしれないけど、僕が他の(やつ)から聞いてるのとはずいぶん違う」

ふぅっ、と息を吐いたバルドル様は視線を俺に向けた。

「式。 何か知っているなら教えてくれないかな? 別に怒りはしない。悪いことではにないからね。 でもいつか、これが明るみに出たとき、僕は君を守ってあげたいんだ」

真剣な面持ちで見つめてくるバルドル様の目が、俺の瞳をとらえた。
事の成り行きを見守るようにハーチェスさんも心配そうではあるがこちらを見ている。

さぁて、どうすっかな……バルドル様の前じゃ、嘘はつけんし

「……俺にも理由は分かりません。 ですが、自分が小さい頃、誰かに言われた記憶はあります。 お前は成長が早い、と」

「……うーん……嘘は言ってないか……」

参ったな、と苦笑いのバルドル様はもう一度、俺の目を見つめる。
が、フッ、と視線を反らすと話は終わりとばかりにその体をボロいベッドに投げ出した。

「ま、一応はそういうことにしておくさ。 でも、いつかはちゃんとはなしてくれよ?」

「……思い出したら、また話します」

その言葉に、うん、と満足そうに頷いたバルドル様。
一人だけ話についていけずに、え?え? と困惑しているハーチェスさんだったが、落ち着いてくださいという俺の言葉で漸く落ち着いた。

「でもいいなぁ、式は。 魔法も、それにスキルも発現してるし」

「まぁ、それはね。たまたまとしか言いようがありませんが」

先程俺から奪い取った【ステイタス】を見ての言葉だろう。
何も発言していないハーチェスさんからすれば、俺は羨ましいと思う対象なのだ。

「ハーチェス。あんまり落ち込まないでよ。君もまだまだ冒険者になって間もないんだ。希望はあるよ。 それに、魔法もスキルも拝めずに一生を過ごす冒険者なんてざらにいるっていうしね」

「バルドル様、最後のは追い打ちかけてますよ」

「うそっ!?」

ほんとです。その証拠に、ハーチェスさんが部屋の隅でいじけています。

ハーチェスさんの様子を見て、ごめんよー!と駆け寄って謝るバルドル様。
俺はその様子を見たのち、視線を【ステイタス】へと戻した。手元には俺のと、ハーチェスさんもの。

確かに、あの金髪ピアスの神様から聞いている通り、確かに俺の成長に関しては目を見張るものがある。が、あれは俺だけではないのか?
ハーチェスさんの【ステイタス】を見て考える。
もしかして、俺が影響を与えている、とかそういうことなのだろうか。
てか、それくらいしか考えられない。

「……ん?」

いつの間にか、俺の持つ羊皮紙と手の間に、何かが挟まっていた。
ゴミか?と思い、手にとってみると、それは小さい紙だった。
なんとなしに中を見てみる

『その通りだ by god』

なんちゅー伝えかたやボケぇ

未だに立ち直らないハーチェスさんとまだ慰めているバルドル様にバレないように、然り気無く紙を捨てる。
まぁ、日本語と英語だし、見られても読めないだろうが、捨てておくのがいいだろう。ごみ捨ては俺の仕事だしな。

「ハーチェスさん。いつまでもいじけてないで明日の探索について考えましょうよ」

「あ、うん。 そうだね」

「ちょ、僕が慰めていた意味は!?」

ギャーギャーと騒ぎ出すバルドル様を放っておいて、俺はハーチェスさんと明日の予定を相談しあった。

現在の俺達はダンジョンの八階層まで探索が進んでいる。
本当は、十階層くらいまで進みたいのだが、それは俺達の担当であるルナファさんに止められている。
まぁ、まだ俺が入って一ヶ月たっていないのだ。普通は止めるだろう。

団員が二人しかいない我が【バルドル・ファミリア】ではあるが、壁役のハーチェスさんに、遊撃の俺と、後衛はいないながらもバランスはとれている。
まぁ、これは上層だからというのもあるが。

「今回のでかなり【ステイタス】は上がりましたし、今までよりもかなり楽になるんじゃないかと思っています」

「そうだね。僕は耐久が、式は敏捷がFになってるし、これなら九階層もいけるんじゃないかな?」

「ダメですよ、ハーチェスさん。 ルナファさんにどやされます」

「……それは嫌かな」

あの子、年下なのに迫力がすごいからね……、と一度勝手に到達階層増やして怒られたときのことを思い出したのか、ブルッと身震いをした。
もちろん、俺も覚えている。あれは怖かったぜ……

「おいおい。冒険するのはいいけど、死なないでおくれよ? 君たちはたった二人の僕の眷族なんだからね?」

「ウィーッス」

「ちょ、真面目に返事してよね!?」

「ハハ、分かってますよバルドル様」

「そうですよ、俺達は簡単に死にませんって」

俺達の言葉に、頼むよ?と念押したバルドル様はじゃあもう寝ようかといって魔石灯の光を落とした。
バルドル様はベッドに、俺とハーチェスさんは二つあるソファーにそれぞれ寝転び、薄手の布団を上から被る。

明日は朝から探索に行くため、体は休めないとだ。



ーーーーーーーーーー



「ハーチェスさん! そこ、抑えといてくださいよ!」

「了解!!」

ダンジョン七階層。
八階層まで降りる道中、この階層では八度目となるキラーアントとの交戦だ。

キラーアントの数は六匹。うち三匹の攻撃を盾を上手く使いながらハーチェスさんが受けている。

「セイッ!」

その内の二匹を横から斬り伏せる。
『新米殺し』と名高いキラーアントはその甲殻の防御が五階層までのものと比べても格段に上なのだが、【物干し竿】はそんなもの関係ないとばかりに切り裂いていく。

第三者から見れば、武器の性能に頼っているようにしか見えないんだろうなぁ……

「式! 奥の三匹いくよっ!」

「あいあいさぁ!」

相手にしていた一匹を片付けたハーチェスさんが前を駆ける。
俺はその後に続き、作戦通りにモンスターを斬り倒していった。


ーーーーーーーーーー


「いやぁ、稼いだね~」

「そうっすね。 いくらで換金できたんでしたっけ?」

「確か五二〇〇〇ヴァリスだったよ」

Lv1の冒険者五人パーティが一日に稼ぐのが、確か二五〇〇〇とかそれくらいだったはずだ。
破格とも言える程稼いではいるが、ハーチェスさんがそれほど驚いていないのにも理由はある。
最近はこれくらい稼ぐのが普通なのだ、うちは。

いわゆる金銭感覚の麻痺である。

帰りの途中で見つけた屋台で、ジャガ丸くんを二つ購入し、それを食べながら歩く。
うむ、やっぱり小豆クリーム味は美味いな

「……それ、美味しいの?」

「失礼な。なんなら食べてみますか?」

「あ、いや。遠慮しておくよ」

むぅ、せっかく仲間を作ろうかと思ったのに


「……ん?」

「どうしました?」

「いま、何か聞こえなかった?」

突然立ち止まったハーチェスさんはキョロキョロと辺りを見回した。

「聞こえませんでしたけど……何が聞こえたんですか?」

「こう、なんか、ォオォォォ……、みたいな呻き声」

なにそれ怖い

「なんちゅーホラーですかそれ。 で? どの辺りからですか?」

「この辺だと思うんだけど……」

俺達がいるのは、メインストリートから外れた小道。
複雑に道が繋がっているから、最初は苦労したものだ。

「確かこの辺だったと……」

声が聞こえたとおぼしき場所にハーチェスさんが足を踏み出した。
と、その時だった。ハーチェスさんの下、正確には足元。
曲がり角となっているため、見えていなかったのだが、何者かの手がハーチェスさんの足首を掴んだ

「うわあぁっ!?!?」

それに驚いて飛び上がろうとするハーチェスさんだが、足首が掴まれているためそれも叶わず、結果顔から地面へと激突した。

……なんだ今のは

とりあえず、事の元凶である手の主をどうにかしなくては、と曲がり角の向こうを覗きこむと、案の定、人が倒れていた。

「っつ~……何なのいったい」

「あ、ハーチェスさん。なんか人が倒れてます」

額を打ったのか、真っ赤になったそれを涙目で擦るハーチェスさんは、俺の言葉にん?とそれを見る。

「大丈夫ですか?」

「……ぉぉ……」

どうやら、呻き声もこの人のようだ。
このままというのも何なので、ハーチェスさんが脇を抱えて起き上がらせた。

「……あ」

「ん? 式、どうしたの?」

ちょうど起き上がらせて、壁を背にして座る体勢になったその人を見て気付いた。
男性で、くすんではいるが、元はもっと艶があったであろう金髪に、女の人も羨ましがるような整った顔立ち。
そして特徴的なのは両側についた木の葉のように尖った耳

「ハーチェスさん、この人、エルフですよ」

「……何でこんなところにとは思うけど、とりあえずホームに運ぼうか。ここじゃ何もできないしね」

了解、と俺はハーチェスさんの荷物を請け負い、ハーチェスさんはそなエルフの男性を背負う。
身形も元は綺麗だったのだろうが、今はもう薄汚れていた。

「ま、目を覚ましたら事情でもなんでも聞こうよ」

「ですね」





ーーーーーーーーーー



「……ぅっ」

「お、目が覚めたのかい、エルフ君」

ちょうどバルドル様が様子を見ているときに目を覚ましたようで、俺とハーチェスさんも側による。

「………ここは……」

「【バルドル・ファミリア】のホームだよ」

うっすらと目が開き、辺りを見て呟いた言葉にハーチェスさんが答えた。
こちらの存在に気付いたようで、ぼんやりとした目でこちらに顔を向けた。

「……そうか、僕は君達に助けられたのか……」

どうやら、自分が倒れた記憶はあるようだ。

「……例を言おう。 ありが……」

グウゥ、と
そこまでいいかけたところで、男の腹の虫が鳴いた。

「まぁまぁ、話は後だ。 良かったら君も食べていくといいよ」

「……助かります…」

ーーーーーーーーーー


この男、名前はエイモンドというらしく、つい最近エルフの里を飛び出してこのオラリオにやって来たそうだ。
年は一九で、見ての通り種族はエルフ

話によれば、オラリオに来たまではいいが、どこのファミリアからもお断りされ、辺りをさ迷い、ついにはあそこで力尽きたとのこと

「え? なんで断られたの? エルフって、確か魔法種族(マジックユーザー)じゃ……」

「大方、この僕の美しさに嫉妬でもしたのだろうさ。 なんたって、僕の美貌は万人をも魅了するのだからね!」

「……うん、大体理由は分かったよ」

「ですね」

ウザがられたんだろうなー

何となく想像がついてしまう。
あれだ、前世で言うナルシストって人だこの人

「で、でもそれだけじゃ、普通は断らないでしょ? エルフって僕らよりも魔法が……」

「生憎だが、僕は一切魔法は使えないよ。 ま、僕にはこの美しさがあるからね!」

「あらら」

「それは……なんとも……」

魔法種族(マジックユーザー)と言われる者が魔法が使えない。
そりゃ、断る理由にはなるわな

それに、魔法が使えないと言うことは、魔力なアビリティが伸びないということ。
力と耐久で劣るエルフには致命的だ。

神の恩恵(ファルナ)とやらを受ければ、もしくはと思っていたけどね。 フッ、見る目がない輩が多すぎる」

肩を竦めて笑うエイモンドさん。

だが、そんな様子を見て、俺は思う。
多分、今も無理して取り繕ってるんだろうなって。
エルフっていうのは、誇り高い種族だと聞いたことが幾度とある。

そんなエルフの彼が、邪険にされて悔しくないはずがないのだ。

魔法が使えない。ただそれだけ

「あ、じゃあ僕のファミリアに入らないかい?」

「……あなたは話を聞いていなかったのですか? 僕は、魔法が使えない、と」

「もちろん、聞いてたよ。で? それがどうかした?」

まるで気にしていないかのように言い切ったバルドル様を信じられないものを見る目で見るエイモンドさん。
そんな様子を見ていたハーチェスさんはバルドル様に同意とばかりに頷くと

「僕も初めは何処からも断られたよ。 田舎から出てきたばっかのヒューマンの、しかも二〇を越えた大人だったからね」

だから、この神様(ひと)はそういうのは気にしないよ、と付け足した。

「……まぁ、バルドル様って考えなしですから」

「ちょっ、式! 君は自分の主神に対してなんてことを言うんだい!」

「事実です」

「ウガァー!」

「ば、バルドル様、落ち着いて!」

こちらに掴み掛かろうとするバルドル様をハーチェスさんが羽交い締めにして押さえにかかる。
そんな騒がしい俺達を不思議なものを見る目で見ていたエイモンドさんは、次には、笑った。

「フッ、君達は、変わっているな」

「あなたほどでもないですよ」

「かもしれないね。何せ、僕は誰もが思わず振り返ってしまうほどの美しさを秘めてしまっているのだから。そんな僕が入るんだ。感謝したまえ」

くすんではいるものの、前髪をフサァッ、とかきあげたエイモンドさんはよろしくとばかりにハーチェスさんに手を伸ばす。
少々ポーズがウザイが、いい人には違いない。
俺とハーチェスさんは顔を見合わせて頷くと、よろしくとその手を握る。

「……それと、ありがとう」

小さく呟かれた声がホームの中に溶けて消える。
だが、俺達はしっかりとその言葉を耳に刻んだ。

「それじゃ、さっそく入団の儀式を始めようか!」



こうして、【バルドル・ファミリア】三人目の団員が加入することになる。
魔法の使えないエルフ、エイモンド・エイナルド。
彼の魔法が発言するのはこの三年後、Lv3となった時であった。
 
 

 
後書き
なんか、最近エイモンドがよく出るな……ニシュラも驚き
ま、そんなことはともかく、次回からは二巻の話に入っていこうと思います。
……って、式とかどうやって絡むのかニシュラにもてんで想像が付かないです
ま、これからも出来るだけ頑張ろうと思ってますので、応援よろしくです。



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