| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

髪を切ってみると

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四章

「髪の毛洗うのもさらに大変になってるし。それに」
「それになのね」
「踏んだりするし。誰かが悪戯で触ったりとか」
「そうしてくるから」
「あまりよくないわ」
 これが母の意見だった。
「上にお団子にしてまとめるにしても」
「長過ぎて」
「もうまとめきれないから」
「じゃあもう」
「少し切った方がいいと思うわ」
 このこともだ、母は娘に正直に答えた。
「そうしたらどうかしら」
「そうね」
「珠緒ちゃん古典の授業でよね」
「うん、平安美人のお話聞いてね」
「髪の毛を伸ばし続けているけれど」
 この辺りは母も七海と同じことを言った。
「それでもね」
「今は二十一世紀で」
「平安時代じゃないし」
 それに、というのだ。
「十二単も着ないでしょ」
「あれを着るのはね」 
 平安美人の髪に憧れている珠緒えもだった、このことについては。
「ちょっと以上にね」
「抵抗あるわね」
「流石に無理よ」
 そうだというのだ。
「あれ凄く大変そうだから」
「そうでしょ、それじゃあね」
「切った方がいいのね」
「ロングヘアが好きにしても」
「普通の長さね」
「そうした方がいいわ」
 これが母の言葉だった、そして。 
 母の言葉も受けてさらに考えてからだ、そしてだった。
 珠緒は美容店に言った、その翌日だ。
 七海はその彼女を見てだ、目を丸くさせてこう言った。
「あれまあ」
「あれまあなのね」
「ええ、やったのね」
「ええ、やったわ」 
 まさにという調子でだ、珠緒は七海に答えた。
「この通りね」
「そうなのね」
「いや、私もね」
 まさにというのだ。
「決断したから」
「肩が隠れる位ね」 
 七海は珠緒の今の髪の毛を見つつ言った、その長さは丁渡脇の辺りまでになっている。やはり長いがこれまでと比べると相当に短い。
「したのね」
「そうなの」
「そんなに気になった?私の言葉」
「いや、お母さんにも言われて」 
 このことをだ、珠緒は七海に話した。
「私から聞いたけれど」
「それでなのね」
「決めたのよ」
「髪の毛切ろうって」
「そうなの、やっぱり自分の髪の毛踏んでこけたりしたら」
「洒落にならないしね」
「掴まれたりもするし」
 母に言われたことを自分でも言った。
「だからね。思い切って」
「そこまでしたのね」
「いや、切ってみてわかったことは」
「何なの?」
「頭随分と楽になったわ」
 髪の毛をこれまでの三分の一位の長さにしてというのだ。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧