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髪を切ってみると

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第三章

「悪くないわよ」
「そうなのね」
「けれどよ」
 ここであらためて言う七海だった。
「今川義元さんは今あの格好でいられないでしょ」
「髪型も」
「滅茶苦茶目立つわよ」
 それこそ、というのだ。
「もうね」
「確かにね」
「あんたにしてもそうよ」
「髪の毛が長過ぎるから」
「目立ちたいの?」
「結構ね」
 このことはだ、珠緒はこう答えた。
「そうなりたいけれど」
「そうなのね、けれどね」
「それでもなのね」
「そう、目立つにしても」
「ちょっと、なのね」
「変に目立ち過ぎてるから」 
 髪の毛があまりにも長いからである。
「だからね」
「それでなのね」
「そう、もっとね」
 それこそというのだ。
「短くしたら?」
「髪の毛にもよくなくてそろそろ踏んでこけそうだし床にも着きそうだし」
「悪目立ちしてるからよ」
 そうした要素が重なっているからだというのだ。
「もうね」
「そろそろなのね」
「切ってみたら」
「ううん、長いのが好きなのね」
「だから長いにも程があるから」
 それでというのだ。
「もっとね」
「短くして」
「せめて普通の長さにしたら?」
「普通の」
「そろそろ踵にも迫りそうな長さじゃなくて」
「普通の長さね」
「別に私みたいな長さにしなくていいわよ」
 ショートには、というのだ。
「そこまでじゃなくてもいいけれど」
「普通のロングヘアね」
「そうしてみたら?」
「そうしたらいいのね」
「さもないとよくないから」
 先に言った様々な理由でだ。
「だからいいわね」
「考えてみるわね」
 珠緒は実際に考える顔で七海に答えた、そしてだった。
 実際に髪の毛をどうするか考えた。それで家に帰って母にもだ。リビングでマーガレットを読みながらこう言った。
「お母さん、私の髪の毛どう思う?」
「珠緒ちゃんの?」
「うん、どう思うの?正直に言って」
「正直になのね」
「ええ、お願い」
 こう言ったのである。
「どう思っているのか」
「じゃあ言うわね」
 母は夕食の用意をしつつ娘に応えた。
「長過ぎると思うわ」
「あっ、やっぱり」
「もう膝までいってね」
 そして、というのだ。
「踵までいきそうでしょ」
「もうね」
「そこまで伸ばすとね」
 それこそ、というのだ。 
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