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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epico19-A子供の自然を得るがごとし

 
前書き
子供の自然を得るがごとし/意:子供は海や山などに来るとテンションがハイになるというたとえ。 

 
†††Sideイリス†††

1学期の終業式が終わっての次の日、わたし達は月村家の別荘とプライベートビーチがあるっていう地方へと電車とバスを乗り継いでやって来た。小高い山の中腹に別荘があって、その裏手は崖に囲まれた三日月状の海岸だってすずかに聞いた。夏をエンジョイするのにすごく適した場所だ。海も山もすぐ近くにある別荘に1泊2日の小旅行。

(感謝だよ~、すずか~♪)

「どうしたの、シャルちゃん? わたしを拝んだなりなんかして・・・」

「すずか、大好き❤」

「わっ!? えっと、私もシャルちゃんのこと大好きだよ~❤」

なのは達の笑い声の中ですずかとハグし合った後、「それじゃ案内するね~」すずかを先頭に整理された山道を進む。車椅子のはやてはザフィーラの背に乗り宴会へ――じゃなくて、別荘へ。体力の無いリインはいつもの小さいサイズで、アインスが肩にかけてるお出かけバッグの中でお休み中。朝早かったしね~。

「潮の香りがしてきた!」

「ホントだ! 波の音もする・・・。近いね、海!」

なのはとフェイトの言うように潮の香りと波の音がしてきた。と、「着いたですか~?」お出かけバッグのカバーが開いてリインがぴょこっと頭を出した。

「あ、ごめんね、リイン」

「起こしちゃった? ごめん、大きな声出しちゃって」

「ふわぁ~・・・はふぅ。なんとなく起きてたですから気にしないで良いですよ~、なのはさん、フェイトさん」

大きなあくびをして目を擦るリインが、「みなさん、おはようございますですぅ~」ってすぅ~っと空を飛んでわたし達の前に来てお辞儀したから、「おはよう」みんなで挨拶返し。リインも起きたことだし、これである意味勢ぞろいになった。

「それじゃ、改めてゴー!」

他のみんなより先に海を見るために、先頭を往くすずかの隣に並んで歩く。それからお喋りしながら10分ほど歩くと、「あれが別荘だよ」すずかが道の先を指差した。そこには一軒のログハウスが建ってた。

「2日分の食材は昨日の内にノエルとファリンが搬入してくれたから、買い物に行く必要はなくて、ほとんどの時間を遊びに割けるよ」

「至れり尽くせりだな。帰ったら改めてお礼をしないと」

「いいよ、ルシル君、お礼なんて。私がみんなにいつもお世話になってるから、これが私にとってのみんなへのお礼なんだから!」

「そんな必死にならなくても。・・・判った、判った。ありがたくこのお礼を受け取らせてもらうよ」

「うんっ!」

すずかとルシルのやり取りが終わるより早く「一番乗り~!」わたしはダッシュ。すると「シャルずるい! わたしが一番だよー!」アリシアもわたしを追ってダッシュして来た。アリシアってば運動神経も体力もあんまし良くない(かつてのなのは並)のに、興味があるものに向かう時はどういうわけか速かったりする。

「「う~みだぁぁぁ~~~~~!!」」

別荘は森の中にぽっかりと空いた円形の庭の中に建ってた。ここまでの道は背の高い木々が陽の光を遮っていて薄暗かったけど、別荘の敷地内は陽の光をまともに受けてるからかなり明るい。
庭に入って別荘を大きく回り込むと見えてくるのは、水平線まで広がる真っ青な海。思わずわたしとアリシアは目の前に広がる海へ向かって一緒に叫んだ。潮の香りに海風、波の音。そのどれもが気持ち良い。

「おお、気持ちええなぁ!」

「わぁ、すっごく大きくて広いですぅ~!」

「ああ、海鳴市の海も良いが、こちらの海もまた美しい」

目を閉じて深呼吸をしてると、はやて(とザフィーラ)とリインとアインスの感嘆の声が隣から聞こえてきた。アインスとリインはお揃いのノースリーブのロングワンピースを着ていて、ペアルックの姉妹か、もしくは母娘に見える。そこに、「ほら、日差しが強いから帽子」同じ銀髪のルシルが入ると、姉と弟と妹って感じになる。

「おおきにな」

「ありがとう、ルシル」

「ありがとうですぅ、ルシル君」

ルシルが3人に手渡したのは麦わら帽子で、ソレを被ったアインスとリインは深窓の令嬢って感じ。はやては・・・うん、ノーコメントで。わたし? わたしはすでに被ってるのだ。お嬢云々は言うまでもない。実際のお嬢様だし。

「みんなー、とりあえず荷物を置こう!」

すずかが別荘の角からわたし達に手招きしてるから、「はーい!」返事して戻る。すずかが玄関の扉の鍵を開けて「どうぞ~」わたし達を招き入れてくれたから「お邪魔しまーす」挨拶してログハウスの中に入る。中を一言で言い表すなら、木、かな。壁も家具も木製だしね。なんか温かみを感じる。

「えっと、泊まる部屋は2階にあって、 1部屋に3人が泊まれるようになってるの。まずは部屋割りを決めよっか」

「とりあえず俺とザフィーラ・・・あと、後でフェンリルを召喚するから、この3人は決定で頼むよ」

「うん、判った」

「それじゃあ、わたし達は・・・」

リビングのコの字型ソファにみんな座って部屋割り決めをする。誰が誰と同じ部屋になっても、寝るまではここ1階で喋りまくる予定だからあんまし関係ない。というわけでグーとパーで決めることになって・・・

「私はアリシアちゃんとヴィータちゃんと一緒だね」

「よろしく、なのは!」

「おお、頼むわ」

なのははアリシアとヴィータと同室。

「あたしはアルフとシグナムね」

アリサはアルフとシグナム。

「私ははやてちゃんとシャマル先生、それにリインちゃん!」

「よろしくな、すずかちゃん」

「よろしね」

「よろしくお願いしますです♪」

すずかははやてとシャマル先生。そして・・・

「わたしはフェイトとアインスね」

「アインス、よろしく!」

「ああ、よろしく頼むよ」

部屋割りも決めて、「それじゃあルシル君。荷物、出してもらえるか」はやてがルシルにそう言うと、「ああ。我が手に携えしは確かなる幻想」ルシルが詠唱。するとルシルの周囲の床にわたし達の着替えや水着が入った旅行バッグ、あとはやての車椅子が出現。
ここへはチーム海鳴だけで来ることになったから、電車とかバス移動だと荷物とか運ぶのが大変。その苦労を、ルシルひとりが背負ってくれた。創世結界っていう所に貯蔵してくれて、わたし達は手ぶらで来ることが出来た。みんなで「ありがとう!」ルシルにお礼を言って、決めた部屋に直行。

「ふっふふ~ん❤」

「御機嫌だね、シャル」

割決められた部屋にはシングルサイズのベッドが3つ、鏡台1つ、丸テーブル1脚・椅子3脚で、寝るだけの部屋って感じ。で、わたしとフェイトとアインスは服を脱いで水着に着替える。

「えっへへ~。新しく買った水着を早速着ることが出来て嬉しいな~って♪」

白生地に桜の花びらのイラストが描かれたセパレートタイプの水着に着替える。ていうか、「ホント大きい・・・」ふと目をやったアインスの体に釘付け。黒のビキニタイプの水着で、一般人入り乱れなビーチに居ると絶対にナンパされる、そんなモデル体型。アインスの体のラインを見た後、自分の体を見る。

(将来、あんな風になるのかなぁ・・・)

子供だから当然だけど、すとーん、って感じのわたしの体。ちょっぴり膨らんではきたけど、アインスを見れば無いのと同じ大きさ。そんなわたしの視線に気づいたアインスが「シャル、お前はまだ子供だ。いずれはちゃんと育つ」そう言って励ましてくれた。

「だと良いんだけど・・・」

「お前や主はやて達もまだまだこれからだ。気長に待てばいい」

最初は微笑みを浮かべてくれてたアインスだけど、ほんの一瞬だけ寂しそうな表情を覗かせた。どうして?なんて考えるまでもない。アインスの寿命も残り僅かだから。わたしはそれを見なかったことにして、「ありがとう、アインス」の胸に飛び込んだ。アインスは拒絶しないでくれて、無言で頭を撫でてくれた。

「ほわぁぁぁ(うわぁ、すごい抱き心地。はやてってば、いつもこんな羨ましい事してんの?)」

このままアインスの胸の中で眠りたい衝動に駆られ始めていると、「シャル、アインス、行こう」フェイトがわたしを現実に呼び戻してくれた。

「うん」「ああ」

3人で部屋を出ると、同じように水着に着替え終えたなのは達と合流。L字階段を降りて1階のリビングへ。すずかが「裏のテラスからビーチに行けるからついて来てね」そう言って先を行く。
この別荘に着いてすぐに回ったテラス側へ行って、テラスから海岸へと続く坂に設けられた階段を一番先に「やっほ~い!」駈け下りる。すぐ後ろから「待ってよ、シャルー!」アリシアが追い駆けてくる。今度の一番乗りもわたしがいただくのだ。

「「とうちゃ~く♪」」

砂浜を踏む。プライベートビーチの幅は100mくらいで、ビーチチェアやバレーをするための支柱があるけど、それでもゆったり出来そうなほどの広さはある。左右は崖だから、崖の向こう側の居るはずの一般人には見えないし。遅れてなのは達が到着。だけど「あれ?」すずかとルシルとザフィーラが居ないからキョロキョロすると、「パラソルとシートを持って来るって」なのはが教えてくれた。

「お、ルシルの奴、フェンリルを召喚したな」

別荘の庭にサファイアブルーの魔力光が溢れた。魔法を使った証拠だ。それからすずか達を待っていると、「お待たせー!」すずかを先頭に、パラソル3本を脇に抱えた人型ザフィーラ、丸めたシート3枚を担いだ黒のワンピースタイプの水着を着たフェンリル、最後尾は空気の入ってない浮輪やビーチボールを持ったルシル。

「よーし。みんな揃ったことで早速・・・入るぜ~☆」

「入るぜ~☆」

「ダメ、シャルちゃん!」「待って、アリシア!」

アリシアと一緒にスキップしながら海に入ろうとしたら、「ぐへぇっ!?」わたしはポニーテールにした後ろ髪をなのはに引っ張られて、「ぎゃふっ?」アリシアはツインテールの片方をフェイトに引っ張られて止められた。

「「く、首がぁ・・・頭皮がぁ・・・」」

痛む箇所を両手で押さえて蹲る。そんなわたし達の頭上から「準備運動しないとダメだよ!」ってお叱りの声が。シートやパラソルの準備を終えたルシル達と横に整列したみんなの元へ「はーい」返事しながら向かって、海に入る前の準備運動をする。

「「もう入ってもいい!?」」

最後の深呼吸を終えると同時に確認すると、「どうぞ」微笑み混じりの許可が下りたことで「やっほ~い!」ダッシュで海に向かった。

†††Sideイリス⇒すずか†††

私の家の別荘にみんなで遊びに来て、夕ご飯を作る時間までは海で遊ぶことにした。準備運動も終わって、「やっほ~い!」シャルちゃんとアリシアちゃんがダッシュで海に向かった。バシャバシャと浅瀬に入って行って、「とおりゃぁぁぁ!」ジャンプして飛び込み体勢に入った。だけどそこはまだ浅瀬だった。波が引いて砂浜になったところへ顔面から墜落。

「「いったぁ~~~!!」」

ぺっぺっ、って口から砂を吐き出しながら顔を押さえて痛がるシャルちゃんとアリシアちゃんに、「大丈夫!?」私たちみんなで駆け寄っていると、「あ・・・!」そこに2人へ追撃が。引いていた波がまた押し寄せて「あぶぶぶ!?」2人を呑み込んだ。踏んだり蹴ったりだね・・・。

「シグナム、アインス、2人を救出!」

「「はいっ!」」

シグナムさんとアインスさんがシャルちゃんとアリシアちゃんをお姫様抱っこで救出。パラソル下に敷いてあるシートに寝かせた。みんなで心配してると、アリシアちゃんは「うへぇ、酷い目に遭った。でも負けない!」すぐに体を起こしたけど、シャルちゃんは横たわったまま。どうしたのかと思ってると・・・

『人工呼吸プリーズ。なのは、アリサ、すずか、フェイトの誰か、ルシルに人工呼吸するように促して』

そんな念話が。大丈夫そうだね、シャルちゃんも。さすがに溺れたのを利用するのはダメなことだから、『ルシル君。シャルちゃんが――』さっきの念話の内容をルシル君に伝えた。

「『なるほど。判った』意識や息が無いのか? 人工呼吸だな」

シャルちゃんの表情が目に見えて緩んだし、少し唇を突き出してる。もうこれは演技だってバレバレ。私たちの空気が呆れ一色になってるところに、ルシル君がフェンリルさんを肘で小突くと、フェンリルさんは首を横に高速で振った・・・かと思えば、いきなりフェンリルさんの表情が満面の笑みに変わって、さらに狼の耳がぴょこっと飛び出た。

「待ってろ、シャル。すぐに人工呼吸するからな」

そう言うルシル君だけどスタンバイしてるのはフェンリルさん。そしてフェンリルさんがシャルちゃんに人工呼吸するために口を付けた。ここでシャルちゃんが動く。両腕でフェンリルさんの頭をホールドして目を開けた。まぁ、ルシル君と思っていたのにフェンリルさんだったから当然「っっ!!??」ビックリするよね。だから「うおーい!」シャルちゃんはフェンリルさんを押し飛ばした。

「な、なんであなたがやるわけ!?」

「マスターに頼まれたから。ホントは嫌だったけど、マスターがお願いを聞いてくれる言ってくれたから❤」

「ひどぉ~い!」

「酷いのは君だ。人の心配を利用するのはさすがにまずいだろ」

「ぅ・・・うん、ごめんなさい」

シャルちゃんがルシル君だけじゃなくて私たちみんなに頭を下げて謝ったから、もうこの件は終わり。さ、ここへ来た目的、海に入ろう。泳ぐ子、浮輪で揺られる子、砂浜でお城を作る子、ビーチチェアでのんびりする子、いろんな方法で海を満喫。ちなみに私は泳ぐ子組。アリサちゃんとシャルちゃんとフェイトちゃんと競争して、私が1着で勝利。

「くぅー、やっぱり速いわ、すずか」

「改めて運動能力1番を実感するよ」

「常々思うけど、すずかって見た目が文系そうなお嬢様なのに、実際は体育会系とかわけ判ら~ん」

海岸から50mと離れた沖にある1つ岩にタッチした状態で3人と話していると、「そこから先は結界外だから気を付けてなぁ」浮輪に座って波に揺られてるルシル君からそう言われた。結界というのは、一般の人がプライベートビーチに入らないようにするためにルシル君が張ったもの。侵入付加、不可視、の効果がある。

「あれ? ルシル君ひとり・・・?」

「あんた、フェンリルと一緒じゃなかったっけ・・・?」

「さっきまで犬かきで泳いでたじゃん。狼なのに。プッ」

「ああ、そうだよ。というかシャル。四足動物は基本的に犬かきじゃないか?」

「それでフェンリルはどこに・・・? 海岸にも居ないよね」

フェイトちゃんの問いに、ルシル君が海中を指差した。私たち揃って潜ってみる。そして見たのは、「っ!!?」海中を歩くように泳いでるとんでもなく大きな漆黒の狼。ビックリしちゃって大慌てで海上に顔を出す。

「ちょっ、ルシル! アレがフェンリルだって言うの!?」

「かなり大きかったけど・・・!」

「全高5mほどにセーブさせての顕現だよ」

「セーブしてってことは・・・もしかして本当はもっと大きいの・・・?」

フェイトちゃんが訊くと、「本来のフェンリルの全高は60mだぞ」ルシル君はとんでもないことを答えたから、私たちは「60m!?」驚きを見せた。高層ビルと同じくらいの高さということは、全長だと何十mになるんだろう。とにかくかなり大きいんだね、フェンリルさんって。

「フェンリルから久しぶりに元の姿になりたいってお願いされたけど、そんなふざけた大きさになったら大変だろ? 少し可哀想だが大きさを抑えた上で元の姿に戻ってもらったんだ。と、浮上してくるぞ、気を付けろ」

海面に上がって来た泡が弾けて、黒い影が近付いて来た。そして「わわっ!」その巨体が現れることで海面が盛り上がって、私たちは海岸へと押し流されちゃった。

†††Sideすずか⇒はやて†††

アインスとリイン、それにザフィーラ(砂集め役)と一緒に砂浜で砂のお城を作ってると、「きゃぁぁぁ!」海の方から悲鳴が聞こえてきた。そっちに目を向けると、海に出てたすずかちゃん、アリサちゃん、フェイトちゃん、シャルちゃん、それに浅瀬に座って波を受けてたなのはちゃんとアリシアちゃんとアルフが「わぁぁーーー!」波に押し流されて、砂浜に打ち上げられた。すずかちゃん達は最初は呆けてたけど、「あははは!」ビックリしたって大笑いしだした。

「わわ、大きいですぅ~!」

すずかちゃん達が打ち上げられた原因――狼形態のフェンリルさんの大きさにリインも、そんでわたしやアインス、ビーチチェアに座ってたシグナムとシャマルもちょうビックリや。ホンマはもっと大きいって知ってるんやけど、セーブした大きさでも実際に見ると十分驚きや。そんなフェンリルさんの頭の上には浮輪に座ったままのルシル君がポツンと居った。

「ごめんねぇ、みんな~」

「わー」

大きな狼の口から可愛い声での謝罪が発せられた。フェンリルさんがすずかちゃん達に謝るために頭を下げたからルシル君が落下。頭を挟むように両腕をピンと上に伸ばして潜水体勢になったルシル君。そやけどその前にフェンリルさんが人型に変身して「マスター!」空中でルシル君を抱き止めた。そんでそのまま落下するんやけど、「よいしょっ!」フェンリルさんは海中に沈むことなく海面に降り立った。そんな2人が海岸に辿り着く。

「おーい、みんな大丈夫か~?」

フェンリルさんに降ろされてすぐにみんなを心配するルシル君に、「大丈夫~!」押し流されてもうたすずかちゃん達が笑顔で応える。

「(ほっ。何事もなくて良かったわ)・・・フェンリルさん、元の姿に戻ってどうやった?」

「んー? うん、なかなかに気持ち良かったよ♪ でもやっぱり完全な姿で顕現したいなぁ~」

「おお、見てみたい!」

「いつか見せてあげたいよ、私の真の姿を。強いし神々しいし、とにかくすごいんだから♪」

笑顔で答えてくれたフェンリルさん。それからフェンリルさんを含めて砂のお城を作り上げて、みんなで記念撮影。そんで今度は全員で海に入る。ちなみにわたしとリインは浮輪装備で、バレーボールのやり方でビーチボールのパスを続けるゲームをやってるヴィータ達やすずかちゃん達を見守る。膝辺りまで海に浸かってる所為で動きは鈍くてみんな苦戦してるけど楽しそうや。

「ところでルシル君、アインス。2人もみんなに混じって遊んでもええんやよ?」

わたしにはアインスが、リインにはルシル君がそれぞれついて見守ってくれてる。そやからちょう心苦しい。そやけど、「私は好きで主はやてとリインの側に居るのでお気になさらず」ってアインスは微笑んで、「どうせならこの機会に泳ぎを覚えような」ルシル君はそう言ってわたしとリインの頭を撫でた。

「賛成ですぅ! リインも自分の力で泳いでみたいですぅー!」

「そうやなぁ。・・・うん、お願いしようかな」

「決まりだな。アインス、協力頼むよ」

「ああ、頼ってくれ」

そうゆうわけで、わたしとリインは泳ぎを習得するための練習が開始。ルシル君指導で基本的な事から教わる。まずは浮輪を取っ払ってこの身1つで浮くことからや。浮輪を取ったわたしはアインスに掴まって水没を回避して、リインは底に足をついて立つ。自力で立てへんってゆうのがすでにアウトっぽいなぁ。

(リハビリのおかげで徐々に脚を動かせるようになってきたし、バタ足も弱いけど出来る)

下半身麻痺の原因――“闇の書”の呪いがなくなってから7ヵ月。病院で平行棒を使った歩行のリハビリを繰り返してるおかげで、ホンマに少しずつやけど立って歩けるようにはなってきた。あと悲しいことに筋肉が付いた所為か腕の太さが・・・orz

「――リインも頭まで潜るのは出来ている。じゃあ、まずは浮くことから始めよう。ダルマ浮きというのがあって・・・」

ルシル君が息を吸って止めて、上半身を前に倒して顔を海面に付けて、両足を浮かせてうつぶせ状態になった。さらに『自分のお腹を見るようにして・・・と』両膝を抱えて蹲った。すると背中が海面に少し出た状態でプカッと浮いた。5秒くらいそのままで居ると『慣れてきたら、手足をダラけさせるクラゲ浮きになってみよう』って四肢をダラけさせて浮かぶポーズになった。

「ぷはっ。ま、大体こんなところだろう。これは、人は浮く生き物だ、ということをちゃんと証明する方法だ。さ、俺とアインスがちゃんと付いているから安心してやってみてくれ」

とゆうわけで、ルシル君に言われた通りにダルマ浮きってゆうのをやってみる。わたしは去年、ルシル君やフェンリルさんと一緒にプールに行ったから浮くことくらいは出来る。ダルマ浮きは初挑戦やけど、なんとか出来た。リインはどうやろ、って思うて海中で目を開けて見ると、「ごぼがぼっ!?」ジタバタと暴れて・・・溺れてた。

「(リイン!!)っ、ごぼごぼっ!?」

自力で立つことも出来んクセにリインを助けようと上半身を起こしたわたしも溺れた。アインスとルシル君に助けられたわたしとリインは一度砂浜に上がる。

「び、ビックリしたです~」

「ホンマやよ。リインが溺れてて心臓止まるかと思うたわ」

「ごめんな、リイン、はやても。一応、すぐに助けられる位置に居たけど、俺よりはやてが先に動く結果になって2人が溺れることになってしまった」

わたしが助けようとせんでもルシル君がリインを助けるはずやった。それをわたしがやろうとして結局溺れて、アインスにも迷惑を掛けることに。あぅ、ちょう自己嫌悪や。しょんぼりしてると、「なんでヘコむんだよ。その行動の速さは家族を思うが故だろ」ルシル君がむに~とわたしの両頬を引っ張った。

「そうですよ、主はやて」

「ルシル君の言う通りですぅ♪」

アインスはわたしの頭を撫でてくれて、リインがわたしの手を取って抱いてくれた。ルシル君の手が離れてちょう熱くなってる頬を擦りながら「うん、おおきにな」溢れる嬉し涙を拭わんと笑顔を作る。

「よし。それじゃ再開だ。リイン、さっき溺れた原因なんだが・・・」

「はいです。息をするために立とうとしたですが上手に出来なくて・・・」

「あっ・・・! あー、しまった、そうだよな、立つ方法を教えてなかった。ごめん!」

改めてルシル君がダルマ浮きして、「『顔を上げてお尻を下げる。で、足をついて両腕を下げる』」ふぅ、こんなところか」って思念通話で伝えながら見せてくれた。わたしとリインもやってみると、今度は上手く出来たから「イェーイ!」リインとハイタッチを交わす。ダルマ浮きとクラゲ浮き、水平に浮く伏し浮きを反復練習して浮くことに慣れる。

「ルシル。今さらだが、息継ぎについても教えないといけないのではないか・・・?」

背面浮きまで修得したところでアインスがルシル君にそう言うた。すると「あー、そっか、そうだよな」頭を抱えるルシル君。ルシル君にしてはらしくないミス連発。こうゆうことには慣れてへんのやろうね。お世話になります~。

「じゃあ息継ぎの練習だ。まずは水上で息を吸って止めて、立ったまま鼻まで浸かる。『そして鼻から空気を出す』これを繰り返す。で、慣れてきたら伏し浮き状態でやろう」

「「はいっ」」

今度は息継ぎ練習。わたしはアインスに体を支えられて練習する。立ちしゃがみの息継ぎの後は、横に浮いての息継ぎ練習。わたしはアインスに、リインはルシル君にお腹を持ってもろて支えてもらいながら息継ぎする。
それからリインだけ歩きながらの息継ぎもマスター。腰が下がって顔が海中に沈むときに鼻から息を出して、次の一歩の途中で頭が上がった時に口から息を吐く、ってゆう風に。その後は、それぞれのパートナーの手を握ってのバタ足練習や。

「膝、足首、爪先の順番で蹴り降ろすのを意識するんだ」

何度か下半身が沈んで失敗続きやったけど、10分と繰り返すとちゃんと出来るようになった。次は浮き輪をヘルパー代わりに使って単独水泳。そんで最後に自分の身1つで泳ぐ練習や。
1時間ちょう使っての練習で、「見てくださーい! リイン、泳げるようになったですぅー!」ってリインが砂浜で休憩中なわたしやアインス、そんでシグナム達に上達した泳ぎっぷりを披露した。

†††Sideはやて⇒リイン†††

ルシル君から泳ぎの方法を教わってみんなにリインの泳ぎを披露しましたです。はやてちゃんも浮き輪アリならひとりでも泳げるようになったですよ。いつかはみんなで泳いでみたいですね。そして今はみんな揃ってシートやビーチチェアでのんびりジュースを飲んで休憩中です。

「次はどうする?」

アリサさんがみなさんに訊くと「う~ん・・・」すぐには答えが出なかったです。と、「ダイビングでもするか?」ルシル君が提案しました。それに対して「シュノーケルも、タンクやフィンとか、必要な器材とか何も無いけど・・・」すずかさんが困ったような顔をするです。

「問題ないよ。その身1つで出来るからさ」

ルシル君が笑顔でそう答えると、すずかさん達が「どうやって?」と小首を傾げたです。

「あ、そうか。お前、オーディンと同じ魔法が使えんだもんな!」

「水中戦で使ったという魔力コーティングであれば、水中でも陸上のような動きが出来るという魔法だな」

ヴィータちゃんとアインスがそう言いますと、「そんな魔法があるんだ~」なのはさんや、「ルシル、水中戦も出来るんだね・・・」フェイトさん、「すごいね~」すずかさん達が感嘆の声を上げました。ルシル君が「試しに誰かやってみるか?」ってみなさんを見回すと、「やってみたい!」アリサさんとアリシアさんが挙手しました。

「よし。じゃあそこに立って。いくぞ・・・!」

ルシル君がアリサさんとアリシアさんに手を翳して魔法を発動。サファイアブルーに輝く光の膜がお2人の全身を包み込みました。ルシル君は「それで入ってみてくれ」そう言って促すと、「へぇ、どれどれ」お2人は海に入って潜りました。そしてすぐ「すごい、これ!」すごいテンションで戻って来ました。

「この魔法、結構すごいわよ! 海の中でも普通に息も出来るし会話も出来るし!」

「それにね! 普通に潜るより海中が綺麗に見えるんだよ! フェイトも、みんなも一緒にダイビングしようよ!」

それだけを言ってまた海に戻って行きました。その嵐のような行動にちょっと呆けましたけど、「ルシル君、お願い出来るか?」はやてちゃん達も期待に満ちた表情をしてルシル君を見ますと、「ああ、もちろんだとも。さぁ、行っておいで」ルシル君がリイン達に魔力コーティングを施してくれました。

「って、あれ、ルシル君は行かへんの? それにザフィーラも」

なのはさん達が海中に潜って、続いてリインやはやてちゃん達も潜ろうとした時、ルシル君とザフィーラは魔力コーティングをせずにビーチチェアに座ろうとしていたので、はやてちゃんが声を掛けたです。

「あー、ちょっと疲れたからもう少し休ませてもらうよ」

「我もここで待機しております」

「そういうわけだから、俺とザフィーラのことは気にしないでダイビングを楽しんでおいで。アインス、シグナム、ヴィータ、シャマル、リイン、それにフェンリル。はやてを頼むぞ」

「「ああ」」「おう」「ええ」「はいです」「はーい♪」

「・・・うん。じゃあいってきます」

手を振るルシル君に見送られながらリイン達もみなさんに続いて潜りました。でもやっぱり潜る前に息を吸って止めちゃいました。と、「リインちゃん。大丈夫よ、息がちゃんと出来るわ」シャマルに肩を叩かれて「ぷはっ。本当です、息もお話も出来てますぅ!」リインは止めてた息を吐いて、声を出しました。

「水温もあんまり感じないんだね」

「あ、でも水の中に居るっていう浮遊感はちゃんとある」

「だから不思議な感じがする」

「息継ぎや水圧の心配もないから、何時まででも潜っていられるっていうのは助かるよね~」

なのはさん、フェイトさん、すずかさん、シャルさんと、思い思いに感想を言いながら海中を泳ぐです。それからリイン達は時間を忘れてダイビングを楽しみました。お魚の群れに飛び込んだり、クラゲと一緒にプカプカ浮遊したり、タコに墨攻撃を受けたり、その他にも色々な事を経験しましたです。

『みんな。もうそろそろ上がっておいで。陽が沈み始めてからのダイビングは危ない』

ルシル君からそんな思念通話が来たです。そう言えば少し薄暗くなり始めたかも知れません。シャルさんが「お腹も結構空いてきたし、上がろうか」と海面に向かったですから、「夕ご飯作る体力がちょっとピンチかも」とか「簡単なものでいいんじゃない?」とか、ご飯についてお話ししながらリイン達も続いて海面へと向かうです。そして陸上に上がると同時に魔力コーティングが解除されました。

「ん? なんかすごい良い香りがするんだけど・・・」

「シーフードの香りだ・・・!」

「まさか・・・! ルシル君ひとりで夕ご飯作ったんか!?」

慌てて別荘に戻りますと、テラスには人数分のタオルを持ったエプロン姿のルシル君が居て、「おかえり、みんな。パスタにピラフにサラダ、グラタン、刺身などなど、魚介類をふんだんに使った夕飯が待っているぞ」そう言ってリイン達を出迎えてくれました。

「言うてくれたら手伝ったのに・・・」

「そうだよ、ルシル君」

「いや、君たちは遊び疲れているだろ? 体力が余っていた俺がやってもおかしく――って、ほら、今はまず風呂に入ってこい」

ルシル君がリイン達ひとりひとりの頭にバスタオルを掛けてくれました。それからリイン達は体を拭いて砂を落とした後、着替えを持ってお風呂に入りました。お風呂はかなり広かったですけど、全員一緒に湯船に入ることは無理でしたから交代でシャワーを使ったですよ。
そしてお風呂を上がった後は、ルシル君お手製のシーフード料理祭りです。複数の大皿に盛り分けられた料理に舌鼓を打ちながら明日の予定を決めて、シーフード料理祭りは終わったです。

 
 

 
後書き
ドーブロエ・ウートロ。ドブリ・ジェン。ドーブルイ・ヴェーチェル。
あー、月曜日に投稿できなかったぁ~! 頑張ったけど無理だったぁ~! ていうか、姪っ子が可愛い!! 笑顔を作ると笑顔を返してくれて、手を翳すとタッチをしてくれて、耳にフッと息を吹きかけると変な顔になる!
まぁ、そんなこんなで仕事へ行くまでの時間、姪っ子の世話をしていたら遅れてしまいました。つわりも治まったことで妹、そして姪っ子も嫁ぎ先へ帰って行って寂しさいっぱいです。盆にはまた帰っておいで~。

あと、とある読者様からイラストを描いてほしいとのことでしたので、シャルシルの子供と大人バージョン、アンスールメンバー全員のイラストを描き終えました。ちょっとずつ投稿しようと思います。それとエグリゴリやアイリなども描いていく予定です。が、あまり期待しないでください。以上っす!

 
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