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リリカルな世界に『パッチ』を突っ込んでみた

作者:芳奈
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第十三話

「私も手伝うわよ!」

「駄目だ。」

 ヴォルケイノを見られたことで言い逃れ出来なくなった葵たちは、高町家全員も呼び、月村家で事情の説明をしていた。最初は半信半疑だったアリサたちも、目の前でなのはが変身したり、葵が木よりも高くジャンプしたりすれば、信じない訳にはいかない。ジュエルシードという災害が自分たちの街に存在する。それを聞いたアリサの第一声がこれだった。

 ただし、葵にすげなく否定されていたが。

「なんでよ!人数は多いほうがいいでしょ!いつ爆発するかもしれない爆弾が街にあるのよ!地球全てに関わる話なんだから、葵たちだけでやる必要ないじゃないの!」

 アリサの言葉にも一理ある。

 ジュエルシードは、いつ爆発するか分からない爆弾だ。それも、核爆弾よりも強力でタチが悪い。早く回収して安心したいというのは、間違っていない。

「危ないんだ。命に関わる。」

 アリサは、ジュエルシードの危険性を完全に理解していない。いや、それはなのはや、士郎たちですら同じだ。ジュエルシードの暴走体といっても、今まで出てきたのは毛玉と兎の化物。そしてヴォルケイノ。

 だが、そのうち前者の毛玉の化物と兎の化物は、『厄介』ではあっても、その程度だ。なのはも最初は不覚を取ったが、今更あの程度の暴走体に負ける事はないだろうし、士郎と恭也も、攻撃が通用しないために倒せはしないが、負けもしない。所詮、その程度の強さしか無かったのだ。

 そしてヴォルケイノに至っては、葵が一人で倒してしまっているため、なのはたちはヴォルケイノがどれだけ恐ろしい敵だったのかが理解出来ていないのである。その気になれば、数分で海鳴市を溶岩の海に変えることが出来るなど、想像もできないに違いない。

 彼らは、ジュエルシードの本当の恐ろしさを知らない。『暴走すれば地球が消滅するかも』と言われて、具体的に想像出来る人などいるだろうか?何となく危険なんだなとは思っても、実体験として経験しなければ、本当の怖さなど分からないだろう。

 だが、葵だけは理解している。

 簡単に街を滅ぼせる強さの暴走体だったヴォルケイノと戦った事もそうだが、そもそも彼は前世のアニメで、ジュエルシードが次元断層を引き起こしそうになった場面を見ているのだ。

 結果としてそれは未遂に終わったが、もし止められなければ地球は消滅していたかもしれない。それほどの危険が、ジュエルシードにはある。

 それだけの威力なら、地球のどこにいても同じだし手伝って貰えばいいという考えはあるだろう。しかし、地球消滅まではいかないにしても、家と同じくらいに巨大化した猫や、巨大化した鳥などに一般人が勝てるだろうか?それに原作のアニメでは、巨大な樹木が街中に出現して、その巨大な根っこが街を破壊するという事件まで起こっている。

「ぶっちゃけると、今すぐ海鳴市を離れてもらいたいとすら思っているんだ。」

「なによそれ!?私たちだけ安全圏で見てろっていうの!?」

 葵の言葉に、アリサは憤慨していた。すずかも、葵の言葉の正当性を理解はしているが、許容は出来ないという気持ちのようで、頬を膨らませている。

「・・・うん。確かに、戦力にならない私たちがいても邪魔なだけかもね。」

「お姉ちゃん!?」

 だが、すずかの姉である忍は冷静に状況を把握していた。

「私たちの家の力を使えば、人海戦術はできるわ。街に散らばったジュエルシードを探すのに、人数は大事かもしれない。・・・でも、発見したジュエルシードが暴走していたりすれば、その人の命に関わるかも知れないのよ。」

(それに、フェイトがジュエルシードを探しているかも知れない。二次創作でも、たまたまジュエルシードを発見した主人公を襲うって内容が多かったからな・・・。母親に喜んで貰いたいって一心だったんだろうが、思い込んだら一直線な性格だし・・・)

 一般人を襲うとは思いたくないが、可能性は否定出来ない。何せ、『暴走したらヤバイ』と言われているジュエルシードを探す為に、広範囲に魔力をぶつけて暴走させるという荒業さえ使う娘である。しかも、一度ならず二度までも。

 自分の技量に絶対の自信があったのかもしれないが、失敗すれば自分の命だけでなく、地球人類70億人の命も失われることが理解出来ていたのだろうか?

(―――出来ていなかったっぽいよなー。母さん母さんって一直線で、他のことなんて目に入らない感じか。後先考えないって厄介なんだけどな・・・)

 生まれてから殆ど、親から愛情を受けていないのだから当然とも言えるが。あれくらいの歳で女の子だ。愛情に飢えていても仕方がない。情操教育なども受けていたのかどうか・・・。あれだけ優しい少女に育ったのが奇跡である。

「ジュエルシードは、俺たちが対処する。出来るだけ早く終わらせるから、安心してくれ。」

 硬い空気を吹き飛ばそうと笑いかけるも、それを見たアリサはますます激高する。

「―――!もう知らない!勝手にすればいいわ!」

 行こうすずか!と、まだ話したいことがありそうなすずかの手を引き、部屋を出て行ってしまうアリサ。バタン!と荒々しくドアを閉めると、そこに残るのは静寂ばかりであった。

「・・・怒らせちゃったか。」

 分かっていたことではある。彼女の性格的に、見過ごせないことだっただろう。しかし、下手に手を出せば、暴走して地球が危険にさらされる可能性もある。頭のいい彼女はそれを理解していたが、どうしようもない現実に苛立っていたのだ。

 問題があって、それに対処する親友たちがいるのに何もできない自分に苛立っていたのだろう。それが分かっているからこそ、葵もなのはも不快な気分にならなかった。心配してくれているのだから。

「すまないね。アリサも分かってはいるんだが。納得出来ないんだろう。」

 アリサの父親、ジン・バニングスが謝ってくるが、葵は首を振った。

「逆の立場なら、俺も同じことをしたでしょうね。怒ってなんていませんよ。本当は手伝って貰いたい。でも、一生寝たきりになったり、死んだりするかも知れない事件に一般人を巻き込む訳にはいかないでしょう?もしアリサの命令で使用人がそういう怪我を負ったりしたら、一生悲しむでしょうしね。」

「本来なら、君たちのような子供ではなく、私たち大人がやらなければならないことだ。それを任せきりにしてしまうのも、心苦しいのだが・・・。」

 すまなそうに頭を下げてくるジンだが、葵はそれに苦笑しながら答えた。

「適材適所ですよ。たまたま対応出来る力があったってだけです。それに、管理局って所が来れば、今よりずっと楽になります。それまでの辛抱です。・・・あ、くれぐれも他言無用ですよ?政府に話したりすれば、間違いなく研究資料として持っていかれるでしょうし。」

「君と話していると、大人との会話をしているような気分になるよ。」

「アリサやすずか、なのはだって同じですよ。何度子供らしくないって言われたと思ってるんですか。」

「フフ。そうだったね。」

 緊迫した空気が霧散し、少しの間、部屋に笑いが続くのだった。 
 

 
後書き
難産でした・・・。アリサたちの家の力に頼ろうとしたこともありましたが、危険なので頼らないことに。異論反論あるかもしれませんが、この方向で進みたいです。

試験は八月終わり頃なので、それまでは今のままの更新ペースになります。・・・ってか、一度も更新出来ないかもしれませんが、ご了承ください。 
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