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カードゲームの相手

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2部分:第二章


第二章

 黒いタキシードを着た黒髪を後ろに撫で付けた男が立っていた。何か不気味で剣呑な顔付きをしていてだ。目には黒く不気味な光がある。
 闇世の中に立つその男は異様に大きい。その彼がだ。使用人達に言ってきた。
「ケンジントン卿はおられるな」
「旦那様ですか」
「おられますが」
「そうだな。実はだ」
「実は?」
「実はといいますと」
「呼ばれたのだ」
 そうだとだ。その男は言ってだ。
 大股に屋敷に入っていってだ。そうしてだった。
 使用人達が慌てて呼び止めようとするのも聞かずにだ。屋敷の階段を登り。
 そのままだ。卿の部屋に入った。それを見てだ。
 使用人達は呆然としてだ。また顔を見合わせて話した。
「あの方は誰だ?」
「見たことのない方だが」
「旦那様のお知り合いだろうか」
「どうもそうらしいが」
 そのことはわかってもだった。
「しかし。あの様な方は」
「何と不気味な方だ」
「いきなり来られたし」
「訳がわからないな」
「本当にな」
「不吉なものも感じるな」
 一人がこう言った。
「得体の知れない不気味さ」
「確かに。あの方からはな」
「黒い、そうしたものを感じる」
「全くだ」
 そんなことを話しながらだ。彼等はその客についていぶかしんだ。しかし何はともあれだ。
 主のカードの相手が見つかったのはよしとした。それはだ。
 それでだ。彼等はだ。カードがはじまったのでだ。
 早速だ。ワインとチーズ、それにサンドイッチを用意した。カードの際は手を汚さずに食べられるサンドイッチを食べるのが通例だ。それでだ。
 そういったものを用意してだ。部屋に持って行った。そこで彼等が見たものは。
 テーブルにだ。その男と向かい合ってポーカーをする主だった。彼は鬼気迫った顔で勝負に興じている。それに対して客はというと。
 にこりともしないが余裕がある。その顔でだ。
 彼もまた勝負をしている。その彼等にだ。
 使用人達はだ。戸惑いながら声をかけたのだった。
「あの」
「・・・・・・・・・」
 返答はなかった。どちらからも。
「食べ物とワインを置いておきますので」
「召し上がって下さい」
 こう告げてだ。彼等は部屋を後にした。その間ずっとだ。
 その部屋から退出してだ。今度は強張った顔になりだ。彼等は囁き合った。
「おかしいな」
「ああ、旦那様はカードの時は不敵な笑みを浮かべておられるが」
 絶対の自信があるからだ。好きなだけあり強いのだ。
「しかし今はな」
「何かが違う」
「必死な顔で何かを守ろうとされている」
「そうした顔だったぞ」
「それにだ」
 それに加えてだった。
「あの客人はな」
「何なのだ?本当に」
「旦那様とは違い余裕の顔だったが」
「一体何者なのだ」
「妖しいことこのうえないが」
 その客が問題だった。一体何者かをだ。
 いぶかしみながら考える。それが問題だった。
 しかしだ。それからはだ。
 夜の時間だけが進みだ。彼等は自分達の仕事を続けていった。やがて。
 窓の外が明るくなってきた。朝になった。朝になるとだ。
 部屋の扉が開きだ。中からケンジントン卿が出て来た。彼は部屋から出て使用人達にだ。こう言ったのである。
「何とか凌いだ」
「凌いだ?」
「凌いだのですか」
「そうだ、凌いだ」
 そうしたというのである。
 
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