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魔法少女リリカルなのはINNOCENT ~漆黒の剣士~

作者:月神
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第19話 「小学生達の現状」

 その後、フローリアン姉妹の策略によりチームT&Hエレメンツは急遽イベントデュエルに参加することになった。
 対戦したのはディアーチェ&ユーリにチヴィット達。デュエルの内容はスピードレーシングでコースは大森林だった。このコースは視界を遮る木々の存在にどう対応してターゲットを破壊するのか技量が問われる。また自然破壊を行うとペナルティがある。
 ちなみにT&Hの少女達は、自然を燃やせないなど発言したり、プロテクションしながら進むのは無理そうだな、という顔を浮かべたりしていた。可愛い顔をして物騒な思考をする子供達である。
 勝敗については……あまり触れると機嫌を損ねそうな人物がいるので大声では言えないが、勝ったのはT&Hだ。その際、王さまがシュテル達がいれば……いやユーリだけということに不満があるわけではないぞ。と、ユーリへのLOVEが分かるやりとりがあったりした。まあ彼女のユーリへの愛は誰もが知っていると思うのでこれ以上は触れない。

「ふむ……そろそろ開戦のようだな」

 現在、俺はディアーチェと共に小学生達のデュエルを観察している。
 ここに至った経緯は、小学生達が壁を感じていると相談してきたため、ディアーチェが研究所にある《プロトタイプシミュレーター》と呼ばれる新しい設定を盛り込む際に使われる機械に内蔵されている《エクストラトレーニングモード》を使わせることにしたのだ。
 ちなみにこのモードは、現在フリーバトルしか行えないが技の出力やアバターの状態といった様々なデータをプレイヤーも確認することができる。
 各々の持ち味を確認するため、高町とアリシアはアミタ&モモキリ。バニングス、月村、フェイトはキリエ&ユーリ&王ちゃまとデュエルを行うようだ。場所は前者が空中で後者が地上である。

「空中戦と地上戦に分けたんだね。各々の持ち味を再度確認するためのステージ選択といったところかな」
「ん? 博士いらっしゃったのですか」

 画面を覗き込んでいた俺達のところに現れたのは、ディアーチェの博士という言葉からも分かるとおり、ここの責任者であるグランツ博士だ。研究熱心なせいか痩せ気味ではあるが、人の良い人物である。知っている人も多いだろうが、アミタ達の父親でもある。

「データ取りは僕にしても助かるからね。微力ながらお手伝いに来たのさ。まあ君としてはユーリが居てくれたほうが良かったかもしれないが」
「なっ……何を言いますやら!」
「ははは、冗談だよ。ここにはショウくんもいるしね」

 笑いながら発せられた言葉にディアーチェの顔はさらに真っ赤になる。先ほど許婚やらで良い意味でも悪い意味でも盛り上がっていただけに、この手の話題はクリティカルしやすいようだ。

「博士、俺達をからかうのはやめてください。大人なんですから」
「はは、手厳しいが正当な意見だね。あ、それよりディアーチェはそろそろ準備に行ったほうがいいんじゃないかい?」
「む、もうそのような時間でしたか」

 グランツ博士に促されたディアーチェは、俺達にデータ取りを頼むと準備が済み次第迎えに来ると言って出て行ってしまった。この場に残された俺はというと、必然的に博士と共に小学生達のデュエルを見ることになる。

「いやはや楽しみだね。さて、デュエルのほうはどうなっているかな」

 意識を画面に戻すと、アミタの射撃を避け後方に回っていた高町の姿が見えた。彼女はそのまま攻撃を加えようとしたが、アミタが背後を確認することなく精密な射撃を行ったため、回避を余儀なくされてしまった。
 そんな高町にアリシアが声を飛ばしながら、アミタの銃撃を防ぎ懐に飛び込む。しかし、モモキリが現れて攻撃を許さない。すかさずアミタが銃撃を加えるが、アリシアも魔法を展開してガードしてみせる。高町が強烈な砲撃を放つが

「このタイミングでは通らないだろうな」

 俺の予測どおり、放たれた桃色の砲撃はアミタによって斬って捨てられた。ビームを斬るなんてさすがは風紀お姉ちゃん《あみたん》である。
 嘘、冗談だ。ここに学校での愛称は関係ない。純粋に彼女のデュエリストとしての力量が高いだけだ。
 一方他の3人はというと、見事なまでに消耗していた。対しているキリエ達の顔は涼しいままだ。

『わ~お、ビーム斬っちゃった。砲撃・銃撃戦は派手よねぇ~』
『青にピンクに綺麗です』

 などと、あちらのデュエルを気にする余裕さえある。
 その言葉にこれまでのように攻めても無駄だと判断したのか、小学生達は小声で何か話した後、一斉に動き始める。
 まずはバニングスが炎を鞭のようにしならせながらキリエを攻撃。しかし、命中率は0パーセント。それに苛立ちを覚えたバニングスが声を上げるが、キリエ曰く「お姉さんへのタッチは簡単ではないのようん」とのこと。
 ならばと月村がキリエの足を凍らせて機動力を奪い、バニングスがフェイトと共に追撃を掛ける。だがその攻撃もユーリと王ちゃまに防がれてしまった。

「ふむ……ショウくん、君は彼女達をどう評価するかな?」
「俺ですか? そうですね……まずアリシアですが、臨機応変な対応力はさすがだと言えると思います。センターガードとして活躍できるでしょう……でもガンナータイプという特性上、やはり決定力に欠けますね」

 モモキリがガードを固めながら真正面から突撃しているのだが、アリシアは止められていない。このように力押しで来られたときにどうするかが今後の課題だろう。

「僕も同意見だね。次になのはくんはどうかな? 彼女はシュテルと同じセイクリッドタイプのようだけど」
「あの子は空を飛ぶことに関して才能があるみたいですからセイクリッドと相性が良いと思いますよ。まあ現段階ではスペックの高さが仇となっているのか、位置取りが甘くて思いきりが足りてませんね。まだまだ隙が多いです」
「ははは、君は本人がいないとズバズバと言うんだね」
「本人がいても言ってほしいなら言いますけどね」

 言わないのだけが優しさではないって母さんも言っていたし。
 今関係はないけど、俺の母さんってよく考えると不思議な人だよな。感じとしてはシグナムに近いのにパティシエやってるんだから。まあ父さんがだらしがない人だから相性は良いんだろうけど。今でも「ごちそうさま」って言いたくなる言動してるし。
 下が増えるなんて未来もありそうだよな……もしもそんな未来がきてしまったらどうするか。年齢が離れているだけに……仮定の話を考えても仕方がないか。

「次にアリサくんだけど、一言で言うなら切り込み隊長やこれぞフォワード! といったところかな」
「ですね。もう少し視野を広く持ってリスク管理できないとダメでしょうけど」
「そうだね。僕個人としては彼女のようなプレイは好きなんだけど」
「まあ俺も好きですよ」

 デュエルを始めた頃の自分によく似ているし。今では先輩としてあれこれ教えている身であったり、何でもこなすような位置でプレイしているけど、本来の俺のスタイルは攻撃は最大の防御って感じだからな。まあシュテルくらいにしかそのへんは見せたことないんだけど。

「フェイトくんはキリエと同じワイドウィング……のレヴィよりかな? 視野は比較的広いみたいだし、機動に関しては文句のつけどころがないね。ただ」
「仲間に合わせすぎて遊撃としては微妙なところですよね」

 まあ彼女の性格を考えると無理もないと思うが……もうチームメイトなんだから、あの子達にくらい自分の正直な気持ちをぶつけてもいいと思うんだがな。

「最後にすずかくん、ポジションはユーリや王ちゃまみたいにディフェンダーなんだろうけど……動体視力や身体能力が高いんだろうね。普通はあそこまでサポートできないよ」
「ええ、ある意味1番ギャップがあります。……けど、それ故に仲間――今回の場合は特にバニングスへ意識を大きく割いている印象があります。まあ付き合いの長さや性格を考えると分からなくもないですが」

 ちょうどデュエルも終わったらしく、アミタが俺と博士のような解説を次々と述べ始める。しかし、見事にボロ負けしたT&Hの面々には聞こえていない。アミタ、熱血は君の良いところだけどもう少し冷静さも持ちましょう。

「さて、僕はまだあの子達と顔を合わせたことがないし挨拶にでも行ってこようかな。ショウくん、君はどうする?」
「行ってもいいですけど、そろそろユーリ発案のお祝い企画の第2部が始まるでしょうし、俺もそっちの準備に取り掛かりますよ」
「そうかい。……ところで、今日はいったいどうするつもりなんだい? 僕としては、久しぶりに君の全力全開を見てみたいんだがね」

 全力全開が意味するのは、シュテル戦でしか使ったことがないアレを見たいってことだよな。あまり人前では使いたくないんだが、今後に待ち受けているユウキとのデュエルを考えればもっと練度を上げておく必要がある。まあ……

「それは……あの子達次第ですね」


 
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