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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter46「理想と真実の物語〜歌声は海瀑に谺す」

 
前書き
更新がおくれてすみません。
よければ最後までごらんください。 

 
借金の返済に奔走したり仲間の仕事や問題を手伝ったり苦労したりと忙しい中、ヴェルから連絡が入った。拘束中のユリウスが道標を奪って逃走したというのだ。
身分を隠したガイアスがクランスピア社前で自分を待っているらしいがあいにくそんな余裕はない。

仲間を集めイラート海停に向かい、リドウの追跡隊との合流を急ぐ。

『やっときたか』

合流したリドウは待ちくたびれていたようだったが、いつもと何か違う。

「なんだあのダセーサングラス?」

普段つけていないサングラスに気付いて思ったことを口にするヴィータ。
元々趣味の悪い服装であるため、余計に拍車が掛かって人相は最悪だった。
これで金を払ってまでリドウと話したがる女性がいるのだから、人の好みは幅広いなと皆頭を悩ませる。その側でエルがイバルに小声でその理由を尋ねているのを聞くところによると、ユリウスが逃走した際顔を踏んづけられてできた足跡を隠すためにサングラスをつけているのだと。
サングラスの下の足跡が見れないのを残念に思うが、ちゃっかりはやてとヴィータは笑うのを忘れない。

『捜索を始めるぞ!』

部下に笑い者にされ苛立ちながら捜索をリドウが命じる。
情報によるとユリウスの足取りはここで途絶えたらしい。この人数だと別れて捜索した方がベストだと考え、一行は別れることにし、ルドガーはエルを連れ、ミラ、エリーゼとともにハ・ミル方面へ向かった。

『ぎゃああー!』

「ちょ、なに!悲鳴?」

ハ・ミルに着くなりルドガー一行と六課メンバーはいきなり村人の悲鳴を耳にする。職業柄ティアナや正義感の強い管理局の面々は思わず悲鳴の聞こえた方角へと向かおうとしたが、干渉できないことを思い出し動きを止める。それにその方角からは悲鳴の現況ともいえる羽の生えた女性が浮遊しながら近づいきており驚きを隠せない。それも見覚えのある人物なら尚更だ。

『ミ、ミュゼーだー!』
『村の人をいじめてるんですか!?』
『そんなことしてません』

騒ぎを起こしたであろう容疑者は大精霊という強大な力を持つミュゼだった。
村人の悲鳴はミュゼが原因のようだが本人はいじめを否定している。
まず何故こんなところに彼女がいるかが全くの謎である。

『姉さん!』
『ミラ!?』

2人は互いを自分の知る人物と見間違えてしまう。無理もない、顔も同じなのだから。
だがミュゼは一瞬驚いただけで直ぐに彼女が自分の知るミラでないと見抜き、ルドガーに事情を尋ねた。残念ながらミュゼは分史世界に、カナンの地についてルドガー達が掴んでいる情報しか知らないようだ。そんな時、ミュゼの後ろから先ほどの悲鳴を上げた村人がミュゼに詰め寄ってきた。

『見つけたよ!このパレンジ泥棒?』

「へ?」

予想を斜めいく内容にポカーンとなるはやて。パレンジはルドガーから自分達の世界に存在する果物だと聞かされており驚くべきことではなかった。問題は大精霊であるミュゼが何故そんなマネをしているのかが一番の謎なのだが、本人は気分的にお腹が減って、パレンジを食べくなったと悪気なく言うものだから扱いにこまる。

と、そんな時ルドガーのGHSが鳴る。

『ユリウス前室長と思われるエージェントの分史世界進入を探知しました。当該分史世界は、道標存在確率“高”です』

ヴェルとの通話を終えるとエリーゼがユリウスを追いかけようと発現した。
道標があるからにはどの道分史世界に進入しなくてはならいが、今回は先客がおり一応用心しなければならない。

『注意した方がいいわ。そのユリウスって人、誘ってるみたい』
『だからって、逃げるわけにはいかないでしょう』

ミュゼもルドガーと同じ考えに行き着いていたようだ。
ミラの言うことも一利あるが、それでは状況次第で最悪ユリウスと一戦交えることになるかもしれない。覚悟はあるができればそれは避けたい。

『ねぇ、ルドガー。私も連れて行ってくれない?』
『かまわないが、どうして?』

その申し出は心強かったが、寄り道していていたとはいえミュゼは行方不明のミラ=マクスウェルを探していたはずだ。彼女の手がかりが今回の事件でみつかる可能性を考えたのかと思ったがそれは違った。ミュゼはミラの下へ移動する。

『この子が心配だから。危なっかしいところはミラとそっくり』
『お、大きなお世話よ』

頬を赤らめながら答えるミラ。彼女の知るミュゼでないが、姉に心配してもらえているようで嬉しく思っているようにフェイトには見えた。仲間も1人増え、後は分史世界に行くだけ。
人気のないところまで移動しようとすると村人がルドガーに話しかける。

『あんたら、連れなら、パレンジの代金払っておくれ!』
『……不幸だ』

思わず脱力。旅は道連れと言うらしいが、この先も似たようなことがあったら借金エージェントの自分は心が折れそうだ。結局本当にパレンジ一個分の代金100ガルドを払いながら、ミュゼを仲間にしたのをほんの少し後悔するルドガーであった。

「パレンジかぁ~。どんな味がするんだろう!」

隣で相変わらず食欲優先の同僚を無視し、ミュゼを観察するティアナ。分史世界の狂気的なミュゼと比べたらまだ友好的で接しやすい。ただ気になるのは昔は違ったのか、以前の彼女を知るエリーゼとティポは、凛々しいというか険しかったらしく、今の彼女の方が好感を持てるようで、それだけ評価が変化していればかつての彼女の姿を逆に見てみたい。

「あっ、変なキレーな貝!」」

分史世界のキジル海瀑に進入し、ユリウスの捜索と時歪の因子の捜索を続ける一行は、広い砂浜で綺麗な貝を見つけてはしゃぐエルのため行動を一時中断する。海岸に近づくエルに危ないと忠告するエリーゼだが、エルは聞くことなく海岸に走っていった。

『あんな子どもを連れ歩く気が知れないわ』

ルドガーへ皮肉を口にするミラ。ルドガーとてエルを危険な旅に連れ歩きたくはない。
だが彼はエルと約束したのだ。カナンの地に共に行こうと。そしてその約束と共にルドガーはエルをどんなことがあっても守り抜いてみせると決意した。そんな中ミュゼが口を開く。

『人間って、守るものがある方が強いんじゃないかしら?』
『あなたもそうだった?』
『さぁ?私は人間じゃないから』
『……そうよね』

ミュゼがミラに話したことはなのは達に良くわかることだった。これまでどんなに苦しい局面でも、自分の守りたいもののためなら戦えた。それはもう身を削る覚悟と言えよう。ミュゼはわからないと言っているが、なのはは彼女の目を見て実はわかってるのではと思っていた。

『でも、ひとりぼっちは、もう嫌』
『そう……よね』

「ひとりぼっち…か」

ひとりぼっちとは即ち孤独。幼少期、両親を失い守護騎士と出会うまで孤独の辛さを知るはやて。
彼女だけでなく六課の中には孤独を知る者はおり、皆昔を思い出すだけでゾッとしてしまう。心を持つ者にとって孤独とは最も恐ろしいことなのだ。

『はっ!』

2人の会話を黙って聞いていたルドガーの耳に、どこからか鼻歌が入ってきた。
ルドガーは歌の聞こえるほうへ1人で歩いていく。

『ちょ、あなたまで!?もう、エルとそっくり』

ホンマやわとミラの言葉に同意するはやて。前々から見て思っていた。ルドガーとエルは鮮烈な出会いだったが、そこから互いの心が引き合うように仲を深めていった。それに2人の瞳は全く同じ翠の色。性格も一部似ているところを見れば、思わず血縁関係にあるのではとあり得ない考えをしてしまうのだ。
呆れながらもミラはルドガーのあとを追う。彼の様子がおかしいことに気付いたのだろう。
2人が向かった先には岩場に腰掛け、鼻歌を歌っていた。

「あれ?この歌……」
「ルドガーさんがよく……」

以前にもユリウスが自宅で歌っていた時は気付かなかったが今回キャロとエリオが鼻歌に聞き覚えがあることを思い出す。その反応を見たはやてはルドガーが自分にこの歌を教えてくれたあの日以外で、日頃フォワードの前やそれ以外の人の前で歌っていたのだろうと想像した。
隣にいるなのはやフェイトも鼻歌を聞いて、反応を示しているからには間違いない。

『余裕ね。追われているのに鼻歌なんか歌って』
『クセなんだよ。我が家に伝わる古い歌でね。会いたくて仕方ない相手への思いがこめられた“証の
歌”と言うらしいが……本当に、会いたい相手が来た』

ユリウスは優しい眼差しでルドガーを見つめる。鼻歌の名称とこめられた意味を知るはやて以外の六課メンバーは鼻歌だけでなく歌詞を聞いてみたいと思ってしまう。
その思いを感じ取ったはやては、以前ルドガーから聞かされたことを伝える。
証の歌は今はもう旋律だけが伝わり、歌詞事態は失われていると。
はやてから事実を聞かされ一同は残念に思うと共にこの歌の歌詞がとても素敵な内容だったのだろうと想像する。

『兄さんは、その歌好きだな』
『それは、お前の方だろ』

ユリウスはそう笑いながらルドガーが証の歌を自分以上に好んでいるということのわかる話しを始める。

『赤ん坊の頃から、これを歌ってやるとすぐ機嫌がなおった』

ユリウスの発言に恥ずかさを隠せないルドガー。
幼い頃の話しをミラの前で聞かされたからだが、この会話を後にはやて達に知られるとは夢にも思わない。

『覚えてるか?子どもの頃、キャンプに行った山で、二人そろって迷子になったこと。雷は鳴るわ、熊はでるわ、大変だったよな。……けど、俺がこれを歌うと、お前は泣きたいのを我慢して歩き続けた。俺がおぶってやるって言っても、自分で歩くって意地はってな。一晩中歩いて麓の村に戻った時には、足もノドも、ボロボロだったけ』

ユリウスの語る幼き日の思い出に、ルドガーは懐かしさに思いを馳せる。

「あのルドガーさんが……」
「やっぱりルドガー、エルちゃんと似とるなぁ」

自分の師は誰よりも子どもらしかったのだと、彼と同じように歳の離れた兄がいたティアナは親近感がわき、はやてはその話しを聞いてエルとルドガーはやはり似ていると感じていた。

『そんな話がしたいわけじゃないんでしょ?』
『もちろん要件は別にある』

岩場に腰かけていたユリウスが砂浜に降りる。
懐かしむように思い出を語っていたユリウスの雰囲気は同時に一変した。ルドガーとミラは身構える。

『もう時計の問題じゃない。あの娘……エルを俺に渡してくれ』

ユリウスの発言により沈黙が起こる。シグナムはユリウスは“渡してくれと頼んでいる”のではなく、“渡せと命令している”とその言葉から読みとっていた。

『危ない趣味ね』
『拒否すれば、力づくで奪う』

有無は言わせない……ユリウスの放つ殺気からははっきりとそう伝わってきていた。
当然ユリウスの要求に従うはずもなく、ルドガーは剣を抜く。

『ルドガー……なぜ、あの娘にこだわる?』

ユリウスの問いに対しルドガーは自分の決意を伝える意味で自身の言葉を話す。

『約束したんた。一緒にカナンの地に行くって』
『やめろ!誰にとっても不幸な結果になるぞ』

それまで冷静な口調だユリウスの声色が感情の入ったものに変わった。

『何を知ってるの、あなた?』
『オリジンの審判の非情さを、だ』

やはりユリウスは知っているのだ。ルドガー達がまだ知らぬオリジンの審判の何かを。
そしてユリウスはルドガーを未だ事から遠ざけようとしているのは、彼を何かから守ろうとしているように見える。

『わかってくれルドガー!俺は、お前を---』

そんな時、エルの悲鳴が響き渡る。

悲鳴を聞きエルの下へ駆け付けると、海岸に禍々しい気を放つ時歪の因子の魔物と、もがき苦しむエルを必死に治療を試みるエリーゼの姿があった。
しかし回復術は効果を為している様子はない。
魔物はルドガー達へ攻撃を仕掛けたあと、姿を透明に変えその場から消えた。
ミュゼは一目見てエルにかけられた術が、呪霊術(じゅれいじゅつ)という生き物の命を腐らせる精霊術と見抜く。しかも術を解くには術者である魔物---時歪の因子である海瀑幻魔を倒すしかないという。

『正史世界では絶滅した変異種。姿を隠して呪霊術で獲物を襲い、動かなくなった後、その血をすする魔物よ』

ミュゼが告げた海瀑幻魔の生態はルドガーに焦りをもたらすには十分だった。

『はぁ……はぁ……』

苦しみに叫びを上げていたエルは徐々に生気を失い、虫の息になっていく。
エリーゼは回復術をかけながら、いつか必ず手にいれる約束したバーニッシュが待っていると励ます。だがこのままでは霊力野(ゲート)を酷使し続ければエリーゼまで倒れしまう。
見兼ねたミラが制止するもエリーゼはその手を振り払う。

『でも、約束したんです!』
『破ったらハリセンボンなんだよー!』
『でも、このままじゃ、ふたりとも……』

目の前で大切な者の命が失われようとしている中、何もできない自分自身を嫌悪する。
俺に出来ることはなんだ?考えろ……思考を研ぎ澄ませ。
魔物を倒すしか術が解けないなら魔物を見つけ出すしかない。だがそれまでにエルの命が持つ保証はない。焦りより自分がまともに考え、それを実行することができるかすら怪しくルドガーには思えていた。

(ルドガーはこないな無力感を味わったんか……)

表情から見てもルドガーが自分の無力さに打ちのめされているのがわかる。
それでも必死に今できる最善の策を考え続けている。そんな中彼は何かに気付いたかのように目を見開いた。

『俺が幻魔を誘き出す!』
『はぁ、どうやって?』

ミラがどうするか問うが、答えている余裕がないルドガーはエル達から少し離れ、剣を取り出し自分の左腕に刃を乗せる。

「ルドガー何を---」

ルドガーが剣で自分の腕を斬ると確信したフェイトは思わず制止の声を上げるが、言い終える前に剣で腕を斬る。

『ぐっ!』
『なにをするんですか!?』

エリーゼが突然ルドガーの行った自虐行為に声を上げる。
六課メンバー全員がルドガーの行いと、彼の足元に落ちた決して少なくはない血の量に言葉を失ってしまう。

『まさか……血の臭いで幻魔を誘き出す気!?』

ミラが気付いたルドガーの行為の意味は当たっている。
確かにこれなら、血を好む幻魔を誘き出せる可能性はある……しかし出血の量は見れば決して少なくはい。一歩間違えればルドガー自身も命を落としてしまう。

『お前、そこまで……』
『大切な子なのね』

ユリウスは弟の覚悟がどれほどのものか知り、ミュゼはルドガーにとってエルが大切な存在なのだと口する。

(私は……馬鹿だ!)

ティアナは以前力を求めるあまり、ルドガーに綺麗事だと言ってティアナを思って言った彼の言葉を否定したことがあった。天才に自分の気持ちがわかるはずがない……本当に何かを失ったことがある人間なら自分のことを理解できるはずだと。
今思えば自分は最低な事を師に向かって口にしたのだと後悔してしまう。
そして彼が本気で自分を心配してなのはとぶつかったのだと今更わかり涙を流す。
同じくなのはもルドガーとぶつかった際、大切なものを失いそうになったことのないルドガーに自分の気持ちは理解できないと言ってしまったことを悔いていた。
ルドガーは自分のことを理解してくれた上で、生徒を傷つけようとした自分を体を張って止めてくれた。そして過去の苦しみから自分を守ってくれた……なのはの心は感謝の気持ちでいっぱいになる。

『きたわよ!』

腕の痛みを歯を食い縛り、堪えながらミュゼの幻魔襲来わ知らせる声で剣を構え直す。

『ルドガー!』

ルドガーへ不可視状態の幻魔が攻撃を仕掛けるがユリウスが剣を投げ幻魔の触手から彼を守る。
幻魔が怯んでいる間にユリウスはルドガーに近寄り何かを渡す。
ルドガーは渡された物を見て驚く。
それは彼がクラン社から逃走した際奪ったカナンの道標だった。

『……大切なら守り抜け。何にかえても!』

ルドガーと出会って直ぐの頃、はやてが皆に負担をかけたくはないと本音を語った際、同じことをルドガーははやてに告げた。受け売りだと聞かされてから、彼のことを知る内、何となくこのセリフはユリウスのものではと思っていたため、今回のことで彼もまたルドガーと同じ自己犠牲を厭わない人間だとわかりこの先彼がどうなるか、ルドガーと同じく心配になる。

『うおおおっ!』

エルを守ろうとするルドガーの覚悟を認め、ある意味ルドガーの信念になる言葉を送ったあとユリウスは、幻魔の触手に弾き飛ばされ、海へと消える。そして幻魔とエルの命の時間を賭けた戦いが始まった。

ルドガーの傷は戦闘中応急措置だが手当てをすませたことで悪化することはなさそうだが、回復術はルドガーの心の余裕を回復はさせてはくれない。

『う……くっ……ああっ……!』

エルの苦痛の声を聞く度にルドガーの焦りは強まっていく。戦闘中だがエリーゼは少しでも和らげるため、エルの下へと走り回復術をける。また最悪なことに幻魔の注意がルドガー達からエリーゼとエルに移り、幻魔は2人めがけて一直線に跳ぶ。

『ルドガー!』

2人のもとへクォーター骸殻に変身したルドガーが急ぐ。
しかし、距離がありどんなに急いでも間に合わない。過去のことでも誰もがルドガーが間に合うことを願う。そしてルドガー自身はこの状況を切り抜けられる力を強く願う。

そして……

『うあああ~~っ!』

奇跡が起こった。
ルドガーの纏う骸殻の姿が変貌したのだ。
より強い力を引き出せるこの出来るハーフ骸殻へと。

槍を幻魔に突き刺し、幻魔をエル達から引き離す。

『うおおお~~~っ!』


その力は大精霊にすら匹敵する強固な力。


新たに手にした“力”を大切なものを脅かす敵へと振るう。
姿、形は変わってもルドガーのエルを守るという意志だけは変わらない。

『ふんっ!でやっ!はっ!せいっ!そりゃあっ!』

光の矢を操り、次々に幻魔めがけて命中させる。そして一気に幻魔の下へ駆け抜ける。

『うぉぉぉっ!マター・デストラクト!!』

世界に終りをもたらす槍が幻魔の醜い体を突き抜ける。

しかしまだ終わってはいない。
ミュゼとミラに幻魔に促され止めの一撃を突き刺す。
分史世界が崩壊し正史世界へ戻る一同。幸い呪霊術は解かれており、エルは一命を取り留めていた。

ホッとるルドガー。

『よかった……』

ミラが安堵の声を漏らす。
エルは直ぐに元気を取り戻し、ルドガーの両手にある2つの道標を見てはしゃいでいた。

『お兄さんのこと、心配?』

エリーゼに礼を言い、黙り込んでいたルドガーにミュゼが話し掛ける。
彼は思い詰めていたような表情をしておりミュゼはそこでルドガーが兄のことを思っているのかと思ったのだろう。

『兄さんなら大丈夫だ。絶対に』

ルドガーはそう答えるとエルを見る。

『信じてるのね。羨ましいな』

常に飄々とし本音を語らないミュゼ。だが今の彼女のセリフは本心を口にしたものではないかと、はやては彼女の表情を見てそう感じた。

『ルドガー!』

ひとりになっていたルドガーのもとへ駆け寄るエル。
だが途中転んでしまい、顔面から砂浜にダイブしてしまった。

『痛った~!』

その姿に苦笑しならがらもルドガーはエルのもとへと行く。
言葉ではああは言ったが、きっとルドガーはユリウスのことが心配だろう。


それでも今は……この目の前の何よりも守りたい少女の笑顔をただ見ていたかった。


 
 

 
後書き
読者の皆様お久しぶりです。
本小説作者です。

前書きでも書きましたが、本当に更新が遅れて申し訳ございませんでした。
遅れた理由はリアル多忙というどうしようもないものもありますが、実は私少々スランプ気味のようです。この小説の完結までの流れは大まかには考えてるのですが、どうやら一番重要な文章能力が落ちているからか中々筆が進まないという。

そしてこんなグダグダなことをやっている内にいつのまにか新シリーズゼスティリア発売されてしまいました。

またこれをプレイしていて筆を持てなかったこともあります。
ですが決してその時間は無駄でなかったと、新システムを見てそう思いました。

具体的にゼスティリアのどのシステムのことを言っているかは口にしませんが、これはとても使えると思い現在それをどこでお披露目するか思案しております。

とりあず元々ない文章能力を全盛期(笑)以上に上げたいと思います。


 
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