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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter45「理想と真実の物語〜分史世界破壊命令(後編)」

 
前書き
毎回更新が遅れてすみません。


待っていた方がいたかはわかりませんが、どうぞご覧ください。

 

 
クランスピア社の受付でヴェルが待っていたが、そこへノヴァがやってきた。
借金の催促をついに直接乗り出したかと思ったがどうやら違うようで、ユリウスのことを知りたくてルドガーに会いにきたらしい。無事なことを伝えたいが、ユリウスはクラン社に捕らえたなどと話せるはずもない。それに分史世界絡みは機密扱いのため話すことは軽々しく口にできない。

『……連絡なんかないよ』

エルがユリウスと会ったと口を滑らせそうになり、睨む。
ルドガーとしては今、兄の話をしたくなかった。特に兄に信頼を寄せている彼女の前でその想いをこれまでの行動で断ち切っているように思え余計に。

『心配じゃないの……?ユリウスさんは、ルドガーの親代わりでしょ?』

耳が痛い。ノヴァは言い意味でも悪い意味でも空気を読めない。
かけられた言葉は皮肉にもルドガーにとって耳に入れたくはないものであると共に、一番必要な言葉でもあった。嘘をついたことへの罪悪感と居心地の悪さに耐え兼ね、それ以上語ることなくエレベーターへ歩いていった。


『よくやった、ルドガー。期待以上の成果だ』

社長室にはルドガーの到着を待っていたビズリー、リドウ、ユリウスがいた。

『実に優秀な弟だな、ユリウス』

目の前で拘束されているユリウスにルドガーを優秀だと評価するビズリー。
その評価はユリウスからすれば皮肉であり、喜べることではない。

『こいつを、こんなことで評価するな』
『こんなこと……人の世界を壊しておいてそれ?』

大切な弟を人殺しが実に優れていると言われれば怒りもわく。
だがそれは被害者であるミラからすれば、自分の世界を破壊した人間にお前の世界は価値のないものだと言われているようなものであり、黙ってはいられなかった。

『話は聞いた。君が……』
『ミラよ。元マクスウェル』
『冗談ではなく?』
『世界を壊す会社こそ、冗談でしょ』

望んでやっていることではないとビズリーは話すが、そのためにルドガーを脅す形で協力させている彼のやり方をはやては好きになれない。

そしてビズリーは語りだす。
全てはカナンの地にたどり着くためだと。
そこに最初にたどり着いた者の願いを、どんなものでも精霊オリジンが一つ叶えてくれるというのだ。

「んなこと…お伽噺すぎだろ」
「黙っていろヴィータ」

突拍子のない眉唾な話に声を荒げるヴィータをザフィーラが戒める。
だがヴィータを戒めた本人ザフィーラや他のメンバーもビズリーの話した内容を簡単に信じられなかった。ビズリーは続ける。これは原初の三霊と伝えられるマクスウェル、クロノス、オリジンが太古に人間と交わした契約であり、それを“オリジンの審判”と呼ばれているのだと。
聞かされた内容にお伽噺すぎだとヴィータと同じことをルドガーは言ったが、そのお伽噺以上の現実を見たはずだと返されてしまい、返す言葉がでなかった。

『彼らは、なぜそんな契約を』

ローエンがビズリーに根本に迫る質問をする。

『力、意志、欲望……人間自身を試すためだという……が、人間があがく様を見て面白がっているのかもしれんな』
『精霊がそんなこと!』
『人のために尽くす存在でもあるまい』

精霊を悪く言うビズリーに反論するジュード。だが、ビズリーの言うことに心当たりでもあったのか、押し黙ってしまう。その話しを続けるようにユリウスが入る。

『……真実かもな。事実、クルスニク一族は、カナンの地の一番乗りを巡って骨肉の争いを繰り返してきた。時に、父と子が……』

『時に、兄と弟がな』

ビズリーがユリウスの話しに付け足すように話す。クルスニク一族の血塗られた歴史を聞かされ、言葉がでない六課メンバー。しかしこれも真実にほんの少し触れた程度の内容であり、当時のルドガーも彼女達と同じ心境だった。
なにもともあれ目的のカナンの道標は手に入った。あとはカナンの地に行けばいいとアルヴィンが話す。だが事はそう簡単にはいかないらしい。
カナンの地にたどり着くには、カナンの道標が五つ必要だという。
そのうちの一つは不明らしいが、手に入れた道標『マクスウェルの次元刀』、そして残りの三つ『ロンダウの虚塵』、『海瀑幻魔の眼』、『箱舟守護者の心臓』を手に入れなければならない。ところが道標は正史世界ではすでに失われており、分史世界で見つけ回収するしかない。これこそがエージェントの真の目的なのだ。だが、分史世界の物質を正史世界に持ち込むのは誰にでもできることでないらしく、ある特別な力が必要だという。

『我々は、その力の持ち主をこう呼んでいます。クルスニクの鍵、と』
『ルドガー、お前がそうだ』

ビズリーの発言で一同の視線がルドガーに集まる。

(分史世界を壊す骸殻能力に、本来回収するのが不可能である分史世界の物質を正史世界に持ち込むことを可能とするクルスニクの鍵と呼ばれる能力……)

ルドガーの持つスキルを一から分析するティアナ。今もルドガーに対して羨望や嫉妬がないわけではないが、分析には冷静さが必要不可欠。つい数時間前に大失態を犯したことあって、まだ精神的に回復出来ていない部分もありはするが、余計な感情はこの際捨てる。

(どちらも希少能力……やっぱり反則的な能力よね。でも何か……)

クルスニクの鍵の能力に些細な違和感をティアナは覚えていた。ルドガーがクルスニクの鍵の力を持っているのはビズリーの言う通りだろう。現にカナンの道標であるマクスウェルの次元刀を回収しているのだから。

「ティアどうしたの?」
「え?あ、いやなんでもない」

ティアナが考え込んでいる様子に気付き声をスバルがかける。
新たに疑問が生まれかけていたが場面はジュードがビズリーにクランスピア社がカナンの地を目指す目的を問い掛けている重要なところだった。
クランスピア社の目的は大精霊オリジンに、エージェントにも対応しきれないほど増えた過ぎた分史世界全ての消滅を願うため。分析から出かけていた疑問点を改めて考え直してみようとしたが敢えて詮索しないことにした。

仮に答えが出たとしても、それはきっと自分にはどうしようもないことかもしれないのだから……。

シリアスな雰囲気が流れる社長室。
そんな中で突然グゥーという地の底から鳴り響いたようなエルのお腹が空腹を知らせたのを仕切りに、話しは次第に終わりへと動きはじめ、去りぎわにビズリーがお前ならカナンの地へ行けると期待していると告げ、やってみますと本心とは裏腹に社交辞令で返す。

『ルドガー、お前はこんな……』

兄としてルドガーを未だ止めようとするユリウス。
しかし遅すぎた。彼の想いとは裏腹に運命の鎖はルドガーを複雑に絡め、決して抜け出さないようにする。



正にそれは呪いのようだった。



クランスピア社を出て、自宅へとジュードとエル、ミラを連れ、テーブルに案内しルドガーは調理を始める。調理をしている後ろでカナンの地への行き方がわかり有頂天になったエルが、ミラの他人の世界を壊さしてまでカナンの地を目指すのかという言葉に、分史世界の破壊はしょうがないと言ってしまう。子供だから仕方ないかもしれないが、自分の世界を破壊されたばかりのミラとしては穏やかではいられなかった。重い空気が漂う中、特に考えないよにした方がベストだと読み、熱々のマーボーカレーをテーブルに並べていく。

『マーボーカレー!……からくない?』
『エル用に甘口にしといた』
『エル用ってイミ、わかってるのかなぁー?』

本当に自分用の味付けかどうか半信半疑だったようだが、一口料理を口にすると自分が食べられるマーボーカレーだと喜びの声を上げる。

「鍋……2つありますですよー」

リインがキッチンにある大小大きさが異なる2つの鍋を覗きこむと、どちらともマーボーカレーが入っていた。わざわざ2つ用意する必要もないため作り置きではないのは確か。
味見したわけではないが、はやては大鍋が辛口で、小鍋がエルとルドガーの言うところの“エル用”となのだとわかった。

「ルドガー君って……子供ができたらきっと、うちのお父さんみたいになるだろうな……」
「親バカなのですよ~」

なのはとリインの発現にうんうんと頷く六課一同。思い返せばルドガーは世話好きであり、何よりもビックリするくらい優しい。けどエルに対する優しさは六課や仲間に対しての優しさと言うより、親心から来ているように思える。
将来子供ができたら間違いなく親バカに変身するんだろうなとはやては確信しつつ、それの光景を一番見ることのできる彼の隣に居る自分を想像し、頬が弛みかけるがその顔が誰かに見られる前に我に返った。


日が落ち、トリグラフの街並も夜の姿へと変わる。
ルドガーはキッチンで食べ残された2人分のマーボーカレーを乗せた皿を片付けている。
食事中、再びカナンの地にまつわる話しになり、ミラから話しを聞いていた。
元マクスウェルの彼女なら詳しい話を聞けると思ったが、クランスピア社で話したこと以上のことはしらなかった。
話が進み、カナンの地が世界の未来を左右場所なら行かなければならないと、強くジュードが語るとミラは突然席を立ち出ていこうとした。エルの申し出に去りぎわ、暫くは同行すると言っていた。未だ帰るべき場所を失っなったことを受け入れられていないのは仕方ないだろう。
そしてこの流れで最後にジュードがミラを追って席を立ち、食事が残ったわけだ。

『ナァ~』
『 ? 』

後片付けを終え、一息ついているとエルがキッチンにいるルドガーを見つめていたが外へと出ていった。既に廊下に姿はなくマンションの外に出たと思い、エルを探しに出かける。

『ルドガー、おしてー』

マンションを出ると、外の広場にあるブランコに座っていた。
ルドガーはエルの頼みを無視して横に立つ。

『やさしくないなー。エルが必要なクセに』

その一言はルドガーを驚かせるには十分だった。
エルは気付いていた。自分が骸殻能力やクルスニクの鍵と深く関わっていることに。

『ルドガーは、エルがいないとこまるんだよね?』

ジィーっとルドガーの答えをのを待つエル。
その瞳はいつもの無邪気さとは別に真剣さが宿っている。

『困る』

やっぱりと言って、エルはルドガーの答えで笑顔にる。
ただ能力や力が必要だからというわけではない。
今のルドガー・ウィル・クルスニクにはエル・メル・マータという1人の人間が必要だった。

『エルもルドガーがいないとこまる』

ブランコから降り、ルドガーを見つめる。

『だから……一緒にカナンの地にいってくれる?』

その瞳は少し触れただけで崩れてしまいそうな……そんな儚さが見える。
危なかっしくて目を離せられるか……たったそれだけ。
ルドガーはその瞳を見ただけで決意を固めることができた。

『ああ。行こう』

おもむろに取り出した懐中時計。
暫く眺めるとエルの首にかける。六課一同はルドガーはエルに時計を返したのかと思ったが、エルが尋ねると笑顔で首を横に振る。
彼が何故自分に時計を渡してくれた理由をエルは考え気付いた。

『……そっか!エルがもってても同じだよね。一緒なんだから!』

この時初めてこの小さな少女を“家族”と感じた。
エルは満面の笑みは、ルドガーのこれから往く道の終着点へたどり着くための理由となる。
強がりで意地っ張りな家族を守りたいと、心の底から思った。

『ホントのホントの約束だよ、ルドガー』

ブランコにまた腰を下ろしたエルは、ルドガーに向けて、小指を立てる。
その意味が指きりだとわかり、ルドガーはエルの小指に自分の小指を絡め、同じ翠色の瞳が見つめ合う。

『パパが言ってた。ホントの約束は目を見てするんだって』

(そうか……あの時ルドガーが言ってたことは、エルちゃんのお父さんの請け売りだったんか)

いつかの休日でルドガーがはやてと自分の選択に後悔しないという約束を結ぶ時同じことを話していたのを思い出し、シャツの下にある懐中時計を上から両手で包む。

『エルとルドガーは、一緒にカナンの地にいきます』
『………うん』
『約束!』

2人の会話を聞いていた全員は、胸が熱くなるのを感じずにはいられなかった。
ルドガーがこの約束を果たせたかはこれからわかること。
それでも彼を信じているはやてを始めとした六課メンバーはルドガーなら大丈夫だと確信を持つ。
きっとエルとの約束を守ることができると。

『よぉーし、エルとルドガーはタイトーなアイボーだよ!』
『ほうほう……タイトーなアイボーだったらちゃんとトマトも食べれるよな?』
『あ……やっぱり、エルがジョウオウサマでルドガーがメシツカイでいいかな?』
『なんのプレイだよ!?というかドコでソレ覚えた!?』

前言撤回。
やっぱり無理そうだ。

逃げ回るエルを捕まえて両頬を互いに引っ張り合う“アイボー”達を見て気持ちが冷めてしまう六課メンバーだった。

 
 

 
後書き
~オマケチャット~


髪を二つ結び、いわゆるツインテールの少女と、銀髪に前髪の一部に黒のメッシュを入れた青年。
成長したエルと審判達成時のルドガーだ。
それは決してありえることのない再会……なのだが。

ルドガーは自分と似た服装でおヘソを露出した格好のエルを見て、ボタンをしめようとする。
花も恥じらうお年頃という言葉が似合う歳に入ったエルはルドガーとはいえ異性にお腹を触れられるのは恥ずかしい。

エル「ちょ、ルドガーどこさわってんの!?」
ルドガー「お腹壊しちゃうだろ?お父さん、そんな格好許しませんよ!」
エル「誰がお父さんよ!というかこれ立派なセクハラだし!」





リイン「↑こんな感じですかぁ?」

自作同人誌を書くリインとシャーリー。

シャーリー「ん~……もっとはっちゃけてもいいような……んじゃ2人に脱いでもらって禁断の---」


はやて「……リイン、シャーリー。ちょっとオハナシしよか?」



 
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