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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter47「理想と真実の物語〜ガイアスの試験」

 
前書き
皆様お久しぶりです。
一年以上の長い間更新することができず申し訳ありませんでした。
更新できなかった理由を簡単に述べますと、リアルが多忙なのが原因でした。

今後投稿が続くかわかりませんが、とりあえず続きを更新いたしました。

ではどうぞ…… 

 
分史世界から戻って間もなくヴェルから連絡が入った。あれからガイアスから何度も呼び出しの催促があったらしい。ルドガーへ直接連絡するよう言ったようだがGHSの機能を理解できていないようで、クラン社前で待っているらしい。エリーゼと別れ、レイアと共にルドガー達は彼のもとへ急ぐ。

「ガイアス王……」
「もしかして正体ばれちゃったのかしら?」

シグナムとシャマルはクラン社前で街人に囲まれている姿を見て、彼の素性がばれたのではないかと思いどぎまぎしながら見ていたが、どうやら違うようだ。

「皆、一国の王様相手にフレンドリーやな」

街人はルドガー達がガイアスの待ち人だと気付き、
去っていく。去りぎわ、また今度一杯やろうと約束する姿を見ているとガイアスというリーゼ・マクシア国王としてではなく、一介の市井の男アーストとして接している様子。だが王ともなる器の持ち主であるためか、その強大な覇気を隠しきれていないように見えてならない。話しは本題へと移り、ローエンから既に分史世界についての事情を聞かされたと話すガイアスは何故ルドガーを呼び出しのか理由を説明する。

『単刀直入に言おう。ルドガー、お前が、世界の命運を背負うに足りる人間かどうかを知りたい』

腕を組みルドガーの器でも見極めるような、眼光がガイアスの目から見え隠れするのをはやては気付く。それはガイアスに限らず人という者なら誰もが持つかもしれない疑問ではある。

『俺が、ふさわしい人間じゃなかったら?』

正直ルドガー自身、自分が他者の世界を破壊し、世界の命運を背負うだけの器だとは思っていない。むしろその逆だ。自分以上に適任者がいるとすら思ったこともあった。だからガイアスがそんな自分を判断するか気になった。

『斬る』

たった一言。
スバルはガイアスが脅しの意味で言ったのだと思ったようだが、その一言が本気のものだと気付く者は気付いおり、ルドガーに課せられた使命に身震いしてしまう。
ルドガーにその資格があるかどうか見極める為、ガイアスは分史世界に自分を連れていけと言う。丁度タイミングよくヴェルから新たな分史世界が発見されたという連絡が入る。その機会を逃すわけなく、ガイアスとそしてミラもルドガーの器を見極める為同行することになった。

『ひょっとして……機械が苦手とか?』
『さあ、分史世界へ案内してもらおうか』

悪戯な表情のレイアの質問に半ば誤魔化すように応えることなくGHSをしまうガイアス。その行いは彼が機械の扱いが苦手だという証明であり、それまでガイアスをまるで歴史の偉人でも見るような目でみていた、スバルやエリオ、キャロは苦手なことがあるところに自分達と親近感がわき、ガイアスに対する印象が少しかわったようだった。

『これが分史世界か……』

なんの偶然か今回の分史世界の進入先がリーゼ・マクシアの都市カンバルクだった。しかもヴェルからの連絡で道標の反応がわかった。分史世界とはいえ王が自らの根城にこんな形で来ることになるとは偶然とは恐ろしい。
その後の情報収集は思いの他順調に進んだ。カンバルクがガイアスの地元なのが幸いし、正史世界と街の様子が違うこと、地元の人間しか知りえない事情や道を案内してもらい、時歪の因子の手掛かりを掴む。

「お城……私初めて本物のお城入ったかも」
「いかにも王様のお城って感じね……遊園地のお城と違い妙に緊張する」

警備を退けカンバルク城の広間を歩くスバルとティアナは城の雰囲気を感じ取り感想をもらす。街での聞き込みから時歪の因子は国王であるリイン王の可能性が高まった。この世界ではガイアスが既に王位を退いており、リインという人物が王位についている。だが国の情勢は今の王になってから悪路をたどっていた。政策は非民主化に変わり、国民を権力で縛り、逆らう者を皆処刑するという恐怖政治を現国王は強いていた。正史世界と最も異なるものというなら、現況を作ったリイン王が一番怪しいのだ。

『孤独の王……か』

央堂を進む中、ガイアスが一人何かを思ったのか呟く。彼が何を思ったのかルドガーにはわからない。ただ王として歪んでしまったこの世界のことを考えていることだけは読むことはできた。

謁見の間に入ると、玉座には頭を抱えたリイン王---正史世界で革命のウィンガルと呼ばれていた男が座していた。

『こんなはずではなかった……こんなはずでは……』

嘆いていたウィンガルはルドガー達の気配を感じ、顔を上げるなり怒鳴り声を上げる。ルドガー達を自分の命を狙ってきた暗殺者と思ったようで、玉座から立ち合上がると、髪が逆立ち真っ白に染まり、問答無用で斬りかかろとする。

「か、髪が白くなりやがった!」
「名前だけと思ってたのに、髪の色までリインとそっくりです!」

ウィンガルの変化に六課面々が驚く中ヴィータ、リインがそれぞれが思ったことを声に出す。彼女達が知る由もないがウィンガルの髪の色の変化には、彼の脳には増霊極(ブースター)と呼ばれるマナ増大装置が埋め込まれており、その副作用で髪が増霊極使用時のみ白くなる。当然戦闘能力は強化され、並の人間なら一蹴される強敵だ。

『なんとか話を聞きたいのに……』

ウィンガルが時歪の因子である可能性は高いが、まだ決まった訳ではない。彼が時歪の因子であろとなかろうと、対話をする意志を人としてルドガーは捨てたくはなかった。そしてそれはガイアスも。王である彼はこの世界の自身がどのような選択を下し、結果世界にどれほどの影響を及ぼしたのか知りたかった。

『ンエスヤ リイン(落ち着け、リイン)』

1人ガイアスがウィンガルに近づき、異なる言語でウィンガルに話し掛ける。

「な、何この言葉?」

ガイアスが話した言葉をバルデッシュ翻訳を指示したフェイト。しかしバルデッシュからの返答は翻訳不能という結果だった。この言語はロンダウ語と呼ばれる、アジュールの部族ロンダウ族の言語であり、今はほとんど使われいないが、このようにウィンガルやガイアスといった一部の者が話すことができる。当然デバイスすら翻訳が不可能のロンダウ語を六課メンバーにわかるはずもなく、黙って動向を見守る。

『バアエティ エディン ヤイオ!? バエティワアバアイ ヤイオディン ティエルクウムグ ティイ!(なんだテメェ、誰に口きいてやがる!)』

対するウィンガルもロンダウ語で話し、言葉がわからなくても怒りが表れているくらいはわかる。

『ヂミティ ヤイオ ディンワイグムウツン トゥン?(俺の顔を忘れたか?)』
『アースト……』

落ち着きを取り戻したウィンガルは、ガイアスの前へ行く。なんとかまともに話しができる状況を確保することに成功した。

『ああ、俺を……俺を許してくれ』
『なにがあった?』
『俺に……言わせるのか?』

ウィンガル本人から話しを聞ことすると、何故か彼は口を開くことを拒んでいるように見えたが、ガイアスの有無を問わない目を前に観念したのか重い口を開き、事情を語り出した。全ての始まりは、ガイアスが死の病に犯された妹カーラと余生を過ごすために王位を退こうとしたことから始まった。王である前にたった1人の妹の兄を選んだガイアス。ウィンガルの話しをリインやフォワード陣は美談だと感じたが、その一方でシグナムとザフィーラは違っていた。この時既に2人にはこの先の末路がわかっていたのかもしれない。王位を退くということはただ王が玉座から降りるということではない。王が替われば世界が変わり、必然として民はその変化を大きく受けることになる。それがガイアスほどの王ならば世界への影響は尚更。ウィンガルはそれを恐れ、ガイアスを王として居続けるよう説得したが、一度決めたことを彼が取り止めるような性格ではない。説得は失敗した。そしてウィンガルは……

『だから、俺はカーラに頼んだのだ。お前を説得してくれと。カーラは理解してくれた。それが、まさかあんなことに……』
『カーラは自ら命を絶ったのだな。俺をとめるために』

聞かされた悲劇に誰もが驚いている。ウィンガルは答えないが、ガイアスの推測は間違いない。その証拠にウィンガルはガイアスに謝り続ける。そんなつもりではなかった、信じてほしいと。だが次に投げられたガイアスの言葉に目の前の男が自分の知るガイアスではないことに気付く。

『確かに、お前の知るアーストではない。だが、アーストの気持ちはわかる』
『わかられてたまるかっ!俺の真の友は、アースト・アウトウェイ唯一人だ!』

この世界の姿を消したアーストの立場に立ち、彼の心情を理解できるのは同じ人間であるガイアスだけ。だがウィンガルにとって自分ですらわかることができなかった友の気持ちをわかると言う、友と同じ顔をした紛い物を許せなかった。

『俺とお前が友であった可能性か……』

部下として仕えていた男がもし、この世界同様に友としての信頼を互いに持っていたら……今となっては確かめるすべはない。だが本来見ることが不可能だったIFの一部を知れたのは決して無意味なことではない。黒く変色し、禍々オーラを放ち時歪の因子化したウィンガルが襲い掛かる。そして変わり果てたウィンガルを前に確信する。奴を止めることがこの世界での自分の果たすべきことだと。それが全てを失ない世界を捨てたもう一人の自分の変わりにできる償い。

そう信じ……“友”を斬る。

『助けて……くれ……アースト……』

戦いに敗れ玉座の前にうずくまるウィンガルはガイアスに救いを乞う。ガイアスは容赦なくそんなウィンガルに剣先を向ける。同じ状況でガイアスの立場に自分が立っていて、ティアナに助けを求められれば、ガイアスのように非情にはなれはないと思った。

『そこに座る人間は、個より全を優先しなければならない。王とは、自分自身すら捨てねばならない孤独な者なのだ』

ここに来る前ガイアスが孤独の王かと呟いていた彼の言葉は、言葉以上に重いものだったとはやては理解した。ガイアスはルドガーに後を任すと言い時歪の因子の破壊を託す。

『時歪の因子を破壊する』

あえて多く語ることはせず骸殻に変身し、ウィンガルに槍を突き刺す。

『……見事だ』

時歪の因子を抜き取られウィンガルは消滅し、床に転がった道標をエルが拾う。

『さらばだ、リイン……』

その言葉と同時に空間が割れ、分史世界が崩壊。
一同は正史世界へと戻った。




戻ってすぐ笑顔でエルが道標を手渡すが、ルドガーは素直に喜ぶことはできなかった。

『……ルドガーは、がんばったと思うよ』

浮かない表情の彼を見て子供ながらに失言だと思ったのか、申し訳なさそうにそう言った。そんな気づかいしなくてもいいのにと思いつつ、ぎこちない笑みをルドガーは作る。

『ご苦労だった』

そこへさっきまで一緒にいたガイアスが現れる。
六課メンバーに緊張が走ると共に、分史世界に入る前のガイアスの言葉が思い出される。

『俺も、カーラのために王位を退くべきか、苦悩した時期がある。だが結局、王であることを選んだ。何故かわかるか?』

突然そんなことを尋ねられても……答えに詰まるが、王という役を身近な仕事に当てはめ考えてみることにした。

『王って仕事が好きだったから?』

口にしてみてなんて子供らしい言葉なんだろうと恥ずしくなる。もっとましな言葉はなかったのかと。今でこそ複雑な思いだが、元々兄に憧れてエージェントを目指していた。それならガイアスも自分と同じではと。さすがに違うと思ったが、どうやらそうでもなかった。

『エレンピオス流の考え方だが間違っていないかもしれん。こうして人々と交わっていると、力を与えられるのだ。俺は、彼らのために身を挺す王という仕事が好きなのだろうな』

そして王に守られる民は、その王を心から信頼でき、王を支えようと思えるのだろう。
それが理想となる王政なのかもしれない。

『ルドガー、これはお前の問題でもある。分史世界破壊の過酷さは、どんな強き者の心も蝕んでいくだろう。ひとりで戦い続ければ、いつか孤独に呑み込まれるぞ』
「あ……」
「この言葉って……」
「確か初出動の時……」
「ルドガーさんが私達を勇気づけてくれた言葉……」

フォワード4人はガイアスの言葉がかつてルドガーが自分達に送ったものだと気付く。
そして今回どんな強い人間でも孤独が恐ろしいことなのだと本当の意味で理解する。

『コドクって、ひとりぼっちってことでしょ?じゃあ、ルドガーはちがうよ。エルたちがいるし』

たまに大人ぶって知ったかぶりをした知識を言葉にするエル。子供の自然な思考からか、またはエルなりに孤独の意味を考えたのか、間違った解釈でもなく、まったくそのとおりである。一瞬呆気に取られ、直ぐに笑うルドガー達につられはやて達も笑い、ミラの言うことだけは一人前という言葉に皆同意してしまう。
しかしそれは不思議と心の底から満たされるような感覚をおぼえるようで悪くなかった。

またこの日一人、ルドガーを支えとなるべく心強い仲間ができると共に力になることを約束をした。

孤独は生きている者全てが恐れるもの。

だが今は孤独を恐れる必要はない。立ち去るガイアスと傍にいるエルを見てルドガーは笑った。
 
 

 
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