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遊戯王デュエルモンスターズ ~風神竜の輝き~

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第3章 新たなる好敵手
  第12話 遊雅の才能

林間学校で遊雅が遭遇した、アルカディア・セントラル・スクールの1年生、咲峰 燈輝。
燈輝は変則的な動きで相手を翻弄する『霊獣』デッキの使い手であり、1ターン目からその類稀なる展開能力で、攻撃力2600で、戦闘中は効果による破壊を受け付けない、《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》を召喚する。
遊雅はその見た事もない展開方法に胸を躍らせながら、2ターン目のドローフェイズに突入したのだった。

「俺のターン、ドロー!」

ドローカードを含めた遊雅の手札は3枚。

「早速行くぜ!俺は《霞の谷(ミスト・バレー)戦士(せんし)》を召喚し、《()(かぜ)進軍(しんぐん)》を発動!」

身を守る《シールド・ウィング》の隣に、《霞の谷(ミスト・バレー)戦士(せんし)》が現れる。

「《()(かぜ)進軍(しんぐん)》の効果で、俺はこのターン、もう1度風属性モンスターを召喚できる!俺は2体のモンスターをリリースして、《フレスヴェルク・ドラゴン》をアドバンス召喚!」

《シールド・ウィング》と《霞の谷(ミスト・バレー)戦士(せんし)》が旋風に包まれ、1つの巨大な旋風となる。
間もなく巨大な旋風は振り払われ、遊雅の相棒である群青の鱗を纏った巨竜が姿を現した。

「《フレスヴェルク・ドラゴン》の効果発動!1ターンに1度、フィールド上のカードを1枚破壊できる!俺が選択するのは、《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》だ!」

《フレスヴェルク・ドラゴン》が翼を激しく羽ばたかせる。
巻き起こる風は刃となって《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》を切り裂く、はずだった。

「アペライオの効果を発動!アペライオをエクストラデッキに戻し、除外されている『精霊獣』と『霊獣使い』を守備表示で特殊召喚する!」
「なにっ!?」

効果発動の宣言と同時に、《霊獣使(れいじゅうつか)い レラ》が《精霊獣(せいれいじゅう) アペライオ》の背中から飛び降りる。

「対象を失った《フレスヴェルク・ドラゴン》の効果は無効となる」
「へへっ、上手い具合にかわしたな!だがまだだぜ!風属性2体をリリースして召喚されたフレスヴェルクは、1ターンに2回まで攻撃できる!フレスヴェルクで、アペライオを攻撃だ!ゴッドバード・スラスト!!」

咆哮と共に、《フレスヴェルク・ドラゴン》が《精霊獣(せいれいじゅう) アペライオ》へ突撃する。
しかしそれと同時に、燈輝もカードの発動を宣言した。

「速攻魔法発動!《霊獣(れいじゅう)相絆(しょうばん)》!」

霊獣(れいじゅう)相絆(しょうばん)
速攻魔法カード
①:自分フィールドの表側表示の『霊獣』モンスター2体を除外して発動できる。
エクストラデッキから『霊獣』モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

「フィールド上の《霊獣使(れいじゅうつか)い レラ》と《精霊獣(せいれいじゅう) アペライオ》を除外し、再び《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》を特殊召喚する!」

霊獣使(れいじゅうつか)い レラ》が、再び《精霊獣(せいれいじゅう) アペライオ》の背中に飛び乗る。
するとアペライオは、瞬く間に先程の獰猛な姿に変わってしまった。

「くっ……攻撃力2600じゃ、太刀打ちできない……ターンエンドだ」
「俺のターン、ドロー!」

燈輝の手札は4枚。
それらを確認してから、燈輝は行動を開始する。

「まずは、《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》をエクストラデッキに戻し、《霊獣使(れいじゅうつか)い レラ》と《精霊獣(せいれいじゅう) カンナホーク》を守備表示で特殊召喚する!」

レラが自分の背中から降りたのを確認して、アペライオは燈輝の背後へ撤退する。
それと入れ替わるように、《精霊獣(せいれいじゅう) カンナホーク》が、フィールド上に舞い戻った。

「カンナホークの効果を発動!デッキから《精霊獣(せいれいじゅう) ペトルフィン》を除外する!」

燈輝の背後に、額に青い宝石を埋め込んだ装飾を纏った桃色のイルカが、新たに姿を現す。

「更に手札から、《霊獣使(れいじゅうつか)い ウェン》を召喚!」

続いて燈輝のフィールド上に、紫色の衣を纏い、巨大な青い宝石があつられられた杖を持つ金髪の少女が現れる。

霊獣使(れいじゅうつか)い ウェン》
☆☆☆ 風属性
ATK/1500 DEF/1000
【サイキック族・効果】
自分は《霊獣使い ウェン》を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
①:このカードが召喚に成功した場合、除外されている自分の『霊獣』モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを特殊召喚する。

「ウェンが召喚に成功した時、除外されている自分の『霊獣』モンスターを特殊召喚できる!来い!《精霊獣(せいれいじゅう) ペトルフィン》!!」

先程現れた桃色のイルカが、《霊獣使(れいじゅうつか)い ウェン》の隣に、まるで空中を泳ぐようにして並んだ。

精霊獣(せいれいじゅう) ペトルフィン》
☆☆☆☆ 風属性
ATK/0 DEF/2000
【水族・効果】
自分は《精霊獣 ペトルフィン》を1ターンに1度しか特殊召喚できない。
①:1ターンに1度、手札の『霊獣』カード1枚を除外し、相手フィールドのカード1枚を対象として発動できる。
そのカードを持ち主の手札に戻す。

「そして、《霊獣使(れいじゅうつか)い ウェン》と《精霊獣(せいれいじゅう) ペトルフィン》を除外し、《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ペトルフィン》を融合召喚!」

霊獣使(れいじゅうつか)い ウェン》が《精霊獣(せいれいじゅう) ペトルフィン》の背中に飛び乗る。
ウェンが持つ杖の宝石と、ペトルフィンの額の宝石が、強く輝き始めた。

聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ペトルフィン》
☆☆☆☆☆☆ 風属性
ATK/200 DEF/2800
【水族・融合/効果】
『霊獣使い』モンスター+『精霊獣』モンスター
自分フィールドの上記カードを除外した場合のみ特殊召喚できる(《融合》は必要としない)。
①:このカードは効果では破壊されない。
②:このカードをエクストラデッキに戻し、除外されている自分の『霊獣使い』モンスター1体と『精霊獣』モンスター1体を対象として発動できる。
そのモンスターを守備表示で特殊召喚する。
この効果は相手ターンでも発動できる。

「3体目の『聖霊獣騎』……」
「驚くのはまだ早いぞ!俺は《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ペトルフィン》、《霊獣使(れいじゅうつか)い レラ》、《精霊獣(せいれいじゅう) カンナホーク》の3体を除外し、新たな『聖霊獣騎』を融合召喚する!」
「何だってっ!?」
「さぁ、現れろ!《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ガイアペライオ》!!」

燈輝の背後に控えていた《精霊獣(せいれいじゅう) アペライオ》が、再びフィールド上に躍り出る。
その背中の上に、《霊獣使(れいじゅうつか)い レラ》が飛び乗り、杖を掲げると同時に、燈輝のフィールドの全てのモンスターが光に包まれてしまった。
燈輝以外の、その場にいた全員が手などで顔を覆うほどの激しい閃光。
光が消えたその場に存在したのは、(たてがみ)は燃え上がる炎となり、背中には大木が聳え立つ、巨大な獅子の姿だった。
そしてその上に、髪の先端がアペライオの炎のように赤々とした色となった《霊獣使(れいじゅうつか)い レラ》が、杖を掲げながら、大木に手を突くようにして立っていた。

聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ガイアペライオ》
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 光属性
ATK/3200 DEF/2100
【サイキック族・融合/効果】
『聖霊獣騎』モンスター+『霊獣使い』モンスター+『精霊獣』モンスター
自分フィールドの上記カードを除外した場合のみ特殊召喚できる(《融合》は必要としない)。
①:上記の方法で特殊召喚したこのカードは以下の効果を得る。
●モンスターの効果・魔法・罠カードが発動した時、手札から『霊獣』カード1枚を除外して発動できる。
その発動を無効にし破壊する。

「な、何だよ、これっ……!?」
「バトルだ!《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ガイアペライオ》で、《フレスヴェルク・ドラゴン》を攻撃!ガイア・ライオ・ラグナロク!!」

ガイアペライオの咆哮と同時に、遊雅のフィールドを逆巻く炎が蹂躙する。
《フレスヴェルク・ドラゴン》は、あっという間に炎に巻かれて消滅してしまった。

「《フレスヴェルク・ドラゴン》!?」

南雲 遊雅
LP/4000→3300

「俺はこれで、ターンエンドだ」
「くっ……俺のターン!」

遊雅はドローカードを確認して、すぐさま行動を起こした。

「よしっ!俺は《九蛇孔雀(くじゃくじゃく)》を召喚し、続いて伏せ(リバース)魔法(マジック)カード、《風神竜(ふうじんりゅう)復活(ふっかつ)》を発動!」

遊雅のフィールドに現れた《九蛇孔雀(くじゃくじゃく)》が、すぐに旋風に包まれて消えてしまう。
旋風が振り払われ、再び青き竜が雄叫びを上げながら、その姿を現した。

「リリースされた《九蛇孔雀(くじゃくじゃく)》の効果で、墓地の《シールド・ウィング》を手札に加える!そして、《風神竜(ふうじんりゅう)復活(ふっかつ)》で特殊召喚した《フレスヴェルク・ドラゴン》は、エンドフェイズまで攻撃力が500ポイントアップし、2回攻撃できる!」

《フレスヴェルク・ドラゴン》
ATK/2500→3000

「だがそれでも攻撃力は3000。ガイアペライオのそれには及ばない」
「誰がそのまま攻撃するって言った!もう1枚のリバースカード、《ガルドスの羽根(はね)ペン》を発動!墓地の風属性モンスターを2体デッキに戻し、フィールド上のカードを手札に戻す!ガイアペライオには、エクストラデッキに戻ってもらうぜ!」
「よし!相手はリバースカードがない!これが決まれば遊雅の勝ちだ!」
「……残念だが、そう言うわけには行かない。《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ガイアペライオ》の効果発動。魔法・(トラップ)・効果モンスターの効果が発動された時、手札から『霊獣』と名のつくカードを除外して、その発動を無効に出来る」
「なっ!?」

遊雅のフィールドを、再び炎が襲う。
《ガルドスの羽根(はね)ペン》のカードは、その炎によって焼き尽くされてしまった。

「くっ……」
「リバースカードもなし、手札は墓地から戻した《シールド・ウィング》のみ。もう打つ手はないようだな」
「……ターンエンドだ」

《フレスヴェルク・ドラゴン》
ATK/3000→2500

「なら俺のターンだ、ドロー!」

ドローカードを確認した燈輝は、遊雅にこのように告げる。

「遊雅、悪いがこのデュエルは、俺の勝ちだ」
「何だと……?」
「俺は手札から、2体目の《霊獣使(れいじゅうつか)い ウェン》を召喚。効果により、除外されているアペライオを特殊召喚し、《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》を融合召喚する」

霊獣使(れいじゅうつか)い ウェン》が、燈輝の背後へ移動する。
すると、《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ガイアペライオ》の隣に激しい炎が巻き起こり、その中から《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》が現れた。

「バトル!《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》で、《フレスヴェルク・ドラゴン》を攻撃!ライオフレイム・スタンプ!!」

聖霊獣騎(せいれいじゅうき) アペライオ》が、全力疾走の後に高く跳躍する。
そして、《フレスヴェルク・ドラゴン》の頭上から、炎を纏った爪を勢いよく振り下ろした。
《フレスヴェルク・ドラゴン》は、断末魔と共に消滅する。

「くっ……」

南雲 遊雅
LP/3300→3200

「これで最後だ。《聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ガイアペライオ》で、遊雅へダイレクトアタック!ガイア・ライオ・ラグナロク!!」

聖霊獣騎(せいれいじゅうき) ガイアペライオ》の咆哮と共に、遊雅の周りの地面から、激しい炎が吹き上がる。

「うわぁっ!?」

炎に巻かれ、悲鳴を上げながら、遊雅は最後の時を迎えた。

南雲 遊雅
LP/3200→0

「へっ、何だよ、そっちからデュエルを挑んで来た割りには、大した事ないじゃねーか!」

ACS生の1人が、嘲笑しながらそのように言い捨てる。
しかし、真っ先に反駁したのは予想に反して、燈輝だった。

「よせ。遊雅は俺と全力で戦った相手だ。侮辱は誰よりも、俺が許さない」
「お、おう……悪かった」

同級生を諌めた燈輝は、悔しさを滲ませた表情で自分を見る遊雅の元へ歩み寄った。

「いいデュエルだった。こちらのデッキが回っていなければ、あの《フレスヴェルク・ドラゴン》と言うモンスターは脅威になっていただろう」
「……へへっ、そうか。そっちこそ、あんな強ぇモンスター出されちゃ困っちまうぜ」
「ああ。切り札だからな。まさかあんなに早く出せるとは思っていなかったが」
「……次は、絶対負けねぇぜ!練習試合、憶えておけよ!」
「ふっ、楽しみにしている。では、またな」

それだけ話して、燈輝は2人の生徒を引き連れて去って行った。

「お疲れ様、遊雅。残念だったわね」
「ああ。あいつすっげぇ強いぜ……けど」

一拍置いてから、遊雅は負けた後とは思えない晴れやかな笑顔で、こう言った。

「相手が強けりゃ強いほど、こっちだって燃えて来る!負けてらんないぜ!」
「まるで落ち込んでる様子がないわね……まぁ、遊雅らしい反応ね」
「にしても南雲よぉ、お前相手のライフポイント全く削れなかったじゃねーか」
「うっせぇ!次は絶対負けねーっての!」
「そうだね。お疲れ様、遊雅!」
「南雲君、お疲れ様!」
「よく分からなかったけど、相手の人、すごい強かったみたいだねー」

翔竜高校の生徒5人は、落ち込んでいない遊雅の様子に安堵しながら、再び森林散策を再開したのだった。

◇◆◇◆◇◆◇

「おい燈輝、さっきはああ言ったが、実際あいつ、そこまで強くなかっただろ?」

森を歩きながら、ACS生が燈輝にそのように声をかける。
燈輝は少しだけ間を置いてから、このように断言した。

「遊雅は強いさ。確かにさっきのデュエルで、俺はノーダメージの状態で勝利する事ができた。だが、あいつは決して、弱くない」
「そうは言うがよ……」
「お前も、1度戦ってみれば分かるさ。こんな事言ったら笑われるかもしれないが、さっきのデュエルは、全てのモンスターが、楽しそうに戦っていた」
「はぁっ?モンスターが楽しそう?おいおい、そりゃないだろ。ソリッドビジョンだぜ?」
「だからさ、戦ってみれば分かるよ。俺の言ってる事が」
「けど、仮にモンスターが本当に楽しそうに見えたとして、何でそれが強いに繋がるんだよ?」
「……俺は、『精霊獣』や『霊獣使い』達があんな風に……楽しそうに戦っているのを見た事がないんだ。だからきっとあいつは、俺が持っていない『何か』を、持っているのかもしれない」
「ふぅ……燈輝、俺はたまにお前の事がよく分からなくなるぜ。けどまぁ、お前がそこまで言うなら、次の練習試合、楽しみだな」
「ああ。実に楽しみだよ。来週までなんて待ってられないくらいにな」

これまでに咲峰 燈輝の笑顔を見た事がある者は、かなり限られている。
この場にいる2人と、そしてあと数人程度しか、彼の笑顔を見た事はない。
それほどに笑わない彼が、今、いつになく晴れやかな笑顔で笑っている。
それは南雲 遊雅と言う、彼にとってはとてつもない好敵手と出会えたと言う喜びと、その好敵手と、来週末に再び、素晴らしいデュエルが出来るだろうと言う期待から来る笑顔だった。 
 

 
後書き
ちなみに補足しておきますが、燈輝は精霊が見えるわけではなく、あくまで精霊の雰囲気のような物をわずかに感じ取れる程度の力を持っています。
今後この力を活かせる展開になるかはわかりませんが、一応、そのように認識しておいて下さい。 
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