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リリカルアドベンチャーGT~奇跡と優しさの軌跡~

作者:setuna
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第六十六話 ジョグレスについて

 
前書き
ジョグレスについて、話し合うことになる一同。

ドルモン[リリカルアドベンチャー、始まるよ]

厳しめ要素あり。 

 
泉家に集まる一同。
そしてその中には、大輔達の姿があった。
光子郎「今日は来てくれてありがとうございます。大輔君。一乗寺君も」
大輔「ふん、今日で最後にするために来たんだ。デジタルワールドでは仕方ないにしても、もう日常生活でもあんた達と顔を合わせるのは嫌だからな」
冷たく吐き捨てる大輔に、光子郎は少しだけ苦笑して、椅子に座る。
光子郎「昨日、大輔君と一乗寺君のパートナーが合体したと聞いて…」
ブイモン[融合]
光子郎「失礼しました…融合したと聞いて、ジョグレスという単語を検索したのですが、見つかりませんでした。もしかしたら…」
賢「ジョグレスはジョイントプログレス進化…それを一つの単語にしたのがジョグレスです」
大輔「そんな下らない話をしに、呼んだならもう帰る。付き合ってられるか」
光子郎「待って下さい」
帰ろうとする大輔を制止すると、話の続きをする。
光子郎「ただそれだけのために呼んだ訳ではないんです。前に似たようなことがあったから呼んだんです。2年前の事件…」
後にディアボロモンと名付けられた新種のデジモンが、ネットなどのデータを食い荒らし、そして最後には核ミサイルも発射した最悪の事件。
太一とヤマトが必死に対抗したが全く敵わず、絶体絶命かと思われたその時、ウォーグレイモンとメタルガルルモンが合体し、オメガモンに進化。
無限増殖したディアボロモンを倒した……。
大輔「確かに…けど、あの時の進化とジョグレスは違う気がする。」
賢「確かにオメガモンはジョグレスでも誕生する個体です」
光子郎「ジョグレスでも?」
賢「ジョグレス進化は二体のデジモンを融合させ、一段階上のランクに昇格させる進化。あの時のオメガモンのあれは、進化というよりパワーアップという表現が正しいかもしれない」
ポロモン[どれも同じではないでしょうか?]
ブイモン[似ているようで全然違う。合体は互いの長所を合わせて戦闘力というか、パワーを格段に上昇させる。現にオメガモンはウォーグレイモンのパワーと炎を操る力、メタルガルルモンのスピードと氷を操る力をジョグレス以上に倍化させて引き継いだだろ?あれは進化というかパワーアップって表現が正しいと思う。]
光子郎「確かに…」
ワームモン[ところでオメガモンの人格ってどっち?ウォーグレイモン?メタルガルルモン?]
太一「…どっちかっていうとウォーグレイモンかな?」
ヤマト「ああ、そんな感じだな」
ワームモン[なら合体は強い方のデジモンの人格が支配的になって、ジョグレスは人格が融合して均等な人格になるのが特徴の一つみたい]
光子郎「成る程、合体とジョグレス…似ているようで全然違いますね…興味深い…」
大輔「話の続きどうぞ」
光子郎「あ、はい。その事件があってしばらくしてのことです…僕達はゲンナイさんに呼ばれて再びデジタルワールドへ行ったんです。僕達はアポカリモンを倒し、デジタルワールドの歪みは正常になったと思っていたんですが、実はそうではなかったんです。完全に元に戻すには闇の力によって封じ込められたデジタルワールドを守護する力を解き放つ必要があったんです。」
大輔「デジタルワールドを守護する力…賢、知ってるか?」
賢「すまない、僕も分からない。それで、その力とは?」
ヒカリ「それが何かは私達にも分からないけど、その力が弱まると、デジタルワールドに闇の力が増大するんだって。」
光子郎「その為には、僕達の紋章の力が必要でした。僕達の紋章の力で、やっとデジタルワールドの歪みが正されたのです。紋章の力でデジタルワールドの封印を解く。それが、僕達が選ばれた本当の理由だったんです。紋章を持っているならお二人も本来なら…紋章の力をデジタルワールドの封印を解くことに使ったために、テントモンやアグモン達、僕達のパートナーデジモンは、それ以来完全体に進化出来にくくなってしまったんです。」
タケル「でも、紋章の元となったみんなの心までが無くなったわけじゃない。」
ヒカリ「だから、全く進化出来なくなったというわけではないの。」
ブイモン[成る程な。つまり自由に進化出来る可能性があるのはデジタルワールドに紋章の力を解き放っていない大輔と賢のパートナーである俺とワームモンか…まあ、俺は完全体に進化出来るようになったけど]
ワームモン[僕だっていつか完全体に進化してみせるよ賢ちゃん。]
賢「頼りにしているよ(例外を言うなら、異世界で紋章を手に入れたはやて達か…)」
ウパモン[なあなあ!!ジョグレス進化した時って、どういう感じだがね~?]
ブイモン[…どうって言われても…超進化みたくエネルギーが内側から爆発するような感じだな]
ポロモン[超進化とジョグレス進化はどっちが強いんですか?]
ブイモン[ぶっちぎりでジョグレス進化だ。俺、超進化でもパイルドラモン…正式名はパイルドラモンイクスになるけど、やっぱり、単体より複数の進化の方が強いみたいだ。]
パタモン[ワープ進化くらい疲れるの?]
ブイモン[そのワープ進化ってのはしたことがないからどんななのか分かんないけど。多分、二つの個体を一つにするし、超進化よりもパワーアップ倍率がいいから、ジョグレスの方が疲れるんじゃないか?]
テイルモン[意識はどうなの?人格が融合したと言っても、あんた達の意識が無くなる訳でもないんでしょう?]
ブイモン[勿論、俺の意識もワームモンの意識もある。あまり意識は表に出ないけどな…]
ヒカリ「でも、どうして本宮君と一乗寺君のデジモンが…あ、それが悪いという意味じゃないの…ごめんなさい」
大輔「いちいち謝るな…。さあな、元々エクスブイモンとスティングモンは一つのデジモン…パイルドラモンが二つに分かれた存在だったって説もあったらしいけど?」
空「一つの存在…」
タケル「じゃあ…もし、パタモンにもそういう存在がいれば…パタモンもジョグレス出来るかもしれない…」
京「ホークモンのジョグレス相手って誰なのかしら…」
賢「(いるじゃないですか、すぐそこに…)」
そう思ってしまったのは悪くないはずだ。
ヒカリ「もしかしたら…エクスブイモンとアクィラモン…」
大輔「有り得ないね。第一、俺は賢以外の奴とジョグレスはしない」
タケル「なら…」
大輔「お前と心を通い合わせるぐらいなら敵に殺された方がマシだ。」
タケル「最後まで言わせてよ…ていうか何処まで僕が嫌いなの…?」
大輔「そうだな、初めて会った時から気に入らなかったし、今はパートナーが天使型に進化する時点でパートナー含めて嫌いだ」
パタモン[え…?]
大輔「天使型デジモンは大嫌いだ。傲慢で自分の正義に酔った偽善者デジモン」
賢「大輔。君が天使型デジモンにされたことを考えれば君の気持ちは理解出来る。だからって何の関係もない彼らに怒りを向けるのは筋違いだろう?」
大輔「…分かっている」
京「どういうこと?」
ブイモン[大輔はクラヴィスエンジェモンっていう究極体の天使型デジモンになっちゃんっていう女の子デジモンを目の前で殺されたんだ。“闇”だからってだけで存在を否定されてさ。あの時、大輔は奇跡のデジメンタルで俺をマグナモンにアーマー進化させてクラヴィスエンジェモンを倒したんだ。死ぬ寸前になっちゃんは残った力を振り絞って大輔に与えて、傷を治してくれた。今でもなっちゃんは大輔の中で生きているんだ。なっちゃんは俺にとっても友達だった。だから俺も天使型デジモンは…好きになれない。“光”に大事な友達を奪われた俺達は…]
ヤマト「(タケルとヒカリちゃんとはまるで真逆だな…)」
“闇”に友達を仲間を奪われたタケルとヒカリ。
“光”に友達を奪われた大輔。
ヤマトはいつか和解出来ればいいと思っていたが、大輔達の心境を考えれば難しいと思う。
それにタケルは闇を憎んでいる。
ヒカリも闇に恐れを抱いているため、和解出来る可能性は絶望的だろう。
タケル「でも…」
ワームモン[え?]
タケル「そのなっちゃんってデジモンが“闇”の存在なら仕方がなかったんじゃないかな…?」
大輔「何だと…?」
タケルの言葉は大輔の怒りに触れる。
タケル「闇はあってはならないんだ。危険と判断される程の闇の存在であるなっちゃんっていうデジモンのために、世界を乱されるなんてあってはならないんだ」
大輔「てめえ…今すぐその薄汚い口を閉ざせ…でないと殺すぞ……!!」
殺意を目に、声に込めてタケルにぶつけるが、タケルはそれでも大輔に言う。
タケル「大輔君!!闇の力でデジタルワールドそのものを歪めてしまうなんて事絶対にあってはならないんだ!!ぐっ!!?」
大輔の拳がタケルの顔面に叩き付けられ、吹き飛んだ。
ヒカリ達の悲鳴が上がるが、構わずタケルに馬乗りすると、殺意に促されるまま、首を絞めた。
ヤマト「タケル!!」
本気でタケルを殺そうとしている大輔を止めようとするが、タケルの首を絞めている大輔の腕はピクリとも動かない。
呼吸が出来ないためにタケルの顔色が徐々に悪くなっていく。
賢は無言で大輔の隣に歩み寄ると大輔の頬にパンチを喰らわせた。
吹き飛び、壁に叩きつけられる大輔に咳込むタケルに賢は溜め息を吐いた。
賢「ブイモン、大輔を連れて帰ってくれ」
ブイモン[分かった。大輔…帰ろう。な?]
大輔「………クソ野郎」
それだけ吐き捨てるように言うと、大輔とブイモンは泉家から出ていく。
賢「……今のは誰がどうみても君が悪い」
タケル「…………」
賢「君が闇を嫌悪する理由は僕には分からない。けど、だからといって存在を否定していい理由にはならないし、闇だけが悪という訳じゃない。実際、天使系も悪魔系もやってることは自分に都合の悪い奴を敵対視しててやってることは大して変わらない。なっちゃんが大輔にとって大事な存在なのは事実。君はまず、闇云々より大輔にとってなっちゃんの存在がどれだけ大きいのかをちゃんと考えて発言しないといけなかった。」
タケル「だけど…」
ワームモン[どうしてそこまで闇を嫌悪するの?]
ヤマト「それは俺が話す。……あれは忘れもしない、俺達の最初の敵…デビモンとの最終決戦の時だった」
あの時、グレイモン達では黒い歯車の力を取り込み成熟期以上の力を得たデビモンを倒すことは不可能だった。
ヤマト「闇の力を増大させ、誰も適わなかったデビモンをエンジェモンが倒したんだ。自らの命と引き換えにして…それがパタモンの初めての進化だった…初めての出会いがしばしのお別れになったんだ。タケルはデジタマを孵すところからやり直した…もう、一度パタモンに会うために…タケルは闇の恐ろしさと命の大切さをエンジェモンから教わったんだ…」
賢「成る程、大輔がなっちゃんから光の傲慢さと命の大切さを知ったように…高石君。今の大輔の気持ち、本来なら君が一番分かっていなければならなかった」
タケル「え?」
賢「君はパタモンを失って、大輔はなっちゃんを失った。パートナーかそうでないか、光と闇の違いはあっても大事な存在を奪われた。今の大輔はパタモンを奪われた君と同じ。君は大事な存在だったものを“殺されて当然”だと自分に言ったに等しいんだよ」
タケル「…僕は……」
頭が冷えるのと同時に言い過ぎたという罪悪感と、闇を擁護するような態度をする大輔への苛立ちが混じり合った表情を浮かべる。
賢「君は絶対、自分の意見を無理矢理他人に押し付けるタイプだね。大輔が嫌いそうなタイプだ。」
それだけ言うと、会釈をして泉家を出ていく。
太一「流石にあれは俺も言い過ぎだと思うぞ?」
タケル「分かってるよ…僕もそんなつもりじゃ…」
ヤマト「大輔の言葉につい…か?被害者本人によくもああ言えたな…」
ヤマトは溜め息を吐いた。
こいつはやっぱり自分より太一にそっくりだ。
特に自分の意見とか考えとか押し付けようとするところが特に。
ヤマト「しばらく大輔と顔を合わせない方がいいぞタケル…」
少なくてもあの時の大輔は本気でタケルを殺そうとした。
まあ、タケルの自業自得なところもあるが。
ヤマト「代わりに俺が謝っとくから、首の痣をちゃんと隠しとけ。大事になるのは避けたいしな」
タケル「……うん」
納得していないと言いたげなタケルにヤマトは苦笑した。






























ヤマト「さて、謝るのはいいが、どう謝るかな…?」
もしかしたら、タケルの兄ということで半殺しにされるかもしれないが殺されるよりはマシだ。
本宮家に向かう途中にある公園で大輔の姿を見つけたヤマト。
半殺しを覚悟して大輔に歩み寄る。
大輔「…何の用ですか石田さん…」
名前で呼ばない大輔に苦笑してしまうが、ヤマトはタケルのことを言う。
ヤマト「いや、タケルが悪かったな。あいつも悪気は…」
大輔「悪気がない分、タチが悪いですよ。本気で闇が悪者だと決め付けている大馬鹿なんだから」
ヤマト「………」
大輔「パタモンが…あいつのパートナーが闇に奪われたことに対する怒りや憎しみは理解出来ます。でも、あいつに闇だからって全ての存在を否定する権利なんかありません」
ヤマト「大輔…」
大輔「なっちゃんだって、生きたかったのに…闇なんて関係ない。なっちゃんは天然で明るくてとても優しい女の子だったのに………帰って下さい。これ以上話してると、また暴れてしまいそうなんで」
ヤマト「分かった。タケルには俺がよく言っとく。すまなかったな大輔」
謝罪を言うのと同時に弟の無神経な発言が大輔を深く傷つけてしまったことを知り、ヤマトは深く溜め息を吐いた。 
 

 
後書き
光に大事な存在を奪われた大輔。
闇に大事な存在を奪われたタケル。
実際タケルに存在を否定する権利はありません 
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