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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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ランニング:帝立修剣学院

ヤグルシ剣術大会から早一年半が経つ。
レイグルの村を出て早二年。それからその半年後にユイリ、ユリアと共にヤグルシ衛兵隊に入り、更に半年後に央都に上がって、学院の扉を叩いたのが一年前。
あっという間の二年だが、あの浮遊城アインクラッドに比べればどうさもない事だった。
俺ーーー天城来人は如何なる理由か、このアンダーワールドにソウル・トランスレーターを介してダイブしており、ログアウト不可のこの状況で、何故か剣術を他人から習う事に成ろうとは思わなかった。

「一年の総纏めだ、全力で来るが良い」
迫力のある声でそう命じるのは、黒色基調でカスタマイズした学院制服を隙なく着こなす、短髪の上級生。つまり、俺の<先輩>だ。
「ハイ、全力で行かせて貰います、ロウガ先輩」
答え、俺は右手に持つ練習用の木剣を構える。
木剣と言っても、最上級素材の白金樫を磨きあげた物だ。優先度としては大会で貸し出された物よりも高い。
俺が中段に構えるのを見届けてから、ロウガ先輩は木剣を抜き、下段に構えてから、やや左に斜めに構える。
それが彼の家に伝わる独自流派<ズィーガー流戦闘術>の基本の型だ。
「先輩、全力でって言いましたよね?……両手で構いません」
俺は真顔で言うと、ロウガ先輩は頷き、背に手を持っていく。
彼処から出てくるのは立ち会いが始まるまで解らないが、筋の予測は出来る。
「……行くぞ!」
突進してきた彼ーーーーノーランガルズ帝国貴族の嫡子にして上級修剣士首席、ロウガ・ズィーガーはそういった。
俺ーーー修剣学院初等練士にして彼の<傍付き>ライトは、無言で攻撃を捌きに入る。
毎日の授業と実技が朝九時から午後三時まで有り、その後、傍付きの仕事も有るが、何日と労働を積み重ねて来た俺にとっては生半可な物でしか無い。寧ろ欠伸が出て剣を手で受け止める事だって出来る。
「ーーーーセリャッ!!」
ノーモーションの攻撃を幾度となく捌き、その隙を付いて俺のノーモーション縦斬りを放つ。
しかし、ロウガ先輩はそれを下からの斬撃で相殺して反らせた。
ズィーガー流極意の一、<武雷(ブライ)>なる技だ。俺でさえ、修得に一年も掛かった結構な技だ。
その<武雷>による斬撃を無効にされた瞬間、ロウガ先輩の左手が背の武器を取った。
それは練習用の大木剣。
ロウガ先輩は異種の武器を同時に扱う<ビーストハンター>で有名な先輩だ。……尚、この名前には皆が思っているような武勇伝は無いと本人から聞かされている。
俺はそれを下に剃らされた剣を立ててしゃがむと、鍔が剣に当たり、少しひび割れた。
「セアアアッ!!」
そこから、俺は剣を逆手に持って引き抜いて攻撃する。
アインクラッド流剣術<ベータブラクトル>。
対するロウガ先輩が放ったのは、ズィーガー流秘奥義<流星>。
アインクラッド流に例えるなら、滅殺剣剣技<撃滅>。
二本の木剣が衝撃音を放ち、二つとも吹き飛んだ。
勿論、ロウガ先輩の剣は有るわけで、
「……見事!」
「……剣を向けて言う言葉ですか?」
降参を示す両手上げをすることとなった。
「しかし成長したぞ、ライト」
「有り難う御座います、ロウガ主席上級修剣士殿」
腰を折って、俺は礼をする。
「ですが、まだまだ先輩の剣には敵いません」
「謙遜するな。剣の軌道を読めていたでは無いか」
「実践するには程遠いですが」
ぶっちゃけ、アシスト無しの軌道を読むのには困難を極める。実践するにはあともう少し練習せねば行けないだろう。
「ふふ……それより、最後だから問うが、お前のアインクラッド流とやらには先が在るのでは無いか?」
「!?何故それを?」
すると、ロウガ先輩は言う。
「お前と仲良くしてる女子……エルステール姉妹だったか?彼女らが言っていたぞ?先輩方の卒業にする、もしよければ先輩もライトに頼んで見ては?とな」
俺は顔に手を持っていく。
……あいつら、後で何してくれよう。
すると、ロウガ先輩は言う。
「まぁ、私は無理強いはしないよ。彼女らの修剣士はとっても嬉しそうだったがね?」
……出た、ロウガ先輩のビーストハンター。
俺は諦めて言う。
「……解りました。俺もユイリやユリアの様にアインクラッド流の先を御見せします。……連続剣と言うその先を」
すると、ロウガ先輩は微笑む。
「連続剣とな?これはこれは……うむ、楽しみにしているぞ。して、何時かな?」
「明日、安息日として指定されていますが、その連続剣を贈り物として先輩に見せます」
「面白い。これこそ我が傍付き練士よ!!」
バンバンと背中を叩かれ、俺は苦笑いしか出来なかった。

















高等練士寮に戻った俺は、階段を登り、カウンターの女史に騎士礼をして話し掛ける。
「ライト初等練士、帰着しました」
「宜しい。後四十分程で食事の時間です。遅れずになさい」
ここの寮監、ユルリア女史から解放され、すぐに二階の208号室に行く。そこが、俺とユイリ、ユリアの部屋だ。
この南セントリア修剣学院は、特別な事情が無い限りは男女別なのだが、ユイリ、ユリアの姉妹が……と言うよりアリシアさん効果で同じ部屋になったのだ。苦労が多い部屋でもある。
「ただいまぁ……」
扉を開けて入ると、ユイリとユリアが居た。
……着替え途中で。
「き」
「き?」
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!」
「うわぁあああああああっ!?」
ユイリが叫び、ユリアは硬直。
俺は、物を投げられて部屋から出た。

数分後、俺はお怒りの二人からお叱りを受けていた。
「……しんっじらんない!!本当に人の着替えを見るのが好きなのね!?私達の下着姿がそんなに見たいの!?」
「ちがっ……あれは不可抗力だって!!」
「この一年間、ずっと不可抗力不可抗力!!何回やれば気がするのよ!!ユリアも何か言いなさいよ!!」
「私は……その……見られても……良いよ?ライトなら……その……」
「モジモジしながら言うな!!」
ユイリは相当なお怒りの様だ。
……まぁ、そこも可愛いと最近思えてきているが。
「ほんっとにもー!!そこまで見たいならユリアの見れば良いじゃん!!ユリアは良いらしいし!?巨乳だし!?可愛いし!?後は色々とスタイル良いし!?どうせ私は貧乳よ貧乳!!」
「そ、そんなこと……お姉さまも可愛いよ……?」
「デカイ乳揺らして言うな!!余計傷つくわ!!敏感乳め!!」
途端、俺の目の前でユイリがユリアの胸を触り出した。……アウト、絶対アウト!!
「ちょ、お姉さま!!」
顔を紅くしてユリアが止めようとする。しかし、暴走したユイリは止まらない。
「……飯、食いに行くか」
俺は立って二人を置いて扉を閉めた。
扉の向こう側から「らいとさ……たすけ……」と声が聞こえたが無視した。






因みに余談では在るが、飯を食って二人分の飯を運んで来たときには、ユリアの服ははだけており、ユイリは布団をグルグル巻きにされて居た。
……人が苛められてるっちゅうんに呑気な奴等だった。
因みに上級階級の貴族だが、一睨みで追い払ったと言うのは言うまでも無い。 
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