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ソードアート・オンライン ~Hero of the sorrow~

作者:C.D./hack
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フェアリィ・ダンス編 哀しみを背負った男達
  ギルスと紅い鳥と恐竜グリード

 
前書き
とんでも長い回。ようやくユキが出てきます。 

 
始が灰色の世界を抜けると、そこは森だった。深い深い、緑の森。

気配を感じた始は、木のそばへと隠れた。人がやって来たのだ。

姿は人間にそっくりだが、耳の形が違ったりすることに少し驚く。しかし、すぐに落ち着いた。

人間達の会話を聞くとよくわからない単語が飛び出していたが、一つだけ気になるものがあった。

バッタ男と紫色の鬼と言う噂だ。一号と響鬼か?と思いつつ移動を開始すると、向こうから叫び声が聞こえた。

見れば、見覚えのある姿が2つあった。

「イーグルアンデッド・・・!?」

奴は死んだ。いや、封印されたはずなのだが・・・。さらに、自分が封印したはずのオーキッドアンデッドもいる。

「いったい何がどうなっている!?」

アンデッドたちは、次々と人間を襲い始めた。急いで駆け出し、変身する。

「変身」

change

の音声と共に、始は仮面ライダーカリスへと変身する。

さらに一枚のカードを引き抜き、カリスラウザーへとラウズする。

K Evolution

カリスのキングフォーム、ワイルドカリスへと変身した始はアンデッドたちと相対し、人間が逃げるのを確認、戦闘を開始する。

左右のホルスターから醒鎌ワイルドスラッシャーを抜き、斬りかかる。

さらにアブソーブオーキッドのカードをラウズし、イーグルアンデッドを切り刻んでいく。

後ろからオーキッドアンデッドが触手を伸ばす。それに気付いた始はイーグルアンデッドを蹴り飛ばし、触手を避けてからカリスアローにワイルドスラッシャーを合体させて射撃する。

さらに、再び背後から接近するイーグルアンデッドを突き刺し、オーキッドアンデッドへと放り投げる。

そしてワイルドのカードをライズし、ワイルドサイクロンを放つとアンデッドたちは爆散し吹き飛んだ。

だが・・・そこに、黒い影が飛んでくる。

「くっ・・・・」

始はその影を見た。緑色の体を見せたそれは、

「・・・ギルスか!?」

ギルスの動きが止まった。その変身が解ける。

「やはり、葦原涼か」

涼もお前は・・・と言っていたが、涼はゆっくりと倒れた。

「葦原!!」

地面に倒れる涼を、始は背負う。始は森を抜けるため歩き出した・・・。



 研究所


その頃・・・。

須郷、妖精王オベイロンは、目の前の機械に見惚れていた。それは、異世界からのものを呼び寄せる機械。

スイッチを入れた須郷は遠目からそれを見る。その装置が光を放つと、何かが出現した。

鷹のような頭。クジャクのように美しい羽。コンドルのように力強い脚。全身が赤色で塗られたそれは、須郷に言った。

「お前・・・誰だ?」




 研究所


俺は目の前にいる人間へと言葉を発した。自分は死んだはずだというのに。その男はニヤニヤと笑いながら、こちらに近づいてくる。

「実験は成功だ。やぁ、被検体1号。僕はオベイロン」

僕は君を呼び出した、神だ。神、と男は自分で言った。

被検体と呼ばれたことにイラつきを感じたが、もっとイラつくのはこの男の口調だった。

彼奴(あいつ)に、800年前の王にとても似ているものを感じたからだ。

「ココは何処だ」

俺が聞くとオベイロンは私が作った世界だといった。此奴からは、王以上の欲望を感じた。

「俺は被検体なんて名前じゃねぇ」

「名を持っているというのか?」

その眼は、自分より上にいるものなどいないと思っている眼だった。

「俺の名前はアンクだ」

そう言った瞬間、オベイロンは笑った。

「いや、異世界の物にも名前があるとはねぇ」

その言葉は俺の逆鱗に触れていた。しかし、この世界のことを知っておきたいので怒りを抑えた。

「・・・何が目的だ」

「いい質問だ」

僕は力が欲しいのだよ、と男は言った。自分で神と言っておきながら、力がないというのは滑稽にも思えた。

「いいだろう。そのかわり、この世界のことを教えろ。あと・・・」

「なんだい」

気持ち悪い笑みを浮かべたオベイロンに、俺は要求する。

「毎日アイスをよこせ」

意外そうな顔になるオベイロンだったが、それを承諾した。

「協力してくれるなら、君にこの世界のことを教えよう。ついてきたまえ」

俺はオベイロンについて行った・・・・。



 和人の家


まどろみながら、俺は起きる。横には自分の妹が。

「どうなってるんだ、これは・・・」

俺は脳細胞をトップギアの如くフル回転させ、昨日のことを思い出す。

そうだ・・・須郷のことで深い絶望にとらわれた俺を、直葉が慰めてくれたのだ。

耐え難い恥ずかしさを感じた俺は、思わず

「子供かよ・・・」

と声を漏らした。そして直葉を起こそうと、体を揺らす。

「起きろ~。朝稽古の時間が無くなるぞ」

う~んと声を上げ、直葉が起きる。

「あ、おはよ、お兄ちゃん・・・」

直葉が体を上げると、ようやく自分の状況に気付いたようだ。

「あ、あのっ、あたしっ」

耳まで顔を赤くした直葉は、猛烈な勢いで部屋から出て行った。

その知らせは、俺がシャワーでも浴びようかと思って着替えを用意した時に届いた。

電子音が背後で響き、俺はデスクへと目をやる。椅子に腰を下ろし、メールを確認する。

差出人はなんと、エギルだった。リアルでエギルと会ったのは、二十日程前。

その時にメールアドレスを交換したのだが、メールが来たのはこれが初めてだった。

タイトルはLook at thisとなっており、開くと本文はよほど急いでいたのか書かれていなかったが、写真が二枚添付されていた。

写真を見た瞬間、俺は腰を浮かせた。不思議な構図だった。特徴のある色合いはライティングは、写っているのが現実世界ではないことが分かる。

前景には、ぼやけた金の格子が一面に並び、その向こうに、白いテーブルと椅子。そこに腰かける女性は、

「アスナ・・・!?」

そしてもう一枚。そこには緑の怪人と、人を背中に乗せる紫色の鬼。怪人たちに少し驚いたが、一番驚いたのは、鬼が背中に乗せている人だった。

「ユキ・・・!」

ヒースクリフを共に斃したもの。

俺は卓上から携帯端末を掴みとり、急いでエギルへと電話を掛ける。

途方もなく長く感じる呼び出し音。接続音の後、エギルの声が聞こえた。

「もしも・・・」

「おい、あの写真はなんだ!!」

「・・・・あのなぁキリト、せめて名前くらい言え」

「そんな余裕はない!!早く教えろ!!」

「長い話になる。今から店に来れるか?」

「すぐ行く、今行く」

俺は着替えを抱え、シャワーを浴びて濡れ髪も気にせず家を出た。



 世界樹


俺が研究所を回る途中、突然須郷が良いものを見せてあげよう、と言って上空へと上がる。

俺は翼を展開し、後を追った。さらに怪人体から人間体へと変化させる。

上空の木の枝には、趣味の悪い金色の格子があった。そしてゆっくりと須郷がパネルを操作し、扉を開けた。

「やぁ、ティターニア。元気かい?」

ティターニアと呼ばれた女は、無言のまま座っている。

周囲が美少女と呼ぶような、綺麗な顔だと思った。俺は女の欲望を見る。

グリードには、欲望がどんなものかわかる能力がある。俺はそれの強化版のような能力が使えるのだ。

欲望の気配と一緒にどんな欲望か分かる。女の欲望は愛する人と出会いたい。下手をしたら、王よりも、あの少女よりも大きい。

ヤミーを創ろうと思ったが暴走されても困るし、そもそもアバターに使えるかもわからなかったため、辞めた。

・・・・・アイツとも約束してるしな。

相変わらず気持ち悪い笑みを浮かべながら、須郷が女の顔を撫でた。

男の俺からも気持ち悪いと思った。吐き気がするレベルだ。それをやられてる女はそれ以上に気持ち悪いだろう。女が口を開いた。

「いつまでこんなことをするつもり?」

「あなたなら何でも思いのままでしょう。好きにしたらいいじゃない」

女の冷ややかな声。・・・いい女だ。もっと言ってやればいい。メズールを思い出したのは気のせいだろう。

「ねぇ、須郷さん」

須郷?コイツの本当の名前か。本名でもない神とは、とんだお笑い(ぐさ)だ。

「やれやれ、気が強いねぇ」

「でもねぇ・・・なんだか最近は」

女が顔をそむけようとしたが、須郷はおとがいに手をかけ、無理やり正面に向ける。

「そういう君を力ずくで奪うのも楽しいかなあと、そんな気もするんだよねぇ」

須郷は女の唇を指でなぞると、そのまま首筋を撫で下ろす。そして指は女の胸のリボンをほどこうとゆっくりと引き始め――――――――――――。

「やめろ」

俺は思わず声を漏らした。アイツならこうするだろう。いや、俺の欲望を満たしたアイツ等なら、こうする。

「さっさと俺を紹介しろ」

そうだねと、会釈して須郷が女を俺の方に向かせる。

「コイツはアンク。僕が呼び出した怪人さ」

気持ち悪い。本当に気持ち悪い。

「おい、お前。コイツと少ししゃべらせろ」

「二人でな」

下で待ってろと言うと、須郷は、いいだろうと言って下に降りて行った。

「おい、女ぁ・・・。お前の名前はなんだ」

女は終始無言でいたが、ようやく口を開いた。

「・・・ありがとう」

「なんで、礼をする?」

「あなたは・・・ここにいる人達とは違うと思ったから・・・」

「へぇ・・・わかってるじゃないか」

「私はアスナ」

「はっ・・・いい名じゃないか」

何故言ったか?単純に、そう思ったからだ。

「ねぇ、あなたは何者なの?須郷は怪人だって言っていたけれど」

「こういう事だ」

俺は人間体から怪人体へと変身する。そして羽を展開してみせる。

アスナは俺の全身を見る。

「・・・おい。なんで驚かない」

「いや・・・きれいだなって思って」

綺麗?俺がか?俺は自分の姿が嫌いだ。夢で見ていたころと、全く違うからだ。

綺麗ではない。むしろ醜いとも思っている。明日奈は言葉をつづけた。

「赤色がすごい綺麗ね、アンク」

女の感性はわからない。今まで見てきた人間は、みんな驚いてきた。驚かなかったのは、比奈や映二達ぐらいだろう。

「そうだ、あなたのニックネームをつけてもいい?」

「ニックネーム?ンだそりゃ」

「親しみを込めて呼ぶ名前のことよ」

「ンなもん、勝手につけろ」

明日奈が深く考え始める。数分にもわたって考え、アスナは笑顔で言った。

「じゃあ、鳥さんで」

笑顔で告げられたそれに、息が詰まった。あの少女のことを思い出したからだ。

「よせ・・・」

「え、なんで?」

明日奈が顔を覗き込んでくる。

「・・・ごめんなさい」

「・・・わかったら、それでいい」

俺は格子の扉を開けようとすると、明日奈が後ろで言った。

「ねぇ、アンク」

「・・・なんだ」

俺は後ろを見ずに行った。

「なんで、あなたは泣いてるの?」

馬鹿な、そんな筈はない。俺は自分の頬を撫でる。頬は――――――――――濡れていた。

俺は後ろを見ずに、一気に下降した。



 エギルの店


俺は店のドアを開け、中に入る。すると巨漢の男がにやりと笑いながら、顔を上げる。

「・・・よぉ、早かったな」

「相変わらず不景気な店だな。よく二年潰れずに残ってたもんだ」

「うるせぇ、これでも夜は繁盛してるんだ」

あのころに戻ったような感覚でやり取りを交わす。俺は目覚めてから知り合いの連絡先と本名のリストを、総務省の役人からもらった。

もう一度会いたい人達はたくさんいたが、彼らも現実世界との折り合いをつけるのに苦労しているだろうから接触は控えている。

いや、エギル以外に連絡を取ろうとした人物がいる。それがユキだ。

アスナが帰って来ていないので、相談しようとしたのだ。結局、会うことはできなかったが・・・。

「で、あれはどういうことなんだ」

俺の問いかけに店主はすぐに答えず、カウンターの下から長方形のパッケージを取り出すと俺の方へと滑らせた。指で受け止める。

手のひらサイズのパッケージは明らかにゲームソフト。プラットフォームを見ると、右上に印刷された
アミュスフィアなるロゴに気付いた。

「聞いたことのないハードだな」

「アミュスフィア。俺たちが向こうにいる間に発売された。ナーヴギアの後継機だ」

そこからいろいろなことを聞いた。俺はパッケージを見る。タイトルは、ALfheim Online。

「アルフ・・・ヘルム・オンライン?意味は?」

「アルヴヘルムと発音するらしい。妖精の国だとさ」

まったり系のMMOkか?と聞くと、エギルは否定した。

「いや、すごいハードらしい」

「どんなふうにだ」

「ドスキル制。PK推奨、重視」

さらに説明が続き、一通り説明を受けた後、ようやく本題になった。

エギルが二枚の写真を取出し、目の前に置く。

「どう思う?」

「似ている・・・とても」

「やっぱ、そう思うか。ゲーム内のだから解像度が足りないんだ」

「そして・・・この一枚」

ユキが背負われている写真。

「ああ、お前と一緒に戦ってくれた子だよな。さらに、今その鬼とバッタ男は噂になっているらしい」

「・・・そうか」

(この二体は仮面ライダーと言う者だったら・・・)

「なぁ、アスナのように、帰って来てない人達っているのか?」

店主はよくわからないと答えた。が、

「一人だけいる。それには、ひとつ聞いてほしいことがある」

「その子・・・ユキって子は今、行方不明だ」

「・・・どういう事だ?」

「言葉の通りだ。ユキ君は病院で行方不明になった。そこにいた患者とな」

「患者?それは誰だ?」

「篠崎里香・・・リズベットだ」

驚きの連続で頭がくらみそうになる。

「さらに、そこでは男が一緒に目撃されている。だが、一番の問題はユキ君が行方不明になった病室だ」

「・・・アルゴか」

「そうだ。アルゴの病室だ。アイツも、帰ってきていないんだ」

その言葉を聞いた瞬間、もう考えるのをやめ、エギルからソフトを貰って家に帰った。

アスナ、ユキ。待っていろ。今、そっちに行く。家に帰った俺は、ナーブギアを起動した。






 森

「いや~。鍛えがいがあるなぁ。ココは」

「あの~響鬼さん?」

里香が響鬼に問う。

「いつになったら帰れるんでしょうか・・・」

「ん~ごめんね!わかんない」

もう里香は黙るのみ。今度は真が口を開く。

「・・・響鬼」

「なんですか、真さん?」

「ユキの怪我の治りが以上に速いのはどうしてだ」

「俺にもわかりませんよ。だけど魔化魍にやられた傷は、治ってないんですよね」

がさっ、と響鬼近くの茂みが揺れた。真が変身しようとするが、響鬼が止める。

「誰だ」

茂みから人が出てくる。

「やはり、響鬼か」

始が涼を背負い、響鬼の方へと歩みだす。

「やっ、久しぶり・・・と言いたいとこだけど」

「何でここにいるか、だろう」

始の後ろ、涼が口を開いた。

「よかった、起きたようだな」

始が涼を下ろし、肩を貸す。

「それよりも・・・始、ユキを回復するような物はないか?」

「ある」

始はリカバーキャメルのカードをラウズする。するとユキの背中の傷がみるみる消えていく。

「おっ、いいカードだねぇ」

「すご・・・」

と里香が反応する。その時だった。ユキはゆっくりと立ち上がる。ユキは周りを見渡すと、目が紫色に光った。

「っ、」

「「全員、下がれ!!」」

涼と真が同時に叫ぶ。ユキがメダルに包まれ、姿を変えていく。

「少年!!」

全員が変身する。ユキも変身を終えた。紫色の体。力強いフォルム。その姿は恐竜に近い。

「少年!目ぇ覚ませ!!」

響鬼が音激棒を叩きつける。同時に真とギルスが動く。連撃を加えつつ、始がカリスアローで斬り付ける。

しかし、メダルが数枚落ちる程度で終わった。

「グワァアアアアウッ!!」

咆哮。凍結。全員が動けなくなる。さらに咆哮。肩の角が伸び、全員を弾き飛ばした。

「あ、」

里香は体がすくんで動けない。目の前でやられていく人達。私はどうしたらいいだろう。

恐竜グリードが里香に近づく。そして、手を伸ばして――――――――――――。

その時だった。里香の目の前に男が現れ、叫んだ。

「変身!!」

タカ!トラ!バッタ! タットッバッ タトバ タットッバッ!!!

三色のライダーが、恐竜グリードの前に立ちはだかった。 
 

 
後書き
本当はもう一人出すはずだったんですが・・・。長くなりすぎた。私の欲望は文才が欲しいです。

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