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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos54-A決戦/永き旅路の終わりへ~First Battle~

 
前書き
システムU-D第一戦イメージBGM
魔法少女リリカルなのはA's-GOD-「BRAVE PHOENIX ARR.」
http://youtu.be/QNt4lT81inQ
 

 
†††Sideルシル†††

ヴィヴィオ達をアースラへと連れて戻り、俺はあの子たちが探していると思われるアミティエとキリエ、フローリアン姉妹と引き合わせた。場所はトレーニングルーム。クロノとフローリアン姉妹は、シュテルとアイルから対システムU-D用のプログラムを預かり、その稼働試験を行っていた。

「クロノ提督もちっちゃ・・・」

ヴィヴィオがそう言って驚く。13年後のクロノは高身長だからな、今のクロノの低身長が信じられない程に。アインハルトが「ルシルさん。あの方たちが、時間移動の原因の・・・?」とフローリアン姉妹を差して確認してきたため、「そう。彼女たちの時間移動に巻き込まれて、君たちも飛ばされて来たんだ」と答えた。

「クロノ、アミティエ、キリエ。少しいいか・・・?」

プログラムの稼働試験を終えたのを見計らい、3人に声を掛ける。そしてフローリアン姉妹にヴィヴィオ達のことを紹介すると、あの子たちへの「ごめんなさい」第一声は謝罪だった。

「あの、元の時代に帰る方法を教えてください」

「俺たちを待っていてくれる人たちが居るんです」

ヴィヴィオとトーマがそう言うと、アインハルトとリリィがうんうんと頷いて同意を示した。アミティエとキリエが顔を見合わせて、「ごめんなさい。時間移動に関してはちょっと難しいところがありまして・・・」まずアミティエが不穏なことを言い、ヴィヴィオ達の表情が不安一色になったのを見、「待って! ちゃんとみんな帰られるようにするから!」とキリエが弁明した。

「はい。必ずみなさんを元の時代に帰ることが出来るよう、妹と一緒に考え実行できるように努めますから、もうしばらく待っていてください」

「うん。この一件が片付いたら、になっちゃうけど・・・それでもちゃんと考えるから。ごめんね」

誤魔化す事無く正直に帰す方法についての見当がないことを伝えたアミティエとキリエが、ヴィヴィオ達に深く頭を下げた。その姉妹の真摯な態度にヴィヴィオ達も強くは出ることが出来ず、「あ、はい・・・」と引き下がった。

「執務官、ルシリオン君。この子たちをこのままこの艦に保護してほしいんだけど?」

「ああ。もちろんだ」

「それともう1つ。彼女たちとはあまり話も接触もしない方が良いかと」

「タイムパラドックスの件だな。それについてはこの子たちも了承している・・・よな?」

ヴィヴィオ達に振り向いて確認すると、「はい」とあの子たちは首肯してくれた。タイムパラドックスを気にして逃げ回っていたくらいだ、あの子たちも納得してくれた。話はこれで終わり。ヴィヴィオ達を個室に移そうとしたところ、「あの・・・」ヴィヴィオが小さく挙手し、「みなさんが抱えてる問題ってなんなんですか?」と訊いてきた。

「聴いてどうする?」

「あ、あの、もし手伝えたら、もっと早く解決できるかな、って・・・」

クロノに訊き返されてビクッとするヴィヴィオがそう答えた。すると「せめて事情を知りたいです。どうしてアミティエさんとキリエさんがこの時代へ来たのか、など・・・」アインハルトもそう続けた。

「俺も、事情を伺いたいです。そしてもし、俺たちでも手伝えるようであったら手伝いたいです」

そしてトーマと、「うん。私たちの力、少しでも役立てば」リリィも事情を聴いたうえで協力が出来ればしたい、と買って出た。俺はクロノに「どうする?」と訊ねる。正直、反対の思いもあるが、映像を観る限りだがトーマの特別な力――魔力結合の強制分断は、魔導戦では強大な対抗力と成り得る。そのことについてはクロノも承知している。

「事情だけでも話したらどうだ、クロノ。知る権利くらいはあると思うが」

「・・・ああ。じゃあ、簡単に話そう。アミティエ、キリエ。あなた達からもお願いする」

「はい」「ええ」

そして俺たちは、今起こっている事件のあらましを話せる分だけヴィヴィオ達に話す。フローリアン姉妹が未来からこの時代に訪れた理由、マテリアルと砕け得ぬ闇のことについて。話を聴き終えたヴィヴィオ達の瞳には強い意志の光が生まれていた。

「わたしの勝手で、あなた達に迷惑を掛けたこと、本当に申し訳ないって持ってる。でも、わたしは助けたいの、故郷を・・・」

キリエの願いを改めて聞いたヴィヴィオ達は顔を見合わせて頷き合い、クロノを前からしっかりと見つめ、「手伝わせてください!」と頭を下げた。腕を組んで沈黙を保つクロノ。俺は「トーマとリリィの能力は使えると思うが」と、クロノ自身も考えているであろう意見を出す。

「アミティエ、キリエ。彼女たちのデバイスに、対U-Dプログラムは載せられるか?」

「八神ちゃんのデバイスにも載ったんでしょ? 出来ないことはないと思うわ。まぁ、デバイスちゃん達の頑張り次第かな」

キリエはそう言ってヴィヴィオの側に浮遊するウサギのぬいぐるみ――“クリス”と、アインハルトが胸に抱える仔猫?――“ティオ”をチラッと見てウィンクすると、“クリス”はビシッと敬礼し、“ティオ”は「にゃん!」と力強く一鳴きした。

「戦力は多いに越したことはない。が、危険だと判断したら即座に後ろに下がらせる。それで構わないね?」

「「「「はいっ!」」」」

こうしてヴィヴィオ達の参戦も決定。急いでヴィヴィオとアインハルトのパートナーに対U-Dプログラムを載せるための作業を始めるアミティエとキリエ。そんな中で、アリシアから最後のマテリアル、ロード・ディア―チェの再起動、そして闇の残滓の多数発生の報せが入った。

「僕やルシルも出た方が良いか?」

クロノが“デュランダル”の柄をグッと握りしめる。“S2U”で使える射砲撃や補助魔法を、“デュランダル”でも使えるようにしてあるため、すでにソレがクロノの新たなパートナーと言った風だ。

『えっと・・・ううん、大丈夫。マテリアル達も出てくれるみたい。フェイト達と協力すれば・・・』

「そうか。じゃあ僕とルシルは居残りで、あの子たちの稼働試験を行おう」

クロノと一緒にトレーニングルームの隅っこで作業をしているヴィヴィオ達へ視線を向けると、目に見えてヴィヴィオ達はぶるっと体を震わせた。フローリアン姉妹の作業が終わるまで待っていると、『緊急連絡! システムU-D出現! クロノ君、ルシル君、出れる!?』緊迫した声でエイミィから通信が入った。

「プログラム搭載作業の方は!?」

「完了よ! でもちゃんと稼働するか確認がまだ・・・!」

キリエがヴィヴィオとアインハルトに振り向くと、「ぶっつけ本番で大丈夫です!」ヴィヴィオが、「はい。それで問題ありません・・・!」そしてアインハルトも続けて大人モードへと変身した。そんな2人に「本当に大丈夫なのか・・・?」とクロノが不安げに訊く。

「「大丈夫です!」」

「もしもの時は俺とリリィでサポートしますから!」

『心配・問題、ありません!』

モード黒騎士という姿に変身したトーマと、彼とユニゾン?したリリィの意思もまた強かった。そこまで言われたらクロノも「判った」と頷くしかなく。そうして「では行こう!」俺たちはトランスポーターへと駆け出した。
その間、戦闘を始めたマテリアルと砕け得ぬ闇の状況をモニターで観る。マテリアル達、1基1基の決死の攻撃をその圧倒的な魔力で防ぎきっている砕け得ぬ闇の異常性には改めて驚かされる。

「引くなら今だぞ、2人とも」

息を呑んでいたヴィヴィオとアインハルトに最後通告するクロノ。しかし2人は「やらせてください!」その意思を揺るがせなかった。そして俺は「トーマ、リリィ、あの砕け得ぬ闇の纏う魔力、分断しきれるか?」と異質な力を持つ2人にそう訊く。

「あんな高魔力を持った相手とは会ったことがなくて・・・ちょっと判らないです」

『でも足手まといにはなりません!』

そう返してきたリリィに「別に足手まといとか考えていないよ。逆に頼りにしているくらいだ」と後ろをついてくるトーマに振り向いて微笑む。砕け得ぬ闇への直接ダメージが期待できなくても、あの子の放つ攻撃への対処力は俺たち以上かもしれないからだ。

(にしても、16年後には砕け得ぬ闇並の魔力を持った敵対者は居ないんだな。というか16年経っても俺は存在しているのか・・・。何をのんびりしているんだか)

25歳ほどになっても“堕天使エグリゴリ”全機の救出を終えていない自分に今さらだが失望。溜息を漏らしながらも辿り着いたトランスポーター。それとほぼ同時、ディアーチェを除くマテリアル達が全滅したのを観た。

「っ!・・・急ぐぞ!」

クロノに急かされ、俺たちはアースラより出撃。小雨の降る空へと転送され、はやて達と合流するために空を翔けた。そしてはやて達とディアーチェの姿を視認したんだが、「――殺すぞ!」ディアーチェがリインフォースにそんな悪態を吐いているシーンを目の当たり。彼女たちは何やら口喧嘩のような言い合いをしているようだ。

「はやて、みんな!」

「ルシル君、クロノ君!」

「それにアミティエさんにキリエさん!」

「っていうかヴィヴィオ達も一緒なの!?」

俺がそう声を掛けると、三者三様に俺たちに反応するはやて達。そんなあの子たちに、フローリアン姉妹は自分たちが招いたことへの責任として、未来組は事情を知ったうえで砕け得ぬ闇を救い、自分たちが未来へ早く戻れるようにという、それぞれの理由から、この子たちの参戦を許したと俺とクロノは伝えた。

「――で? ディアーチェは先ほどから何を怒鳴っている?」

一体何を言い合いしているのかと訊けば、ディアーチェは他4基のマテリアルの力を一身に預かったのだが、その強大さは彼女の駆体の強度では耐え切れず、このままでは壊れてしまうかもしれない。はやてとリインフォースはそれを心配してディアーチェの身を案じたんだが、彼女は仲間を失ったことで興奮状態であったからか、殺すぞ、発言で黙らせようとしたのだった。

「・・・それでどうするんだ、ディアーチェ。君も戦うんだろ?」

「無論だ! 奴らが打ってくれた布石を、奴らが我に託してくれた力を、無駄になど出来るものか! 我がU-Dと対峙するのだ、誰にも邪魔はさせん!」

そう訊いた俺にも怒鳴るディアーチェ。俺も、怒鳴ることはしないが誰かに何かを託される、という経験は嫌と言うほどあるから理解できる。

――哀れな堕天使(あのこたち)を見捨てないであげて――

“エグリゴリ”を救ってあげてほしい。シェフィリスや“アンスール”のみんなから託された想い。その想いを果たす為なら俺は自分の身が危なかろうが何だってする。ディアーチェの言い分を理解できるからこそ、俺は「決まりだな。ディアーチェも参戦させる。それで構わないな・・・?」はやてとリインフォース、ディアーチェの参戦を快く思っていない2人に告げる。

「でも・・・」「しかし・・・」

「はやてちゃん、リインフォース。私もルシル君に賛成」

「きっとこれ以上何を言っても止まらないわよ、ディアーチェは」

「うん。レヴィもシュテルも、フラムやアイルだって、ディアーチェの為に頑張ったんだから」

「だから一緒に戦ってもらおう?」

渋るはやてとリインフォースに、なのは、アリサ、フェイト、すずか、そして「最終的にヤミちゃんを制御できるのってディアーチェだけだし」とシャルがそう説得した。俺も「ああ。制御できるのがディアーチェだけである以上、俺たちは破壊することしか出来ない。それはさすがに勘弁だ」と続く。

「はやて、リインフォース。制御する方が破壊するより確率が高いはずだ」

トドメのクロノ。それでようやくはやてとリインフォースも折れ、「うん。一緒に頑張ろう」とはやてがディアーチェに告げると、彼女は鼻を鳴らし「U-Dは我が必ず制御する。破壊などさせぬからな」と念を押してきた。これでディアーチェの参戦も決定。
そんな彼女が「一度の戦闘ではおそらく済まぬ」と言ってきた。段階を分けて砕け得ぬ闇を弱体化させなければならない、と。となればチーム分けだ。砕け得ぬ闇の反応をまだ捉えられていない今、チーム分けの相談が出来る。そして・・・

「第一チームは、僕、イリス、ルシル、シグナム、ヴィータ、キリエ、トーマだ」

「第二チームは、わたしとリインフォース、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃん、ヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃん、アミティエさんや」

弱り切った砕け得ぬ闇に制御プログラムを打ち込むディアーチェ。シャマル、ザフィーラ、すずか、アルフは、防衛線と結界維持を担当するサポート班に回る。チーム分けを終えてすぐ、『みんな! ヤミちゃん――じゃなかった、システムU-Dを発見!』アリシアから通信が入った。

「よし。第一チームは先行するぞ! 第二チームとディアーチェはあとで来てくれ! 行くぞ!」

クロノの指示に俺たちはそれぞれ応じ、第一チームである入れ達はアリシアの言うポイントへと飛んだ。

†††Sideルシル⇒イリス†††

アリシアの案内に従って向かった先、そこに砕け得ぬ闇――ヤミちゃんが居た。サポート班のすずかやシャマル先生たちが結界を展開。さらに局から応援に来てくれた結界魔導師たちも結界を展開。

「とんでもないな。周辺の魔力を途轍もない勢いで集めていっている・・・!」

「うん。次の段階へ覚醒しようとしてるんだろうね・・・」

「ここで仕留めねーとまずいな」

クロノが固唾を呑む。わたしやヴィータもそんな感じ。これまで以上に圧倒的な存在になりつつあるヤミちゃん。それでも止めてあげないと。

「おーい、ヤミちゃ~ん! ちょっと話しようかぁ~~~~!!」

会話が出来る状態ならまずは話し合い。そう決めていたからこそ、とりあえず大手を振って話しかけたけど、ヤミちゃんは沈黙を貫いた。クロノが「応答はなし、か。仕方ない。第一チーム。これよりU-Dの確保行動に移る!」そう告げて戦意を放つと、「魔力の増大! 来るぞ!」ルシルが声を張り上げた。

VS◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
其は悲劇からの解放を望む者・砕け得ぬ闇
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS

ボケーっとしてたヤミちゃんが急に目を覚ましたかのように魄翼っていう魔力の靄のものを大きく翼状に広げて、

――アルゴス・ハンドレッドレイ――

魄翼の両面から全方位へと真っ赤な砲撃を100発と発射して来た。わたし達はその場から散開して、「各自、対U-Dプログラムを起動しろ!」クロノからの指示通り、わたし達はシュテルから預かったカートリッジやプログラムを起動していく。

「キルシュブリューテ、ヴァッサーファル、カートリッジロード!」

「レヴァンティン、ヴィルベルヴィント、カートリッジロード!」

「アイゼン! ブルムベア、カートリッジロード!」

「デュランダル。オストヴィント、起動」

「エヴェストルム・ツヴィリンゲンシュベーアト。ラントクロイツァー、フェルディナント、カートリッジロード」

対U-Dプログラムを起動。そしてわたし達はヤミちゃんへと攻撃を仕掛ける。先攻は「コード・プシエル!」ルシルの発動した蒼い炎の龍プシエルの呑み込みによる牽制攻撃。ヤミちゃんは「この魔導は・・・、魔神オーディン・・・!?」と驚愕の声を発しながら、怪物の両腕へと変えた魄翼で上顎と下顎を掴み取って、親指以外の4本の指の爪を伸ばしてプシエルを貫き消滅させた。

「よかった、会話できるじゃないか。ちょうどいい。話を聴いてもらおうか・・・!」

この中で一番機動力があることで囮として矢面に立つルシルが、ヤミちゃんにそう語りかける。だけどヤミちゃんは「話? 話すことなんて何もないです」そう切り捨てて、怪物の両腕でルシルを握り潰そうとした。ルシルは高速後退して回避。

「俺たちは君を救いたいんだ。嘆き苦しんでいる君を」

「無用です。同情なんて要りません、放っておいでください。今の私に近づくと、私はあなたを害してしまいます」

――バレットダムネーション――

魄翼表面から放たれる何十発っていう魔力弾幕を、ルシルは両手に握ってる“エヴェストルム”を振るって自分に当たる分だけを斬り裂いて迎撃した。僅かに驚きを見せるヤミちゃんに「いいや、無理だな。俺は救うぞ?」って不敵に笑みを見せるルシル。

「たとえオーディン――の血族であろう君でも無理だ。救えないモノもある。オーディンも結局は、守護騎士と管制融合騎を救えなかった。優しいだけでは救えないのです」

ヤミちゃんの魔力や魄翼に変化あり。攻撃の前兆。それが判ったからこそ、

「そいつは違ぇな!」

――ラケーテンハンマー――

「ああ、我々は救われたさ!」

――紫電一閃――

ヤミちゃんの背後を取ったヴィータとシグナムが魄翼潰しの一撃を繰り出した。何かに変わろうとしていた魄翼は斬り裂けたけど、ヤミちゃんに到達した2人の攻撃は、目に見えない魔力の多層防壁によって防がれた。そしてオートなのか元に戻った魄翼が怪物の腕となって2人を鷲掴もうとしたのを、「ラピッドトリガー!」キリエと、「シルバーバレット!」トーマ、2人のエネルギー弾が妨害。

「あなた達は・・・烈火の将、それに紅の鉄騎・・・」

――バイパー――

振り向きざまにわたし達全員の足元から魄翼で創られた槍を突き出させたヤミちゃん。みんなそれぞれ躱す中、「あたしらは救われた! お前も見てたんだろ!?」ヴィータが怒鳴る。

「救われなかったじゃないですか。だからこうしてこの時代にあなた達が存在している」

――アルゴス・ハンドレッドレイ――

また魄翼両面から100発の砲撃が発射された。膨大な魔力があってこそのチャージ無しでの速射砲弾幕。それぞれ回避しながら「光牙閃衝刃!」“キルシュブリューテ”の刀身に魔力を付加して、刺突行為をトリガーに発射する中距離攻撃用の魔力槍の一撃を繰り出す。
わたしの閃衝刃に向かってヤミちゃんが自身の右手を翳そうとした時、「リングバインド!」クロノのバインドがその右手を拘束。そして着弾・・・したように見えたけど、やっぱり多層防壁に防がれて、バインドもすぐに砕かれた。

「いいや、救われたよ、我々は。それまで我々は家族というものを知らなかった。戦いの為の道具として扱われてきたからな。しかしオーディンは、我ら夜天の守護騎士を戦友として、家族として、扱ってくれた」

――シュトゥルムヴィンデ――

シグナムの言葉と一緒に放たれた衝撃波がヤミちゃんを捉えたけど、魄翼がバサッとはためいてその一撃を払い退けた。ルシルが「ヴィータ!」の“グラーフアイゼン”・ハンマーフォルムのヘッド部分に氷結付加、氷製モーニングスターになった。

「そうさ! オーディンは、地獄ばかりだったあたしらに光を見せてくれた、温かな家庭をくれた!」

――クリスタレス・ハンマー――

ヴィータの一撃を実体化した魄翼で防御したヤミちゃんに、「確かに過酷な運命からは解放されなかった。だが・・・!」シグナムが魔力斬撃・空牙を放って追撃。ヤミちゃんはその一撃をパンツァーシルトで防いだ。

「けどそのおかげで、あたしらは最後の夜天の主・八神はやてに出会えた! オーディンは知っていたんだ、きっと! 予言とか言ってたし! あたしらは、オーディンの家族になれた、はやてと巡り合えるような奇跡も起こしてくれた! これを救いじゃないって言うならなんだって言うんだよ!!」

ヴィータはもう1度氷塊のハンマーによる一撃を繰り出す。ヤミちゃんは「っ!」防御することなく高速後退することで回避。

「光牙烈閃刃!」「ブレイズカノン!」

回避先を予見していたわたしとクロノによるダブル砲撃。ヤミちゃんは怪物の腕へと変えた魄翼で砲撃を握り潰して対処。その隙に「はーい、ヤミちゃん♪」キリエが懐深く入り込んで、武装“ヴァリアント・ザッパー”を二剣の片刃剣へと変えての直接斬撃を繰り出した。

「憶えてくれてるかしら? あなた曰く、時の操手になり損ねちゃった、お馬鹿な桃色ギアーズよ」

「憶えてますよ。まだ私のエグザミアを欲しているんですか? 諦めて早々に鉄屑となってください」

――ヴェスパーリング――

キリエの斬撃を障壁で受け止めて、すかさず魔力リングを発射して反撃。キリエは「エグザミアはもう要らない、諦めたわ。奪うことが出来ないって判ったし」くるっと1回転しながら横移動して躱して、“ザッパー”を二挺拳銃に変形、エネルギー弾ラピッドトリガーを連射。それすらも障壁で防ぐヤミちゃん。

――舞い降るは(コード)汝の煌閃(マカティエル)――

そんなヤミちゃんの全方位から蒼い魔力で創られた槍が13本、一直線にヤミちゃんへ殺到。ルシルの槍を実体化させた魄翼で大きく払い退けた。

「炎牙崩爆刃!」

「スティンガーレイ!」

「シュワルベフリーゲン!」

「銀十字!」

ルシルに続いて、わたしは炎の斬撃を、クロノは魔力弾6発を、ヴィータは物質弾に魔力を付加した物理・魔力の射撃を、トーマは前面に展開した“銀十字の書”から切り離されたページからのエネルギー弾を放った。

「諦めてもらえて何よりです。誰も、私に触れることなんて出来ませんから」

ヤミちゃんの単純な魔力放出。それだけでトーマ以外の攻撃が掻き消された。トーマのエネルギー弾は僅かに威力を落とされたようだけど、それでもヤミちゃんに届いた。だけど威力を減衰された所為か、ヤミちゃんを常時護る多層防壁は突破できなかった。

「ううん、違う。あなたに触れられないからじゃない。始めっから過去も未来も変えるなんてしちゃいけなかったのよ」

――ファイネストカノン――

「過去に遡ったり、誰か傷つけたり、お姉ちゃんに辛い思いをさせたり。そんなことをしてまで我が儘を通すのって、やっぱり良くないかなって思ったのよ。そんな簡単なことだったのに、気付くのがあまりにも遅かった」

砲弾としたエネルギー弾2発を、間を開けて撃ったキリエ。ヤミちゃんは高速で左に右にと移動して躱したところで、「紫電・・・清霜!」回避先に待ち構えていたシグナムの居合斬りが繰り出された。

「っ!」

「「「「「「入った・・・!?」」」」」」

“レヴァンティン”の刃がヤミちゃんに打ち込まれた・・・かのように見えたけど残念。また多層防壁に防がれた。

――サイズディカピテイション――

ヤミちゃんは2つの魄翼を大鎌へと変え、健在を示すかのように即座にシグナムに反撃した。初撃が微かに回避に移ったシグナムの頬を浅く切って、二撃目が当たるかどうかの一瞬、「させない!」ルシルから放たれた魔力槍1本が魄翼を打って、シグナムの離脱を援護。

――バレットダムネーション――

わたし達の接近を拒むように何十発っていう魔力弾幕を張ったヤミちゃんだけど、回避や防御に必死なわたしとは違ってキリエがまた「アクセラレイター!」高速移動で接近を試みた。

「だからわたしは、博士がくれたこの体と心、この2つだけで、わたしに出来ることをするっ」

銃から片刃剣一対へと戻したキリエは、腕を大きく広げるような形で“ザッパー”を振るって斬撃を繰り出す。ヤミちゃんは真っ向から怪物の腕へと変えた右の魄翼で殴りつけるように迎撃。刃と拳が火花を散らして拮抗。

「お姉ちゃんと一緒に未来に帰って、わたしはずっと博士の側に居るっ。博士に残された最後の時間を一緒に・・・過ごすのっ!」

「だったら、私の前に現れることなく帰ればよかったじゃないですか。わざわざ壊されに来るような真似をして。それだと本当にお馬鹿になっちゃいますよ」

「ケジメよ♪ 未来に――お家へ帰る前に、散々迷惑を掛けたことへの。そして、あなたを、我が儘で駄々っ子な迷子ちゃんを、保護者のところへ連れていってあげないとね!」

「本当にいい迷惑です」

左の魄翼も腕となって、キリエを横から殴りつけようとする。

「風牙真空刃!」「空牙!」

ここでわたしの真空刃がキリエの“ザッパー”と拮抗してる右の魄翼を潰し、シグナムの斬撃で左の魄翼を迎撃。すかさず「クリムゾンスラッシュ!」トーマがヤミちゃん本体に赤い斬撃を放って直撃させる。パキン、と何かがひび割れた音が聞こえた。

「ようやく1枚目にダメージを与えられたか・・・!」

クロノが言う。わたし達の攻撃は塞がれてはいるけど、でも確かに多層防壁やヤミちゃんの魔力を削り取ってる。このまま削って、第二チームのなのは達が好条件で戦えるようにしないと。

「先ほどから私の魔力を分断する君も・・・いや君たちは、ギアーズと同じ異世界出身者か・・・?」

ヤミちゃんの目がトーマと、彼の内に居るリリィに向いた。トーマは「そう見えるかな、やっぱり? 一応、管理世界出身だよ」って答えて、『わたしも!』リリィも続いた。ヤミちゃんは「そう。それで? 無関係な君たちは、何しにここに来た?」戦闘行動を止めて、真っ直ぐトーマを見詰めた。

『各自、攻撃中止』

クロノからの思念通話の指示に『了解』ってわたし達はそれぞれ応える。トーマとの会話中に下手に攻撃を加えて、トーマに危険が及んじゃ意味がない。

「君の帰りを待ってくれている人が居る」

『ヤミちゃんも知ってるでしょ? ちょっとおっかないけど、でもなんだか可愛い王様のこと』

「王が、ディアーチェが、私を・・・待ってる? あり得ない、そんなこと、もうあり得ない。私は、壊してしまった。ディアーチェの大切なシュテルも、レヴィも、フラムも、アイルも。ディアーチェがそれを許すわけがない・・・!」

――ヘカトンケイルフィスト――

「U-D!」『ヤミちゃん!』

魄翼2つから怪物の腕の前腕部がトーマに向かって射出された。右を“ディバイダー”っていう大剣で弾き逸らして、左を“銀十字の書”のページで防御したけど、その魔力の強大さと衝撃にはトーマの魔力結合分断(ルシルとクロノ談)効果は通り難かったようで、「うわぁぁぁ!」トーマを大きく弾き飛ばした。

「ディアーチェが待っているのは、私じゃなくてエグザミア。砕け得ぬ闇の力を求めているだけ・・・!」

――ジャベリンバッシュ――

巨大な槍を飛ばして追撃に入ろうとしたヤミちゃんに向かってわたしは「外見相応に駄々っ子っていうか、逆にそぐわない諦めの良さというか!」ヤミちゃんへと急降下して、「剣神モード、2セコンド、オン!」わたしの魂に眠ってるっていう、シャルロッテ様の武装・“断刀キルシュブリューテ”の能力、絶対切断、を2秒限定で発動する。

「せいっ!」

トーマに当たる寸前の槍を真っ二つに寸断して、「話を聴きなさい!」ヤミちゃんを怒鳴る。ヤミちゃんは「何をです? ディアーチェからの恨み言でも聞けばいいんですか?」なんて後ろ暗い思考しちゃうし。

「違う! U-D。君とあの子たちは、元は一緒だったんだって聞いた」

『同じように生み出されて、ずっと永い間一緒だった同朋なんだって』

わたしの背後からヤミちゃんに話しかけるトーマとリリィ。わたしだって「ディアーチェは、エグザミアじゃなくてあなたを待ってるんだってば、U-D!」そう言って続く。

「たとえそうであったとしても、全ては遅い。私は壊れてしまっていて、その壊れたままの状態で完成しようとしている。待っているのは、破壊する力に呑み込まれた私の姿をした闇のみ。だから・・・」

――アルゴス・ハンドレッドレイ――

また砲撃弾幕を発射して来たヤミちゃん。トーマがわたしを庇うように前に躍り出て、「ディバイド!!」魔力結合分断効果を前面に集中させたみたいで、ヤミちゃんの砲撃数発を掻き消すことに成功。

「俺もね、U-D。昔・・・と言ってもそんな昔じゃないか。ほんの少し前、俺にもあったんだよ。詳しいことは言えないけどいろいろあって、それで近付くものを何でも攻撃する殺戮マシーンみたいになってしまった事が」

トーマの独白にわたしはちょっと驚きと、怖さを感じた。トーマのような力を持った子がヤミちゃんみたく暴走なんてしたら、魔法を使う魔導師や騎士はどうすればいんだろうって。でもこうして元に戻っているんだから、未来の誰かがトーマを救ってくれたに違いない。

「どうしようもなかった。近付くだけで俺はその人たちを害する。そんなの耐えられなかった。だから、独りで死のうとした。誰にも迷惑を掛けたくなかったから。だけど、助けてもらったんだ俺。たくさんの人たちに」

『うん。私もトーマも、私たちを助けてくれた人たちと一緒に居て、ちゃんとお仕事も出来てるの』

リリィの話に、やっぱりか、って思いが生まれた。トーマとリリィ、私たちのことを親しそうに知っているくらいだもん。トーマ達を助けてあげられたんだな、未来の私たち、って。

『だからね、ヤミちゃんも諦めないで! 諦めなかったその先できっと待ってる! ラッキー・ハッピーな明日が!』

「ああ! もうダメだって思っても、それでも結構なんとかなるもんだって思う! 実際におれ経験してるから、かなりの説得力だろ!?」

「同じに見えても全然違いますよ。だってあなたは後からそうなった。でも私は始めからそうなんです。始めから壊すための機能しかない私に、救いがあるなんて思えません」

――エターナルセイバー――

トーマとリリィの説得も僅かに効いたようだけど、それでもヤミちゃんが留まるまでには至らなかった。それでも「君自身の力で止まれないなら、俺とリリィ、いいやみんなで止めるから!」トーマも、『うんっ。みんなで助けるから!』リリィも説得を続ける。そして左右から迫る炎の剣を、“銀十字の書”の切り離されたページを円形に組んで盾としたソレで防御。

「光牙・・・!」

わたしは背に展開してる魔力翼――ルビーン・フリューゲルをバサッと羽ばたかせて上昇。そして斜め上から「烈閃刃!」“キルシュブリューテ”を振るって、刀身に付加していた魔力を剣状砲撃として発射。魄翼は今、炎の剣として使用中。あとはヤミちゃん自身の多層防壁と防御魔法による妨害。

(防げばいいよ。それはそれで魔力も防壁も削がれるんだから)

回避されなければそれでいい。その思いで放った烈閃刃はヤミちゃんの多層防壁に着弾。魔力爆発を起こす寸前にわたしとトーマは離脱。その直後、熱量を伴って烈閃刃が炸裂して、ヤミちゃんが魔力爆発に呑み込まれた。

「デュランダル! アイシクルブレイド・エクスキューションシフト!」

魔力爆発から無傷で飛び出して来たヤミちゃんに、クロノが発動した氷の剣の雨が降り注いでく。防御じゃなくて回避行動に移るヤミちゃんに「せめて待つんだ! 本当に救われないのか、それを見届けるという選択肢もあるはずだ!」クロノが語りかける。

「どちらにしても救われないのが判っているから、待つだけ無駄です」

――バレットダムネーション――

魄翼から魔力弾幕が張られる。回避にそれぞれ動いていると、「君個人の意思の自由を束縛すべきではないのは解るが、それでも何度でも言おう。信じろ。君を大切に思う王や他のマテリアル達のことを!」今度はクロノが説得に入る。でもやっぱり「いい加減にしてください。私はもう、言葉だけでは止まれません」ヤミちゃんは言うことを聞いてくれない。

『こちらルシル。準備は整った。あとは誘導するだけだ』

ルシルからわたし達みんなに思念通話が入った。ここに来るまでに立てた作戦っていうほどのモノじゃないけど、それの準備が整ったことを報せる思念通話が。あとはヤミちゃんをルシルとクロノが用意してくれていたポイントに誘導するだけ。

「ヤミちゃん! ちょーっと痛いかもしれないけど、それはあなたの為でもあるから我慢してね♪」

――ラピッドトリガー――

「なに悪いようにはしねぇから!」

――シュワルベフリーゲン――

キリエとヴィータの弾幕がヤミちゃんを襲う。わたし達の放つ空気から、「一体何を企んでいるのか知りませんが無駄なあがきです」わたし達が勝算を企んでいることを察したよう。だからか防御に回らず、「エターナルセイバー!」炎の剣で薙ぎ払って迎撃。

「無駄なことかどうか、そのうち判る!」

――紫電一閃――

「ホントはここで止まってくれたら嬉しいんだけどね!」

――光牙月閃刃――

ヤミちゃんに急速接近したシグナムが、炎を噴き上げる“レヴァンティン”を横薙ぎに振るう。警戒して後退することで躱したヤミちゃんへと今度はわたしが接近して、攻撃魔力を刀身に付加した“キルシュブリューテ”を勢いよく振り下ろす。
すると2つの魄翼が怪物の腕に変化して、あろうことか右腕がわたしの“キルシュブリューテ”を白刃取りしようとしてきた。ていうかされた。人差し指と中指がガッチリと“キルシュブリューテ”を白刃取りで止めた。すかさず左腕による拳打が繰り出された。

「銀十字!」

わたしと怪物の腕の間に展開される10数枚のページが、魄翼による拳打を防御してくれた。さらにはページ表面からページ分のエネルギー弾が発射されて「うぐっ・・・!」ヤミちゃんを離脱行動へと至らせた。

「ごめんね!」

――光牙烈閃刃――

そのまま“キルシュブリューテ”を横薙ぎに振るって、後退途中でありトーマのエネルギー弾の防御をし終えてたヤミちゃんへと剣状砲撃を発射。わたしの砲撃がヤミちゃんを捉えて、しっかりと着弾。するとついにガシャァン!と多層防壁が砕ける音がした。煙幕の中からヤミちゃんが飛び出して来た。

――殲滅せよ(コード)汝の軍勢(カマエル)――

とここでルシルが展開した色んな変換資質を持った魔力槍が、「ジャッジメント!」パチンと指を鳴らすっていう号令の下、何十本とヤミちゃんへと殺到してく。魔力槍は良く考えて撃ち放たれていて、ヤミちゃんの回避先を誘導して行ってるのが判る。

――アロンダイト――

――雷刃爆光破――

――ブラストファイアー――

――アゲマント――

――シュルシャガナ――

「っ!!??」

さらにルシルは、マテリアル達が使ってた砲撃魔法を発射。ヤミちゃんの目が驚愕に開かれる。すると「オーディンは相手から複製した魔法を使える。知っていただろ? 俺も使えるぞ」ルシルはそう言って、ヤミちゃんから余裕をなくさせた。自分が討ったマテリアル達の魔法が、自分に向かって発射される。それがヤミちゃんの精神を揺れさせた。そしてついに・・・

――ストラグルバインド――

――レストリクトロック・シーリングフォース――

――チェーンバインド・シーリングフォース――

――フープバインド・シーリングフォース――

――リングバインド・シーリングフォース――

「えっ・・・!?」

ルシルとクロノによる多重捕縛結界がヤミちゃんを捉えると、「魔力が・・・!」ヤミちゃんから焦りの含まれた声が発せられた。ルシルのバインド全てには魔力生成阻害効果があるって話。
クロノのストラグルバインドも、相手も拘束しつつ、相手が自分に掛けてる強化魔法を強制解除できたりするし、それに魔力で体を構成した魔力生命にとっては武器にもなる優れもの。

「っく・・・! こんなものが切り札だっていうんですか・・・? この程度、私のエグザミアにとってはなんら障害にはなりません・・・!」

減衰してた魔力がまた上がってく。悪いけどこれが終わりじゃない。始まりなんだよ、ヤミちゃん。捕縛結界の効果――魔力生成阻害と、ヤミちゃんの命とも言うべきらしいエグザミアの生み出し続ける魔力のせめぎ合い。
そんな中、わたし達はヤミちゃんと真正面から相対するように集合して、円形になるように6方向へと分かれる。一番上がルシル、右から順にヴィータ、シグナム、一番下がクロノ、そしてわたし、キリエって順。トーマだけが真ん中で待機。

「・・・??」

「俺たちの役目は、出来るだけ君の力を殺ぐこと。説得できれば一番良いんだが、それは叶わないようだから。・・・すまないな。少々手荒いぞ」

ルシルの前面に、ルシル独自の魔法陣が展開される。十字架の四方から剣が4本伸びて、その周囲を3つの円環が繋いでるって風なやつ。それと同時、わたし達はそれぞれ射砲撃の準備に入る。

女神の(コード)・・・!」

ルシルが“エヴェストルム”を連結させた形態に戻して、片穂に強大な魔力を集束させてく。

「ブレイズ・・・!」

クロノが“デュランダル”を前方に向けて砲撃の発射体勢入る。

「ファイネスト・・・!」

キリエが“ザッパー”2挺を横並びに重ねるようにして前方に向けた。

「アイゼン。ギガントフォルム。コメート・・・!」

“グラーフアイゼン”を巨大化させるギガントフォルムにしたヴィータの前方に、ボーリング玉大の物質弾が1基創り出された。

「紫電・・・!」

シグナムが“レヴァンティン”の刀身に強大な炎を噴き上げさせる。

「ディバイド・・・!」

トーマが前方に大剣――“ディバイダー”を向けた。

「光牙・・・!」

そして最後にわたしが、“キルシュブリューテ”の刀身に魔力を噴き上がらせる。ヤミちゃんを拘束してたクロノのストラグルバインドが砕け散る。それを合図としたように・・・

宝閃(ゲルセミ)!!」

ルシルは前面にある魔法陣へと突き出した“エヴェストルム”から蒼光の砲撃を発射。するとその砲撃が魔法陣を通過すると同時、さらに強大な砲撃と化してヤミちゃんを襲撃。魔法陣は次にヴィータの前面へ移動。

「フリーゲン!」

ギガントフォルムの“グラーフアイゼン”によって打ち出された物質弾コメートフリーゲンが魔法陣を通ると、砲撃を纏うようにしてフリーゲンは発射されて、ヤミちゃんへと着弾。次に魔法陣が向かうのはヴィータの次順のシグナムの前。

「一閃!」

魔法陣を切り裂くように“レヴァンティン”を振るったシグナム。刀身に噴き上がっていた炎が魔法陣を通ると、その炎は火炎砲撃となってヤミちゃんへと発射されて・・・着弾。次はクロノの前へ移動する魔法陣。

「キャノン!」

“デュランダル”から放たれた砲撃が魔法陣を通過。するとさっきのルシルの時みたく砲撃はさらに強大になって発射されて、ヤミちゃんに着弾。魔法陣がわたしの前に移動して来た。

「烈閃刃!」

外見がホントに幼い女の子だからちょっと気が引けるけど、キリエに、見た目から油断しちゃうんと墜とされちゃうわよ、って厳重注意を受けたこともあって、わたしは容赦なく“キルシュブリューテ”を降り下ろして刀身から剣状砲撃を放つ。わたしの烈閃刃が魔法陣を通過、するとやっぱりわたしが全力でも放てないような馬鹿みたいな威力になった砲撃が発射されて・・・ヤミちゃんに着弾。

「カノン!」

キリエの真ん前に移動した魔法陣。キリエもちょっと撃ち辛そうにしてたけど、それでもエネルギー砲弾を発射した。砲弾は魔法陣を通過することで特大の砲撃となって発射されて、着弾。そして魔法陣はトーマを中心に直径4mほどにまで大きく広がった。

「ゼロッッ!」

トーマが放つ砲撃が巨大魔法陣を通過すると、砲撃は魔法陣と同じほどの太さとなって発射されて・・・

――アーティラリーズリボルバー――

「ぅ、うう、うぅぅ・・うぁ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

恐れからか判んないけど悲鳴を上げたヤミちゃんへと着弾した。わたし達が濛々と立ち込める煙幕を見詰めてる中、「やったのか・・・?」クロノの誰とも言わずに発した言葉に、「弱体化させたうえでの対U-Dプログラム搭載のSSランク並の砲撃6連発に、トーマのディバイド効果砲撃だ。少しは堪えていてもらわないと困る」ルシルがそう返した。

「・・・ねえ、ルシリオン君? やっぱりダメだったみたいよ」

キリエがそう言って苦笑する。晴れ始めた煙幕の中からいまだ健在なヤミちゃんが姿を現した。だけど「動作困難・・・、身体機能の回復不良・・・!?」やっぱりちゃんとダメージは通っていたみたい。ここでわたし達の対U-Dプログラムの効果が途切れた。それはつまり第二チームと交代ってことで。

「今ので物理防壁は何枚か貫いた・・・!」

「ああ、それに魔力防壁も確実に貫いた」

「うん。KKG――気合いと、根性で、頑張った甲斐があったわね・・。なし。今のなし。やっぱ恥ずかしい・・・」

照れて耳を少し赤くしたキリエの様子にわたし達が小さく笑い合ってると、「戦線・・・離脱・・・!」回復を図ろうとヤミちゃんがどこかへ飛び去って行こうとした。だけど「それも想定済みだ」ルシルが指を鳴らす。

――聖剣集う絢爛の城(ソード・キャメロット)――

ヤミちゃんの行く手を遮るように発生するのは炎の壁。ヤミちゃんが逃げに転じた場合の足止めとして、戦闘中にルシルが用意したものだ。さぁ、ヤミちゃん。ディアーチェ達が来るまで待っていてもらおうか。

 
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