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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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全ての終わり

俺達はALOからログアウトし、現実世界に戻ってきた。
「……さて、これでALO事件も終わりか」
『いや、終わってねぇと思うぞ』
俺はライトに言う。
『あの妖精王は多分、リアルでキリトを殺そうとするはずだ』
「何でそんなことが解る?」
『俺の勘だ。良いから体貸せ!!』
俺は強引にライトから体を奪うと、コートを着て、外に出る。
そして、ライトの雷狼号に乗り込むと、ヘルメットを被る時間は勿体無いと思い、そのままバイクを走らせる。
目的地はーーーーーーアスナの居る病院だ。




































アスナの居る病院に着くと、俺はパーキングエリアの隠れられる場所に雷狼号を止め、身を隠す。
暫くすると、白いバンがパーキングエリアに入ってくる。そこから一人の男が出てくる。須郷だ。
それを見た俺は、すぐに身を隠していた所から出る。
「よう、盗人さんよ。調子はどうかな?」
すると、須郷がこちらを見る。
「ああ……天城君か……君、本当に酷いことをしてくれたよねぇ………」
須郷の目は限界まで見開かれ、夜闇の中で散大した左の瞳孔が細かく震えているが、何故か右側のそれは小さく収縮したままだ。
「まだ痛覚が消えないよ。まぁ、いい薬があるから、構わないけどさ」
右手をスーツのポケットに突っ込み、カプセルを幾つか掴み出して口に放り込む。コリコリと音をさせてそれを咀嚼しながら、須郷は更に一歩踏み出してくる。
「どちらにしろ、あんたは終わりだ。ハッキングして得たデータは既に知り合いに転送した。そうだな……あんたに課せられる罪状は略奪監禁って所か?」
「ふん。まだ終わった訳じゃない。アメリカにいけば僕は逃げ切れるしね。それに僕の実験データだってある。あれを使って研究を完成させれば、僕は本物の王にーーーーーー神にーーーーーーこの現実世界の神になれる」
「残念だが、そいつは不可能だ」
俺は実験データを見せると、言う。
「あんたの実験、ありゃナーヴギアを想定とした物だろ?今世界で使われているのはアミュスフィア。ナーヴギアの下位版だ。到底不可能な物だろうな。つまり、研究はご破算って訳だ」
俺はそう言うと、背にある竹刀を取る。
「つまりお前は色んな意味で終わりなんだよ、須郷伸之!!」
『と言うかいつ調べた!?』
ライトが叫ぶが、然程気にしない。
「………なら、責めて君だけでも殺すよ、天城君」
右手にナイフを持ち、須郷が襲ってくる。
「借りるぞ。天城流・三ノ太刀………」
「死ねぇえええええっ!!」
須郷がナイフを振り下ろす………直前で俺が動く。
「<砕破(さいは)焔火(ほむらび)>!!」
竹刀でナイフを弾き飛ばすと、喉に突きを放つ。そして、そこに胴を放つ。
「ガッ………!?」
須郷は反応しきれずそれをくらい、地面に倒れる。
「殺すってのはな………」
そして、俺の足元に落ちてきたナイフを足で掬い上げると、右手に持ち、首元に当てる。
「本気で相手を殺す気で掛からねぇと出来ねぇ物なんだよ」
そして、俺は首元に当てたナイフで須郷を刺そうとしーーーーーー
「……」
ナイフを捨てた。
「ィィィ!ヒィィィィッ!ィィィ!!」
須郷は甲高い悲鳴をあげた。
確かに、この男は死んで当然だ。裁かれて当然だ。今、またナイフを持ち、奴の心臓を一突きすれば、奴は絶命するだろう。しかし、俺はもう<滅殺者>ではなく、現実に居るライトに取り憑くただの幽霊でしかない。
「ヒィィィィ…………」
不意に、須郷の眼球がぐるんと裏返った。悲鳴は途切れ、その全身が、電力の切れた機械の様に脱力した。俺はナイフを拾い上げ、刃を仕舞い、須郷の上に置く。
そして、ネクタイを引き抜き、両手を後ろに回して縛り上げる。
その時、丁度キリトが駆けてくる。アスナに会いに来たのだろう。
「やれやれ………死ぬ人間に労働させんなよ……」
俺はライトに聞こえないように呟き、キリトの後を追う。既にキリトはナースステーションに居た。どうやら看護師に捕まっているようだ。
俺はスイングドアを開け、ナースステーションに行く。
「済みません。そこでナイフを持った男に襲われました。白いバンの向こうで気絶してます」
すると、二人の看護師に緊張が走る。年配の看護師は細いマイクで警備員を呼ぶ。幸い、巡回中の警備員が小走りで現れる。看護師の説明を聞くと警備員の顔が厳しくなる。小さな通信機で何事か呼び掛け、警備員はエントランスへ向かった。若い看護師も後を追う。
残った看護師は「ドクターを呼んでくる」と言ってその場を離れる。俺はゲスト用のパスカードを掴みとると、キリトに渡す。
「ほれ、行ってこいよ。……アスナが待ってる」
「……ああ」
キリトはそう言うと、入院棟への通路を走り出す。
それを見た俺はスイングドアを押し開け、バレないように雷狼号の所へ向かった。
























『これでようやく終わりだな、ダーク』
「ああ」
雷狼号で近くの公園に来たあと、俺はライトと話していた。
「全て終わりだな、何もかも……」
『ダーク………?』
俺は笑うと、ライトに体を返し、外に出る。
「……ダーク、お前その姿……」
ライトは俺の体を見る。
俺の体は小学五、六年の時の体で止まっていた。死んだときがその時だったからだ。
「ライト、俺はお前の人格の一人じゃない。幽霊なんだ」
そして、俺はライトの手を掴もうとするが、すり抜ける。
ライトは有り得ないとでも言うような顔をしていた。
「おいおい……そんな顔すんなみっともねぇ。仮にも俺と融合したんだ。胸を張れ胸を」
「……本当に、幽霊なのか?」
ライトは真剣な顔で言う。
「ああ………数年前に死んだ。俺がこうしているのも、俺が願い事をしたからに過ぎない。だが、それももう終わる………」
すると、俺の体は足の方から光始め、粒子となる。
「ダーク!!」
「おっと、もう時間か……ったく、別れの挨拶くらいさせろっての神様よぉ……」
俺は悲しい顔をして、ライトを見る。
「ライト、お前との冒険、すっげぇ楽しかった。決して、お前との冒険は転生しても忘れねぇ」
「何………いってんだよ!!これからだろ!?キリトやアスナ、ストレアに俺、それに他の皆との冒険だってまだ……!!」
「そいつが出来ねぇのが残念だな……まぁ、お前は俺と同じくらい強くなった。滅殺者の称号と、滅殺剣スキルはお前にやる。責めてもの餞別って奴か……」
俺の体は既に上半身まで粒子化が進み、いよいよ両手までが粒子となる。
「ダーク!!」
「………翔夜だ」
「………え?」
「……黒鉄翔夜。それが俺の現実での名前だ。天城来人、時の止まった俺に、色々とくれてありがとうな」
「ダーク………いや、翔夜……」
来人は俺の方を見て、涙を流しながら言う。
「俺の方こそ………ありがとう………俺を助けてくれて………俺に、仲間をくれて」
「……それはお前自身の力さ。お前の心が、皆との絆に変わった。ただそれだけの事さ」
そして遂に、俺の体が消えそうになる。
「翔夜!!」
「………これで本当にサヨナラだ、来人。またいつか、何処かで会おう」
そして、俺の体が粒子となり、消えた。だが、最後の言葉だけは、聞こえた。

「いつかじゃない。また何処かでもない。必ず会おう」、と。












































気が付くと、俺は白い部屋に居た。
『またここか……一度死んでるし、そう何回も見たくはないがな』
「そう言うな、黒鉄翔夜」
すると、俺の前に神様が現れる。
「お前の願い、聞いただけでも有難いと思え。本来なら、もとの世界には干渉させないが暗黙の了解になっているのだからな」
『でも、あんたはそれを破った。だろ?』
「それは仕方無く………だが、それがお前を変えたようだな」
『まぁな』
俺は頷き、言う。
『さぁ、何処へとなり送ればいい。俺はそこに生きる』
「あー……その事だが……重大な事が起きてな……」
『は?』
それが、俺にとってのそこでも記憶だった。 
 

 
後書き
ダーク君フラグ撤去完了!!
ライト「翔夜………」
さぁて、次回がALO編ラストとなるのかな?次回、その後。お楽しみに!! 
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