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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos40理のマテリアルS/星光の殲滅者~Stern The Destructor~

 
前書き
シュテル・ザ・デストラクター戦BGM
魔法少女リリカルなのはA's-GOD-「シュテル・ザ・デストラクター」
http://youtu.be/z1xxMzBw-N4 

 
†††Sideイリス†††

未知の魔力運用技術を扱う異世界からの渡航者の片割れ、アミティエ・フローリアンの捜索を担当することになったわたしとなのはとすずか。そんなわたし達は、わたしが居候してるハラオウン家はエイミィの部屋でひとり頑張ってくれるアリシアの指示の元、海鳴市の上空を飛んでいた。
とここで、管理世界で扱うような転移反応とは別の反応が発生。それこそアミティエの反応かも、ってことで発生現場へ進路変更。さらに、全く別の方角にも転移反応。さぁ、どうしようかって考えた時、飛行速度が遅いわたしが、一番近い第三反応点へ向かうことに。

(これ以上、なのはとすずかの足枷にはなりたくないしね)

わたしの背より展開されている魔力翼、術式名を真紅の両翼ルビーン・フリューゲル。元はシャルロッテ様の魔術の1つ。この1ヵ月、わたしの前世でいらっしゃったシャルロッテ様に言われた通り練習した魔法だ。

――あのさぁ、イリス。空戦をしろ、って言わないけど、空くらいは飛べた方が良いよ。なのは達とこれからも付き合うとなると、どうしても必須だよ――

――でもわたし、どうも空が苦手で。ご先祖の騎士リサも、魔神オーディンとシャマル先生と空を飛んで気絶した、って手記に書いてあったし――

イリュリア戦争勃発直前、シュトゥラとイリュリアの小競り合いのことが記されていた手記で、魔神オーディンに抱えられて状態で高速で空を飛んだ、すごく恐かった、って一文が。それから先祖代々、空を飛ぶのはやめようね、っていう風潮がね。でもシャルロッテ様の言う通り、なのは達は揃って空を飛べる。
それにアリサもそんなに上手くは飛べないけど、それでもフラフラながらも空を飛ぶことは出来ているから、練習次第でいつか空戦も出来そう。そうなったらわたし1人だけ取り残されるから、必死に練習中なのだ。

「だから死にもの狂いで修得したこのルビーン・フリューゲルで、なのは達と一緒に空を飛んで、一緒に戦って・・・みたい!」

けど今はまだ慣れない所為で雛鳥。でもいつかきっと。そう決意を新たにして、第三発生点に到着、っと。そして「見つけた!」モニターで見た、深桃色のおさげ髪に青いジャケット。間違いなく「アミティエ・フリーリアン、さん!」だ。

「うわ、すごい、綺麗な羽、キラキラ光り輝いてる・・・」

ルビーン・フリューゲルを見てウットリ見惚れているアミティエ。褒めてくれたのが嬉しくて「どうもぉ・・・」照れ笑いを浮かべてしまう。でもすぐにハッとして「コホン」と咳払いを1回。

「えー、エルトリアという世界出身の、アミティエ・フローリアンさんですよね。わたしは時空管理局所属の騎士、イリス・ド・シャルロッテ・フライハイト・・・」

そこまで言ったところで口を少し噤む。役職の執務官補佐と続けるか、それとも階級である三等陸士と続けるかで一瞬だけ迷った。けど今は「――三等陸士です」って続けた。すると「管理局? 名前からして司法機関? こんな小さな子でもお仕事を?」とアミティエが本当に小さな声で呟いたのがギリギリ聞こえた。

(管理局を知らない、か。フローリアン姉妹の出身世界エルトリア。次元渡航が出来るにも関わらず、管理局に認知されてないっていうのも変な話だけど・・・)

管理・管理外問わずに世界の発見から調査って結構な費用が掛かるから、エルトリアがどこにあるのかも調べがつくまで結構かかる。一応、こっちに来る前に無限書庫司書のユーノや観測部の知り合いにエルトリアの調査を頼んできたけど、今回の一件が終わるまでには難しそうっていうのがわたしや知り合いの意見。

「月村すずか、それと黒羽のお嬢さんこと八神はやてと、銀髪の方ことリインフォース。その友達であり同僚です」

「あっ! そう、ですか。あの、はやてさんとリインフォースさんは無事でしたでしょうか・・・?」

「ええ。キリエさんから受けた傷も、すずかの治癒術で完治しましたし、元より軽傷だったようで。あ、すずかから伝言。未だにウィルスに冒されているのであれば、すぐに治すのでお越しください。だそうです。ちなみに近くに居ますから案内しますよ?」

はやて達とのやり取りの映像を観た限り体の不調は確かなものだったけど、今のアミティエはそれなりに元気そう。まぁ、外からじゃ判らないようなやせ我慢って可能性もあるけど。アミティエは「何から何までご迷惑をおかけします」って深々と頭を下げた。

「では、一緒に来てくれますね? 正規の異世界渡航の方には、こちらで案内することになっております。あと安全のため、渡航した経緯と方法をお伺いしたいのですが・・・」

これまでのアミティエの行動から見て、「申し訳ありません! いま立て込んでいまして、お役所仕事にお付き合いするわけには! 全て済ませたら出頭しますから!」って言うことを聞いてはくれなかった。左手に握る“キルシュブリューテ”が納められた鞘を僅かに揺らす。

「あぅ。あの、本当に出頭しますから! 妹も連れて必ず!」

「そういうわけにはいきません。事情をお伺いしたいですし、内容によっては管理局も協力します。というより、闇の書のマテリアルが関わっている以上、協力をお願いします。アミティエさん、あなたの妹のキリエさんは、一体何を企んでいるんですか?」

夜天の主であるはやてや管制融合騎のリインフォースすら知らない、“システムU-D”とやらを狙っているキリエ。その姉であるアミティエなら、何かしらの情報を持っているはず。だから協力を申し出た。これなら話を聞いてくれると思ったから。な、の、に!

「申し訳ありません! こちらにも退っ引きならない事情がありまして、お話しすることは出来ないのです! ですから、ここは見逃してくださぁーーーいっ!!」

「(やっぱダメかぁ。仕方ない)キルシュブリューテ。風牙・・・!」

≪烈風刃!≫

反転して離脱を図ったアミティエの行く手を遮るために急上昇。そして“キルシュブリューテ”を振るって、風圧の壁――風牙烈風刃を彼女の目の前に放つ。と、「あわわ!?」アミティエは急停止。危なかったぁ、逃げられるところだった。

「違法渡航者としてあなたを抑え込むことも出来ます。が、出来ればそうしたくありません。ですから逃げないでください」

「・・・・現地の方やお役所の方々にも、なるべくご迷惑をおかけしないよう立ち回りますので、どうか!」

「そう言うわけにもいきません。こちらも世界の安寧・秩序の為ですから」

≪カートリッジロード!≫

“キルシュブリューテ”の刀身の付け根、その峰側にあるコッキングカバーが刀身に沿って上にスライド。装弾数5発の回転式シリンダーが回転してカバーが元に位置に戻る。これでカートリッジに充填されている魔力が使用できる。

「お役所仕事なのは重々承知しております。イリスさんに迷惑を掛けることもいくら頭を下げても足りないです。が、それでも私は・・・!」

「では力づくで、押さえさせていただきます!」

――雷牙翔裂刃――

“キルシュブリューテ”を振るって、熊手のような形の真紅の魔力雷の斬撃を放つ。アミティエは「仕方ありません。抵抗させていただきます!」そう言って躱してすぐ、「バルカンレイド!」2挺の銃から光弾を連射してきた。
こちらが不利な状況、それが相手に気付いてほしくない場合、圧倒的な力でこちらが有利だと錯覚させる必要がある。そう、わたしの方が強いんだって思わせるために、ほぼ全力の牽制攻撃を行う。これで降伏を促す。けど、アミティエはそれでも抵抗してきた。

「(あーもう!)だったらこれでどう!?」

放たれてきた光弾をルビーン・フリューゲルの片方でペシッと弾き返すと、「うっそーーっ!?」アミティエは驚きの声を上げて、跳ね返って来た光弾を回避。そして「だったら! ファイネストカノン!」2挺の銃口から放たれる光弾が1つになったことで砲弾と化した。あれはフリューゲルじゃ防ぎきれないかな。

≪光牙烈閃刃!≫

真っ向から剣状砲撃をぶつけて相殺。首筋にチリッとした痛みが奔って、わたしはすかさず振り向きざまに“キルシュブリューテ”を振るうと、ガキィンと金属音が耳に届く。やっぱり背後に回り込まれてた。高速移動系の技術を持つ子はほぼ同じ。でもこっちは騎士なんだよ。

「せぇぇぇいッ!」

力任せに“キルシュブリューテ”を払ってアミティエを弾き飛ばし、即座に「光牙閃衝刃!」最速の魔力槍を発射。体勢が未だに整えられなかったアミティエは「うっく!」上半身を大きく反り返すことで紙一重で回避。チャンスだ。フリューゲルを羽ばたかせてアミティエに接近。

「雷牙・・・!」

≪月閃刃!≫

「わわっ!」

刀身にスタン効果を付与した“キルシュブリューテ”の一閃を、2挺の銃から2本の片刃剣に変えて防いだ。バチバチとわたし達の間で飛び散る火花。押し切ろうとしたところで、アミティエは片方だけ銃に戻して銃口を“キルシュブリューテ”に向けて、「ファイア!」光弾を発射。

「きゃん!?」

“キルシュブリューテ”を弾かれた事で強制後退。自分の意思じゃないから僅かに体勢を崩しちゃった。それが最大の隙。アミティエは「ごめんなさい!」光弾を容赦なく撃ち込んできた。急いでフリューゲルで体を包んで防御態勢に入る。

「うわっ、ちょっ、アミティエさん! 公務執行妨害だけじゃ済まされないよ、コレ!!」

「あぅぅ、すみませーーん! とっても心苦しいんですが、私たちには、時間がないんです!」

「いやだから! それも含めて話を聞かせて下さ――ああもう、アミティエぇぇーーっ! 聞かせろっつってんの! 本気で怒るよ!?」

「うええ!?」

防御を右翼に任せて、左翼を大きく羽ばたかせる。攻防一体の突進技でアミティエに突っ込む。その間にガンガンと右翼が光弾で削れていく音が響いて来て恐い。ここで強制解除されたら市街地へ真っ逆さまだ。
ある程度近付けたら右翼をバサッと勢いよく開く。そして聞こえる「ひゃあ!?」アミティエの悲鳴。フリューゲルで叩き払ってやった。間髪入れずに「光牙十紋刃!」十字斬撃を放って・・・「きゃああああ!」直撃させた。

「いい加減にしてください、アミティエさん!」

――拘束の連鎖――

逃亡できないようにバインドで拘束して、薄くなった右翼に魔力を流し込んで元の厚さに戻しながら怒鳴る。直撃させたにも拘らず堪えていないように見えるアミティエにちょっとショックを受ける。とここで、『シャルちゃん、そっちはどう?』なのはから通信。遅れて『シャルちゃん、こっちはアミティエさんじゃなかった』すずかからも入った。

「こっちは当たり。そっちは?」

『ベルカ式の女の子だった』

『あ、私の方も。なんだかおかしかった。なのはちゃんを、なのはママ、って呼んだり、ディバインバスターを使ったり』

『驚いたよね。私が相手した人も、ヴィヴィオさんのお母様、なんて言ってたし。たぶん人違いだと思うんだけど』

「へぇ、どんな子だったの?」

なのはママて。それはまたとんでもない人違いじゃん。一体どんな子がそんな馬鹿げたことを言ったのか見てみたい。って思ったのが失態。なのはとすずかが気を利かせて見せてくれた。

「っ!!!???」

黄金の髪に紅と翠の虹彩異色、魔力光が虹色。碧銀の髪に紺と蒼の虹彩異色。信じられなかった。そのどちらもわたしの知ってるある人物の特徴だったから。その衝撃が計り知れず、ついアミティエさんから完全に意識が逸れた。

「ごめんなさい、イリスさん!」

「え?・・・え、あ、ま、ちょっ、ちょーーーー!!?」

アミティエがいつの間にかバインドブレイクを果たして、一瞬のうちに逃亡してしまっていた。

†††Sideイリス⇒なのは†††

アミティエさんも逃亡しちゃったことでふりだしに戻った私たちは、すずかちゃんが相手にした人――たぶんヴィヴィオさんと、私が相手にしたハイディさん、シャルちゃんが相手にしたアミティエさんの捜索を続行。合流時間は午後11時。それまでは分散して捜索だ。

「ベルカ時代の王様かぁ・・・」

シャルちゃんから聴いた、ハイディさんの名前やヴィヴィオさん?の身体的特徴が、古代ベルカの王様と一致してるって話。ハイディさんは“覇王イングヴァルト”さんと一致、ヴィヴィオさんは、シャルちゃんたち聖王教会が崇め奉る“聖王”の特徴と一致してるって、本当に驚いてた。

≪Master !≫

「え、なに? レイジングハート」

空を翔けていると、“レイジングハート”から知った魔力反応を捉えたって報せを受けた。その魔力反応っていうのが「理のマテリアル・・・!」のことだった。アミティエさん達の捜索も大事だけど、マテリアルの捜索も大事だ。一応はやてちゃん達の担当だけど、近くに居るんだから仕方ないよね。

「いくよ、レイジングハート!」

≪Yes, my master !≫

“レイジングハート”が報せてくれた地点へと向かって、そして「居た・・・!」見覚えのある姿を視界に収める事が出来た。向こうも私に気付いて「ご無沙汰しています、高町なのは」って挨拶してくれたから、「うん、久しぶり。元気だった? って聞くのも、変だよね?」って応える。

「おかげさまで、撃破されて以降はぐっすりと休むことが出来、こうして無事に再起動することが出来ました。まぁ、TPOを弁えずに再起動したことでディアーチェには怒られてしまいましたが」

「あ、名前、あったんだね。えっと、シュテル・・・?」

「はい。星光(シュテル)です。シュテル・ザ・デストラクター」

「格好いい名前だね」

「光栄です。名を褒めて頂くと、こうも嬉しいのですね」

なんか以前と違ってシュテルの纏ってる空気が少し緩く感じるから、なんていうか友達とお話をしているみたいでこっちも嬉しくなっちゃう。と、「それではなのは」シュテルが“ルシフェリオン”を構えた。

「憶えていますか? 私が消えゆく際、貴方と再び魔導を交えたいと言ったことを」

「うん、憶えてるよ。やっぱり戦わないとダメ、なのかな・・・?」

「お願いします。新たに手にした魔導と・・・」

“ルシフェリオン”から炎が上がった。炎熱変換。以前は無かったものだ。はやてちゃん達のやり取りで見て知っていたけど、シュテルが新しく手に入れたのは魔法だけじゃなくて炎熱変換もなんだ。

「この炎熱変換で、今度こそ貴方に一矢報いて見せます」

「判った。でも、今度も私が勝つよ。シュテル!」

「いざ、どちらが強いのか競い合いましょう・・・!」

VS◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦
星光の殲滅者シュテル・ザ・デストラクター
◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦―◦VS

「アクセルシューター!」「パイロシューター!」

「シューット!」「ファイアーッ!」

お互いの魔力弾(シュテルのは炎熱変換で火炎弾だけど)計14発が、私たちの間で交差、または衝突し合って相殺してく。そして私はアクセルフィンで一気に後退してシュテルから距離を稼ぐ。そしてシュテルはやっぱり「ラピッドフェザー」距離を詰めてこようとしてきた。

「レイジングハート!」

≪Load cartridge. Exelion Mode≫

カートリッジ1発をロードしてエクセリオンモードへ。この3ヵ月でドクターやシスターズのみんなのおかげで安定した魔力を出せるようになって、フレームもちゃんと強化されたし、体への負担も大きく減った。

「エクセリオン・・・バスタァァァーーーーッ!!」

中距離向けで誘導制御・反応炸裂の効果を持った砲撃を発射。出し惜しみして下手に戦いを長引かせると、シュテルにまた新しい魔法か何かで手痛い反撃をされても困る。シュテルはラピッドフェザーっていう高速移動魔法で躱した後、「ブラスターヘッド」って、“レイジングハート”でいうバスターモードへと“ルシフェリオン”を変形させた。

「ブラストファイアァァーーーッ!」

砲撃にも炎熱が付加されていて、火炎砲撃になってた。私もアクセルフィンの効果で横移動で躱して、「ショートバスター!」高速砲で反撃。絶対に近寄らせちゃダメだ。接近を許しての近距離砲撃を受けるのは危険だし。

「ああ、やはり貴方との戦いは心が躍る・・・!」

「シュテル! マテリアル達は何をしようとしてるの? そっくりさんのよしみで教えてくださぁーい!」

――アクセルシューター――

後退しながらシューター8発を発射して、バレルロールで回避してくシュテルへ「バスターッ!」高速砲の連射を行う。

「砕け得ぬ闇、その入手ですよ。以前と変わらずに。我々マテリアルが存在する最大の要素です」

――ディザスターヒート――

高速砲を躱したシュテルも負けじと火炎砲を発射して来たから、受けに回らず横移動で回避したんだけど・・・「え・・・っ!?」避けた先に間髪入れずに火炎砲が迫って来た。それすらも避けたんだけど、「もう1発!?」が存在してた。

≪Round Shield≫

私の高速砲ショートバスターとは違う、威力を保ったままの砲撃三連射。直撃間近、“レイジングハート”が張ってくれたシールドが私を守ってくれた。そしてすかさずその場から離脱を試みようとした時、「パイロシューター!」その掛け声が聞こえた。

「レイジングハート、オーヴァルプロテクション!」

球体状のプロテクションを発動して、私の周囲に渦巻くように高速回転してた火炎弾、その全弾を防御。着弾時に爆発した火炎弾の黒煙が視界を潰してくる。それでも防ぎきることは出来た。それを確認してすぐに解除、急いで黒煙の中から脱出。

「アサルトマルクス!」

≪Protection Powered≫

頭上から高速落下してきたシュテルの振るう火炎を纏う“ルシフェリオン”の打撃を、バリアで護ってくれた。“レイジングハート”に「ありがとう!」お礼を言いながらバリアバースト――相手の攻撃を受けてる最中にバリアを爆破させてダメージを与えて、なおかつ爆風と衝撃で距離を取る派生魔法を発動。
その爆風に煽られて距離を開けたシュテルに“レイジングハート”を向けて、「エクセリオンバスターッ!」即座に砲撃を発射。シュテルは「今のを防ぎますか。流石です」って満足そうに頷くと同時に「ブラスターヒート!」さっきの三連砲撃で相殺してきた。目の前は爆発によって生まれた煙でいっぱいになる。

(炎熱変換が厄介かな。爆煙が余計に立ち込める)

追撃を警戒しながら後退。シュテルも警戒してるのか突っ込んで来ない。煙が徐々に晴れていく中、その奥に一瞬だけ炎の輝きが見えた。と思えば「ファイアァァァーーーッ!」単発の火炎砲撃が向かって来た。距離もあるから余裕で回避。こちらも「バスタァァァーーーッ!」エクセリオンバスターで反撃。そこから砲撃の撃ち合いになる。

「シュテル! 周りに迷惑が掛からないことだったら、私も、私たちみんな、手伝うよ・・・! だから何をしようとしてるのか教えて!」

――ショートバスター――

「それについては私の一存では決めかねますので。詳細は王、ディアーチェに伺って頂ければ・・・!」

――フレアブラスター――

お互いに高速砲で牽制したり、

「私はかつて、姿形や能力も全てが貴方のコピーでした。ですが今、私は私個人として、王とその仲間のための殲滅者――デストラクターとしての力を得ています」

――パイロシューター――

「うん、すごいよ、シュテルの魔法も、その炎熱の力も・・・!」

――アクセルシューター――

魔力弾幕で包囲攻撃をし合ったりしてるけど、なかなか決定打を与えることが出来ない。そして気が付けば私たちは戦いの最中なのに微笑み合ってる。やっぱりシュテルはただ倒すべき敵じゃなくて、意志をぶつけ合うライバルみたいな?感じ。だからか親近感が湧いちゃう。

「なのは、笑みが零れてます。楽しいですか?」

「うんっ。なんていうかね、・・・とにかく楽しい! シュテルはどう? シュテルも笑ってるよ」

「ええ。楽しいですよ。我が焼滅の力をこうも存分に揮っているのに、貴方に悉く防がれてしまう。一方的な勝ち戦より、勝敗・魔導の優劣が紙一重で決まるかのような綱渡りの戦の方が、実に興奮し、白熱するというものです」

――エクセリオンバスター――

――ブラストファイアー――

砲撃が衝突して僅かな拮抗の後に消滅。そして高速で接近してきたシュテルに高速砲を連射しつつ後退。シュテルはバレルロールを繰り返しながら接近を続ける。しかも時折ラピッドフェザーっていう魔法を使うからか距離が開くどころか縮まる一方。
そしてついに追いつかれちゃった。振り上げられる火炎を纏う“ルシフェリオン”。アサルトマルクスっていう打撃魔法。懐に入られ過ぎて砲撃は無理。なら防御を、って“ルシフェリオン”に注意した。

「滅砕!」

「ごほっ!?」

意識が全部“ルシフェリオン”に向いていた時に私のお腹に突き刺さる、炎を噴き上がらせたシュテルの掌底攻撃。意識が飛ぶまでもないけどその衝撃と炎の熱さにビックリ。そんな中で「炎熱変換だけではありませんよ、私の新たな力は」ってシュテルの語りかけるような声が耳に届いた。まさか格闘技を使うなんて。

「爆砕!」

悪寒が奔った。今度は炎を纏ったアッパーだ。“レイジングハート”を盾にすることで防御する事に成功したけど、両腕を大きく逸らし上げられた。そのすぐに「アサルトマルクス!」“ルシフェリオン”での打撃魔法が襲い掛かって来た。狙いはガラ空きなお腹。

「えーい!」

打撃がお腹に届く前に“レイジングハート”を振り降ろして、石突部分で“ルシフェリオン”を打ち落とす。次にシュテルが取ったのは予想外の「きゃん!?」頭突き攻撃。ゴチン!と鈍い音が。私はくらっと後退。見ればシュテルもおでこを赤くしながら後退して、「ディザスターヒート!!」三連砲撃を発射。でも距離が開きさえすれば!

――アクセルフィン――

3本目の砲撃を撃ち終わるまで避けた後すぐに「ショートバスター!」高速砲を発射。シュテルはシールドで防御した後「パイロシューター!」火炎弾6発を発射してきた。それらを距離を取りながら「シュート!」魔力弾で迎撃する。

「ルシフェリオン、ディザスターヘッド!」

「え・・・!?」

“ルシフェリオン”が、“レイジングハート”でいうエクセリオンモードと同じ形態に変形した。そして炎の翼を3枚と展開。そして「ルシフェリオンバスター!」私のストライクスターズのような魔法を放った。火炎砲と一緒に飛来する火炎弾。下方から撃たれた砲撃を上昇することで回避。反撃をしようとして「あれ・・・?」シュテルの姿を見失った。

≪上です、マスター!≫

――ブラストファイアー――

“レイジングハート”からの警告。慌ててその場から後退すると、頭上から火炎砲が降って来た。さらに続けて、「ファイア!」火炎弾が8発と降って来た。それらを舞うように避けて、「シューット!」魔力弾6発を、誘導を度外視した高速発射。
直線的にシュテルへ向かっていくシューターが避けられる。シュテルはそのまま高速降下してくるけど、避けられて通り過ぎて行ったシューターを誘導してシュテルへ再殺到。シュテルは速度を殺すことなく紙一重で避けては「ファイア!」火炎弾で迎撃。

「ルシフェリオンバスター!」

――アクセルフィン――

今度は頭上から放たれてきた射砲撃を大きく横移動する事で回避。そしてまた「見失った・・・!?」シュテルの姿を見失う。“レイジングハート”の≪後ろです!≫警告がまた入る。振り向きざまにシールドを展開。

――フレアブラスター――

「優秀なデバイスですね、レイジングハートとは・・・!」

シールドに高速砲が4発と着弾して爆発した。シュテルはどうやって姿を晦ましているのか判らない。

≪おそらくマスターが砲撃を避けてすぐ、彼女はマスターに合わせて砲撃の裏に隠れているのでしょう。砲線が彼女の隠れ蓑になっているのです≫

“レイジングハート”がそう教えてくれた。なるほどって思いながら、黒煙に視界を封じられるのを嫌って急上昇したところで「ディザスターヒート!」あの三連砲撃で追撃されちゃう。1発目は回避、2発目はギリギリ回避、3発目は避けれそうになかったからシールドで防御。また黒煙に視界が封じられる。

(あう、これってちょっぴりまずいかも・・・)

完全にリードされちゃってる。それでも諦めずに黒煙から脱出。次もやっぱり砲撃、それとも射撃、ううん打撃。そのどれが来てもおかしくない現状だったけど、そのどれもが来なかった。判るのは、私を中心に5mほど離れたところで魔力スフィアが円周状に8基と待機してるだけ。そしてそのスフィアが同時に自爆して爆炎と黒煙を上げた。

「どういうこと・・・?」

シュテルのミス・・・じゃないのは確かだと思うけど。

――ルシフェリオンバスターA.C.S――

「え・・・!?」

どこからともなく突進して来たシュテル。まるで私のエクセリオンバスターA.C.Sのような突撃。ここで理解した。さっきのスフィアは目晦まし。シュテルの姿を隠して居場所を特定させないための。とにかくその速度から言って回避は無理と判断して、私と“レイジングハート”は全力で防御に徹することを決めた。

――ラウンドシールド――

――プロテクションパワード――

――ファイアプロテクション――

対魔力に対炎熱の三重防御陣。

「疾れ明星! 全てを焼き消す炎と変われッ!!」

(これ・・・炎熱の集束砲・・・!!?)

“ルシフェリオン”から強力な火炎砲が発射された。ラウンドシールドがまず破壊。次にプロテクションパワードにひびが入って破壊。最後のファイアプロテクションは、なんとか破壊はされなかったけど、その威力でものすごく後退させられた。あまりの衝撃と熱さに意識が眩みそうになるのを必死に耐えて、なんとか防ぎきったって安堵したのも束の間・・・

「真・ルシフェリオン・・・ブレイカァァァァァーーーーーーッッ!!!!」

本命の1発が残ってた。それこそ本当の集束砲だった。全身のダルさで避けることは難しく、それ以上に避ける余裕もないほどに大きい砲撃だった。私はマガジン内のカートリッジを全弾ロードして防御に回ることを決意。大丈夫。ファイアプロテクション・パワード。アリサちゃんのガラティーンブレイカーやルシル君の炎熱砲撃、シグナムさんの炎熱付与攻撃にも耐えたんだ。

(それに、絶対に負けられないもん・・・!)

友達と一緒に生み出した魔法と、負けたくないって思いを支えに、シュテルの集束砲を耐える姿勢を取る。そして「っ、ぅぅく・・ぐっ・・・くぅぅーーー!」着弾。耐える。砲撃の効果が途切れるまで。グッと唇を噛み締めて、ギュッと“レイジングハート”を握りしめて、ひたすら耐える。

「はぁはぁはぁ・・・けほっけほっ、はぁはぁ、ふぅふぅ・・・!」

そうして私は耐えきって見せた。揺らぐ意識の中でも私はマガジンを交換して「エクセリオン・・バスター・・・A.C.S・・・、ドライブ!!」私も高速突撃。シュテルも息も絶え絶えって風で、私が無事だったのを見て「っ! 高町なのは、あなたはやはり・・・!」目を大きく見開いて驚きを見せた。

――ラウンドシールド――

シュテルの展開したシールドに“レイジングハート”の先端に展開されてる魔力刃――ストライクフレームが衝突して、そう拮抗することもなく破砕。そしてストライクフレームがシュテルに直撃。

「っぐ・・・!」

≪Load cartridge !!≫

「エクセリオンバスター、零距離発射!!」

そして零距離でエクセリオンバスターを撃った。目の前が私の魔力光である桜色の光と煙でいっぱいになって、その衝撃で後退。煙も晴れて、シュテルの姿を視認する。

「フフ、お互いにボロボロですね、高町なのは」

「だね。まだやる? シュテル」

正直、戦闘を続けられるほどの魔力も気力も体力もない。もしまだ続けるって言われたら素直に負けを認めるしかないかも。でも「いいえ。私はもう限界を超えています。活動限界です」って力なく、でも満足そうに微笑んだ。

「実は私も。もう飛んでるだけで精いっぱい」

「そうですか。・・・引き分け、ですね」

「引き分け、だね」

それから少し微笑み合った後、「貴方とこうしてずっと闘っていたいですが、それは許されません」そう言ってシュテルが踵を返した。

「シュテル・・・!」

「貴方たちが心配しているのは、我々が無辜の民に、被害や迷惑などを出さないか、なのですよね? そのことに関しては、我々は遵守します。アイルは興味がなく、フラムは自称騎士として私と同意見なはずですし、ディアーチェと暴れん坊のレヴィには私から念を押しておきます」

「ありがとう、シュテル。だけどやっぱり一緒に来てほしいかなぁって思ってるんだけど」

「それについてはすみませんが、お断りさせていただきます。我々が目的を果たし終えた時、改めてご挨拶にお伺いいたします。今はそれだけで許してください。では、なのは。またいずれ魔導を交えましょう」

そう言ってシュテルは、ボロボロな姿でもしっかりとして速さで飛び去って行った。


 
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