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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos35特別技能捜査課~Interval 4~

 
前書き
特別技能捜査部を捜査課へと変更します。本局:捜査部・特別技能捜査課ですね。と言うか登場人物が馬鹿みたいに増えていく。そんなに使え切れないというのに、こんなに増やして! まったくもう!・・・まったくもう・・・orz  

 
†††Sideはやて†††

三が日も無事に終えての今日は1月5日。わたしら八神家は今、時空管理局の本局にお邪魔してる。そんで別行動中でもある。わたしとリインフォース、ザフィーラは第零技術部に。ガーデン・オブ・スカリエッティとも呼ばれてるらしいここは、次元世界の中でも特に頭がええってゆうジェイル・スカリエッティさんが管理してる部署で、とってもすごい技術が日々生み出されてるってゆう話や。

「――騎士イリスやなのはさん達は旅行中という話だけれど、はやてさん達は行かなくても良かったの?」

「そうらしいね。はやて君、良かったのかい?」

話を振って来たドゥーエさん(様付けからさん付けに変えてもろた)、そしてドクター(ジェイルさんからそう呼ぶようにお願いされた)にそう訊かれたわたしは「はい。ええんです。ケジメはしっかりとしときたいんで」って答える。
次元世界やすずかちゃん達にいっぱい迷惑を掛けたからなぁ、わたしら。そやから旅行は遠慮させてもろたんや。ホンマは三が日も遊ばんと、今後管理局で働くための手続きをしようって思うてたんやけど、リインフォースとの最初で最後のお正月って思うたらどうしてもな・・・。

「まぁ、君が良いと言うのであれば私たちも遠慮せずに、君たち八神家を本局(ここ)に留まらせることが出来る。夜天の魔導書の解析・試験品作成・早期試験運用。君たちがここに留まられる間に済ませよう」

床と天井を支えるように設けられたいくつかの円柱状のカプセル、そのうちの1つの中に漂う“夜天の書”から目を逸らすことなくドクターはそう言うた。ドクターの右隣で空間キーボードを叩くウーノさんが「はやて様はまだ子供です」そう言うて、ドクターの左隣でキーボードを叩くドゥーエさんが「無茶はさせないでくださいね」って、わたしを心配してくれた。

「騎士リインフォースも、何か不調を覚えることがあれば仰って下さい」

「はい。お気遣い、ありがとうございます」

わたしの乗る車椅子のグリップに手を置いたまま居ってくれるリインフォースがウーノさんの心配にお礼を返した。ちなみにザフィーラは狼形態でわたしの隣にお座り中。わたしとリインフォースの護衛役や。ドクターもウーノさんも、そしてドゥーエさんも優しい。そやから安心して居られるから、ザフィーラは暇になるやろな。

「それでドクター。夜天の魔導書は作成できそうですか?」

「そうだねぇ・・・。少し話が逸れるが、ロストロギアの定義とはなんだろう」

リインフォースの問いに対してドクターは問いを返してきた。ロストロギア。わたしが初めてルシル君から“夜天の書”の説明を受けた時にチラッと聞いた話やと、大昔に滅んだすごい文明から流出した技術や魔法の中でも特に発達したモノの総称・・・やったっけ。そう答えると、「そうだね」ドクターは満足そうに頷いてくれた。

「ロストロギアとは過去に栄えた超高度文明から流出した遺物で、現代の科学力では同じ物を再現できないとされる物だ。が、それはつまり・・・現代で再現できさえすれば、ロストロギアという枠組みから外れることになる」

嬉しそうに笑みを浮かべるドクター。う~ん、以前アリサちゃんが言うてたけど、確かにドクターはどこかマッドサイエンティストみたいや。

「オリジナルの魔導書をこうして解析でき、なおかつ生ける夜天の主であるはやて君、管制融合騎である騎士リインフォースが居るんだ。この私、ドクター・ジェイル・スカリエッティが、夜天の魔導書を必ずや再現してみせようじゃないか!!」

バサッと白衣をはためかせて笑い声を上げるドクター。ますますマッドサイエンティスト――悪の親玉みたいや。それをポカーンと眺めるわたしとリインフォース。そんなドクターを「仕事してください」窘めるウーノさんとドゥーエさん。

「ははは。いや、しかし。技術者冥利に尽きるね。かの有名な魔導書をこうして実際にお目に掛けることが出来、この手で再現するという栄誉を頂いたんだ。それに・・・可愛いお嬢さん達のお願いだ。果たさなければ漢ではない」

「「ロリコンは犯罪です、ドクター」」

「そのネタ、まだ引っ張るのかい!?」

そんなドクター達のやり取りを眺めてたわたしは後ろに振り向いて、グリップを握るリインフォースの手に自分の手を添える。ドクターはおかしな人やけど、その腕は確かや。きっと“夜天の書”も作ってくれるはずや。それからドクター達の解析作業を眺めて・・・「解析完了です」ウーノさんがそう報告。

「終わったようだね。それでは夜天の魔導書をお返ししよう」

カプセルから“夜天の書”を取り出したドクターから「おおきに」両手を伸ばして受け取る。そしてドクターは「では早速作成に入ろうか。ウーノ、ドゥーエ。手伝ってくれたまえ」そう言うて、わたしらが居る五角形状な解析室の奥、スライドドアに目をやった。あのドアの奥が開発室。ドクターとその娘さんたちしか入れへん部屋・・・らしい。

「ルシリオン君たちはまだ捜査課のところでしょうか?」

「ドクター、通信を入れてみますか?」

「ああ、そうしてくれ」

ルシル君、シグナム、ヴィータ、シャマルは、今年の春からわたしら八神家が本籍を置くことになる本局捜査部・特別技能捜査課のオフィスへ先に行ってもろてる。ホンマはわたしも一緒に行くつもりやったけど、リインフォースを独り(ザフィーラの護衛付でも)でドクターのところに残して行くんはアカンってルシル君が言うたから。ルシル君、ホンマにドクターを警戒してる。なんでやろう。

「こちら第零技術部・部長秘書、ウーノ・スカリエッティ二尉。そちらに八神家の方々はまだ居るかしら? ガアプ課長」

『久しぶり、ウーノ二尉。ええ、もちろん居るわよ。春からは同僚となるから、今は仲間たちと・・・その・・・、楽しいお喋りを?』

モニターに映し出されたんはわたしらの上司さんになるクー・ガアプ一等陸佐。サラサラそうな黒のショートヘア、綺麗な空色の目をした女の人や。そんなガアプ一佐(何等とか陸とか空を省略して呼ぶんが一般的そうや)とウーノさん、それにドゥーエさんが小さく手を振り合った後、ガアプ一佐がモニターの外をチラッと見た。

(なんや女の人の声ばっかりが聞こえてくる気が・・・)

モニターからははしゃいでるような女の人たちの声が漏れ聞こえてくる。ドゥーエさんが「何をしているの? 楽しそうな声がするけど」って訊くと、カメラが動いたかのようにモニターの映りが横移動。するとガアプ一佐と同年代くらいの女の人、エイミィさんと同年代くらいの女の子数人に、もみくちゃにされてるルシル君が映った。後ろ髪の右側を女の子の手によって三つ編みにされてて、左側を女の人の手によってサイドポニーにされてた。

「おやおや。随分と羨まし――コホン、ではなかった、可愛いことになっているじゃないか」

ウーノさんとドゥーエさんに睨まれて言い直したドクターがそんなルシル君を見て微笑む。そやけど実際にもみくちゃにされてるルシル君からして見れば笑いことやないってことは、モニターに映ってるルシル君の困り果てた表情からして判る。

「そ、そう。今からそちらにはやてさん、騎士リインフォース、騎士ザフィーラを向かわせるわ」

ウーノさんがわたしらを手招きしたから、リインフォースに車椅子を押してもろてウーノさんの側に移動すると、ルシル君を救出し終えたガアプ一佐が『ええ。はやてさん、リインフォースさん、ザフィーラさん。待っていますね』ニコリと微笑んで、ルシル君の髪で遊んでた人たちが「待ってま~す♪」手を振ってくれた。

「あ、あの、よろしくお願いします・・・!」

『はい。こちらこそお願いします』

通信が切れると、「優しい娘たちばかりだから、安心できますよ」ってウーノさんがそう言ってくれた。ドゥーエさんの話やと、特別技能捜査課の人員は13人。その全員が女の人。となると、ルシル君にとってはちょう環境の悪い仕事場になるかもしれへんな。今の状況を見ると・・・。

「でははやて君たちの案内を・・・、そうだな。チンクにお願いしよう。ドゥーエ、あの子に連絡を」

「あ、はい、判りました」

チンクさん。シスターズってゆうドクターの娘の五女さんで、ルシル君やリインフォースみたいに綺麗な銀髪の持ち主さん。直接会ったことはないんやけど、礼儀正しい子やってシャルちゃんは言うてた。
そんなチンクさんと連絡(思念通話やろか?)を取ってくれてるドゥーエさんが、「チンクとの連絡が取れました。すぐに戻るようです」ってドクターに報告すると、「それでははやて君たちは応接室へ」って言うて、ウーノさんにわたしたちを応接室へ案内するように言うた。

「あ、わたしらだけでええですよ。あの、夜天の書のこと、よろしくお願いします」

「お願いいたします」

わたしとリインフォースでドクター、ウーノさん、ドゥーエさんに頭を下げてお願いする。するとドクターは「任せてくれたまえ」ってキリッとした表情で頷いてくれた。とゆうわけでわたしらは解析室で別れて、わたしらはトランスポーター1つだけが置かれた転送室を通って、応接室へ。ドクター達は奥の開発室へ。

「良かったです、夜天の書の開発の目途が立って。シャルには大きな恩が出来ました」

「うん。そうやな。シャルちゃんにはホンマに感謝してもしきれへんな」

融合騎の作成に必要な知識と腕を持ってる技術者、ミミル・テオフラストゥス・アグリッパさん、剣十字杖“シュベルトクロイツ”と“夜天の書”を作れる技術者、ドクター・ジェイル・スカリエッティさんとの繋がりを持たせてくれたシャルちゃん。シャルちゃんには一生頭が上がらんかも。それでもルシル君だけは渡せへんけど。
ソファに座ってそんな会話をしてること数分。廊下と第零技術部を隔てるスライドドアが開いた。真っ先に目が行ったんはやっぱり銀髪。ルシル君と背格好が似てる所為もあって一瞬やけど、「ルシ――」呼びそうになった。アカンなぁ、わたし。ルシル君はタイトスカートなんて穿かんよ、たぶん・・・。

「遅れてすまなかった、ドゥーエ。・・・む? あなた達が八神はやて様に騎士リインフォース、騎士ザフィーラですか? 私は第零技術部・専務戦闘員、チンク・スカリエッティ准尉です」

ビシッと佇まいを直したチンクさんに、わたしらも自己紹介を返しつつ敬称を付けんでもええこと、敬語やなくてもええことをお願いする。するとチンクさんは「では私のこともチンクと呼び捨てで構わない」って柔らかな微笑みを見せてくれた。

「では行こうか」

「「よろしくお願いします」」

前をテクテク歩くチンク・・・さん(呼び捨てはやっぱ無理や)に続いて技術開発部フロアからエレベーターに乗って上階へ。そんで廊下を歩いてる中、すれ違う他の局員さんがわたしらをチラッと見てくのに気付いた。ザフィーラが「敵意ではないようですが」って言う。うん、それはそうやな。

「珍しいのだろう。ここは民間人が入れるフロアではないからな、ここは。そこに私服姿の女子2人に狼1頭。興味が湧くのは仕方がない。すまないがオフィスに着くまで耐えてくれ」

「あー、確かに制服姿の局員さんばかりやもんなぁ~」

「直に主はやてやルシル、騎士たちもあの制服を着て職務を果たすのですね」

リインフォースがポツリと漏らした。自分の名前を含めんと。それが悲しかった。否応なくリインフォースが居らんくなる現実を思い出させる。会話はそれでパタリと止んで、無言のまま案内される。廊下に局員さんの姿が徐々に増え始めた。チンクさんが「そうだ。1つ、頼みたいことがあるんだ、君に」そう言ってわたしに振り向いた。

「私が頼むのは筋違いだとは思うが。イリスのことをよろしく頼む。最近はあの子と歳の近い局員も増えたことで友人は出来ているようだが。それでも聖王教会内での友人関係に比べればひどく少ない。はやて。お前のように同い年で騎士の友人を局内で得るのは実に稀だ」

「大丈夫ですよ、チンクさん。シャルちゃんはこれからもずっと仲のええ友達ですから。ま、まぁ、ひとりの男の子を巡る戦いに関しては敵ですけど♪」

自分でそう言うて・・・ちょう後悔。恥ずかしさで顔が熱くなる。チンクさんは「そうか。それはまた」微笑ましいってゆう風に頷いた後、「あ。もしかしてその男の子というのは、お前の家族であるルシリオンという・・・?」そう訊いてきたから、「え、そうですけど・・・」頷き返す。でもなんで判ったんやろ。

「ふふ。イリスはどうも銀髪に思い入れがあるようでな。私との初めての邂逅の時でも、いきなり背後から抱きつかれてな」

チンクさんは懐かしそうに思い出を振り返ってるようで、とても楽しそうな表情を浮かべると、「どういった出会いだったのですか?」ってリインフォースが訊いた。わたしも「知りたい!」手を挙げて同意。

「ん?・・・あれは2年ほど前か。執務官補佐の試験をパスした後、本局へとやって来たイリスは、本局のあまりの広大さ故か迷子になっていたそうでな。その時に偶然見かけた私の後ろ姿を見、思わず抱きついたのだそうだ。あとで聞けば、あの子は本能レベルで銀髪の持ち主に好意を抱くという」

それを聴いたリインフォースが「銀髪に反応するとは、彼女も厄介なものを抱えているな」って呟いた。確かに銀髪を持ってる人の会う度に反応するなんて、最悪変な人に当たるかもしれへん。まぁ、シャルちゃんは強いからそう問題に巻き込まれへんとは思うけど。

「いや、さほど問題ではない。あらゆる世界を内包している次元世界とは言え、銀色とはかなり珍しい髪色らしくてな。銀髪を有した者を見るのは、リインフォース、そして写真だけでしか見たことのないルシリオンだけだ。どこかで聞いた噂だが、銀色とは古き王族の髪色らしい。そう思うと、ふふ、私の髪も捨てたモノではない」

そう微笑んだチンクさんは自分の長い銀髪に触れて、フワリと軽く払った。シャンプーの良い香りがする。サラサラやし、ルシル君並に手入れされてるな、きっと。

「話が逸れたな。まぁ、大体それからだな、私とイリスの関係は。本局で会える時間があると、よく話をしているよ」

そんなチンクさんの話を聴きながらわたしらは無事に目的地、捜査部フロアに設けられてる特別技能捜査課のオフィスに到着することが出来た。扉の前には1人の女の子が立ってる。直接会うんは初めてやな。セラティナ・ロードスターちゃん。
チンクさんとの別れ際、「あとはセラティナに任せよう。では私はこれで失礼するよ。頑張ってくれ」握手を求めて来てくれたから、「おおきにありがとうございました、チンク准尉」わたしは一度敬礼してから握手に応じた。

「っ。ふふ。ああ、はやて捜査官。騎士リインフォース、騎士ザフィーラ。またいずれ」

そうしてわたしらはチンクさんと別れて、「お待たせしました」の側へと向かう。

「ようこそ、特別技能捜査課へ。八神はやてさん、騎士リインフォースさん、騎士ザフィーラさん。同課所属のセラティナ・ロードスター三と――コホン、二等空士であります」

わたしとリインフォース、セラティナ二等空士で敬礼し合った。

†††Sideはやて⇒ルシリオン†††

三が日を無事に終え、俺たち八神家は春から勤め先になる本局捜査部・特別技能捜査課への配属するための最後の手続きを行うため、本局へとやって来た。で、捜査課へのオフィスへ向かう前に、はやて、リインフォース、ザフィーラと別れた。
俺とシグナム、ヴィータ、シャマルの4人は捜査課のオフィスへ、はやて達は“夜天の書”の開発を頼んだスカリエッティの第零技術部へ。大晦日、“闇の書の欠片事件”で中断していた“夜天の書”の解析を行うために。

「あら、あの子・・・、アルテルミナスちゃん、だったかしら・・・?」

オフィスと廊下を隔てるスライドドアの前、終極テルミナスの転生体――アルテルミナス・マルスヴァローグがポツンと佇んでいた。そして「お、来た来た。こっちだよ」俺たちに気付くと大手を振ってアピール。

「ようこそ、特別技能捜査課へ。ルシリオン、騎士シグナム、騎士ヴィータ、騎士シャマル。・・・で、え~と、八神はやて、騎士リインフォース、騎士ザフィーラは、ドクターのところに行っているんだっけ? さっきウーノ二尉から連絡来てたよ」

俺だけ騎士という敬称が付いていないことに少々疑問を抱きながらも「はやて達が居ないことに対する説明をせずに済んで助かるよ、マルスヴァローグ空曹長」はやて達と別行動を取っている説明をしないで済んだことにホッとした。

「あーそうそう。これからは同僚になるから、ルミナって呼んで。階級も省いて結構だよ。・・・ウーノ二尉とうちの課長――ガアプ一佐って10年来の友人らしくてね。だからお礼を言うのは私じゃなくてガアプ一佐にお願い。じゃ、入ろうか。課長や他のメンバーが首を長くして待ってるよ」

そう言って踵を返しスライドドアを開けて入室したルミナに続いて俺たちも入室。特別技能捜査課のオフィスは、ごく一般的な造りをしていた。メンバー分のデスクが並んでいる。唯一の違いと言えば、内装が・・・女の子の部屋っぽい。花が飾ってあったり、ぬいぐるみが置かれたりしているデスクもある。課長用のデスクにもぬいぐるみが4つ。

「「「「「ようこそ、特別技能捜査課へ!」」」」」

オフィスに居たガアプ一佐、そして他に4人の女性に歓迎された。年齢の幅は大きい。20代前半、10代前後半。彼女たちの歓迎に対してまずは俺が「春よりお世話になります!」そう一礼する。と、シグナム達も「お世話になります!」と続いた。

「はい。こちらこそお世話になります、ルシリオン君、騎士シグナム、騎士ヴィータ、騎士シャマル」

ガアプ一佐も俺たちに一礼した後、そう微笑んだ。そんな彼女の側に控えている後に同僚になる女性局員たちは何故かそわそわと落ち着きがない。なんだろう、俺とヴィータに視線が集中している気がするんだが・・・。
変なことをされる、直感的にそう思い至った俺はそんな視線から逃れようと顔を背けたとき、「はやてさん達が来るまではお話ししていましょう」ガアプ一佐がパンと手を叩いた。すると「やったー!」と諸手を挙げて賛成して、わっと俺たちの元へと駆け寄って来た。

「はじめましてー! あたし、テレサ・テレメトリー! 12歳! 階級は一等空士!」

まず自己紹介したのはテレサ一士。ミルキーホワイトの長い髪をお下げにした少女。青い瞳で真っ直ぐ俺を見詰めてくる。

「これからよろしく頼むよ。特別技能捜査課・課長補佐のナジェージダ・セイジ一等空尉だ。同僚や友人みんなにはナージャと呼ばせている。お前たちもそう呼んでくれ」

赤いボブカット、翠色の瞳を有するナージャ一尉から差し出された握手に俺たちも応じていく。凛とした佇まいはシグナムと似通っているな。可愛い・綺麗より凛々しい・格好いいと言った感じだ

「それじゃ次は私! クララ・リークエイジ准陸尉。15歳。えっとぉー・・・あとは、どうぞよろしく!」

15歳と自称したクララ准陸尉が勢いよく一礼した。しかしこう言ってはなんだが15歳には到底見えない。身長も12歳であるテレサ一士と同じ(大体140cmほどか)かそれより小さい。とにかくそんな彼女にも「よろしくお願いします」と返す。

「最後は私ね。トゥーリア・サクロス一等陸尉よ。歳はクーやナージャと同じ20代前半。何か困ったことがあったら何でも相談してね♪」

フワリとした青いセミロングヘア、フェイトのように赤い瞳をした女性、トゥーリア一尉。今オフィスに居るメンバー全員から自己紹介を受け、俺たちも改めて自己紹介。その後はオフィスの端っこにある革張りのソファ2脚が脚の短い長テーブルを挟んでと置かれた応接区画へ。

「ねえねえ、みんな古代ベルカ式魔法の騎士ってホント!?」

「うわぁ、すっごい髪の毛サッラサラ! 色も銀色って超レアだし!」

「ヴィータちゃん、魔力ランクがAAA+もあるんだって? すごいね!」

「さらに紅と蒼の虹彩異色と来た! 写真で見るよりすっごい綺麗!!」

「はやてちゃんやルシリオン君に至ってはSランク超えなんだよね!? すっごー!! しかもレアスキルだけじゃなくて固有スキルまで!」

テレサ一士が俺の髪を解いたり結んだり目を覗き込んだりし、クララ准尉が俺やはやて、ヴィータのスペックに驚き続ける。そんな中で、「あの、課員さんはこれで全員なのですか・・・?」シャマルがそう訊いた。

「いいえ。特別技能捜査課の課員は全部で13人。八神家のみなさんが加入することで19人ですね」

テレサ一士と同じように俺の髪を「羨ましい・・・」と漏らしながらいじり始めたトゥーリア一尉がシャマルに答えると、「思ったより少ねぇんだな」ヴィータがそう言った。

「仕方がないと思うわ。固有スキルはもちろん、レアスキルの持ち主も少ないから」

「他の部署にはまぁ他にレアスキル保有者が居るけど、私のように転属する局員ってかなり珍しいしね」

ナージャ一尉に続いてそう言ったルミナも元は航空武装隊所属の空戦魔導師。なんと武装隊に着任してからの任務執行回数3回にて、破壊神、の通り名を持ったのだそうだ。そんな奴が何を思って武装隊から捜査部に転属したのかは判らないが、その道を選んだことで俺は奴とこうして顔を合わせ続けなければならなくなった。どうか変なことが起きませんように。

「それじゃあ他の課員さんは仕事中ということで・・・?」

「ええ。各自のスキルが必要とされる事件が発生した場合、各次元世界の地上に降りて捜査を行うの。基本はバラバラだけど、中には組んで捜査を行うこともあるわ。八神家のみなさんにはチーム捜査が基本的な活動ね」

そう、俺たちパラディース・ヴェヒターははやての側に控える騎士だ。はやてが特別捜査官としての任務中、俺たち騎士は彼女の補佐を行う。そしてはやてが休暇などの際は、シグナムとヴィータは航空武装隊へ、シャマルは医務局へ、ザフィーラはシャマルの護衛、俺は・・・権威の円卓の指示に従って色々な場所へ飛ばされるだろうな。ま、先の次元世界でも研修という名目の下、クロノの指示に従って飛ばされていたから問題はない。

(あー、また無限書庫で働きたいなぁ~)

あそこは良かった。紙の本の手触り、匂い、どれも俺の心を満たしてくれた。ま、大整理処理は地獄だったが。それでも俺に一番合った職場だと思っていた。

「でもさ。レアスキル保有者っつっても危険な事件ん時とかでの単独捜査は危なくね――じゃなくて、危なくないですか?」

敬語に直したヴィータにガアプ一佐たちが苦笑する。ヴィータのタメ口については何も思ってい無いようだが、仮にも今後は俺たちの上司になる女性たちだ。ヴィータには今後も敬語を使うように言っておかないとな。はやてに頼んでおけば解決するだろう。

「一応、特別捜査官である私たちの魔導師・魔力ランクはA以上よ」

そう答えた課長ガアプ一佐は魔導師ランクAAA、課長補佐ナージャ一尉・トゥーリア一尉はAAA-、クララ准尉・テレサ一士はAとの事だ。武装隊の隊長クラス同等、それ以上の魔導師ランクを持っているのなら、そうそう危ない目には合わないだろうな。

「でも単独捜査限定ってわけでもないよ。陸士部隊との共同って時もあるし、協力要請も出来るし。年少組のセラティナはよく協力者を得て捜査をしてるし」

結界術師、セラティナ・ロードスター三等空士。かつての俺の戦友であった結界王アリス・ロードスターの転生体だ。前世と同様、彼女は単体戦力としては弱いようだ。

「つまりは執務官みたいな感じなんですね」

ガアプ一佐やクララ准尉の説明を聞き終えたヴィータがと納得した風に頷くと、「執務官ほどのオールマイティな権力はないけど」ナージャ一尉が執務官と捜査官の違いを説明する。捜査官はあくまで事件・事故の捜査、そして被疑者の逮捕までの流れ。だが、執務官はそれだけではなく法の執行の権利を持ち、現場局員への指揮権も有する。法務関連の仕事も職務に含まれることが大きな違いだ。
そんな話をしながらはやて達が来るのを待つ。途中、第零技術部のウーノから、はやてとリインフォース、ザフィーラを向かわせるという通信が入り、彼女たちが来るまで今度は俺たちに話せる内容を吟味して話してまた時間を潰していると、「ガアプ課長。セラティナ、戻りました。それと、御来客であります」セラティナを先頭にはやて達が入室。

「お待たせしました、ガアプ一佐。八神はやて、八神リインフォース、八神ザフィーラ、到着です」

「お帰りなさい、セラティナ。そしてようこそ、八神はやてさん、騎士リインフォース、騎士ザフィーラ」

こうして八神家も勢ぞろいしたことで、春からここ特別技能捜査課へ配属するための手続きを行いつつ、はやて達にも自己紹介を行うガアプ一佐たち。それを眺めていると、『あの・・・』念話が入った。声の主はセラティナだ。

『仕事とはいえ、あなたのことをハラオウン提督の許可なくガアプ課長に伝えたのは・・・その・・・』

かつてのアリスの在りし日を思い起こすような弱々しい態度を取るセラティナは、両手の指を組んでもじもじしている。

『まぁ、いいさ。そのおかげでこの部署に配属することが出来た。ざっとガアプ一佐たちと話したが、良い女性ばかりだ。唯一の気がかりは、俺が死んだとされるテスタメントだということを、君が誰かに口外しないかどうか、だ』

権威の円卓以外のメンバーで俺の弱みを握っているセラティナは正に目の上のたんこぶ。口封じをする必要がある場合は手は抜かない。

「『・・・それだけは必ずお守りします。ガアプ課長からも厳命されてますし。安心してください。だから、あの・・・』よろしくお願いします、ルシリオンさん」

右手を差し出してきたセラティナに「ルシルで結構だ、セラティナ三等空士」と彼女の握手に応じると、セラティナは「ごめんなさい。私、二等空士になりました」と言い難そうに訂正してきた。

「では改めて。八神ルシリオン・セインテストだ、セラティナ二等空士」

「はい、よろしくお願いします、です♪」

ああ、やはりアリスだな。懐かしさで涙が出そうだ。セラティナと微笑み合っていると、オフィスに通信が入った事を報せるコールが鳴り響いた。ガアプ一佐が「はい、特別技能捜査課」と応じる。

『運用部総部長、リアンシェルトです。春よりそちらに配属になる八神家の他にもう1人、配属になるからよろしくお願いします』

モニターに映るリアンシェルトの顔、そして声に体が強張る。リアンシェルトとガアプ一佐の会話に聞き耳を立てていると、「あら。彼女もうちにくれるんですか?」ガアプ一佐の声が弾んだのが判った。

『彼女自身と次元航行部のアースラスタッフ・リーダー、ハラオウン提督からも推薦でもありますから』

ガアプ一佐の前にリアンシェルトの映るモニターとは別のモニターが展開。そこに映し出されたのは「シャルちゃんや!」はやての言う通りピースサインと満面の笑顔を振り撒いたシャルの顔、そのアップ写真だった。

 
 

 
後書き
フジャムボ。
先週とは違ってガクッと真面目話になった今話。ルシルがアリサ達に下す罰ゲームはまたいずれ。楽しみにしていた方には申し訳ないです。早々に「GOD」編→エピソード3に向かいたいため、少し駆け足で進めていきます。
 
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