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ソードアート・オンライン ~白の剣士~

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後始末

ヨルムンガンドを倒したシオンは今、エリーシャに支えてもらいながらヨルムンガンドの亡骸を見つめる。
光となって消えていくヨルムンガンドを見ながらエリーシャは呟いた。

「終わったんだね・・・」

「ああ、今のところはな・・・」

「それってどういう・・・?」

「お、おいシオン!」

キリトが慌ててシオンに声をかける。その時シオンは自身の身体が透けているのに気がつく。

「ああ、コレか。やっぱり少し無茶しすぎたかな・・・」

「それって・・・」

「彼のアバターは間もなく消滅するということだ」

ヒースクリフはキリトに向かってそう言った。

「消滅って、シオンくん消えちゃうの!?」

「安心しろアスナ。正確にはアバターがリセットされるってことだよ」

「リセット・・・」

つまり、彼が今まで積み上げてきた力が無くなってしまうというわけだ。その事実にキリトたちは理解できなかった。

「そんなどうして!?」

「それは彼が今の今まで相当の無茶をしたからだ」

「本人は少しと言っているがな」とヒースクリフは付け足す。
無理もない、彼はこの戦いで、いや、それよりも前のエリーシャを助け出す時から相当の無茶と負荷をかけてきた。
それを何度も繰り返すことで彼のアバターは徐々に崩壊していった。
そして遂にそれが限界を超えたのだ。

「シオン・・・」

「大丈夫だって、死ぬ訳じゃないんだから」

「でも・・・」

「エリー・・・」

シオンはエリーシャを優しく抱き締める。

「俺は、後悔してない。お前たちをこの手で守れただけでも、ツバキたちに顔向け出来るってもんだ・・・」

「・・・・・」

「だからエリー、今回は少しだけ待っててくれ。必ず迎えに行くから・・・」

「・・・うん、待ってる」

シオンの言葉にエリーシャは一言だけ答える。
エリーシャから離れると、シオンは最後にキリトに言った。

「それじゃあキリト、後のことは任せた!!」

「・・・ああ、任せろ!」

それを最後にシオンは光と共に消えた───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「・・・・・」

眼を開けると、そこは配線が入り乱れるコンテナの中だった。俺はその中の中心に置いてある手術台のようなベッドにいた。

「お疲れ様、雪羅」

コンテナの端でパソコンを弄る俺の母、高嶺沙織は俺のバイタルを見ながらそう言った。

「どうだった?って、その顔はやったみたいね」

「ああ、なんとか倒せたよ。アバターの記録はぶっとんだけど・・・」

「そう、貴方が無事ならそれでいいわ・・・」

母さんはパソコンを弄りながらそう呟く。
俺は身体に異状がないこと確認すると、首を鳴らす。

「それで、首尾はどう?」

「今、レクトに収容されている患者を割り出したところよ、これがそのリスト」

そう言って母さんは一枚の紙を手渡す。そこには約30名程のレクトに収容された患者の名前があり、その中には雪宮雫の名前もあった。

「場所は施設二階の東フロア、今は機動隊が動いているから後は時間の問題よ」

「そっか・・・」

俺は近くに置かれた木刀を手に取り、車椅子に乗り換える。

「ちょっと外に出てきていいかな?」

「構わないけど、すぐに戻ってきなさい」

「分かってる、すでに終わらせる」

そう言って俺は外に出ていった。

部屋に一人残った沙織は微笑を浮かべ、キーを叩く。

「久しぶりね、あの子があんなに動くなんて。やっぱり、遺伝なのかしら?」

パソコンの画面には大量の文字の羅列、沙織はキーを叩き続ける。

「さ、仕事仕事~♪」

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「ハァ、ハァ、ハァ・・・!!」

レクト敷地内の茂みの中、須郷伸之は荒い息を吐いていた。
シオンたちに敗北してから即ログアウトすると、機動隊が監視カメラに映ったことに気づき逃亡。現在に至る。

「クソッ、どうして警備システムが作動しないんだ!?」

「それは、あんたのところの警備がザルだったってことさ」

「ッ!誰だ!?」

暗い影の中から姿を現したのは、車椅子に乗った一人の青年だった。

「こんばんは、須郷伸之さん。いや、こう呼ぶべきかな、“オベイロン”?」

「貴様!!」

「やあ、数分ぶりだな須郷。痛みの方は大丈夫か?」

「小僧ォ・・・」

須郷はナイフを取り出すと雪羅に向かって突進してきた。
雪羅はナイフの軌道を見てそれを木刀で防ぐ。

「死ねぇえええ小僧ォオオオ!!!」

「・・・つまらねぇ」

「何ッ?」

「・・・つまらねぇんだよ、あんたの子どもみたいな理屈は!!」

雪羅はナイフを弾くと須郷の頭に木刀を思いきり振り下ろした。木刀は砕け散り、須郷はその場に倒れる。

「フンッ・・・」

カラン、カランと木刀は雪羅の手から離れ、乾いた音をたてる。雪羅は携帯を取りだし、沙織に電話をかける。

「母さん、東のフロアの外で須郷を捕獲したから回収お願い。・・・うん、分かった。こっちでも縛っておくから。・・・了解、後はお願い。俺は・・・」

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

エレベータで東フロアの二階に来るとそこには親父が事件の終息にあたっていた。

「親父」

「雪羅か、須郷の方は別の者に行かせた。丁度今、身柄を確保したそうだ」

「そうか・・・。ここにいる人は?」

「確認したところ、皆問題は無いようだ」

「そっか、よかった・・・」

「彼女なら、そこの病室だ」

そう言って親父は開けられた一室の部屋を指差す。

「行ってやれ」

「ああ、親父」

「なんだ?」

「・・・ありがとう」

俺はそう言い残して車椅子を動かした。
部屋の前まで来ると、月明かりに照らされた部屋の入り口と影との境がまるで壁ように思えた。そこで止まっていると。後ろから背中を押されたような感覚になった。

『ほら、待ってるよ』

『迎えに行ってあげて』

一人は小さな手、もう一人は少し大きな手。俺はその二人の手を知っていた。
だから前に進めた。

『ああ、ありがとう』

俺は心の中でそう呟くと、部屋の中に入っていった。
そこには黒い髪を長く伸ばし、透き通るような碧眼をした少女がそこにはいた。
俺はその顔を見て、その人の名前を呼んだ。

「迎えに来たよ、エリー」

「シオ、ン・・・?」

「ああ、そうだよ。遅くなってごめん、ちょっと外で色々あってな・・・」

俺の眼からは自然と涙は出なかった。俺はエリーを抱き締めて、彼女もゆっくりと背中に手を回した。

「ううん、待ってた。ずっと、君が来てくれるって。やっと、その時が来た・・・」

エリーは静かに涙を流しながら呟く。たどたどしいその言葉はしっかりと俺の耳に入ってくる。
エリーは俺の眼をしっかりと見て言った。

「はじめまして、雪宮 雫です。ありがとう、シオン」

俺はその言葉に対してこう答えた。
彼女の耳に聞こえるように───

「高嶺 雪羅です。・・・こちらこそありがとう、エリー」

唇が触れ合い、二人の瞳には静かに涙の雫がこぼれる。
伝わる体温、共有する想い。その感覚は二年の時をこえて今、現実となる。

それは、一人の剣士と一人の姫によって紡がれる物語。

白き剣士と戦乙女(プリンセス)の───




























───二人の軌跡の物語
 
 

 
後書き
遂に来ましたここまで・・・。
雪羅の鉄拳制裁(木刀)、これができて満足です。

次回がおそらくALO編最終回、お見逃しなく!!

コメント待ってます!!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ
 
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