第二十五章 終わりの、終わり
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地獄の業火さながらの、光景であった。
ごおごおと炎と風、視覚聴覚への爆発的な刺激が入り乱れている。
四方を囲んでいたはずの壁も、天井も、先ほどの大爆発に飛ばされて、既に存在していない。
広い敷地の中心が、ここである。その遠く周囲は、昇ろうとする朝日に照らされた東京都心の高層ビル群が高さを競い合っている。
朝日。
そう、あまりにも戦いは長く、日付変わったどころか既に朝になっていた。
崩れてところどころ亀裂の入っている床に、一人の、剣を手にした魔法使いが立っている。
白銀の魔道着を着た、至垂徳柳だ。
男性と見まごう顔立ちに体躯であるが、女性である。
彼女は青ざめた顔で、笑みを強張らせている。
疲労というより興奮に、はあはあ息を切らせながら。
仁王立ちに立ち、向き合う正面に、なにかが浮かんでいる。
揺れる青白い炎に包まれた、令堂和咲である。
だが、誰がそれをアサキと認識するだろうか。
腕は切り落とされて、二本ともなく。
足も、片方が根本からちぎられている。
全身の骨という骨は、折られに折られ砕きに砕かれ、叩き潰されて粉々。一回りどころでなく縮んでいる。
剣で切り刻まれてざくりと裂けた無数の傷からは、じくじくと血液と体液が混ざり合い染められて肌色の部分がどこにもない。
ただの肉塊である。
ぱっと見には、そう呼んで過言でない状態であった。
腹も、臓器が見えそうなくらいに深くえぐられており、ただの肉塊でなくとも、生きているなどと誰が思うだろう。
しかし、生きている。
肉塊の中に、ぎろぎろと異常な輝きを放っているものがあるのだ。
その、輝き放つものとは、目であった。
右目は既に剣で突かれ潰されており、残った左目が、一種形容しがたい狂気をはらんで至垂を睨んでいるのである。
ぐう、う
石臼をひくような低く雑音混じりの呻き声が漏れる。
どこに口があるのか一目では分からないほどの、ぐちゃぐちゃに潰れた顔から。
嘆き、怒り、恨み、悔い、悲しみ。
眼光と唸り声から感じるもの様々であるが、いずれであろうと負の感情以外のものはなに一つそこにはなかった。
桁外れの、負の感情。
その予期せぬことに混乱しているのか、異空、次元の境という薄皮の向こうにいる無数のヴァイスタは、ただ肩をひしめかせるのみであった。
だが、本能の狂った個体であろうか、やがて一体が不意に動き出した。
真っ白な、粘液に濡れた腕が伸びて、ばりん、ばりん、と、すっかり薄くなっている次元の境を、難なく突き破
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