第二十五章 終わりの、終わり
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ると、すっかり崩れて小さくなっているアサキの身体を、巨大な両手で掴んでいた。
ヴァイスタの本能に従い、魔力の塊を補食しようとしたのであろう。
しかし、捕食したのは、アサキの方であった。
彼女としては無意識下のこと、なのであろうが。
ばぢっ、
猛烈に燃えさかる炎にクラゲをいきなり放り込んだならば、このような音がなるだろうか。
次に起きた光景は、まるでブラックホールに儚い光が吸い込まれるかのようであった。白く巨大で粘液質なヴァイスタの腕が、ずるずると異空から、さらにはずるずると本体までが、この現界へと、無抵抗に引きずり出されたのである。
青白い炎を纏い浮遊している、アサキの身体へと。
ばぢりばぢり爆ぜながら、引き込まれたヴァイスタの白い巨体は一瞬にして小さくなって、きらきら輝く砂と化した。
青白い炎に包まれた怨念に満ちた肉塊へと溶け込むように消えて、もうその巨体の痕跡、存在はどこにもなかった。
どうん
闇が、鼓動した。
目視出来る類のものではない。
だが間違いなく、広がっていた。
闇が。
空間に。
世界に。
アサキの中に。
ヴァイスタ、という絶望した魔法使いの成れの果てを取り込んだ、アサキの闇が。
「いいね、いいね。いいね」
白銀の魔法使い至垂が、青ざめた顔に笑みを浮かべて、しきりに同じ言葉を繰り返している。
強がりの笑み、というわけでもないのだろう。
先ほど自分でもいっている。
本能的、原初的な恐怖。人間どころか、自分のような魔道器すらも恐怖を感じること。
それこそを、望んでいたと。
何故ならそれは、世の理を捻じ曲げるほどの、絶大な絶望に他ならないからだ。
どおん
また、爆発が起きた。
アサキの身体から、抑え切れず滲み出たごく微量の魔力。それが弾けただけというのに、爆弾とでもいうべき破壊力で周囲を吹き飛ばし、轟音、爆風に、ぐらぐらと激しく揺れた。
内圧膨張状態で起きた最初の暴発で、既に壁も天井もほとんど消し飛んでいたが、この暴発により部屋はさらに粉々吹き飛んでいた。
床も、揺れにより亀裂が深く大きく広がっていた。
「いいね」
笑む、至垂。
ぐ、が……
アサキが呻く。
一つ目で、目の前に立つ白銀の魔法使いを睨みながら。
2
飛び交う怒号、苛立ちの声。
混乱し、慌てふためく声。
朝空の遥か下である地上では、大勢の人々が右往左往し逃げ惑っている。
ここはリヒトの東京支部。
行き交う多数である白衣を着た男女は、ほぼ間違いなく全員がリヒトの研究員だろう。
スーツ姿の者も、おそらくほとんどはリヒト関係の者だろう。
魔道着姿の女子たち
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