第四章 カズミちゃんはアイドル?
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治奈とアサキは家が近いため、いっしょに登校しており、また、ここは通学路の交わる地点なのである。
「朝から元気というか、通り越してうるさすぎじゃけえね」
片耳に小指突っ込んでしかめっ面の治奈。
「あれ」
アサキは、ポスターに目を向けた。
そこからピンと来たようで、
「星川絵里奈だー。カズミちゃん、好きなの? 叫んじゃうくらい」
「ま、まあな。つうか、好きだから叫んでたわけじゃねえよバカ。……ところでアサキさあ、星川絵里奈の『星空を飛べたらね』って知ってる?」
「うん。知ってるよ。嫌いじゃないな、あの歌」
「お、そ、そうか。ちょっと歌ってみな。嫌いじゃないとか、上から目線でムカつくけど、それはそれとして」
「やだよー。わたし、歌がそんなに上手ってわけでもないからあ」
ちょっと照れた笑顔のアサキ。
それほど歌いたくないようにも見えないが。
「いいから! 歌詞が思い出せなくてさ。曲もちょっとおぼろげで。ちょこっと歌ってみてよ。最初のワンフレーズだけでもいいから」
「えー。どうしようかなあ」
「お願いっ! 先っちょだけっ! 先っちょのちょっと入ったとこまででいいからっ!」
「ごご誤解招くようなこと大声で叫ぶなあ!」
治奈が、真っ赤な顔でカバンをぶうんと回して、カズミの後頭部をブン殴った。
「いてっ! ば、ばか、そんなつもりでいったんじゃねえよ。ただアサキに歌ってもらおうとしただけだよ」
「紛らわしいんじゃ!」
「そんなにいうなら……じゃあ、歌ってみるね。でも恥ずかしいから、ほんのちょっとだけね」
「やった! ありがとう。このもやもやした気分のままだったら、学校休むとこだった」
「休むなあ!」
と、突っ込む治奈の横で、
こほん、
と、咳払いをするアサキ。
人差し指で、スカートの上から自分のももをトントン叩きながらリズムとって、そして口を開く。
歌い始めた。
「♪ はじめてえ手を取りあてえあるくうなぎさああ ぅおくのすなあきらきらアアア ♪」
「はあ?」
カズミと治奈の顔に、無数の縦筋が入っていた。
歌っている本人は楽しげな顔だが、音程もリズムも無茶苦茶な、酷い歌声であった。これを歌と呼ぶのであれば、だが。
そうでないなら単なる怪音波だ。
「おい、ちょっと……アサキ」
怪獣が街を破壊しているかのような、凄まじい光景に、すっかり呆然としてしまっているカズミであるが、ようやくそれだけを口から発した。
「♪ わたしたちもおこんなあはてなくううう広がるう星空の中アア ♪えいえんの中のおおおお」
アサキ、手マイクを口に当てて、ノリノリである。
最初の部分だけとかいっておいて、いつまで続くのかこの破壊
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