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人理を守れ、エミヤさん!
卑の意志なのか士郎くん!
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、エミヤは不敵に笑って見せた。俺がセイバーと共に戦い抜いた衛宮士郎だと悟ったのだろう。
 サーヴァントは通常、現界するごとにまっさらな状態となる。記憶の持ち越しは普通は出来ない。つまりエミヤが俺を識っているということは、このエミヤもまた第五次聖杯戦争の記録を記憶として保持していることになる。特殊な例だった。

 自分殺しがエミヤの望み。正確には、自己否定こそが行き着いた理想の結末だ。

 同情はしない。俺は奴とは別人だが、それを分かって貰おうとも思わない。
 仮に奴が、俺がエミヤにならないと知っても、ここを守る立場にある以上は戦闘は避けられないだろう。なら奴は所詮、倒すべき敵でしかない。

「衛宮士郎。どうやら貴様は、世界と契約していないようだな」
「分かるのか」
「当たり前だ。世界と契約し、死後を預けた衛宮士郎が、貴様のような弱者であるものか」
「……お前から見て、俺は弱いか?」
「弱い。見るに堪えん。投影の精度の高さだけは認めるが、それ以外はお粗末に過ぎる。なんだ先程の体たらくは。生前のオレなら、二十七程度の剣弾などすべて撃ち落とせている」

 なるほど……あれでまだ、本気ではなかったのか。螺旋剣の一撃こそ殺す気で放ったが、それ以外は全力でなかった、と。
 笑いだしそうだった。英雄王の言う通り、俺は道化の才能があるのかもしれない。

 だが。

「そうか。なら、やっぱり俺達は別人だ。それがはっきりして――ああ、とても安心したよ」
「……ふん。オレは失望したがな。貴様には殺す価値もないが、生憎とここを通すわけにもいかん。ここで死ね衛宮士郎。たとえ別人であったとしても、その顔を見ていると吐き気がする」
「そうかよ。じゃあ、最後に一つ言わせてもらおう」

 俺とエミヤは同時に干将・莫耶を投影した。両腕をだらりと落とし、戦闘体勢に入る。
 鏡合わせのような姿だ。英霊と人間、贋作と偽物、強者と弱者――
 今に戦闘に入りそうになる刹那に、俺はエミヤに言葉を投げる。奴が絶対に無視できない、挑発の文言を吐くために。

「なんだ。遺言でも言うつもりか? ああ、それぐらいなら待とう。未熟者の末期の言葉がどんなものになるか、興味がある」
「……」

 露骨な敵意。エミヤが悪意を抱く、唯一の相手。それが俺だ。その俺が今から吐く言葉は――きっと毒になる。

「なあ、アーチャー」
「なんだ」

「お前は、正義の味方に一度でも成れたか?」

「……なに?」

 一瞬、その問いにエミヤの顔が歪む。亀裂が走ったように、動きが止まった。
 それは、奴にとっての核心。エミヤを象る理想の名前。俺は精一杯得意気に見えるよう表情を操作した。
 俺が、さも誇らしげに語っているように聞こえるように、声の抑揚にも注意を払う
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