第一章 邂逅のブロンズソード
第6話 小さな騎士ローク
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「ほら、ダタッツさんモタモタしない!」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!」
「ハッハハ、だらしないぞダタッツ君!」
青き空が晴れ渡るこの日。店を休みにして町へ繰り出した三人は、親善試合が開かれるババルオ邸へ向かっていた。
ダイアン姫の勇姿を観るべく、意気揚々と店を飛び出して行くハンナ。そんな彼女に手を引かれ、慌てて駆け出すダタッツ。その背を突き飛ばすように押し、豪快に笑うルーケン。三者三様の動きで店を後にする彼らを、道行く人々は微笑ましく見送っていた。
「……それにしてもダタッツさんの剣と盾、ホントにボロボロね。買い換えないの?」
「い、いやぁ。その日暮らしの毎日で、新調する余裕もなくて……」
「しょーがないんだから。じゃあ、試合が終わったらマシなモノに換えましょうよ。大分給料も溜まったでしょ」
「いえいえ、ジブンにはこれくらいで十分なんですよ」
その道中。
ハンナはダタッツの腰に提げられた銅の剣と木の盾を見遣り、ため息をついていた。買い換えを勧める彼女に対し、ダタッツ本人は苦笑いを浮かべて首を振る。
「……せっかくの男前なのに」
「ジブンにはもったいない台詞ですよ」
「き、聞こえてた!?」
「わりとはっきり」
「わ、忘れて! 今すぐ!」
ダタッツの済ました対応に頬を赤らめ、ハンナは照れ隠しに拳を振り上げる。そこからポカポカと繰り出されるパンチを、ダタッツは穏やかに胸で受け止めていた。
端から見れば、付き合い始めて間もない恋人同士にしか見えないやり取りである。そんな彼らを後ろから見つめながら、ルーケンは吹き出しそうになる笑いを懸命に堪えていた。
「……ん?」
ふと、ダタッツが苦笑いを浮かべ、そんな彼へと視線を移した時。
笑いを噛み殺していたルーケンの、さらに奥で――人通りに紛れて身を隠し、こちらを覗き込んでいる子供の姿が伺えた。
年齢はおよそ十三、四歳。サファイアのように蒼く、短く切り揃えられた髪を持つその子供は、ブラウンの瞳でこちらを射抜くように見つめている。
(あの子は……)
だが、それよりもダタッツの目を引く特徴があった。
騎士団の正規団員の証である、青い制服。それを身に付けた小さな身体を守る、鉄製の甲冑。
王国騎士団のものと同じ形状で造られた、その小柄な鎧は――本物と寸分違わぬ輝きを放っていたのである。普通の子供が持つような、おもちゃなどではない。
帝国兵の兜と対を成すかのように額から伸びる、鉄兜の一角も……確かな力強さを示しているようだった。
「ダタッツさん? あ……」
異質な存在に目を向けていたダタッツの目線を、ハンナが追う。そして、振り返って子供に気づいた彼女は、一瞬だけ憂いを帯びた表情を浮かべた。
「ど
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ