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アラガミになった訳だが……どうしよう

作者:アルビス
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派遣社員になった訳だが……どうしよう
  11話

シャワーは使い物にならないのでいっそ湯を沸かして頭に熱湯でもかけようかと考えたが、いっそこのまま外で調査と今月のアラガミ狩りを済ませようと思い直し、街の外に出るにあたって怪しまれないような格好を用意されていた服の中から探す。手頃な厚手のコートと耳当て付きの帽子があったのでそれをとりあえず身に纏い、連絡用の携帯端末と地図をこのに置いてあったジュラルミンケースに押し込んで家を出た。幸い、吹雪はやみ雲の切れ間から太陽が顔を出しはじめていたので、移動は来た時よりも数段楽になっている。
地面に積もった雪が太陽を反射し、少々眩しいが物理的な妨害ではないのだから構うことはない。出来ればしばらくはこの天気のままでいて欲しいのだが、恐らくそれは無理だろうな。そんな事を考えながら、周囲に人がいない事を確認してコートと帽子を脱いでジェラルミンケースに押し込む。正直戦闘では邪魔にしかならんし、毎度毎度破くわけにもいかんからな。
大体街から10kmは歩いたのだが、意外とアラガミが少ないのか全く出会わない。一匹位見かけてもいいと思うのだがオウガテイル一匹おらず、見渡す限り銀世界でこの辺りに動くものは俺しかいないようだ。正直、大量のアラガミが喰えるものと期待していた分、随分肩透かしだったと落胆せざるをえない。
まぁ、文句を言ったところで何が変わるでもなし、とにかく周囲を探し回らなければならないな。食料面でもそうだがこの辺りの気候の中、そう何度も外には出たくないのだ。出来れば今回の外出で今月の仕事は終えてしまいたい、その為にも十匹くらいは見つけて食事と仕事を一度に済ませたいのだ。
それにアニメPVであれだけいたんだ、探せばそれこそ山のように出てくるだろう。それを希望にサクリサクリと雪を踏みしめ、銀世界を一人進んでいく。



で、結果から言うと日が落ちるまで探し回って何も見つけられず、今は雪で野宿の為のカマクラ作りの最中なわけだ。正直、ロシアのイメージを改めるべきだった。アラガミの事は置いておくとして、休めそうな廃墟の一つ見つからないというこの状況は中々悲惨だ。国として栄えたのだろうが、国土が広すぎて全く開発されていない土地が多すぎる。そして、かろうじて見つけたと思ったら半分雪で埋まっていた、雪に耐えれず潰れていたなどが関の山だ。
そんな物を見続けてきたせいで、アラガミも雪の下に埋まってるんじゃないかと適当に考えた瞬間、完成間近のカマクラが吹き飛び、俺も何かに吹き飛ばされた。
どうやら、この辺りはコンゴウの群れの縄張りだったらしいな。周囲に五、六匹はこの寒さに対応したコンゴウ堕天種…いや、通常種との中間と言うべきコンゴウがおり、一番離れたところに他のよりも大きめのコンゴウがいる。恐らく大きめのコンゴウは群れのボスのようなものだろうが、そんな事はどうだっていい。これが昼間のアラガミを探している時だったら問題はなかった、いや、あと一時間来るのが早ければ俺はここまで怒らなかっただろう。人が腹を空かせている時に現れず、わざわざ手作業でこんな大雪原ど真ん中でカマクラ作っていたのを完成間近で壊しやがったんだ。
「覚悟はできてんだよな?」
俺は両腕をサリエルの物に変え、光の玉をコンゴウ共の頭上に数十個展開する。サリエルのオラクル細胞の総量では連続で二、三個が限界だが、俺の場合は別だ。一体どれだけのオラクル細胞を今まで取り込んできたと思っているんだ?
そして、背中のヴァジュラのマントから電気を生み出し、全ての光の玉に雷撃を纏わせる。ここで軽く説明すると、光の玉はオラクル細胞から生み出された弾丸にサリエルのエネルギーを纏わせて滞空能力を持たせただけの物だ、正直サリエルのレーザーは使いにくかったので俺が機雷のように改良したのだ。あいつらは一体どうやってレーザーを曲げているのかは、結局いくら喰っても分からずぬ悔しい思いをしたのは印象深いな。それは置いておくとして、その機雷にヴァジュラの数倍の雷撃を流し込めばどうなるか?
簡単だ、弾丸が耐えきれずに空気を入れすぎた風船の如く、周囲に纏わせたエネルギーもろとも爆発する。加えて、そこら一帯に馬鹿げた雷撃を撒き散らすがな。
さて、俺自身はこの程度の雷撃など何の問題もないが、コンゴウ共は全身のオラクル細胞が麻痺している状態だ。そりゃそうだ、一つの玉に込められた電力はヴァジュラでも小型であれば黒焦げにできるような強さだ、それを何のたかがコンゴウ風情が耐えられるわけがないだろう。
どうにか動ける奴いるようだがそんなもの関係ない、最初から相手にするしない以前の問題だったんだからな。捨て身で殴りかかってくる奴がいたが、残念、腕力でもこっちが上なんだよ。コンゴウ種はこの三年間で百体以上で喰ったんだ、堕天種になった程度でオラクル細胞の密度の差をひっくり返せる訳ないだろう。
殴りかかってきたコンゴウの腕をそのまま捻り切り、もう片方の腕で頭を握り電撃を直接叩き込んで行動不能にさせた。
さて、残りで動けそうなやつは………ボスらしきコンゴウだけだな。
おい、逃げるのが早いぞ。人の家を壊して、喰われそうになったら逃げる……そんな理屈、通るわけないよな?
背中をコンゴウのパイプに変えて圧縮空気による高速移動を行い、距離を詰めてから逃げるコンゴウの頭を後ろから掴む。そして、そのまま引き倒し細胞の密度を上げた膝で後頭部を潰して、終了だ。
………さて、正直怒りのあまり若干我を忘れていたんだが、この後このアラガミからコアを取り出して、食いやすいように拾い集めなきゃならんのだ。で、その対象はというと、四匹は感電して動けない、これは問題ない。一匹は感電通り越して炭だ……これは喰えないし、コアもダメだ。次、ボスだが膝がコアに直撃らしく現在進行形で崩壊中……これも殆ど喰えない。
つまり、今日の収穫はコンゴウ四匹……内二匹は今日の食料で、実質今日の仕事はコンゴウ二匹だけなのか。もう少し落ち着いていれば、ボスを食料にして残りをフェンリルに送ろうと考えただろうに。
カマクラも作り直し、ノルマも達成ならず……最悪だ。


いい事と悪い事は割と続いて起こると聞くが、この仕打ちはあんまりではないか?
ようやくカマクラができたのでとりあえずそこで一晩過ごした結果、眠っている間に吹雪いたらしくカマクラごと埋まっていた。寒さを感じないせいで全く気付かず眠っていたらしく目が覚めると雪の中で、昨日手足を切断してからオラクル細胞で作った槍で串刺しにしたコンゴウを掘り起こす事から始める羽目になった。
雪から出るのはこの体にとってそれほど苦じゃないのだが、埋まった物を探すという手間は人間だろうとアラガミだろうと変わりはない。シユウの火の玉で周囲を溶かそうかとも考えたが、下手をすればコンゴウごと焼きかねんので仕方なく手作業だ。この仕事が終わったらロシアには二度と行かないと心に誓いながら、手作業で雪を掘り続けやっとコンゴウを二匹見つける頃には既に昼になってしまった。
それから漸く別の場所の調査へ向かう事になったのだが、昨日とは打って変わってアラガミが多すぎる。しかも、コクーンメイデンばかり。一瞬、墓地かと見間違える程ずらりとコクーンメイデンが並んでいるのだ。正直、その光景は見ていて気持ち悪い。
突っ込んでも死ぬことはないだろうが、あの数のレーザーを浴びるのは御免だな。恐らく、喰って得られるオラクル細胞よりレーザーで削られるオラクル細胞の方が多いだろうし、折角捕まえたコンゴウも消し飛びかねん。結論から言って、あれは無視の方向でいくとしよう。
昨日は場所が悪かったのか殆どアラガミを見つけられなかったが、今日になってやたらとアラガミと出会うな。ただ、その殆どが大規模の群れだったりと非常に厄介、というか面倒な場合が殆どだ。
確かにサカキの所へ行く最中にヴァジュラとコンゴウの群れに出くわしたが、それどころではない数の群れがやたらといる。およそ十数体で群れを作っているのが殆どで、小型アラガミでもその数と同時に戦うのは手間と得られる物の釣り合いが取れていないので、可能な限りは避けたい。
まぁ、それでも俺の家のある街の方向へ進んでいるアラガミの群れを見たら、積極的に潰すようには心掛けているが………如何せん広すぎるためどうやっても撃ち漏らしはあるだろう。その場合はアラガミが街に辿り着かない事と、フェンリルがどうにかしてくれる事を祈るばかりだ。
全く世の中ままならない事ばかりで、やっていられないな。







 
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