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ZOIDS 紅の獅子

作者:大牟
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第2話 レッドリバー攻防戦

ライトの案内でアオイはゼロをレッドリバー基地の格納庫へ入れた。

コクピットハッチを開き飛び降りた後、長い髪を整える。

「全く何で私がこんなこと・・・」

「君があのライガーの乗り手か」

そう尋ねてきたのは、先ほど対峙したアロザウラーのパイロット

ライト・フリューゲルだ

「手荒な真似をしてすまなかった。」

「ホントよ、私とあのバンって子とはついさっき顔見知りになったばっかりだってのに」

不貞腐れる態度をとるアオイに、ライトは苦笑いを見せた。

「でも驚いたよ、この惑星Ziにまだ俺達の知らないゾイドが「お~いアオイ!無事だったか!」

ライトの言葉を遮るように、バンが手を振りながらアオイの元に走り寄ってくる。

しかし、無言でバンの頭を引っ叩いた。

「痛っ!?」

「何が無事だったかよ、話が違うじゃない!あそこにいる子達ってここに捕らわれてたはずよね?何で雇われ兵になっちゃってんのよ!?」

アオイは怒りながらバンの後ろにいるフィーネ、ムンベイを指差す。

そのムンベイがアオイに話しかけてきた。

「すまないね、けどバンを許してやりなよ。」

「バン、あなたが共和国の兵士と戦ってるのを止めてくれって頼んでたの。」

「え、そうなの?」

フィーネにもそう言い含められたのでバンに怒るのをやめる。

その光景を見ていたライトは彼らに指示を出す。

「えーと君達、そろそろ作戦室に行ってくれ。ハーマン大尉から作戦指示がある。」

「了解っと。」

「行くぜジーク!」

「グウ!」

「はあ・・・」

成り行きで共和国に雇われたアオイも、彼らについていった。

共和国と敵対しているガイロス帝国が、ドラゴンヘッド要塞を根城に
共和国領内に侵攻しているそうだ。

ハーマンの部隊は中立地区で防衛網を敷き帝国軍の侵攻を阻む

その間に単独行動を取るフィーネとムンベイ、そして爆薬を積んだグスタフで
レッドリバーに続くファイヤーブリッジを爆破し帝国軍の増援を来れなくする
作戦を実行することになった。

そして

「作戦開始時刻だ!各機出撃!」

レッドリバー基地から続々とゾイド部隊が発進した。

そこにはムンベイのグスタフ、バンのシールドライガー

そして、アオイのライガーゼロも行動を共にしていた。

「おい女、お前の活躍によってこの戦闘の勝敗が決まる。失敗は許されんぞ」

「はいはい、わかってるって。」

「気をつけろよムンベイ、フィーネ」

「バンにジーク、あなた達もね。」

「おう!」

やる気を見せる彼らだったが、アオイはまだ項垂れていた。

「何でこんなことになったのかしら・・・」

「さっきからそればっかりだな、アオイ」

そう言ってきたのはゼロの横についたアロザウラーに乗ったライトだった。

「気持ちは分かるが、俺達は首都を護るために戦っている。隊の士気に関わるからあまりそういう態度は見せないでくれ。」

「・・・そうだったわね。あなた達共和国軍にとって一大事ですものね。ごめんなさい。」

「いいさ。君達の協力があれば帝国軍を退けられる、根拠はないがそう思ってる。」

ライトは、思い出したようにバンの話を切り出した。

「あのバンって少年だがな、シールドライガーでハーマン大尉達のプテラスを3機全て格闘戦で叩き落したんだ。」

「はぁ!?シールドライガーでそんなことができるの!?」

「俺は直接見てないんだが、何でも崖を使ってプテラスに飛び込んだそうだ。」

アオイは無言で感心していると、ハーマンから通信が入る。

『お前ら、私語はそこまでだ。もうすぐ防衛ラインだ、心してかかれ!」

「了解!」

「わかったわ」

共和国軍は隊列を組み、防衛ラインを敷いた。

アオイはバンのシールドライガーの傍に、ライトはハーマンのゴルドスの傍へ配置された。

「フン、まるで真昼の決闘だな。」

「決闘?戦争じゃないのか?」

「言葉のあやだよ、言葉のあや」

「どっちでもいいけど・・・」

バンは前方に展開する多数のモルガ部隊を見る。

「あいつら攻めてこないぞ?」

「当たり前でしょ。」

バンの疑問に応えたのはアオイだ。

「戦争は喧嘩と違って国際的な事情があるの。迂闊に攻めようものなら周辺国から非難を浴び、国は孤立し疲弊、戦う力を失う危険があるの。」

「へぇ、詳しいんだなアオイ。」

「まぁね。」

アオイは頬杖を付きモルガ部隊の奥にいるダークホーンを眺める。

(帝国軍か・・・まさかと思うけど・・・)

「全軍、別命があるまでその場で待機!」

「少佐、危険です!」

ダークホーンから一人の青年が降りてきた。

その人物を見たアオイは目を見開く。

(そんな!?本当にあの人がここに・・・!!)

ハーマンも対抗し、ゴルドスから降りて帝国軍の青年の元へ歩み寄る。

「スゲーな向こうの大将・・・撃たれるかもしれないのにゾイドから降りてくるなんて、なぁアオイ・・・アオイ?おいどうした?」

「え!?」

「どうしたんだ?息も荒いし・・・大丈夫か?」

バンにそう言われ自分の手を見ると、操縦桿を握っていた掌が汗だらけになり

顔も目立つくらいの汗をかいていた。

「え、あ、ごめん・・・なんでもないわ。」

気丈を振舞うアオイだったが、まだ内心動揺している。

一旦気持ちを引き締めるために、格納してある水で顔を洗う。

(大丈夫、戦闘にならなければ・・・)

そして、帝国と共和国の睨み合いが延々と続き

日が暮れ始める。

さすがに待ちくたびれたバンはシールドライガーから降りて用を足していた。

「腹減ってきたな・・・いつまでこんなことやってんだろ。」

緊張感が足りてない彼と裏腹に、アオイは臨戦態勢に入っていた。

そして、この沈黙を破るように1機のプテラスが戦場に乱入する。

「プテラス!?」

アオイはすぐにライトへ通信を送る。

「ライト少尉、基地のプテラスは!?」

「え?プテラスはシールドライガーに全部壊されて誰も・・・」

「てことはあのプテラスは!?」

アオイが何かに確信を持つ前に、プテラスは帝国のモルガにバルカンで攻撃した。

モルガ部隊が迎撃するが、全て回避しドラゴンヘッドの方へ飛び去っていく。

「何なんだあのプテラス!?」

「馬鹿!帝国領内に飛び去ったのが見えなかったの!?あれは帝国が差し向けたプテラスよ!!」

「火種を作りやがったか・・・!!」

「砲門を開け!散開しつつも防衛網を緩めるな!!」

ハーマンから迎撃命令が下り、帝国が進軍を開始

戦闘が開始された。

「何だ何だ!?いきなり始まったぞ!」

「バン!開戦よ、急いで!」

「くそ、行くぞジーク!!」

「グオォォォォ!!」

ジークが咆えて背部からブースターを展開し飛び上がり、

シールドライガーと合体する。

「ゾイドと合体した・・・!?ジークは本当にオーガノイドだったのね・・・」

はじめて見るオーガノイドの光景に驚いていたアオイだったが

すぐに気持ちを切り替え帝国軍と戦闘に入る。

ライトのアロザウラーも前に出てモルガに砲撃を加える。

それよりも前にでてハーマンのゴルドスが帝国に攻撃する。

「ハーマン大尉、危険です!あなたが撃たれれば我が軍は!」

「たとえ負けると分かっていても戦わなきゃいけない時もある!それが男ってもんだ!!」

彼らの奮闘もあり、モルガの数を減らしていっているが

それでも帝国軍の物量に押され、ゴドスが次々に撃墜されていく。

ライガーゼロも格闘戦でモルガを捌いていくが、それでも一向に勝機は見えてこない。

「ええい!後から後から!」

「ムンベイとフィーネは!?ファイヤーブリッジを爆破しにいったんじゃなかったの!?」

爆破の指示を出してはいたらしいが、爆煙等が見えないところ

起爆せずに帝国に捕らわれたと思うのが妥当だろう。

(やっぱり、敵の大将を叩かない限りは・・・)

「渓谷のオーバーハングを利用すれば何とか飛び移れるはずだ!」

「無茶言うな300mはあるぞ!」

バンとハーマンが突然言い争いを始めていた。

「あの二人は何をしてるの?」

その疑問に答えたのはライトだった。

「大尉はバンにレッドリバーの渓谷を飛び越えさせてグスタフの援護をさせるそうだ。」

「無茶よシールドライガーで!ライガーゼロならできるわ!私が」

「ダメだ、貴様のゾイドはまともな武装が施されていない。」

「2連ショックカノンがあるわ!障害物除去用に威力は抑えてあるけど」

「それでは爆薬に引火せん!直接爆破しようものならファイヤーブリッジと共にライガーゼロはお陀仏だ!」

悔しかったが、ハーマンの言う通りでありアオイは顔をしかめた。

「大丈夫だアオイ、俺とジークがなんとかしてみせる!」

そう言い残しバンはレッドリバーへ進路を向け走っていった。

「バン!!」

「アオイ、今はバンを信じて待つしかない。」

「ライト少尉、悪いけど私、待つのは性に合わないの。」

アオイはゼロを敵陣へと突っ込ませる。

「何する気だ!?」

「敵の指揮官を叩く!」

「何だと!?」

「そうすれば敵部隊の士気が下がり烏合の衆となる!無理にファイヤーブリッジを爆破しなくても済む!」

「無茶だ!!」

ライトとハーマンの制止の声も届かず、ライガーゼロはモルガの群れを突っ切りダークホーンへ向かう。

『少佐!反乱軍のゾイドがそちらに向かってきます!!』

『何だこのスピードは!?シールドライガーやセイバータイガーの比じゃないぞ!』

「臆するな!奴の狙いは私だ!」

「あの人・・・シュバルツ少佐相手に時間は掛けられない・・・一撃で勝負に出る!!」

ライガーゼロは両前足の爪にエネルギーを集中させ、攻撃態勢にはいる。

「少佐、危険です!!」

「心配するなマルクス(かなり思い切りのいいゾイド乗りだ。この感じ、あいつに似ている・・・)」

シュバルツは何かに確信を抱き、向かってくるライガーゼロに立ち向かう。

「行くよ、ゼロ!!」

ライガーゼロが咆哮し、ダークホーンに向け飛び上がる。

「ストライクレーザークロー!!」

ゼロの爪が、ダークホーンへ向かう。

しかし

シュバルツはダークホーンの機体を最小限に動かし紙一重で回避する。

「なっ!?」

そのまま地面に着地し、再度ダークホーンの方へ向く。

(やっぱり少佐相手じゃ私の手は通じない・・・!)

(やはり、動きの癖が似過ぎている・・・だが風来坊の彼女が何故共和国に味方している?)

アオイは牽制で2連ショックカノンをダークホーン向けて放つが

照準とあらぬ所へ着弾する。

「くっ・・・だから射撃武器は嫌いなのよ!」

「敵対するのであれば容赦はしない!」

ダークホーンのガトリングガンが回転し、弾丸がゼロを襲う。

「ダメだ・・・今の私じゃ少佐には・・・!」

啖呵を切りシュバルツに挑んだが、予想以上に手強い相手にアオイは動揺する。


しかし 奇跡は起こった


レッドリバーから爆煙が立ち込めた。ファイヤーブリッジの爆破に成功したのだ

「あれは・・・」

「ファイヤーブリッジが破壊されたか・・・」

『はい、敵の破壊工作員の仕業と思われます!』

「そうか、では撤退しよう。」

シュバルツの命令にマルクスが反論をする。

「何故です!?今は我々の方が優勢です!攻め続ければ共和国内部まで攻め込むことができるのですよ!?」

「その前に共和国軍の増援が来る。その時になってから撤退しても遅いのだ。」

彼らの通信中、アオイは早く撤退しろと心の中で連呼し続ける。

その願いが叶ったのか、ダークホーンはドラゴンヘッドの方へ走り出す。

それに続いてモルガの大軍も撤退を始めた。

「撤退・・・してくれたの・・・?」

目の前で起こった事にアオイは安堵する。

モニターにシュバルツから暗号メッセージが届けられた。

アオイは暗号を解読すると

先ほど抜けた緊張が再び身体全身に走り身体を強張らせる。

「おーいアオイ!!」

「大丈夫だった!?」

アオイの目の前にシールドライガーとグスタフが走ってきた。

「バン・・・ファイヤーブリッジの破壊に成功したようね。」

「ああ、アーバインが協力・・・協力って言えるのか?とにかく、レッドリバーを飛び越えてフィーネ達を助けることに成功したんだ。」

「待たせて悪かったねアオイ、あんたの報酬も上乗せするよう交渉してあげるからさ。」

「え、ええ・・・」

アオイの返事が上の空であり、3人は不思議そうに首を傾げる。

「とにかく基地に帰ろうぜ!腹へってしかたないぜ!」

「帰ったらたんまりご馳走食べさせてあげるわよ!」

「いやっほぅい!!」

「アオイは何がいい?」

フィーネに尋ねられたが、アオイはずっと基地に着くまで黙りこんだままだった。


 
 

 
後書き
次回予告

誰にだって知られたくない過去がある。思い出したくない過去がある。
だけど、今だけは向き合わなくちゃ・・・
少佐は私なんかの為に、気を使ってくれた。だから、少しだけ
ほんの少しだけ、過去を思い出してみようと思う

次回 ZOIDS 第3話「アオイの過去」 
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