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ZOIDS 紅の獅子

作者:大牟
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第3話 アオイの過去

「え、アオイが出てった?」

レッドリバーの戦いが終わり、バン達は途中で合流したアーバインと食事を取っている最中

ハーマンが、アオイが基地から出て行ったことを伝えにきていた。

それにはムンベイも驚く

「何でさ、あいつまだ報酬も受け取ってないのに」

「報酬はいらんそうだ。代わりに貴様らに払ってくれと頼まれた。」

「何で私達のところに?」

フィーネは首をかしげる。

「あいつ完全にタダ働きじゃねえか。」

「いいじゃねーか、アオイってのはそういうやつだ。」

「知ってるのかアーバイン?」

「何度かあいつのライガーゼロをいただくためにやりあったこともあってな。」

アーバインの口振りに、バンは呆れる。

「お前、傍から見たら盗賊と一緒だぞ?」

「ほっとけ。一度村を焼き払った盗賊団の討伐依頼を引き受けた時なんだがな。このことを偶然聞いたあいつは、盗賊団のアジトを襲撃、奴等が泣き喚いても攻撃の手を緩めなかった。」

その時の光景が容易に想像でき、

「や、やめれくれぇぇぇぇ!!」

「あんたらが泣き喚いても攻撃をやめない!!」

バンとジークは震え上がる。

「おっかね~」

「オッグァグェ」

「村人からそりゃ大層に感謝されてたが、報酬も何ももらわずに去っていったんだ。」

「私にゃ考えられないね。もらえるもんはもらっとかないと。」

報酬がどうのこうのの話で何かを思い出したムンベイは、ハーマンの元に身体を向ける。

「ところで・・・ファイヤーブリッジのど真ん中で散々待たせといた分、報酬を上乗せしてもらいたいんだけど?」

「アオイの報酬分がある。上乗せは許可できん。」

「何さケチ!」

「諦めろムンベイ」


そして、アオイは爆破されたファイヤーブリッジへ赴いていた。

「少佐が指示した場所はここ・・・のはずよね。」

あの時の暗号メッセージは

今夜、ファイヤーブリッジへ来てくれ 大事な話がある

というものだった。

正直なところ、シュバルツとは会いたくなかったが

彼女は、ここへ来てしまった。

そして、アオイの目の前にダークホーンが歩み寄ってきた。

レッドリバーでアオイが交戦したダークホーン・・・シュバルツのものだ。

ライガーゼロと眼と鼻の先まで近づいたダークホーンのコクピットハッチが開いた。

「私はガイロス帝国軍、カール・リヒテン・シュバルツ少佐だ。」

ダークホーンから飛び降りたシュバルツはそう名乗り、さらに続ける。

「戦闘中に送った暗号文を解読してここに来たということは、君は元帝国軍人であり私の部下だった・・・アオイ・リュウガ准尉で間違いない。」

アオイは、ただ黙ってゼロのコクピット内で息を呑む。

「私はあれ以来、君の安否を確認したく色々手を回してきた。君が生きていてくれて本当に良かったと思う。ゾイドから降りてきてくれないか?話がしたい」

シュバルツは微笑みながらアオイに語りかける。

それに応えるかの様に、ライガーゼロのコクピットハッチが開いた。

「・・・お久しぶりです、シュバルツ少佐。」

アオイは敬礼しながら、重い口を開いた。

「畏まらないでくれ、君はもう帝国軍人ではないのだから。」

「は、はい・・・」

「このゾイドは?」

「はい、私の・・・新しい相棒です」

シュバルツは、ライガーゼロを眺め感心する。

「ううん・・・なかなかいいゾイドじゃないか。アオイに相応しい。」

「い、いえ・・・」

「どうした?先ほどから震えているようだが」

シュバルツでなくても、アオイの身体が震えているのが分かる。

「私は・・・帝国から逃げ出した身です・・・機密情報もある程度は・・・」

「プロイツェンを恐れているのか?心配するな、私は奴とは関わっていない。」

「それだけではありません・・・私は少佐・・・殿下やあの方達の期待を裏切った・・・」

「裏切り・・・?何を言っている、少なくとも私は感謝している。君のお陰で救われた帝国軍兵士が大勢いる。」

励ますシュバルツだったが、それでもアオイの表情が暗い。

「まさか・・・あの事故の事をまだ?」

シュバルツにそう言われた後、表情の暗さが更に増した。

「・・・そうか。だがあれは不慮の事故だ。君が責任を感じることも、気に病む事もない。責任は・・・管理を怠った私にある。」

「それでも・・・私は・・・」

「君が早く逃げれば相棒は死なずに済んだ・・・ずっと、そう言ってたな。」

アオイは過去の事を思い出してか、眼から涙がこぼれる。

「そうよ・・・私が早く逃げていれば、セイバーは死なずに済んだ・・・それなのに私は・・・!」

「たとえ事故でも、相棒のゾイドを死なせてしまった自分が許せない・・・そういうことだな。」

「はい・・・!」

「セイバーの事を忘れろとは言わない、だがいつまでも過去を引きずっていては、足元をすくわれ自分の身を滅ぼすことに「それでも!!」

シュバルツの言葉半ばで、アオイが叫んで遮る。

「それでも私は・・・セイバーを死なせてしまった自分が許せないんです!!」

アオイの必死の叫びに、シュバルツは黙ることしかできなかった。

「もういいですか・・・私はもう自由の身なんです、何をして生きようが死のうが勝手でしょ!」

「待て、最後に一つ聞かせてくれ。」

立ち去ろうとコクピットハッチを閉めようとしたが、シュバルツに呼び止められ手を止めた。

「何故、君が共和国軍に協力していたのだ?君は何処にも加担しないことは私がよく知っている。何か理由があるのだろう?」

「シールドライガーのパイロットの少年が、共和国軍に関わったとばっちりを受けただけです。私の意志ではありません。」

「なるほど、シールドライガーの・・・あの少年はいずれ強いゾイド乗りになる。君も見極めるといい。」

「・・・機会があれば」

そう言い残し、アオイはライガーゼロのコクピットハッチを閉め、走り去った。

その後姿を、シュバルツは敬礼し見送る。

(アオイ・・・君が過去を乗り越えることができるよう、祈っているよ)

シュバルツはダークホーンに乗り込み、その場を立ち去る。



「まさか、リュウガ准尉が・・・閣下に報告せねば・・・」



レッドリバーを後にしたアオイは、岩山の一角でライガーゼロを止めていた。

「今夜は野宿かぁ・・・まあ慣れてるからいいんだけど」

ゼロのコクピットで、アオイは目を瞑り眠る。






「突然暴走したのか!?」

「は、はい!試作兵器を積んだレッドホーンが突然・・・!」

「最終調整も済ませて問題はなくなったはずなのに・・・!」

「バカモノ!問題がなければこんなことにはならん!!」

シュバルツが帝国の研究員にそう怒鳴った後

腰を抜かして倒れている一人の少女の下に走る。

「准尉!大丈夫かリュウガ准尉!?」

「あ・・・ああ・・・!!」

眼を見開く彼女の前には

石化して、動かなくなったセイバータイガーがいた。

「セイバー・・・私をかばって・・・!!」

「独りでに動いたというのか・・・准尉を護るために・・・」

「セイバー・・・いや・・・イヤァァァァァァァ!!!」

少女は悲鳴を上げる・・・石化した相棒の死を受け入れられずに

「セイバー・・・嫌だよ・・・!私なんかかばって・・・!!」

(そうさ、君のせいさ)

「え!?」

突然、セイバータイガーが喋りだし彼女は顔を上げる。

(君が腰なんて抜かさなければ、こいつは死なずに済んだ)

少年の声で喋るセイバータイガーは、石化しておらず紅いボディを見せていた。

(大丈夫さ、君の相棒は・・・僕が有効に利用してあげるよ)

そう言い終わった後

セイバータイガーの爪が、アオイに襲い掛かる

「いや・・・やめてぇぇぇぇぇ!!!」






「!!!」

セイバータイガーの爪が、アオイに当たる直前

彼女は眼を覚まし飛び起きた。

汗まみれになり、息も荒いが徐々に落ち着きを取り戻す。

「ゆ、夢・・・?」

アオイは、時々当時の事故を悪夢で思い出すように見ていた。

「何だったの・・・最後のあれは・・・」

しかし、決まって相棒を失って悲鳴を上げるところで悪夢は終わるのだが

今回は、死んだセイバータイガーが生き返り

少年の声で喋り、自分に襲い掛かってきた。

「今までこんなことはなかったのに・・・何かの暗示・・・?」

一体、何故最後の部分が継ぎ足されたのか

考えていたが、何も思い当たることはなかった。

「少佐と話していたからああなったのかな・・・?考えにくいけど、そうだと思ってないとやってられないわね。」

そう自分の中で納得させていると、日が昇り夜が明ける

「さっさと出発するか・・・レアヘルツの谷を迂回して、帝国軍の包囲網を抜け出さないといけないし。」

一度だけでも共和国軍に協力してしまったため帝国に追われる身となったのだ。

一つの場所に長居はできない

だから、帝国が活動を再開しない内に帝国の勢力圏内を脱出しようというのだ。

「行こう、ゼロ。」

アオイがそう語りかけると、ライガーゼロは咆え荒野を駆け出した。

その先で待っているのは、悪夢かそれとも・・・
 
 

 
後書き
次回予告

アオイ・リュウガよ。待ちに待った人里!久しぶりにパパオの実が食べられるわ!
・・・なんて呑気には構えられないわね、スリーパーゾイドの大群を1体のゾイドが全滅させたって共和国軍は大騒ぎ
その犯人はバンと同じくらいの男の子と黒いオーガノイド、そして・・・・・

次回 ZOIDS 第4話「最悪の再会」

なんで・・・なんであなたがここにいるの!? 
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