| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドリトル先生と京都の狐

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第三幕その十二

 観光旅行に戻ろうと言います、ですが。
 ここで、です。不意にお年寄りの声が聞こえてきました。
「事情は聞いたぞ」
「えっ、そのお声は」
「まさか」
 その声を聞いてです、狐の母娘はびっくりして飛び上がってしまいました。
 そうしてです、その場で畏まって、お母さん狐はお布団の中でそうして言うのでした。
「安倍様」
「安倍様ですね」
「左様」
 まさにです、そうだと声は二人に答えました。
「久しいな」
「お聞きになられていたとは」
「そうでしたか」
「わしは京都のあらゆる狐をいつも見守っておるのじゃよ」
 それでだというのです。
「そなた達のこともな」
「では私の病のことも」
「気にかけておった、それで御主達が言ってきたらな」
 その時はというのです。
「力を貸すつもりでおった」
「左様でしたから」
「若しくは病が今以上に進んだ時にな」
 その時にもだというのです。
「そう思っていたが」
「そうでしたか」
「そうじゃ、それでじゃが」
 その九尾の狐、安倍晴正はこう言うのでした。
「ドリトル先生じゃな」
「はい」
 今度は先生に声をかけてきました、先生も応えます。
「そうです」
「さて、今からそちらに戻ってじゃ」
 それでだというのです。
「先生にお話しようぞ」
「えっ、ですが」 
 九尾の狐の言葉を聞いてです、先生は驚いた顔で言葉を返します。
「長老さんは」
「ほっほっほ、わしは長老じゃな」
「そうではないのですか?」
「その通りじゃよ。わしは長老じゃよ」
 実際にそうだと答えた九尾の狐でした。
「京都の狐達のな」
「そうですね、ですからこうお呼びしました」
「左様か、それでじゃが」
「はい、長老は今は東京では」
「いやいや、わしは雲に乗ってな」
 そしてだというのです。
「瞬時に移動出来るからな。あと縮地法も使えるぞ」
「縮地法?何それ」
 王子は長老のその言葉を聞いて目を瞬かせて先生に尋ねました。
「先生知ってる?」
「瞬間移動のことだよ」 
 先生は王子にこう答えました。
「東洋では昔からある術の一つなんだ」
「ああ、テレポーテーションだね」
「長老はそうした術も使われるんだね」
「左様じゃ、だから今すぐにな」
 また長老の声がお話してきます。
「ではな」
「こちらに来られるんですか」
「うむ、それではな」
 こう言ってでした、、そのうえで。
 今度は長老が先生達の前に現れることになりました。先生達の京都への旅行は思わぬ展開になってきました。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧