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ドリトル先生と京都の狐

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第四幕その一

               第四幕  狐の長老
 すぐにです、真っ白な日本の着物と袴、それに足袋という格好のお年寄りが先生達の前に現れました。髪の毛は真っ白で後ろにロングヘアの様に伸ばしています。お髭のないお顔は皺が幾つもあってやっぱり吊り上がった目で細長いお顔です。腰は少し曲がっています。
 その人が出て来るとです、狐とお母さん狐は畏まって言いました。
「これは安倍様」
「ようこそ」
「堅苦しいことは抜きじゃよ」
 長老はその二人に穏やかな笑顔で応えました。
「同じ狐同士、畏まることもない」
「ですが私達の棟梁ですし」
「恐れ多いです」
「全く、年寄り共はわしを無闇に崇め奉るが」
 そのことについてです、狐の長老は困った顔で言うのでした。
「そういうことはな」
「止めて欲しいですか」
「それは」
「そうじゃ、わしはそうしたことは好まぬ」
 そう言ってです、先生達にも顔を向けて言うのでした。
「先生達もな」
「僕達もですか」
「左様、堅苦しいことは抜きじゃ」
 こう自分から言います。
「穏やかにな」
「それで、ですか」
「うむ、そうして話をしていこう」
「わかりました、それでは」
「もっとも先生はイギリスから来られたからな」
 このことについても言及されます、長老はイギリスについてもお話するのでした。
「わしもイギリスには何度か行ったが」
「それでもですか」
「うむ、景色はいいのじゃがな」
 どうにもというお顔での言葉です。
「料理がのう」
「何かどの人もそう言いますね」
「日本人はじゃな」
「はい、口に合わないと」
「うむ、わしもな」
「長老もですか」
「お茶が好きなのじゃがな」 
 この辺りとても日本人らしいです、しかも千年以上住んでいます。だからお茶にはかなりこだわりがあるみたいです。
「水が違う」
「日本のお水は軟水ですから」
「硬水は好きになれぬ」
 つまりイギリスのお水はというのです。
「どうにもな」
「そのこともよく言われます」
「わしとしては食べるものと飲むものは日本のものがよい」
 こちらの方がだというのです。
「本当にな」
「そこは仕方ないですね」
「先生には悪いがのう」
「いえ、そこはお気遣いなく」
 こう言うのでした、そしてです。
 長老は先生にです、お母さん狐の結核についてお話するのでした。
「まず治療法じゃがな」
「はい、それは」
「ある、安心して下され」 
 穏やかな笑顔での言葉です。
「そのことはな」
「では母は」
「うむ、助かる」
 そうなるというのです。
「安心してくれ」
「そうなのですか」
「ただ、調合していく薬がな」
 これがどうかとお話する長老でした。
「これがのう」
「何かあるのですか?」
「うむ、まず言っておくが人間のペニシリンとは違う」
 このことも断る長老でした。
「人間と狐では身体の仕組みが違うからのう」
「そうですね、そのことは」
 先生もわかっているから応えるのでした。
「わかります、だからこそ獣医さんがいますし」
「先生は獣医さんでもあるな」
「はい」
 このことはその通りです、先生は人間のお医者さんであると共に動物のお医者さんでもあります。だから狐の母娘も先生にお願いしているのです。 
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