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ハイスクールD×D 新訳 更新停止

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第2章
戦闘校舎のフェニックス
  第46話 自信

 
前書き
今回で修行終了です。 

 
「ハァッ!!」
木場が自前のスピードを活かして木刀で斬りかかってくる。
俺はそれを自分の木刀でいなし、すかさず木場に木刀を振るうが、木場は即座に回避し距離を取った。
今俺は木場の修行に付き合っていた。
ちなみにイッセーは塔城と修行している。
そして、イッセーが木場と修行している時は塔城と組手をやっている。
俺は木刀を構えながら木場の動きを観察し、次の一手を予測する。
機動力では木場の方が圧倒的に上手な為、俺は機動力は捨て動かず、斬りかかってくる木場の攻撃を捌き、カウンターを仕掛ける形で応戦した。
再び木場がスピードを活かした動きでさらにフェイントを混ぜて攻撃してくるが背後から振り下ろされる木刀を避け、木刀を構えると木場が首を守るように防御姿勢をとろうとし、それを察知し俺はすかさず脇腹を狙ったが、木場は驚愕しながらも手首を捻って俺の一撃を防いだ。
「相変わらず君のその戦い方は驚かされるよ…」
「もっとも防がれてるがな」
「でも、これが木刀じゃなくあの刀だったらと思うと正直怖いよ…」
木場が言うのは俺の戦い方もとい剣術の事である。
ただし剣術と言っても俺が独自に考えた荒削りな我流物だ。
その戦い方は所見相手に対する奇襲剣術である。
まず基本的に相手の急所を特に首だけを狙い斬りつけ続ける。
今は木刀だが当然実戦では雷刃(ライトニングスラッシュ)を使うわけで、首は人体の急所の中でも傷の深さによっては即死も有り得る為、相手は必ず防ごうとする。
無論、同じ箇所を連続して狙えばいずれ簡単に予測され防がれるようになる。
さっき木場が真っ先に首を守ろうとしたのもその為だ。
そして、ここからが本番だ。
真っ先に首を守ろうとする事は体が首に来ると反射的に察知しているわけだ。
だからこそそのタイミングで首以外を狙われれば反応が遅れるわけだ。
体の方が首に来ると判断している為、思考では防ごうとしても体が着いてこない訳だ。
だが、これが通用するのは初見の相手に限られる。
実際、昨日の木場との手合わせでは見事に決まったが、今日は強引にとは言え防がれたからだ。
それにこの戦い方は対人用であるため、バイザーみたいな怪物じみた体型を持つ相手に対してはあまり意味がない。
だからこそ体術と使い分けたり、雷刃(ライトニングスラッシュ)の切れ味強化と併用する事でようやく実戦で使えるわけだ。
「それにしても、僕のスピードを見切るなんてね」
「別に見切った訳じゃねえ。ただ単にお前の視線や挙動、周りの風景の僅かな変化から予測してるだけだ」
「…それ?ある意味見切るよりスゴいんじゃないかな?」
「お前だってまだ速くなれるだろ?」
「あれ?気付いてた?」
「相手の力量を測る目は自信ある方だ。ましてや、賞金稼ぎ(バウンティーハンター)は確実に相手を倒さなきゃならねえから、相手を見る目は養っておかねえとな」
「なるほどねえ」
「で?続けるか?」
「もちろん。次は引っ掛からないよ」
「そう何度も同じ手を使うかよ」
その後、俺達は再び手合わせを再開した。


「あ~生き返る~」
今、イッセーは燕にマッサージをやってもらっていた。
現在進行形で癒されているが、マッサージを受ける前は塔城と木場との修行で虫の息になっていた。
「あれぐらいで情けない」
「グフ…」
燕の容赦の無い毒舌が炸裂した。
もっとも口では毒舌トークだがマッサージは念入りに一生懸命やっていた。
あからさまに俺達にやるよりも長時間掛けて一生懸命やっていた。
(素直じゃねえな、後でその事で弄るとするか)
「うおっ!?」
イッセーのいきなり声を荒げたがすぐに楽になっていた。
燕の針治療によるものだ。
とことん徹底しているな。
このように燕にはマッサージや針治療による俺達の疲労回復の役割をやってもらっている。
鶇には家事方面、千秋はそれぞれの修行の手伝いと三人には修行のサポーターになってもらっている。
「それが終わって休んだら次は俺との修行だぞ」
「オ、オウ…」
「今度は重りを着けてだ」
「…部長に負けず劣らずの鬼だぁ」
俺の言葉にイッセーはうなだれた。
「…なあ明日夏?」
「何だ?」
「…俺って強くなれてるか?」
沈んだ声色で聞いてきた。
おそらく木場達との差に自信を無くし掛けてるんだろう。
「実力はともかく回避能力とスタミナは大分上達してるぞ」
「うん。僕らの攻撃を結構な確率で避けれるようになってきてるよ」
木場の言葉に塔城も頷いていた。
「昨日の自分よりは強くなってる。それは確実だよ」
「そうか。よっしゃ!!もっと頑張るぜ!!」
千秋の言葉にイッセーは気合いを入れ直していたが、それが空元気である事に気付いたのは俺と千秋だけであった。


「イッセー?」
「あ、部長」
夜に目が覚めてしまった俺は、キッチンで水を一杯を飲んだ後、部屋に戻ろうとしたら部長と会った。
「どうしたんです?こんな夜中に?」
「ふふ、丁度良いわ。少しお話ししましょうか」
その後、俺と部長は外にあるガゼボで話をした。


「…ふう~…今日はこんなもんか」
俺は夜、別荘の近くの森でとある特訓をやっていて、切りのいいところで中断した。
そのまま別荘に戻ろうとしたら、イッセーと部長がガゼボで話しをしているのを見かけ、気配を殺して近付き聞き耳を建てた。
「それって作戦ですか?」
イッセーが何かの本を読んでいる部長に聞いた。
「ええ。こんなマニュアル通りでは正直、気休めにしかならないけど」
「そんな事無いですよ。部長がこんな遅くまで頑張ってるんですし」
「…でも、今度の相手はフェニックス。貴方もよく知っているでしょ?不死鳥と呼ばれる聖獣よ。悪魔でありながら聖獣と同じ名前を持つ七十二柱にも数えられた侯爵家。そして、その能力は聖獣と同じ…不死身…」
「ッ!?不死身って!!そんなのありですかッ!!」
イッセーが驚愕に表情を染めていた。
驚くのも無理はねえか。
対戦相手が不死身って話になればな。
「…そうね。ほとんど無敵ね。攻撃してもすぐに再生してしまうものね。ライザーの戦績は八勝二敗ただしこの二敗は懇意にしている家系への配慮よ。わざと負けただけ」
「ッッッ!?」
部長の言葉にとうとうイッセーは言葉を失っていた。
「フェニックス家はレーティングゲームが行われるようになって急激に台頭してきた成り上がりみたいなものよ。当然よね、不死身なら絶対に負けないもの」
確かに不死身が相手じゃ体力的にも精神的にも疲弊は凄まじいだろう。
「…すみませんでした」
「何?」
「…俺があそこでライザーに食って掛かったりしたから…アイツと戦うはめに…」
「いいえ。むしろ貴方のおかげで話が速く進んで助かったわ」
遅かれ早かれ部長はライザーと戦う事になっただろうからな。
「最初から私が負ける事を見越してお父様達がゲームを仕組んだのよ。チェスで言うところのハメ手。スウィンドルね」
いくら純血を絶たせない為とは言え些か強引過ぎるな。
「あの…」
そんな中、イッセーが口を開いた。
「どうして部長は今回の縁談を拒否しているんですか?」
「私はグレモリー家の娘よ。どこまで行っても個人のリアスではなくあくまでもリアス・グレモリー。常にグレモリーの名が付きまとってしまう」
「………」
(………)
「その事は誇りではあるけど…やはりせめて添い遂げる相手くらいはグレモリー家の娘としてではなくリアスとして私を愛してくれる人と一緒になりたいのよ。矛盾した思いだけど…それでも私はこの小さな夢を持っていたいわ」
部長のそんな思いを込めた言葉にイッセーは…。
「俺、そんなの関係無く部長の事好きです。グレモリー家の事とか悪魔の社会とか正直さっぱりですけど、今ここに…こうして目の前に居るリアス先輩が俺にとって一番ですから!!」
「ッッッ!?」
(イッセー…)
俺はふと昔を思い出していた。
周りの大人や子供、さらには家族親戚にまで迫害されていた鶇と燕、その二人を救ったイッセーの事を。
あの時のイッセーも二人の生い立ちや周りの状況なんか関係無く二人を受け入れていた。
(本当に変わらずだよお前は)
そんな真っ直ぐなイッセーの言葉に部長は心を打たれた様なな顔をしていた。
「お、俺なんか変な事言いました?」
「何でもないわ。とにかく戦う以上は勝ちにいくわ!!」
「前に部長は紅髪の滅殺姫(ルインプリンセス)と呼ばれるほどの天才だって聞きました。その部長の初陣がそんな奴だなんて…」
「違うわ」
「え?」
「私の力は天から授かった物ではなくグレモリー家が代々培ってきた物の結晶…グレモリー家と私の物…だから私は負けない。戦う以上は勝つわ!!勝つしか無いのよ!!」
「…やっぱり部長はすごいです…それに引き換え俺なんて…ダメっす!!」
「イッセー?」
(イッセー…)
「ここに来てイヤっと言うほど分かりました!!自分が一番役立たずだって!!…たとえすごい神器(セイクリッド・ギア)を持っていたって…俺じゃ意味無いって…なのにいつも勢いだけで一人だけ突っ走って結局部長に迷惑を掛けてばっかで…俺なんて…俺なんて…全然ダメっす!!」
(………)
そう言って自分に自信を無くし掛けているイッセーを部長が優しく抱き締めた。
「ッ!?」
「自信が欲しいのねイッセー?いいわ、私が貴方に自信をあげる」
「…自信?」
「そうよ。だから今は休みなさい。体と心を少しでも。眠れるまで私が傍にいてあげるから」
「ッッッ!!」
イッセーはそのまま部長の胸で泣き始めた。
(部長が居れば大丈夫か)
俺はその場を後にし、別荘に戻った。


合宿八日目、俺達はいつもイッセーと木場が剣術修行をしている場所に集まっていた。
そんな中、部長が…。
「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使いなさいイッセー」
「え?でもこの合宿中は使っちゃダメだって部長が…」
そう、イッセーはこの合宿中赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の使用を禁止されていた。
「私の許可無しでわね。相手は祐斗でいいかしら?」
「はい部長」
木場が応じた後、イッセーと木場が向かい合った。
「手加減はしないよ!!」
そう言い木場は木刀を構える。
「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)ァァァッ!!!!」
イッセーも赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を出す。
その後、部長の指示により倍加を繰り返す。
ざっと二分、十二回倍加を行った。
「ストップ。イッセー分かる?今までの貴方だったらここまでの強化に耐えられなかったはずよ。貴方だってちゃんと修行の成果は現れているのよ」
「ッッッ!!」
確かに以前のイッセーだったらここまでの強化はできなかった。
「始め!!」
「行くぞッ!!赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)ッ!!」
『Explosion』
今の音声が引き金に倍加は中断され強化の状態を一定時間維持できるようになった。
今のイッセーの実力はこのメンバーの中でも引けを取らなくなっていた。
「祐斗!!」
部長の掛け声を皮切りに木場がスピードを活かし、イッセーの上を取ったがイッセーもすかさず危なげなく木場の一撃を籠手で防ぎ、蹴りを放つが木場もすかさず後方に跳んで避ける。
木場は今度は横から攻めるがイッセーはしゃがんで避け、籠手を装備している左手で殴りつける。
タイミングはよかったが木場も流石、木刀で防御し、勢いを利用して再び後方に跳んだ。
「イッセー、魔力の塊を撃つのよ!!」
「はあぁぁぁッ!!!!くっ!!やっぱりこれだけ!!」
できた塊はお世辞にも大きいとは言えなかった。
そんな中でも木場は走り出す。
「撃ちなさい!!」
「このぉぉぉッぉぉぉぉッ!!!!!!!!」
ズバァァァァッァァァッ。
撃ち出された魔力は強大な一撃となって木場に襲い掛かる。
「ッ!?」
木場はとっさに避け、魔力は後方の山に向かって行った。
ドガァァァァッァァァッ。
衝撃が俺達を襲う。
衝撃が止んだ後、俺達は山の方を見た。
「あらあらうふふ」
「わあ~~」
「……山が」
「…無くなってしまいました」
「…こいつは」
「…すごい」
「………」
見えたのは大きく抉られた山であった。
(末恐ろしい物だな)
「これが俺…の…力…」
イッセーは力尽きたのか膝を着いた。
「木場?あれを食らいそうになった感想はどうだ?」
俺は木場に感想を求めた。
「…正直死ぬかと思ったよ…さっきのカウンターも結構肝を冷やしたよ…」
バキッ。
つき出された木刀が見事に折れた。
さっきのカウンターの一撃ですでに役目を為せなくなっていたようだ。
「…あの一撃はまさしく上級悪魔クラスの一撃だったよ」
「…確かに」
これは案外良い勝負をしそうだな…勝敗はともかく。
「イッセー!!貴方はゲームの要よ…おそらくイッセーの攻撃力は状況を大きく作用するわ!!私達を…そして何より自分を信じなさい!!」
「…みんなを…自分自身を…」
おそらくイッセーはこれで自信を持てただろう。
(俺の方も特に問題は無いな…後は…ふッ)
ちょっとばかし面白くなってきたなと思う自分が居た。  
 

 
後書き
次回からライザー戦突入です。
ちなみに明日夏が森で何をしていたかは…だいたい想像できるでしょうね。 
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