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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第五十幕 「囁きの黒、戸惑いの白」

 
前書き
総合評価1000点突破+お気に入り登録数100突破。読者のみなさんありがとうございます。
他の二作品が点が溜まるの妙に速かっただけに遅咲きって感じがします。
記念に番外編書きました。機を見て投稿します。

12/11 誤字・ミス修正 文章調整 

 
前回のあらすじ:白い道と黒の道、汝が進むはどちらの道か


体が動く。俺の意志とは別々に、身だけが勝手に動いている。まるで世界がスローモーションになったかのようにすべての動きが緩慢に見える中、唯一俺の思考と勝手に動く体だけが普通に動いている。

何が起きている?俺の腕を掴み無理やり動かしているのは何だ?現実味のないぼやけた手のような形に変わった泥のようなそれが、万力のように恐ろしい力で俺の体を無理やり動かしているように見えた。現実にこんなものがある訳がない。だからこれも俺の見間違いか何かのはずだ。なのに、俺の体はなぜ動かない?

ふらついた体が操られるようにぐるんと動き、右手の雪片弐型を手放して量子化すると同時に左手に雪片参型を握る。展開速度は不自然なほど速く、その切っ先はこちらに向かう箒の”心臓に”ぴったりと向けられていた。同時にハイパーセンサーにIS本体からの情報が表示された。

≪警告 零落白夜の対人安全確保プログラムが不十分です 今すぐ設定し直してください≫

対人安全確保プログラムとは、確か零落白夜が相手ISの操縦者を傷つけないように組み込まれたプログラムだ。これがあるから雪片弐型も参型も公式の試合で零落白夜を振るうことが出来る。その警告が何を意味するか一夏は一瞬分からなかったが、ふと休暇中にクラースの言っていた言葉を思い出す。

――――シールドそのものを無効化する“零落白夜”なら対人安全確保プログラムを弄れば操縦者を直接攻撃することも出来る―――

ぞくり、と背筋に氷のように冷たい悪寒が流れる。もし俺がこのまま零落白夜を発動させ、なおかつ箒がこの一刀を捌ききれなかったら、果たしてどうなるか。
白式は腹部と脇腹、そして控えめだが胸にも装甲が存在する。対する打鉄の装甲は女性の胸部を圧迫しないように脇の身にしか装甲がついていない。つまり、シールドバリアーがなければその剣先は当たれば確実に箒の心臓を抉るだろう。冗談でも許されるものではない。





だがそれの何がいけない?


(・・・え?)


その程度で抉られるような心臓なら、今のうちに抉っておいた方が箒のためだろ。


俺の心臓が抉られたかのように不自然に跳ねた。聞こえたそれはとても聞き覚えのある声――それはそうだろう。だって、この声は、俺の声なのだから。意味が分からなかった。何をどうしたらそんなふうに考えが帰結するのか、理解したいとも思わなかった。でも、何度反芻してもそれはやはり俺の声だった。
幻聴だ、と自分に言い聞かせるが、同時にこれは幻聴なんかではないと確信している自分もいた。


(・・・何を考えてる?”俺は今、何を考えた?いや、そもそも俺が考えたのか、これは!?)


生意気なんだよ、昔は俺より弱かったくせに、女のくせに!才能ない癖に!


(違う!強かったとか弱かったとか、男とか女とかそんなのは関係ない!!)


そうだ、俺はまだ全然本気を出しちゃいない!ここいらで一発逆転だ!!俺が本気を出せば負けるはずがない!俺がヒーローだ!!


(止めろ!俺はそんな事考えてないし、今更逆転なんてできない!!)


頭の中を次々に(よぎ)るあまりにも醜い思考に混乱が加速する。そんな理論も何もないガキみたいなことを考えてはいないはずなのに、その言葉を放つ自分が容易に想像できて吐き気がした。まるで自分が本当に考えているようで、それが箒とは対照に思えて自分が惨めになった。
そして何より、その声を発する俺の声が、心底愉快そうにしているのが耳を塞ぐぎたくなるほど嫌だった。




何言ってるんだ一夏(おれ)、力ならお前(おれ)にもあるだろ。ほら、お前(おれ)の腕を見てみろよ。そいつを使えばあんな女イチコロだぜ?

(――え?)

突然、(あいつ)が自分に話しかける。姿は見えないが、もし顔があるのならきっとそれは醜悪な笑みを浮かべているのだろう。訳も分からないまま腕を見た一夏は一瞬息が止まった。
白式の左手が、純白のはずの装甲が、あの泥のように真っ黒に変色していた。

(ッ~!何でだ・・・なんでこんなものが見える、なぜこんな声が聞こえる!?俺は幻覚か白昼夢でも見てるのか?夢ならとっとと醒めろよ!)

その泥が自分の体に張り付いていることが、どうしようもなく不快だった。まるで自分の心にある醜悪さが形を成しているようで、目を背けたくなった。慌てて振り払おうとするが、全身は自由が利かないまま。不快感と焦りばかりが募る。
ふと耳をすますと、俺の声をした何か声を殺して嗤っていた。下手をすれば本当に箒は死ぬというのになぜ(おまえ)はそんな態度が取れる、と頭が瞬時に沸騰する。

(お前は!さっきからふざけてるのか!?)

フザケてんのは一夏(おれ)だろ?全くあんなのに負けて悔しくないとか・・・思考が完全に負け犬だぜ。ほーら、とっとと止めないと白式が箒の血潮を浴びて”紅式”になっちまうぜ?まぁそれも格好良くていいかもな!はははっ!


(止めろ!何でこんな事をする!?お前が俺なら何の意味があって・・・くそ!動け!動けよ!俺の体だろうが、なんで俺の思い通りに動かないんだよ!?)


ああん?そんなの決まってるだろ。お前(おれ)は俺の――




その言葉が最後まで聞こえることはなかった。突然白式の体が光り、泥と声をを振り払った。



――貴方はまだ出てきちゃダメ!(いちか)には早すぎる!!



(あいつ)の声は、少女の声で遮られた。(あいつ)の声が遮られて聞こえなかった事がなぜか救いに思えて、安堵する反面複雑な気分にさせられる。
早すぎる、とはどういうことか。それを考えるよりも早く、俺の感覚が戻ってきていた。そして、それと同時に俺は自分が瞬時加速しながら雪片参型に零落白夜を纏わせ箒に突っ込んでいることに気付いた。

刃の向かう先は、当然箒の心臓。

ハイパーセンサーで箒の様子を見ると、反撃不能と確信したタイミングでカウンターをしかけてきた俺に動揺してわずかに動きが鈍っていた。これは、まずい。心臓ではなくてもこのままだと刺さる。箒の腕前を疑う訳ではないが、今の一夏には奇妙な確信がある。
悪夢を現実にするなど絶対に嫌だ。だから抵抗する。全力で抵抗する。

「なんっ・・・!?」
「っ!!くあぁぁぁぁぁあああ!!」

瞬時加速中の方向転換は空気抵抗のせいで錐揉みになり操縦者に大怪我を負わせる可能性がある、という教科書の何処かに載っていた情報を思い出しながらも俺は精一杯腕を捻った。
認めない。看過するわけにはいかない。自身のライバルの血でISを染め上げるなどあってはならない。何より(おさななじみ)に刀傷を負わせるということを俺自身が許容できない!

そして、辛うじて逸らした刃は箒の剣と激突し――

ばきぃぃぃん!!

「やはり量産品の刀では・・・っ!」

恐らく幾度と繰り返した剣と剣のぶつかり合いのせいで、あの短期間のうちに恐ろしく摩耗してしまったのだろう。普通の剣撃ならこうはならないが、ぶつかったのが剣術メインの戦法を取る者同士だったことも災いしたのだろう。

「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
防ぎきれなかった切っ先は――それでも激突の衝撃で僅かに箒の体から逸れていた。それに一安心しつつ、一夏は参型で打鉄のシールドバリアーの表面部分とフロントスカートを切り抜いた。ぞん!!という鋭い音と共に振り抜かれた刃は容赦なくシールドエネルギーを食らいつくし、打鉄の躯体から力が消滅する。

「くっ・・・見事だ」

≪箒機・打鉄 戦闘不能!≫



アナウンスに会場の歓声が爆発する。一夏にしてみれば恐ろしい経験だったのだが、観客から見れば逆転からのさらにどんでん返しという非常に熱い戦いに見えたのだろう。

自分の勝利の実感がない一夏はしばし呆然としたが、すぐさまISから放たれる警告音に我に返る。その場を瞬時に離れた瞬間、一夏が先ほど立っていた地面が爆発した。遠距離からの狙撃である。

「・・・っ!そうだ、佐藤さんを助けに行かないと!」

一夏はすばやく身を翻して佐藤さんの位置を確かめようとし、そこでふと不安がこみ上げて対人安全確保プログラムを確認する。あれは白昼夢で幻覚だったと自分を納得させる材料が欲しかったのかもしれない。結果として判断材料はセンサモニターに表示された。

(・・・プログラムは全部アクティブになっている。やっぱりアレは幻覚だったのか・・・?)

すばやく全安全プログラム設定画面を閉じながら、一夏は気持ちを切り替えて佐藤さんのもとへと飛び立った。




飛び立った一夏を見上げた箒は、あと一歩の所で虚を突かれた自分の未熟を悔やみつつ、一夏が最後に放った一刀に剣士として疑問を感じていた。

あの剣には確かに強い意志が感じられた。しかし――

「一瞬だったが、あれは殺人刀(せつにんとう)・・・活人剣と対を為すものだった・・・」

考え過ぎだろうか。だが反撃してきた時の一夏の様子は何処かおかしかった。まるで自分の剣に自分で焦っているかのような・・・力に振り回されたかのようだった。それに剣は自分を映す鏡・・・その鏡が「あれは一夏ではない」と言ったのだ。ならばそこには”何か”がいたはずである。

試合の邪魔にならないよう補助員にピットに戻されながらしばらく考え込んだ箒は結局考えがまとまらないままもう一度空の一夏を見上げる。佐藤さんと合流して何かを仕掛けようとする彼の足運びはいつも通りに見えた。

「杞憂・・・であればいいが」

一応後で千冬に報告しておこうと決め、箒は試合の顛末を静観する。
 
 

 
後書き
こういう描写って今一要領が分かりません。もう二度とやりたくない・・・ 
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