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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第四六幕 「嵐の前、甲」

 
前書き
イメチェンがてら小説情報の文を書き換えました。

ち、違うんです。サボっていたわけじゃないんです。ただルイージマンションと葛葉ライドウとどうぶつの森とスパロボαのプレイと小説を纏めてやっつけようとしただけなんです。信じてください!
 

 
前回のあらすじ:貴様たちこそ全滅だ


ふと重い(まぶた)を開けると、周囲は霧に包まれたかのように真っ白だった。
目を凝らせど凝らせど先は見えず、足元は泥のようにぬかるんでいて足に纏わりつく。


とりあえず歩き始める。足元がぐちょぐちょと不快な音を立てるが、特に臭いなどは感じない。ただ足が動かしにくいため、次第に足取りは重くなっていく。立ち止まっても沈むことはなかったが、纏わりつく不快な黒い泥のようなものから抜け出したくなって歩調を早める。


ここはどこに通じているのだろうか。どうして自分はここに一人でいるのだろうか。はたして自分はどこかにたどりつけるのだろうか。さまざまな考えが頭をよぎっては泥に沈んでいく。やがて考えることも尽きてきたころに、足元に何かがぶつかった。


何事かと思えば、そこには真っ白な道らしきものが存在した。その道に乗る。買ったばかりのキャンパスのように真っ白な大理石の道に、足にへばりついた泥のようなものがぼとぼと落ちて汚れるが、そんなことより泥から抜け出せたことに安堵を感じた。


こつ、こつ、こつ、と靴と石がぶつかりあう子気味のいい音を立てながらその道を進むと、道が二つに分かれていた。ひとつの道は真っ黒な大理石で出来た道。もうひとつは今までの道と同じ真っ白な道だ。
何となく、自分は黒い道へと行きたく思っている。そちらに行けば、誰かがいるような気がする。だが、今まで歩んだ道と同じ道を行ってもいいのではないかとも思う。どちらの道へ行こうかその場で悩んでいると、誰かの声が聞こえた。


声の方を向くと、そこには見覚えのある銀髪の少年が立っていた。

――皆、こっちにいるよ

少年は白い道の続きに立っていた。

――こっちに、来ない?

そちらに皆がいるのか。ならばそちらに行った方がよさそうだ。教えてくれてありがとうと伝えると、銀髪の少年ははにかんだ。
ふと疑問に思う。自分の知るこの少年はこんな人物だったか?普段はもっとそっけなく、感情もほとんど表わさないような人物だったと記憶しているのだが。それを考えるとほぼ同時に、黒い道へ惹かれる思いが急に膨れ上がる。思わずそちらの道を見ようとしたその時、自分の手が少年によって握られた。

――こっちに、来て

そこまで言われると、さすがに迷いも薄らぐ。心の天秤が白い道へと急激に傾くのを自覚した。今一度黒い道を見る。あの先に何が待っているのかが気になるが、後でまた来ればいいかと自分を納得させた。そして銀髪の少年に手をひかれるがままに白い道の続きを歩もうとして―――



突然、驚くほど強い力で誰かに背後から両肩を鷲掴みにされた。驚いて足を止め、すぐさま後ろを振り向こうとするが、肩を掴まれているため思うように体が動かない。そのまま再び泥の中に引きずり込まれる。
銀髪の少年がこちらに手を差し伸べるが、それは後ろからつかみかかった誰かの手によって払われる。
その時、肩から手が離れたために後ろの誰かを首をひねって確認しようと試みた。視界に移ったその“誰か”は・・・







「おーりむーらくーん?そろそろ起きてくれないと・・・財布のマジックテープをバリバリしちゃうゾ?」
「やめて!!・・・・・・はっ?い、いつの間に寝てたんだ?」

どうやら教室で堂々と居眠りしていたようだ。数か月前までは居心地が悪くてしょうがなかったこの学園に自分が馴染んだ証拠かもしれない。
それにしても、何か変な夢を見ていたような気がするのだが・・・はて、どんな内容だったろうか。人間は寝ている間に実はたくさんの夢を見ているらしい。そんな夢を一つ一つ覚えている人間などいないだろう。だから思い出せなくても問題はないのだが、「夢を見ていた」という記憶あるだけに内容を思い出せないのがもどかしい。

「で、そろそろいいかな?」
「え?あ、佐藤さん?起こしてくれてありがと。それで、どうかしたのか?」

わざわざ起こしてやったのに待たされたせいか、佐藤さんは若干不機嫌そうである。が、そこでぐちぐち言わないのが佐藤さんのいい所。先を促したら普通に話してくれた。

「トーナメント表が発表されたから皆見に行っちゃったよ?私たちも確認しに行かないと」
「そうか、ようやく・・・よーし、さっそく確認しに行こうぜ、佐藤さん!」

とうとう学年別トーナメントが始まるという実感と、早くユウと自分の名前を確認したいという思いを抑えきれず、一夏はダッシュでトーナメント表の発表場所に急いだ。それを見送る佐藤さんはやれやれといった風に溜息を吐く。

「そんなに急がなくてもトーナメント表は逃げないってば・・・まったく子供だねぇ」

織斑一夏という男は良くも悪くもガキっぽい所がある。すぐに感情的になる、すぐに調子に乗る、馬鹿正直、妙に正義感が強い等々・・・精神年齢40歳越えである佐藤さんはその青臭い所に少々ついていけない部分があったため、タッグの練習を積んだこの数日は何度も辟易させられたりした。
それでも不思議と憎めないのが彼の人間の魅力と言える。だからと言って自分はあれに恋愛感情など湧かないのだが。

「佐藤さーん!さっさと行こうぜー!」
「はいはい慌てない慌てない」

逸る気持ちを抑えきれずに興奮している一夏を収めつつ、例の表を確認しに行く二人。その姿は同級生というよりも子の世話を焼く親のようであった。




織斑一夏の名が刻まれているのはAブロック。そして、そこから少し離れた場所に、一夏が戦いたくてしょうがない一人の男の名も刻まれていた。

「ユウもAブロックか・・・両方勝ち進めば3回戦でぶつかれるな」
「そういうのを取らぬ狸の皮算用って言うんだよ、一夏?」
「ユウ!お前も来てたのか!」
「そりゃここが発表場所だから来るでしょ普通・・・」

ちょっと呆れ顔で後ろに立っていたのはユウこと残間結章とパートナーの凰鈴音の二人。二人とも普段とは違う緊張感に身を包んでいる。一夏は知る由もないが、彼らは既に一夏を倒すことより簪をシャルの手から救い出す方に精神を傾倒している。

「こっちは2回戦でシャルと簪のチームにぶつかるだろうからね・・・一夏たちと戦えるかはそれ次第なんだ」
「あの二人は絶対手ごわいと思うわ。悔しいけど、何度シュミレーションを練っても勝率は5割を超えなかった・・・」
「・・・でも負ける気はないんだろ?」
「「当然!」」
「俺もだよ。佐藤さんもそうだろ?」
「ま、せっかくの大会なんだから勝つ気で行かなくちゃね」

口ではそう答えた佐藤さんだったが、その顔は少し硬い。それも無理らしからぬことだろう、と一夏は考える。何せ自分たちの1回戦の相手は“あの二人”なのだから。







≪織斑一夏and佐藤稔ペア VS ラウラ・ボーデヴィッヒand篠ノ之箒ペア≫

一夏は箒の実力をよく知っている。今まで剣道はもとよりISで求められる剣術もよく教わった。だからこそ分かる。箒は、少なくとも接近戦での技量は1年生最強だ。セシリアも相当な技量だったが、箒と剣一本で戦えば確実に箒が勝つという確信がある。足運び、剣筋、踏み込みの速さや振りの正確さ、空中での機動も無駄がなく、今までのIS戦では碌に構えを切り崩すことができなかった。時々勝ってもそれは機体の性能差ゆえのタッチの差。スペックの差を超えるだけの圧倒的な気迫と確かな技術を箒は持っていた。

そして、もう一つ気にかかるのはもちろんタッグのラウラだ。誇り高きドイツ軍人であり代表候補生、さらに千冬の指導も受けたことがあるとあっては実力もその肩書相応のものであることは想像に難くない。佐藤さんは彼女のISについていくつか情報を集めたらしいが、既に模擬戦で白式改の戦いを見せてしまっている以上情報面での不利は否めない。

「ここで負けたらジョウさんに合わせる顔もないし・・・気合い入れていこうか、織斑君?」
「そうだよな、たった3日ではあるけどジョウさんの特別訓練を受けたんだ!」

そう、それだけはこちらのアドバンテージだ。この3日間、俺はジョウさんに徹底的にしごかれた。片手間で佐藤さんも。今の動きの問題点とその改善方法、姿勢や癖の矯正など多岐に(わた)る指導を経て、二人の技量はこの短期間で上昇している。はっきり言って突貫工事にしては出来過ぎなくらいの仕上がりだ。

もうそろそろ1回戦が終わり、自分たちの戦う2回戦始まろうとしている。ウォーミングアップも作戦会議もすでに済ませた。後は戦って結果を出すのみだ。

「ねぇ、織斑君。ちょっといい?」
「ん?どうした佐藤さん?」

ふと立ち止まった佐藤さんにつられて一夏も立ち止まる。この期に及んでまだ何か話すことなどあるのか、と思っていた一夏に対し、ぱちっ♪とかわいらしいウインクと共に営業スマイルで佐藤さんはこう告げた。

「あのね・・・もしこのトーナメントを勝ち残れたら、ベル君との対談の場を設ける交渉をしてあげるよ?」
「な ん で す と !?」

それが本当ならば・・・長く活動を続けてきた多くのベルとも会メンバーの努力がついに形となって現れるということ。初日の拒絶から早三ヶ月以上・・・とうとう彼としっかり話し合える機会が巡ってくる!言葉による相互理解を経て、我々の関係は新しい段階へと進むのだ。
佐藤さんの甘言にものの見事に言葉に盛大に釣られる一夏だった。
 
 

 
後書き
実は最近迷ってることがあります。
すばり、このストーリーが本格的にオリジナル路線を突き進む切っ掛けになる「とあるイベント」を何所に入れようかという迷いです。タイミングとしては5~6巻あたりのタイミングから発生させることが可能になる予定なんですが・・・そうすると8巻辺りの話はほぼ跡形もなく消し飛ぶからそれでよいものか、と言う感じで。 
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