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タンホイザー

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第一幕その五


第一幕その五

「あの男だが」
「懺悔していますな」
 金髪に青い目の若い男が彼に答えた。この辺り、いや帝国の中で最も有名なミンネジンガーであるヴァルター=デア=フォン=フォーゲルヴァイデである。
「どうやら」
「うむ、そうだな」
 ヘルマンはヴァルターのその言葉に頷いた。
「どうやらな」
「外見を見ますと」
 白髪の男もいた。この男もミンネジンガーでありビテロルフ=フォン=グローセヒルドという。
「騎士のようですが」
「では我々と同じか」
 赤い髪に黒い目の若い騎士が述べた。ラインマル=フォン=ツヴェーターである。やはり彼もミンネジンガーである。へルマン以外にここにいるのは全てそうであった。
「騎士か」
「それにしても」
 また一人のミンネジンガー、黒い髪にブラウンの目の最も若い男が口を開いた。ハインリヒ=デア=シュライバーという男だ。
「何処かで見たような」
「そうだな、確かに」
 ヘルマンもハインリヒの言葉に頷く。ここで茶色の髪に緑の目の最後の一人が口を開いた。この中では最も優れたミンネジンガーと言われているヴォルフラム=フォン=エッシェンバッハである。
「お待ち下さい、領主よ」
「どうした?」
「あの男はまさか」
 その騎士を凝視して語る。
「ハインリヒではないでしょうか」
「何、ハインリヒといえば」
「まさか」
 今のヴォルフラムの言葉にヴァルターとビテロルフが反応する。
「タンホイザーか」
「あの男が」
 そしてラインマルとハインリヒも。誰もが今のヴォルフラムの言葉に驚きを隠せない。
「間違いない、彼だ」
「まさか今頃」
「戻ってきたというのか」
「領主よ」
 ラインマルがヘルマンの側に来て囁く。
「確かに遠目には似ています。いや、何よりも」
「うむ」
 ここで彼等はその騎士の服も見た。緑の服とズボン、それに同じ色のマントと大きな竪琴。どれも彼等がよく覚えているものである。
「あの服装はやはり」
「ハインリヒ、いやタンホイザーのものだな」
「間違いありません」
 ビテロルフもまた言う。
「タンホイザーです、あれは」
「戻って来たのか、遂に」
 ハインリヒは感慨を込めて呟く。
「このチューリンゲンに」
「呼ぼう」
 ヴァルターが提案した。
「彼を。ここに」
「そうだな。よし」 
 ヘルマンは彼の言葉に頷いた。そうして判断を下したのであった。
「呼ぶぞ」
「はい」
「タンホイザー!」
 それぞれの口でこう呼んだ。
「タンホイザー、君なのか!」
「その声は」
 果たしてその緑の騎士はその呼び声に立ち上がった。そのうえで周囲を見回し彼等の姿に気付いたのであった。
「貴方達が。どうしてここに」
「それは我々の言葉だ」
 皆タンホイザーのところに近付いてきていた。ヘルマンが彼等を代表して彼に告げた。
「何故卿がここにいるのだ」
「そうだ、我等を捨てたのではなかったのか?」
「それがどうしてだ」
 騎士達も口々に彼に問う。
「それがまたどうして」
「ここにいるのだ」
「講和か」
 ビテロルフがタンホイザーに直接問う。
 
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