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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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役者は踊る
  第七幕 「専用機は伊達じゃない」

 
前書き
「感想下さい」って催促する人の気持ちが理解できるようになった今日この頃
とは言っても「いい感想思いつかない」って時もよくあるんですけどね 

 
前回のあらすじ:軟弱少年、出番なし


最初に動いたのはセシリアだった。
最小限の動きで白式へと狙いを定め、トリガー。かなりの早撃ちだった。
だがここ一週間剣道に打ち込んだ成果か、ロックオン警告に反応した一夏は辛うじてその砲撃を躱した。レーザーの光が自分のすぐそばを通過していく。

「おっと!」
「初弾を躱しましたか・・・ですが!」

素早く体勢を変え、一夏を中心に半円を描くように次々レーザーを発射するセシリア。高速で移動しつつ、しかし狙いは正確に撃ち込まれるレーザーの熱が一夏の焦燥を募らせた。勘を取り戻したとはいえ敵の弾を避ける訓練までしていなかった一夏は、避け切れずに何発か喰らってしまう。

「ぐっ・・・!流石に手馴れているな」
(反応は悪くない・・・少しばかりぎこちないのは機体のメンテナンス不足か・・・
 流石にまだ第一移行を済ませていないなんてことはないでしょうが、しばらく様子見ですわね)

レーザーを次々発射しながら一夏の動きを冷静に分析するセシリア。
戦いというものは何をしてくるか分からない素人が一番怖い、とは誰の言葉だったか。
しかし一夏側も黙ってはいない。だんだんセシリアの動きに慣れてきたのか、反応速度が上がってきている。放たれたレーザーを避ける動きもだんだん無駄がなくなってゆく。だが、それでもすべてを避け切れているわけではない。



 = = =



「どんどん反応が良くなってきている・・・代表候補生であるセシリアさん相手にこれだけ動けるなら大したものですね」
「ええ。一夏本人は鈍っていると言っていましたが、実際に稽古をしてみたら剣道のやり方を忘れていただけで他は全く問題ありませんでしたしね」
「残間兄弟との組手に助けられたな・・・だが、このままでは勝つのは難しいだろう。
 ハッキリ言ってオルコットの実力はあんなものではない。手加減されているな」
(ちょ、ワンサマー明らかに原作より動き良いよ・・・セッシーは慢心がない分さらに強くなってるけど。この辺の結果は変わらないかな~?)

千冬、山田、箒、ついでに何故かやってきた佐藤さんの四名はモニタールームで試合の内容を観戦していた。チカとユウはISのフォーマット、フィッティング中である。
一夏の反応自体はさらに研ぎ澄まされている。だが、勝つにはあの射撃を突破しなければならない。普通なら飛び道具で牽制という手が使えるが、そもそも白式改は敵を斬るか自滅するかの二択しか存在しないような機体。使い勝手のいい武器など存在しない。故に求められるのは先手必勝と一撃必殺。今の一夏にはハードルが高すぎる。

「さぁて、どう戦い抜くかな・・・?」
「きっと勇気があれば切り抜けられます!頑張れ織斑君!」
((というか佐藤(さん)は何でここにいるんだ?))

いつの間にかモニタールームで観戦モードになっている佐藤に内心首をかしげる千冬と箒であった。



 = = =



(ギリギリ避けられてるとはいえ、このままじゃ近づくのは難しいな・・・)

一夏とて今の状況が分かっていないわけではない。避けられるからといって射撃戦仕様の機体に接近するのは簡単なことではない。実際問題、今の一夏はブルー・ティアーズの射撃を潜り抜けられずにいる。

――そういえば、チカさんはこう言ってたな。「性能だけなら現行最強クラス」、「懐に入るための肝であるスラスターを増設した」。つまり、速度ならこちらに分があると考えて良いだろう。これは重要なポイントだ。
そして俺が今使えそうな技術・・・そうだ。試したことはないが、ユウに教えてもらった瞬時加速(イグニッションブースト)なら・・・ぶっつけ本番なのが怖いが、懐に入るにはそれしかないか。
勉強に付き合ってくれた親友に感謝しつつ、一夏はたった二つしかない武器の一つ――弐型より少し小ぶりで振り易そうな参型を展開し、手に握る。
一次移行が済んでいないせいかまだ零落白夜は使用できないようだ。
しかしどうせ最初から使いこなすのは難しいだろうと自分を納得させることにする。
相変わらず降り注ぐレーザーを避けながら、ゆっくり呼吸を整え、正面を睨む。

「ブレード・・・先ほどから何もしてこないことからも顧みるに、近接戦闘で真価を発揮するISのようですわね」
「手の内はバレてるか・・・!こうなりゃ突撃あるのみだ!」

作戦はこうだ。先ず自力で近づけるところまで接近する。
これ以上無理だと思ったら一か八かで瞬時加速を使用、そのまま懐に入り込んで相手をひたすらに斬る。作戦もクソもない内容だが、今の自分にはこの戦法しか出来ることがないのだから仕方がない。

「突然正面切って向かってくるとは・・・自棄にでもなりましたか?」
「さぁ、どうかな!!」

所々に旋回や方向転換を織り交ぜながらセシリアに突っ込んでゆく。レーザーが一発掠り、シールドエネルギーがまた少し消失したが、構わず進み続ける。
射撃を受けていて少しだけ分かったことがあるが、射撃にはどうもリズムというものがあるようだ。例えばこちらが速く動いているときは余り乱発せずにその進路を邪魔するように撃ち、動きが遅くなったら手数を多めに放ってくる。前進しようとすると直線状に来ないよう旋回しながら打ち込み、逆に後退するときはしっかり狙いを定めて撃ってくる。
長く砲撃に晒されているうちに、一夏は少しずつそのリズムを体で覚え始めていた。

(先ずは周囲を回るように加速!)

速度を上げると思った通り放つ弾数が少し減った。その分避けるのに神経を使うが・・・

(よし、ここだ!!)

連射しすぎてエネルギーの無駄撃ちを抑えるためか、セシリアは暫く撃ってから次の射撃に入る時に少し間を開ける。その間を利用して――ダンッ!!と力いっぱい地面を踏みしめて飛び上がる。無理な姿勢変更に軽く機体が軋むが、PIC(パッシブイナーシャルキャンセラー)がうまく処理してくれたようだ。踏込の瞬間は動きが止まるため少々賭けに近い所もあったが何とか成功。セシリアも初めて少し驚いた表情を見せる。

「・・・この短期間で射撃の癖を掴んできましたか!」
「驚くのはまだ早いッ!!」

跳び上がると同時にスラスター内にエネルギーを取り込み、圧縮。あちらがリズムを崩されているその隙に――

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

瞬時加速、発動。白式の全スラスターが一斉に咆哮し、爆発的な加速を生み出す。加速しながらタイミングを計る。

―――まだ。

刹那の時間を自身の集中力で極限まで引き延ばす。

―――もう少し。

0,01秒にも満たない、自分の間合いとセシリアの位置が重なる瞬間を見極める。

―――そこだ!


「あらあら、やはり勉強不足が祟ったようですわね」
「――なに!?ぐあぁぁぁ!!?」

完全な意識外の方向から2筋のレーザーが飛来し、俺の加速を完全に殺した。
一体何が――と考える前に急いでセシリアから距離を取る。先ほどまで自分が居た空間にライフルから放たれたものとは明らかに違うレーザーが通り抜ける。

「そうか、第3世代兵器・・・!!何時の間に展開を・・・!?」
「おや、一応知識はあるのですね。しかし・・・私がコレを起動させた以上、もうあなたに休憩は許されなくてよ?」
「クソッ!あと少しって所で・・・」

一夏の目に映った物・・・それはまるで従者のようにセシリアに従う4つのしもべ、連合王国が技術の粋を集めて開発した分離式無線高速機動兵装“ブルー・ティアーズ”の姿だった。



 = = =



「これは・・・マズイな」
「マズイですねぇ」
「あ、このコーヒーオイシイ。いい豆使ってますねぇ・・・」
「・・・佐藤は本当にここへ何をしに来たんだ?」

上から順に箒、山田、佐藤さん、千冬である。

「ライフルだけでもあれだけの立ち回りを見せたというのにBT兵器まで使うとなると・・・」
「織斑君に勝ち目はないね」
「無いな」
「無いですねぇ。入試でも凄く強かったですし」
『みなさんちょっと薄情すぎやしませんか!?』
「「「そんなこと言ったって(言っても)・・・なぁ(ねぇ)?」」」

ピットにいたユウから批難の通信が入る。ちなみに彼は既に準備万端である。
チカさんは先ほど用事があるからとピットを出て行ってしまったためいない。
親友のピンチにそろってあきらめムードの女性陣だが、それは決して根拠もなく言っているわけではないことを山田先生が説明する。

「セシリアさんの使うBT兵器はその性質上オールレンジ攻撃が可能なんです。ライフル一丁にも手こずっていた織斑くんを狙う砲台が1つから5つ、しかもその砲台全てがバラバラに狙ってくるとなると・・・」
『・・・それは確かに勝ち目は薄いでしょうが、方法はないんですか?弱点とか欠点とか』
「絶対に不可能とは言いません。本来、BT兵器は操るのが難しいですから使っている間は肝心の本体の動きが鈍くなってしまうという欠点があります。しかし・・・」

そこで言いよどみ、意を決したように言い放つ。

「セシリアさんは既にその欠点を克服しています」
「ああ、確かにそれは無理ですね」

現実は非情である。



 = = =



「う、お、おおおおおおおお!!」
「あらあら、さっきの勢いは何処へ行ってしまったのかしら?」
(こんなの反則だろっ・・・!!)

雄叫びをあげて自分を鼓舞しながら四方八方より迫るビットを全力で避ける。
計五か所からの攻撃は、ISのハイパーセンサーなしで避けるのは不可能だろう、等と考えながら機動を続ける。
しかし全力で避けてもレーザーを避け切ることは敵わず、さっきから脚部、スラスター、腕とあちらこちらに掠ったり被弾したりしている。奇跡的に今のところ姿勢制御は失敗していないが既にシールドエネルギーは残り5分の1を切り、一瞬でも気を抜けばレーザーで串刺しになるであろうことは想像に難くない。

――万策尽きた。そう考えざるを得なかった。ビットを斬って数を減らそうにも本体と他のビットが巧みに阻止し、肝心の本体は弾幕が突破できないために辿り着けない。そうこうしているうちに、また一発のレーザーが肩を掠る。

「ぐぅあっ!?クソ、このままじゃ手も足も出ねぇ・・・!」
「・・・・・・」

セシリアは何も言わずライフルのスコープ越しにこちらを見ている。
―――それで終わりか、とでも言わんばかりの目つきで。そこからは一種の失望すら感じられる。
何か言い返したいが、言う言葉が出てこなかった。
確かに今の一夏は――自分の事を無様と感じていたからだ。

(ここまで・・・なのかよ?俺は・・・皆を守る存在にはなれねぇのか?
 皆に応援してもらって、手伝ってもらったってのに・・・)

分かってはいたのだ。勝ち目が薄い事くらい。
周りからも言外にやめた方がいいと言われ、それでも諦めなかったのは、俺が守られるだけの存在じゃないことを証明したかったからだ。男が皆弱いみたいな考え方を否定したかったからだ。
だけど・・・ああ、今にして思えば何と無謀だったのだろう。こんなに差があるなら、確かにこの試合はやるだけ無駄だったのかもしれない。

いっそ諦めてしまおうか?どうせ世界最強(ちふゆねえ)に追いつけるわけないし・・・
駄目だな、俺。ユウならこんなこと考えもしないだろうに。本当に成長してねぇ。
だから俺は勝てないのかもな、と自嘲的な笑みを浮かべる。

俺は、結局変われないのかな――




『それは、違うよ』
――誰だ?

『あなたは変われる。自分の意志で』
俺が・・・変われる?本当に?

『あなたが望めば、神にだって悪魔にだってなれる。そういう存在なんだよ』
神にも、悪魔にも・・・何だか急にオカルトチックな話になったな。

『あなたは、どうするの?』
そうだな・・・何になるかははっきり決められないけど、ひとまず目指すのは――



最適化処理(フィッティング)完了 一次移行(ファーストシフト)終了しました 》

 
 

 
後書き

 
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