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【IS】何もかも間違ってるかもしれないインフィニット・ストラトス

作者:海戦型
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プロローグ 始まりは極東の地で

 
前書き
えー・・・始めまして、海戦型と名乗るものです。付き合って下さる方には長い付き合いになるかもしれませんが何卒よろしくお願いいたします。 

 
これは1年と数か月前のこと――


「IS学園直々に・・・?俺へか?」
「うん」

早朝に呼び出された飾りっ気のない社長室。そこで俺を待っていたのは・・・恐らく人生最大の厄介事の依頼だった。このいつもニコニコ笑いながら面倒事を押し付ける我が旧友にして親愛なる社長殿は、どうやら余程俺をKaroshiさせたいと見える。

「“うん”じゃねーよ・・・で、拒否権は?無い?無いんだろ?無いでしょうねクソッタレが」
「まぁ事実上ないね。あそこも一枚岩じゃないし知られて困ることもいろいろある。プロの手が借りたいんだろう」
「そりゃ光栄なことですねー。こちとらちっとも良くないんですがねー」
「確かに、信頼があるのはいいけどここまで頼られると考え物だなぁ」

そう言って苦笑する社長御大。しかし名指しで呼ばれた以上は受けざるを得ない。確かにこんな依頼を頼めるのは世界広しと言えどもうちの会社―――いや、“俺”しか居ないだろう。

「まぁいいさ。たっぷり恩を売りまくって後で巻き上げてやる!」
「で、また君に寄ってくる求婚者が増えるわけだ。磁石に砂鉄がくっつくように」

はっはっはっと冗談めかして笑う社長に「うるせぇ」と一言言い返す。ついでにその話題、俺にとってはシャレで済まないんだがそれはまぁ置いておこう。自慢話みたいになるのも嫌だし。ちっとも嬉しくねえけど。
社長命令でなければ断る。俺のやる必要がない事も断る。だが命令があって必要性もあるなら文句は言うがきっちり請け負う。俺なりのプロ意識ってやつだ。

「はぁー・・・日本か。まぁ観光にはいい所なんだがな。メシも美味いし」
「皆のお土産用に予算を割いておくよ。じゃあ、いってらっしゃい」
「おう、行ってくらぁ。土産の目利きにゃ自信があるから楽しみにしてな」

書類を受け取り、男は次の仕事場へ行く準備を始める。笑顔で見送る社長と男を見ながら・・・

(何だか家族か夫婦みたいね)

と、横で見ていた秘書官は思うのであった。




4か月ほど前の事――


「いやぁ~人が多いなぁ。IS学園の入試もここでやってるんだっけ?」
「そうだよ。うっかり藍越学園と聞き間違えてあっちに行かないようにね?一夏ってば、肝心なところでいつもヘマをするんだから」
「あっ!ひっでーなユウ!流石の俺もそんな間違いはしねーよ!!」
「さて、どうかな~?」
「こやつめ、ハハハ」
「ははは」

他愛のない会話と共に試験会場へ向かう二人の男の子。一人を一夏、もう一人を結章(ゆうしょう)。中学時代来の親友で、現在『藍越学園』という学園の入試に向かっていた。
やたらと広いこの建物は複数の高校の入学試験を同時に行っており、中は入試に緊張する沢山の人たちとその見送りでごった返していた。皆が自分のことでいっぱいいっぱいの中、二人にはそれなりの心の余裕があるのかお喋りしている。

「お、あそこにいる子たちはIS学園の受験に来たみたいだな」
「IS学園かぁ・・・かなり厳しい試験らしいから、あの中からもかなり落ちる子が出るだろうね・・・」
「おいおい、入試直前に縁起でもないこと言うなよ!」

批難の声にごめんごめん、と謝りながらも歩みを進める。しかし妙に入り組んだ構造をしている。例年はこことは違う建物でやっていたらしいが、今年はその建物で老朽化などが問題になったらしく使用不能、変わってここが会場に選ばれたそうだ。
これは本当に迷子になりかねないな、と苦笑しながら横に振りむき――

「・・・・・・あれ、一夏?」

そこにはいるはずの彼の親友、一夏の姿が無くなっていた。


翌日、こんな記事が新聞の一面を飾る。『世界初の男性IS適性者現る』、と。
――そしてユウは知らなかった。その数日後に自分も兄弟と一緒に一面記事を飾ることになることを・・・




同じく4か月ほど前の事――


「やったぁ!二次受かったぁ!!くぅ~寝る間も惜しんで勉強した甲斐があったぁ~~!!」
「えっ!?嘘、アンタ受かったの!?」
「た~~うぜん(当然)!!」

特に珍しくもない街のどこにでもある家庭。そこで特別美人でも不細工でもない少女はにっと笑って勝利のVサインを高らかに掲げる。対する母の反応はというと・・・

「まぁアンタなら何とかするような気がしたけど」
「えぇ~~・・・そこはそれ、喜んでほしい所なんだけど」
「だってアンタどう見ても真面目に勉強してないのに成績はいつも平均以上だったしねぇ・・・ヤレバデキルコダッテシンジテタワヨ~」
「何よそれ。確かに勉強あんまりしてなかったけど今回は真面目にやったもん!!」

不満そうにこちらを見て、しかし直ぐに合格通知書を見直してにやけ始めた娘を見ながら母はため息をつく。

昔から変わった子だとは思っていた。私にも父さんにも、身内の誰とも似ていない性格。どうも毎日にあまりやる気が感じられない態度。勉強せずにゲームばかりしているくせにテストで悪い点を取ったことはなく、家族間で喧嘩をしたこともあまりなく。
学校の評価は“やる気無さ気なのに優秀な変わった子”、娘の友人の評価は“何だか思考が微妙にずれてる子”。反抗期も思春期も全然変わらず特に打ち込むこともなくダラダラ過ごす娘が突然IS学園に行くと言い出した日は今でも覚えている。
父さんも私もはっきり言ってやめておけと言いたかった。ISはなんだかんだ言いつつ兵器だ。世間ではスポーツ用のパワードスーツ位の認識しかされていないが、このご時世比較的真っ当(だと思う)な感覚を持った親の身としてはそんな物騒なものを扱うための学校など行ってほしくはなかった。
しかし、今までずっと夢も目的もなくふらふらしていた娘が水を得た魚のようにはきはき動き出したのを見るととても止める気分にはならず、結果が今の状態である。悔しいが、IS学園受験に勤しむ娘の姿は、他のどのアルバムに映るあの子よりも生き生きとしていた。悪いと思いつつ父さんと一緒に“あの子が受験に落ちますように”といろいろ願掛けしたりしたのだが、やはり効果は無かったようだ。(娘には内緒よ?)
まぁ反面、さっき言ったようにこうなるのではとも思っていた。IS適性検査の結果が“適性値S”だったときから『ああ、受かっちゃうだろうなー』と確信していた。

「母さん、ごめんね」
「何がよ?」

突然、先ほどまでの喜びようが嘘のように静まった娘から謝罪の言葉が飛び出す。意図を測りかねたため聞き返すと、今まで何を考えているのか良く分からなかった娘から少し意外な言葉が飛び出した。

「いや、IS学園入学するの反対だったし・・・親不孝だよね」
「いいのよ、どうせ止めても入るだろうとは思ってたし・・・夢叶えてきなさい。応援してるわ」
「・・・そっか。そうだよね。そういえば私たち、家族だもんね」
「そうじゃなきゃ何だっていうのよ・・・ふふっ、おかしな子」
「あはは・・・」

おかしくなってつい笑いを零す。釣られるように娘も。

貴方は間違いなく私がお腹を痛めて産んだ子供よ。私たちの自慢の・・・

だから、行ってきなさいな。そして――辛くなったら、いつでも帰っておいで、(みのり)






――――――――――――――――――――――――――――――――






何所までも続く漆黒の空間。そこに光る沢山の赤い矢。
矢は美しい球体と衝突し、球体は光の飛沫を撒き散らしながら虚空に消える。
鮮やかな桃色の光が砂時計を崩す。巨大な試験管が、球体に突き刺さって砕ける。
不思議な形をした沢山の船が、巨大な虫のような生き物たちに群がられ、船は生き物諸共黒い球に形を変える。
歪な船が輝きと共に空を飛び、やがて力尽きたように沈んでゆく。
女神の像が崩れ去る。神の像も崩れ去る。
白い巨人が体を起こし、橙色が球体を包みこむ。
無限に伸びる沢山の蔓のようなものが、微かに光る粒子を吸い込み続ける。
誰かが何かを叫び、たくさんの巨人たちが漆黒の空間を駆ける。
その巨人たちは何処からか走ってきた白い光に包まれて、花火のように美しく散ってゆく。
声が聞こえる。ある人は笑い、ある人は悲しみ、ある人は怒り、あるものは泣き、連なる狂気と怨嗟は一つの音楽となって黒い空間に吸い込まれる。


そんな光景が暫く繰り返され、やがて漆黒の空間は静寂に包まれる。
いや――
巨人が立っていた。黒い巨人だ。巨人が踏みつける足元には、夥しいまでの残骸で出来た海が、ただひたすらに広がっていた。


ドクン、と心音のような音が響く。
気が付くと目の前には真っ白な建造物があった。
何故か、これは祭壇だと感じる。
導かれるようにその祭壇へと足を運び、体が白い繭のようなものに包まれ――




現在――

「・・・また、この夢だ」

昼寝から目を覚ました少年は、ぼさぼさになった髪の毛を指で弄りながら一人ごちる。暫く見ていなかったが、いつ見ても意味の分からない夢だ。精神科医に聞いても理由は要領を得なかったことを思い出す。
ただ、この夢を見た時はいつも孤独感に苛まれて親に泣きついたりしたものだ。尤も両親とはここ数年顔を合わせてはいないが、と少し寂しい気分になる。

「・・・行きたくない」

両親と別れ、ようやく根を張ろうとした新天地。かけがえのない友人。居心地の良い街。
そこから離れた極東の地に、僕は一人でいた。
こんな所には心の底から来たくは無かった。あの暖かい微睡みの中に居たかった。だが、現実という名の見えない力に、僕は抗うことが出来ないようだ。

こんこん、とドアをノックする音が聞こえる。ああ、僕を憂鬱のどん底に突き落とさんとする見えない力の一端が、迎えに来てしまったようだ。
「どうして僕が・・・あんな所(IS学園)に行かなきゃならないんだ」

おお、神よ。もしあなたがこの世におわせられるなら、きっとあなたは最低のサディストに違いない。
そんな悪態をつきながら、僕はドアへと歩み寄った。
 
 

 
後書き
こんな感じで、物語の始まりにございます 
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