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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
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一章 王宮の女戦士
  1-21遺品

「……このおじちゃん」

「私と同じ、王宮戦士だ。子供を(さら)った悪い奴らと戦って、死んだ」

「……ぼくたち」

「君たちのせいでは無い。こういうことも、あるんだ。王宮戦士とは、そういうものだ」

 子供たちは、必死に泣くのを(こら)えている。

「彼を覚えていてくれるなら、悪いと思うのでは無く、感謝してやってくれ。助けようとした子供たちに、感謝されていると知れば、彼も喜ぶだろう」

「……うん。ありがとう、おじちゃん」

 子供たちに彼の名を教えてやれないことを口惜(くちお)しく思ったところで、遺品を持ち帰らねばならないと思い当たった。
 確認用の札があれば、名もわかろう。

「シングルベンティヘーゼルアーモキャラモカ」

「なあにそれ?」

「じゅもん?」

「彼の名前だ」

 この札にあるのだから、そうなのだろう。

 子供たちは覚えようと札を覗き込み、何度も名前を呟いている。

 しかし長い名だ。
 とは言え、最期を()()った者として、名くらいは覚えねば。
 覚えて、覚え…………………………
 …………………………………………

 …………………………………………

「ライアンさん?」
「……ホイミン?」

 一瞬、意識が飛んでいたようだ。

 決して安全とは言えぬ場所で、一体何を。
 はて、何をしていたのだったか。

「それを持っていくの?」

 そうだ、遺品の回収をしていたのだった。
 目の前に集めてあった品で問題無かろうと、遺品をまとめる。

 子供たちが呪文のような言葉を呟いているが、彼の死を(いた)んでいるのか。
 落ち着いた様子であるし、大丈夫だろう。
 ともかく、早く親元に帰そう。

 誰から聞いたものやら、塔の屋上から飛び降りれば帰れるなどと子供らが言い出すが、この()に及んでそのような無茶をさせるわけにはいかない。
 非常用のキメラの翼で、村へと帰還する。


 辺りは暗くなってきてはいるが、まだ人の出歩く時間である。
 子供たちが各々(おのおの)の母親を見つけ、駆け出す。

「あっ、ママだ!」
「わーい!わーい!」
「ママー!」

「ププル!」
「無事だったのね!」
「ああ、神様!」

 感極まって泣き出す者、吉報(きっぽう)を叫び走り回る者。辺りは大変な騒ぎである。

「見て見て、ライアンさん!お母さんも子供も、大喜びだよ!」

 ホイミンも大喜びである。
 良かったなと撫でてやりつつ、魔物だなどと騒ぎ立てられる前に()つべきか、できればホイミンを休ませてやりたいが、などと思案しているうちに、宿屋の母子(おやこ)がやって来た。

「ライアン様。息子を助けて頂き、本当にありがとうございます。お連れの方と一緒に、どうか今夜はうちでお休みください」 
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