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DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
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一章 王宮の女戦士
  1-10楽しい

 屈託なく話しかけてくるホイミンとの道中は、思いのほか楽しかった。

 ライアンは、同性の友人とおとなしく遊ぶよりも、身体を動かし鍛錬することを好んだためか、表情が厳しく、近寄り難いと言われる。

 なるほど遠巻きにされているようなのはそのためか、と意識して微笑むようにすれば、相手は赤くなって、黙りこんだり、挙動がおかしくなったりする。
 問えば、何でも無い、気のせいだと返される。

 誰もが同じようであるため、これはこれで普通のことであるのかも知れない、そもそも自分に対する反応だとも限らない、遠巻きにされなくなっただけ良いだろう、何もかもが上手くは行かないものだ、などと思っていた。
 どうにも他の人たちのように会話が弾まないようであるが、仕方が無い、何もかもが上手くは行かないものだ。

 ところがこのホイミンは、ライアンが微笑むのにも変わらず笑い返し、さらに嬉しそうに話し続けるのだ。
 ライアンも楽しくなり、意識せずとも、自分が笑っているのがわかる。


 ひとりでは長く感じた時間も、ふたりであれば長さを思う間も無く過ぎ去り、残すは声の導く先のみとなった。

 当初こそ、声を聞き流して進んでいたライアンであったが、上層を探索するうちに、やはり声は奥へ奥へと導こうとしているものと気付き、その後はひたすら声に逆らい、分岐の先を潰して行った。
 既に分岐も無く、暗くて見通せないが、どうやら行き止まりであるらしいのがわかる。

「ホイミン。どうやらあそこが、終着であるようだ。念のため、ここからは気を付けて行こう。静かにな」
「はい、ライアンさん!」

 子供たちの消えた状況を思えば、ここに命を(おびや)かすような何かがあるとは思えないが、何かがあるとすればここしかない。
 気を付けるに越したことは無い。

 注意深く奥へと進むと、果たしてそこに魔物が待ち構えていることは無く、珍妙な靴らしきものがあった。
 消える前の子供が、奇妙な靴で遊んでいたという情報に符号する。

 念のためホイミンを下がらせ、危険が無いことを確認して、靴らしきものを回収し、古井戸を出る。 
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