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ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

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第26話 そして、再建へ・・・

円卓のテーブルに4人が座っている。
俺とジンク、ロマリア王とその息子だ。
「さて、話を聞かせてもらおうか。どうしてこうなった?」
俺が知る限り、原作イベントでロマリア王になるのは、勇者だけだったはずだ。
しかも、目の前の王ではなく、その息子から一時的に王に勧められるという内容だったはずだ。
俺は、ロマリア王に答えを求めた。

「アーベル。将来の為ですよ」
ジンクが口を開く。
「将来のため?」
ロマリア王ではなく、ジンクが回答するのは予想外であったが、答えが分かれば誰でもかまわない。
俺は、話の続きをうながす。
「まずは、この国の現状を知ってもらわなければ、いけませんね」


「ご存じだと思いますが、この国には貴族がいます」
俺は頷く。
「昔、アリアハンから独立したときに、協力した者達に貴族の地位を与えました。
貴族達は、領地の管理や内政、軍事に当たる替わりに、国からの報酬と税の免除、そして多くの特権が与えられました」

ここまでは、知っている話だった。
ジンクが説明したのは、話を進めるための事前確認のためだ。
「しかしながら、モンスター達が世界を蹂躙するようになると、国土が減少していきます。
当然、領地の管理や軍事に当たっていた貴族達は滅亡しましたが、それでも多くの貴族達は生き残りました。
やがて、貴族達を養う報酬が無くなりそうになると、貴族達は増税を提案しました」

増税の話は聞いたことがない。
「前の王は反対しました。しかし、前の王は急な病で倒れるとすぐに息を引き取りました。
今の王は、無駄な歳出を押さえることで増税を回避しました」
ジンクはため息をつくと話を続ける。

「しかし、あと数年で限界がきます。
そのとき、国は増税への道を進むしかありません。
しかし、安易な増税は国の国力を蝕みやがて、国自体が立ちゆかなくなります」
「そうだな」
俺は相づちをうつ。
俺は、ジンクから手渡されていた資料を眺めていた。
この資料が正しければ、確実に財政破綻をきたすことを容易に確認できる。
「国が滅んでも、新たなロマリア王国が出来るかもしれません」
俺が、これまでの情報を元にすれば、同じ結論がでるだろう。
混乱した社会の中で、力のある貴族が新たなロマリア王国を築くかもしれない。

「しかし、新たな王国ができるまで、国民達はどれだけの血を流すのでしょうか」
急速な社会情勢の変化は、国民達には耐えることができるのだろうか。
安易に増税を求める貴族たちだ。
国民達との反発に対して、力で押さえつけることは間違いない。

とりあえず、この国の現状を把握した。
ロマリア王国の将来のことを考えれば何かをしなければならないだろう。

そうなると、俺の中には次の質問が浮かぶ。
「私に何をさせるのだ」
俺はジンクに質問する。
ロマリア王は相変わらず黙ったままだ。
「貴族を滅ぼして欲しいのです」
ジンクは微笑みながら俺に答える。
これまでジンクが見せた顔ではなかった。
表情に真剣味があった。

確かに貴族を滅ぼすことができれば、国家の歳出が減るだろう。
王国が抱える問題は解決するかもしれない。
少なくとも、渡された資料にはそのように記載されていた。
資料の内容を考えれば、何年も前から考えていた計画のはずだ。

俺は、だが、質問を止めない。
俺の将来の話だ、たとえ王国が相手でも、徹底的に追求する。
「何故、今の王では出来ない」
ジンクの答えは簡潔だった。
「逆に滅ぼされるでしょう」
「では、私がやっても一緒ではないのかね?」
俺はジンクをにらみつける。
計画が失敗し、ただの冒険者である俺が滅んでも、問題はないのだろう。

ジンクは俺の視線をかわすことなく、話を続ける。
おちょうしものの特性かどうかはわからない。
「いくつか、こちらで手段を用意します」
ジンクは手段の内容を説明することなく、俺の質問に答える。
「ただ、我々が表立って動くと、すぐに貴族達の知るところになります」
計画の遂行は自分たちでやる。
ただし、今の王が行うわけにはいかない。
だから、別の王を立てる必要があると。

「私は飾りか」
「ただの飾りでは、意味がありません」
「なるほど、注目を集める程度には物事を進めろと」
俺には俺なりの、王としての役割があるということか。
「おっしゃるとおりです」

「ジンクが王になればいいのではないか。ロマリア国民の気持ちを考えると、私が王になるより反発は少ないとおもうぞ」
俺はジンクに皮肉を込めていった。
俺を勝手に計画に加えるなと。

「残念ながら、私も貴族です」
ジンクは平然と答える。
「貴族がいることで国が滅びるといって他の貴族を滅ぼし、滅ぼした自分は王位に安住する。国民に許されることではありません」
国が滅んだあとには出来る言い訳も、滅びる前なら通用しないということか。



「どうして、私を選んだ」
あらかじめ、ジンクとロマリア王にこの計画があったことは理解した。
だが、王を俺にした理由がわからない。
「あなたが、この国に交渉を持ちかけた時に決めました」
「私の交渉術があれば、対応できると」
「それだけでは、ありません」

ジンクはテーブルに置いてある水を口に含むと、話しを切り出す。
「あなたは、やがて魔王が倒されて、世界が平和になると考えていますね」
「まあ、人間同士の争いが始まるだけかもれないが」
俺も、水を口に含んでから、話を続ける。

「それでも、しばらくは先の話だろう。こんなにも荒野が開けているのだ」
ロマリアはモンスター達の襲撃で国土が縮小した。
モンスターがいなくなれば、やがて国土が回復するだろう。

「あの、勇者オルテガですら成しえなかった魔王討伐が、達成されると本気で考えているのか」
ロマリア王が質問する。
「まあ、そうですね。今の勇者がオルテガより弱くても大丈夫でしょう。彼の敗因は1人で戦ったことにつきます」
ジンクが頷く。
「あなたがいうのであれば、間違いないでしょうね」
「だからこそ、あなたに世界が平和になった先を見据えた指針を作ってほしいのです」
「誰も、世界が平和になった先のことを考えていないから?」
「多くの人は、その日の暮らしのことを考えるだけで精一杯です」
「しかし、おぬしはそうではないようだ」
ロマリア王は口をはさんだ。

「本来であれば、息子の役割なのだろう」
王の息子は、残念そうな顔をする。
「息子にはその才能がないのだ」
ロマリア王は俺に頭をさげる。
王の息子も俺に頭を下げた。


俺は、ジンクの考えを理解した。
暇であれば、計画に参加してもいいだろう。
元国王という称号は、いろいろと役に立つはずだ。
だが、俺には優先すべき事がある。
だから、この質問をする。

「私が断ったら、どうするのだ。裏切って貴族に取り入るかもしれないぞ」
「この国の将来が分かった以上、貴族に取り入っても意味が無いことぐらいわかりますよね」
「俺が替わりの王を見つけることくらい、簡単ではないのかい」
「そうすれば、アーベルの退位と同時にポルトガとの秘密交渉を公表します」
くろこしょうで利益を上げる計画のことか。

確かにあの交渉は国家権力を私的に使用したとも言われかねない。
ロマリアの法律上、少し法に抵触しそうなところがあることは知っている。
もちろん罰せられるのは、ジンクだけであるが。
当然、アリアハンの法律では問題のないことは事前に確認している。
「自分の在位中に合法化し、譲位の条件にすればどうする」
それでも、自分を正当化できる方法を持ち出して、ジンクの反応を確かめる。

「アーベルの冒険はそこで終わりですね」
「終わるとは?」
「私の特技をご存じですか」
俺は、ジンクと最初にあった日のことを思い出す。

「イオナズンだったが、まさか・・・」
俺は思わず声をあげる。
「本当は、メラゾーマの方が得意なのですがね。インパクトが違うのでイオナズンと言っています」
ジンクは呪文を唱えると、俺と同じ姿にかわる。
ジンクは変身呪文モシャスを使えたのだ。

モシャスはイオナズンよりも低いレベルで習得可能な呪文だが、火の最強呪文メラゾーマよりも高いレベルが必要だ。
今の俺では、メラゾーマの一撃で死ぬだろう。

俺はため息をついてから、確認する。
「お前は、2回も遊び人を経験したのか」
「都合がいいですからね、このようなときは」
ジンクは平然と答える。
俺の姿のままで答えるのは違和感があるが、ここは我慢するところなのだろう。
俺は黙って話を聞く。

ジンクは、俺の姿のまま説明する。
「さすがに賢者のレベルがあがりましたが、私が話す経歴だけでは見抜く人はいないでしょう」
俺も気づくことはなかった。
「最初に遊び人で次に僧侶です。とはいえレベル20で転職しましたが」

ジンクにかかっていた、モシャスの効果が切れたようだ。
元の姿にもどったことに、俺はなぜか安心する。

ジンクは、俺の反応を無視して話を続ける。
「その次に魔法使いをレベル38まで経験して、再び遊び人になり現在の賢者にいたります。
まあ、今ならあなたにステータスをお見せしても問題ないでしょう」
俺は、ジンクから初めて完全なステータスシートを見せられた。
習得呪文を見る限り、ジンクの話に嘘はなかった。

俺からの最後の質問だ。
「どうして、ジンクは協力するのだ?」
「おちょうしものだからですよ」
ジンクはようやく、いつもの顔に戻った。
「世界が平和になっても、自分の国が滅んでは意味がありません。
そして平和になったとき、一緒に笑える仲間がいなければ、おちょうしものとして生きてきた意味がありません」


俺の計画に見直しが必要だということを思い知らされた。
仕方がない。
俺は、少しでも早期に問題を解決する事を考えていた。
 
 

 
後書き
第3章の完結です。

第4章は旅にでません。ひきこもりではありませんが。

参考までに第3章終了時点のステータスです

テルル
商人
ぬけめがない
LV:18
ちから:38
すばやさ:38
たいりょく:52
かしこさ:36
うんのよさ:32
最大HP:106
最大MP:70
攻撃力:76
防御力:77
EX:22004
鉄の斧、みかわしの服、魔法の盾、毛皮のフード

セレン
僧侶
ふつう
LV:17
ちから:38
すばやさ:33
たいりょく:49
かしこさ:42
うんのよさ:54
最大HP:100
最大MP:78
攻撃力:73
防御力:80
EX:22004
ホーリーランス、みかわしの服、魔法の盾、鉄かぶと

アーベル
きれもの
LV:17
ちから:17
すばやさ:35
たいりょく:34
かしこさ:68
うんのよさ:52
最大HP:69
最大MP:136
攻撃力:25
防御力:67
EX:22004
ブロンズナイフ、みかわしの服、魔法の盾、皮の帽子

ジンク
けんじゃ
おちょうしもの
LV:8
ちから:30
すばやさ:50
たいりょく:57
かしこさ:44
うんのよさ:100
最大HP:116
最大MP:86
攻撃力:68
防御力:61
EX:1708
ホーリーランス、くさりかたびら、鉄兜 
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